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渋谷駅すぐの児童精神科・精神科クリニック

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Topic 6

 軽度発達障害と認知行動療法(CBT)

 精神科を訪れる軽度発達障害としては、自閉症スペクトラム障害(ASD)や注意欠如多動障害(ADHD)が多くを占めます。読み書き障害や算数障害なども軽度発達障害に分類されますが、別の項で述べたいと思います。これらの障害は年齢とともにスキルが向上して、長い目でみれば生活や仕事の困難も軽減していくことが多いのですが、その時々の困りごとと関連したストレスを軽減していくことが、障害と関連して惹き起こされるストレスによる二次障害を予防するためにはとても大切なポイントと言えます。これらの対処において、認知行動療法(CBT)の視点が役立ちます。以下に、ASDの場合と、ADHDの場合に分けて、その概略を述べてみたいと思います。

1.    自閉症スペクトラム障害(ASD)の場合

 ASDの子どもや大人は程度の差はありますが、臨機応変が求められる人との関りに苦手意識を持っていることが多いものです。また、周囲の人と同じものを見たり体験しても、他の人とは違う感想を持ったり、他の人とは違う振る舞いをしてしまうことに悩んでいることもあります。まずは、このような特徴のポジティブな側面をご本人も周囲も理解する必要があります。世の中には臨機応変に状況に対応することがあまり必要とされない仕事もあります。また、物事を人と違う角度から見てしまうことは、その人のオリジナリティですから、ご本人や周囲にとって価値があることであることも多いのです。他人と同じ見方ができない=他人の気づかない側面に気づくことができるのです。世の中の多くの大発明は、その人が他人と同じ見方ができないこと=他人の気づかないことに気づいたことから生まれています。また、なにも大発明に限らず、ASDの人は他の人が思いつかない料理の隠し味を思いつくかもしれませんし、他の人が思いつかない商売の糸口を思いつくかもしれません。音楽にしても、楽曲の中から他人が気づかない表情を聞き取れるのはASD傾向のある人が多いようです。このように、実際、他人と違うということはその人だけの価値であるわけですから、できるだけポジティブに考えたいものです。そして、ASDの人が、自分の特性をポジティブにとらえるか、ネガティブにとらえるかは、ご家族や周囲がその特性をどうとらえて、ご本人にどう伝えるかという日常の積み重ねによっているところが大きいのです。ASDの人の知覚過敏は音や明るさや臭いに対する過敏性として問題となることが多いのですが、多くの場面では、耳栓やサングラスやその場を離れることで乗り切れます。臭いに対する過敏性を職業的に生かしているASDの方も居ますので、知覚過敏もポジティブな側面を持っていると言えます。また、興味や関心の強い偏りを生かして、研究や趣味の世界で大成している人も珍しくありません。このように、ASDの特性をどう乗り切っていくか、どう生かしていくかを、CBTの視点を持った面接で話し合うことで、生活や仕事をより楽に、より楽しくやっていくことができます。

2.    注意欠如多動性障害(ADHD)の場合

 ADHDの場合にCBT以前に大切なことは、お困りごとにADHD以外の原因がないかどうかの検討です。ADHDでみられる不注意は、発達障害としてのADHD以外にも、寝不足、ナルコレプシーや特発性過眠症のような特殊な睡眠障害、朝食抜きや低体重による低血糖や脱水、睡眠時無呼吸症候群などによる低酸素、鉄欠乏やそれによる貧血などでみられることが多く、大人になってからADHDや類似の症状で初診された人の原因はむしろこれらによることが多いです。重要なことはこれらの原因によるADHD症状に対してADHD薬物療法をしても、無効か十分な効果が得られないのみならず、副作用で困ったことになることも少なくないことです。ナルコレプシーや特発性過眠症といった睡眠障害は無治療であると不注意が目立つことがあります。これをADHDと誤診してADHDに用いられる精神刺激薬を処方しても、これらの過剰な眠気は改善します。ただ、これらに本来用いるべき薬剤であるモダフィニルはADHDに用いられる精神刺激薬と作用が共通していて、しかし、かなり作用がマイルドな薬なのです。このためこれらの人にADHDの薬を誤って投与してしまうと、過剰な眠気という症状は改善するものの、副作用の頭痛や食欲不振や不眠が強く現れることが多いのです。薬が必要なADHDでも、ADHDではない不注意でも、共通して必要なことは、不注意で起こってしまっている具体的な困りごとに対する対処法を身に着けることです。例えば、家の鍵を失くしてしまう場合、子どもでも大人でも、鍵をカバンの決まった場所にチェーンで取り付けて、できるだけそこから外さないで使うとか、定期券を紛失する場合は、これまでに失くしたことのないスマートフォンのホルダーに入れておいて、買い替えるとき以外はそこから出さないといった工夫を身に着けていくことが大切です。1回や2回では身につくことはないので、ご家族が繰り返し教えて、上手くいったら大いにほめたりお小遣いをあげたりして望ましい行動を強化することです。こういった具体的な取り組みを続けつつ、CBTの視点を持った面接で、物事をポジティブにとらえる練習をしていくことが良いと思います。ADHDは小学校低学年の子どもでは5%以上の子どもがそれと診断され、大人では年齢とともに症状が軽減するめ2.5%くらいの人が診断されるとてもありふれた発達特性です。5%と言えば、クラスに12人は居るわけですから、「障害」と呼ぶのもはばかられるほど多いことになります。ですからADHDを過剰に悪い特性と考えずに、上述のような具体的な対処をしながら、対処スキルを高め、解決可能であるという自信を持っていただくことがよいのです。また、不注意によってもたらされた対人関係や勉強や仕事などの問題を乗り切るスキルも改善し、これらによって生ずる気持ちの落ち込みなどを軽減する手立てを身に着けていくことが役立ちます。


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