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渋谷駅すぐの児童精神科・精神科クリニック

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Topic 12

 精神疾患と心身のリハビリ

精神疾患を治療するときに、一定期間仕事や学校をお休みすることがあります。今回はその休養期間中や復帰準備期間中の注意点について述べてみたいと思います。まずは、休養期間中に体力が減退したり、昼夜のリズムが崩れてしまったりして、復帰までに相当期間を要した例を紹介します。何時ものように個人情報は削除あるいは改変し、数例をブレンドすることで個人が特定できないようにしてありますので、ご了承ください。

療養生活の間の体力減退、昼夜のリズムの崩れ

事例1. 初診時40歳代男性。大会社の管理職。1年にわたって1ヶ月あたり60時間から90時間の残業が続いており、23ヶ月前から心身の不調を来しました。早朝から仕事のことが心配で目覚めるようになり、週末に休んでも疲れがとれなくなりました。仕事の能率も低下して、更にこの2週間ほどは食欲もなくなってきたということで来院されました。面接時も言動が緩慢で、ここしばらくは気持ちが塞いで、何をしても楽しくないということが述べられました。長時間労働の心身へのストレスが続いた結果、うつ病を発症していました。既に不眠、強い食欲減退などがあり、休養が必要な状態でした。会社を休職して、抗うつ薬を主体とした薬物療法を開始しました。長時間労働から解放されて、抗うつ薬の薬効もあり、初診から約1ヶ月で、気持ちが塞ぐことはなくなり、気分転換で外出すると楽しい時間も過ごすことができるようになりました。食事や睡眠も1年ぶりにしっかりとれると報告されました。休業して2ヶ月で完全寛解に至り、職場向けに就業可能の診断書をだしました。それに対して、職場からは、完全復帰まで6ヶ月間に渡る段階的な勤務が提示されました。12時間からの慣し勤務が開始されましたが、職場で少しでも疲労感を報告すると、復帰プログラムのステップアップに待ったがかかるため、結局は就業可能の診断書をだしてから、半年をかなり超えての完全復帰となりました。

最近は上述のように、会社側が復帰に際してはかなり、時には過剰なくらい慎重な復帰プログラムを課すようです。このことにより、復帰を焦らずに落ち着いて療養生活を過ごすことができる反面、この期間中に体力が減退したり、すっかり朝寝坊の癖がついてしまったりすることがあります。そして、このことが職場復帰や学校復帰を妨げてしまうことがしばしばみられます。復帰のために短時間勤務を始めると、体力が減退しているため心身の疲労によって気持ちが浮かなくなり、うつ病の再燃と紛らわしい状態を来すこと多いのです。また、朝から体を動かす習慣がなくなっていることにより、心身にとって午前は夜の延長のような状態となってしまっていて、この時間帯に体を動かすことで、尚更強く疲れを感じてしまいます。この状況をうつ病の再燃とみてしまうと、療養期間が延長される→ますます体力減退、昼夜のリズムの消失が悪化、という悪循環になってしまいます。同様のことは、不登校でもよくみられます。次にそのような例を紹介します。

事例2. 初診時10歳代男児。1年前からの不登校が改善しないということで来院。これまで運動会や遠足には行けたが、その後の通常授業への登校が続かないということでした。面接時は快活で、学校には行ってないが、週2回の習い事には問題なく行けていました。しかし、習い事以外にはやはり週に1-2回程度の親御さんの買い物に同行する程度の外出で、万歩計で普段の運動量を測定してもらうと、習い事や買い物の日以外は1500歩かそれ以下でした。体力が減退しているのに、よりにもよって、運動会や遠足のような運動量の多い行事にたまに参加するので、どっと疲れてその後の回復に長期間かかっているようでした。このため、毎日の散歩を、5-10分から始めて、朝夕130分、12回程度の散歩ができるようになってから、行事ではなく、短時間の別室登校をしてもらい、徐々に時間を延ばすとともに、可能なときは教室で授業を受けることを助言しました。その結果初診から3ヶ月後には、毎日午前は授業を受けることができるようになり、半年後には毎日終日の登校ができるようになしました。

 体力の減退や昼夜のリズムの崩れを予防するために必要なこと

1.       療養中、可能な範囲で外出や運動を続ける

とても具合の悪いときには仕方がないですが、うつ病などで休養している間も可能な範囲での外出や運動の習慣は保つようにしましょう。電車に乗って会社や学校に通う生活では、万歩計で測定すると15000歩から10000歩以上の運動量になります。それが、休日測ってみると1日数百歩になっていることもあります。休養中では、この状態が続いてしまうことになります。そのため、概ね2週間以上の休養をリハビリしないで過ごしてしまうと、日常生活に戻る時に支障が出る程度の体力の減退が起こると言われています。これを避けるために可能な限り15000歩以上の散歩を心がけると良いようです。また、毎日家からちょっと距離のある図書館で復帰のための勉強をすることも役立ちます。

2.       できるだけ朝7時には起きて午前中に体を動かす

昼夜のリズムを崩さないことも大切ですから、休養中もできるだけ朝7時台に起きて活動するようにすることがお勧めです。その際、ただ起きてじっとしてテレビを観ているよりも、散歩にでたり、庭の花に水やりをすることで体を動かのしたりするのが良いでしょう。体を動かすことで、自律神経に刺激を与えることができて、体調を安定させることができます。折角朝起きても、じっとしているのでは、自律神経がサボってしまい、いざ出社や登校した時に血圧が不安定になって、頭痛や腹痛が起きることがあります。

身体の病気でも、骨折や肺炎といった病気そのものが治癒しても、その後日常生活をどのくらい取り戻すことができるかに関しては、リハビリがカギを握っています。精神疾患でも同じことで、例えばうつ病が寛解しても、体力減退や昼夜のリズムの崩れが起きていると、日常生活に戻る大きな障壁となります。そのようにならないためには、上述のような注意が必要です。また、そのようになってしまった場合には、体力や昼夜のリズムを取り戻すことで、仕事や学校への復帰をよりスムースに進めることができます。昼夜のリズムをどう回復させるかについては、「昼夜のリズムと不登校」をご参照ください。


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