(1) まずは、過度のストレスがかかってないか、過労に陥ってないかチェックして、もしそのような状態があれば改善してください。
(2) 極力指摘しないでください。チックは症状の注意が向くと、一時的に止めることができたとしても、続いて反って増えてしまいます。
(3) 脳内のドパミンの働きが過剰になると症状が悪化する傾向があるという説があります。ADHDの薬の一部や抗うつ薬の一部がチックを悪化させることがあります。因みに運動性チックがある方や、ご本人や家族がトゥレット症の方(既往を含む)については、それらの悪化の恐れがあるため、ADHDの薬であるメチルフェニデート徐放薬(コンサータ)やリスデキサンフェタミン(ビバンセ)は処方できません。
以上のことをチェックして、それでも、症状がそのままにできないほど強い場合は、専門の精神科や心療内科の受診をご検討ください。来院された場合には、行動療法と薬物療法が検討されます。
(1) 行動療法
行動療法を用いたチックやトゥレット症に対するアプローチであるハビットリバーサル法は有効性が確立されています。チックが起きそうになったら、目をしばしばさせる動作を、たとえば2秒おきに瞬きするといった行動に置き換える練習をします。つまり、チック(ハビット・・・習慣の英語)をより害が少ない行動に替える(リバーサル・・・逆転の英語)ようにしていきます。薬物療法と違って、子どもが自分で症状をコントロールしている感覚を持てるので、自信を持つことができるようです。
(2) 薬物療法
ドパミン拮抗薬、αアドレナリン作動薬、柴胡含有漢方薬などを用いた薬物療法はそれぞれある程度の有効性が確立されています。前者2つはドパミンの働きを弱めることで奏功すると考えられています。ドパミン拮抗薬のなかでは、リスペリドン(リスパダール)やアリピプラゾール(エビリファイ)が用いられることが多いです。しかし、これらは眠気を催すことがあります。また、アカシジアと言って、体が落ち着かない感じがでることがあります。αアドレナリン作動薬としてはクロニジン(カタプレス)が用いられます。この薬の副作用としては血圧降下が挙げられます(というかもともとは血圧を下げる薬です)。柴胡含有の漢方薬もある程度の有用性があるようです。ただし以上どの薬も厳密には保険適応がありませんので、保健医療では処方しにくい問題があります。
(3) 鉄欠乏について
以上の薬物療法とは別に、鉄欠乏について述べてみます。日本女性には鉄欠乏が多いと言われており、女性人口の1/3が鉄欠乏、そのなかのかなりの部分が鉄欠乏性貧血を来しているという指摘があります。貧血が見られる方を検査してみると多くに鉄欠乏があります。また、男子でも、長時間のサッカーの練習や陸上長距離の選手のなかでは鉄欠乏はよく見られるようです。踵を地面に繰り返し打ち付けることで、赤血球がたくさん変形して、脾臓でリサイクルされます。このときヘモグロビン中の鉄のリサイクル率は100%ではないので、赤血球寿命が短縮すると鉄欠乏が起きると言われています。また、男女を問わず、背が高めの人は、鉄が足りなくなりやすいようです。精神科受診をする、不安や強迫の症状があったり、朝が苦手であったりする方の中では、半数くらいのかたに鉄欠乏があるようです。とくにチックや抜毛癖がある方の多くに鉄欠乏がよくみられます。そして、鉄欠乏が改善すると、精神症状も緩和することがあります。鉄欠乏で貧血が起こるのは、かなり重度になってからであって、軽度の鉄欠乏では貧血以前に集中困難や体力の減退や体の感覚の過敏性といった症状とともに、気持ちが不安定になったり不安になりやすいといったことも起きるようです。このようなわけで、当院で一番たくさん出ている薬は鉄剤です。
〒150-0043
渋谷区道玄坂1-10-19糸井ビル4階
TEL 03-5489-5100
FAX 03-6455-0864