<コラムもどき>

「ジュニアのための戦後史入門」



 「ジュニアのための戦後史入門」(久保田貢他 著、平和文化)という本をご存じですか。

1999年8月15日(この日が意味があるのでしょう。)に出版されたばかりの本です。

環境、人権、戦争と平和、男女差別など、今我々が抱えている問題を一人の中学生を主人公に、

物語仕立てで解りやすく書いてあり、我々に問題を提起しています。

 読んでいただけば筆者の視点は明らかなのですが、反対意見の紹介も註になされていて、

公正な立場をとろうとする姿勢も感じられます。

また、今までタブーであったであろう天皇の戦争責任について、かなり激しい口調で

書いてあります。その点でも評価される本だと思いました。

ぜひ、中、高生に読んでもらいたい一冊だと思い、ここに紹介させて頂きました。


 この本がすばらしい本であることを前提として、私からの問題提起をいくつかさせて

いただきたいと思います。

 日本の戦争責任の問題ですが、私も先の戦争は侵略戦争だと思います。 

しかし、もっとグローバルな視点で見直されるべきではないでしょうか。

帝国主義全盛期に遅れて大陸進出をした日本。すでにアジア諸国は植民地、半植民地化

されていたのです。その時代背景はどう考えるか、という問題が前提にあると思います。

 そして「従軍慰安婦問題」 これは前に書いたことがあるのでここでは詳しく述べませんが、

この本では歴史的事実として書かれているばかりではなく、そこから教科書検定問題に

話が進められています。

「・・・でも、政府にとって都合が悪いと削られたり、書き直しをされたりということが

 あって、問題になっているんだ」

「へぇー、教科書にそんな裏があったの」

「裏」という表現はちょっと不適切では?教科書問題は自由主義史観の人たちの間でも問題に

なっており、まもなく「国民の歴史」というパイロット版の本が発行されるほどです。

しかし「裏」という言葉によって、子供たちの心に誤った国家の概念を植え付けるのでは、と

心配になりました。

 また「朝鮮半島の分断は日本に責任がある」という立場をこの本はとっています。

「日本が朝鮮半島を侵略し、戦争の渦にまきこんだ結果、ソ連軍が朝鮮半島まで進出し、」

というのがその根拠なのですが、果たしてそうなのでしょうか?

日本にとって朝鮮半島が必要であった理由、それは逆にソ連の南下が大きな要因とは考えられ

ないでしょうか。

 核兵器の恐ろしさについては、「第五福竜丸と3.1ビキニ・デー」を取り上げることにより、

原爆投下は過去のものではないことが強調されています。すばらしい視点だと思いました。

ただ、ヒロシマ、ナガサキの原爆投下におけるアメリカの責任についての記述があまりにも

軽いと思いました。その点については註で問題提起がなされているのですが、本を読み終えると、

そこの部分が触れられていないに等しく感じられてしまいます。

原爆投下が決して過去のものではないとするならば、原爆投下をしたアメリカの責任は

避けては通れないものではないでしょうか。


 いくつか私の気になる点を上げさせていただきました。

しかし「ジュニアのための戦後史入門」は、私たちがこれから歩んでいかねばならない方向の

一つを指し示してくれる本だと思います。

ジュニアのみならず、ぜひ、多くの方に読んでいただきたいと思い、コラムもどきに取り上げて

みました。

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