水 の 生 ま れ る 里


岡山からは恒例の100系こだまに乗車

今年に入ってから、100系こだまの「2&2シート」喫煙自由席で、「走る居酒屋」をしたいがために九州方面を旅の目的地に選ぶことが多くなってきた。まず、2月の雲仙の旅では、福山でレールスターからわざわざ乗り換えた。100系こだまが平成23年度末で引退すると発表された後の、7月の対馬の帰りには博多〜岡山を乗り通した。そして先月には100系こだまに乗りたいがために、わざわざ台風の日に小倉競馬場まで競馬見物に行ってしまった。シンデレラエクスプレスやクリスマスエクスプレスなど、バブル絶頂期のJR東海のCMで優雅な姿を披露した100系新幹線は、われわれ世代の人生とともに走り続けた。晩年は山陽新幹線の片隅に追いやられ、4両あるいは6両といった短編成にされながらも「2&2シート」「喫煙席」と、飲んべえにはたまらないアコモデーションを提供している100系新幹線。その引退の日まで機会を見つけては乗っていきたいと思う。

岡山〜博多間3時間半を「2&2シート」でゆっくりと飲んだ後は、最新鋭のN700系7000番台「さくら」で熊本へ移動。博多〜熊本間わずか38分では喫煙席に行くヒマもなかった。この日は「熊本全日空ホテル・ニュースカイ」に駅から直行して終了。阿蘇方面は明日のお楽しみである。


立野駅停車中のMT-3010形


棒線ホームの白水高原駅


日本一の長さを誇る駅名


ひとつの目的を達成し記念撮影

明けて10月9日(日)は雲ひとつない秋空が広がる快晴。当初の予定ではホテルでうだうだした後に、10時ころ熊本駅から豊肥線に乗ろうと思っていたが、あまりの天気の良さに計画を前倒し。熊本駅発8時44分の宮地行きディーゼルカーに乗車した。

セミクロスシートの2両編成はボックスに2〜3人ずつ埋まり、すぐ降りる人はドア付近に立つという、ほど良い混み具合。前向き通路側に空席を見つけ、隣席の親子に声を掛けて座らせてもらった。その後の立野までの50分は、立客の顔ぶれは変わるものの、ボックスシートの顔ぶれは、ほぼそのままだった。

立野で大半の乗客が席を立ち、そのほとんんどが南阿蘇鉄道のレトロ調軽快気動車に乗り換えた。駅や列車を撮影した後に単行気動車に乗車すると、ほとんどの座席が行楽客で埋まっていた。そしてほぼ全員が終点の高森まで乗り通した。

通路側の逆向きに空席を見つけ、そこに座ったが、終点までわずか30分。第一白川橋梁(日本で2番目の高さを誇る鉄道橋)や南阿蘇水の生まれる里白水高原駅(日本一長い駅名)を通過するたびに、席を立って写真撮影をしていたので、ボックス席では最悪とされる席でも問題なかった。

白水高原の次は中松というごく普通の駅だが、ここでトロッコ列車ゆうすげ号と交換し、車内は再び盛り上がった。近年トロッコ列車は客車改造のものが多くなり、乗り心地はいいものの野趣に欠ける面があったが、このトロッコ列車は貨物列車を改造した正統派。貨物入換え用の小さなディーゼル機関車が編成の前後に付き、プッシュプル運転をしているのも珍しい。これも席を立ってシャッターを押した被写体である。

終点の高森駅に着いて、改めて車内を見回すと、ハロウィンの飾りが目に付いた。経営環境は厳しいけれど、なんとか乗客をもてなしていこうという姿勢が嬉しい。第一白川橋梁での徐行運転や、日本一狙いの駅名もその表れだと思う。

さて高森駅に着いたものの、その後の予定はノープラン。とりあえず帰りバスの時刻を再確認するために、高森町観光交流センターを併設する高森中央バス停まで歩いた。交流センターの観光マップでは、高森湧水トンネル公園の案内が目に付いたので、途中の別所池に寄ってからそこに行くことにした。

高森町は阿蘇の観光ルートから外れており、三連休中でもひっそりとしているところが、ひとり旅の身にとっては逆に好ましい。10分ほど商店街とも住宅街ともとれる路地を歩いて、県道28号線の脇にある別所池に到着した。

県道28号線といえば熊本城の脇や熊本随一の繁華街通町を通る往来の激しい主要地方道であるが、ここ別所池では2〜3分に1台軽トラが通るような田舎道である。周辺は棚田が広がり、稲刈りが終わった田んぼには稲束が干されていた。私が子供の頃には、稲束をはさ架けしている風景が近所の至る所にあり、それが私の秋の原風景であるが、ここには日本の秋がそのまま残っていた。別所池自体は何の変哲もない池だったが、ここまで来て良かったと思った。

池から2〜3分歩くと、すぐに高森湧水トンネル公園に到着した。トンネルの前に親水公園が広がる不思議な雰囲気の公園だが、そのトンネルに入るには入場料300円を払わなければならない。たかだかトンネル見物するのに入場料を支払うのは心外だが、ここまで来たのだからけち臭いことは抜きにしてトンネルに入った。

入口からすぐのところに、このトンネルの説明と模型があった。それによると現在南阿蘇鉄道となった国鉄高森線と宮崎県延岡と高千穂を走っていた国鉄高千穂線を結んで、九州横断鉄道とするべくトンネルを掘り進めて行った。ところが大量の出水のため工事は中止。今では白川水源のひとつとして公園整備をしたとのことである。ふむふむと思いながらトンネルの奥へ歩を進めていくと、線路を敷設すべき部分に水路があり、その上には時期外れの七夕飾りがあった。地元企業や学校、商工会などの手作りらしく、そこそこ見応えがあったが、まだ文化祭レベル。入場料の元をとったとは言えない。そのままさらに奥へと歩を進めると、このトンネルの目玉施設「ウォーターパール」があった。水玉が止まったり、ゆっくりと上下したりと不思議な現象を作り出している。特殊なストロボを利用した目の錯覚との案内に妙に納得した。その奥は行き止まりで、岩壁から滝のように湧水が落ちていた。一番奥まで行かなければ、この湧水トンネル公園の良さは分からないので、ここを訪れる方は元気に歩けるうちにどうぞ。

湧水トンネル公園から15分ほど歩いて高森駅に戻り、駅舎の中にあるこじゃれたカフェで昼食。再び高森中央バス停に戻って、12時30分発の産交バスの熊本行き快速たかもり号に乗車した。リクライニングシートの観光バスタイプの車両に、始発から乗車したのは私1人だけ。行きの南阿蘇鉄道の混雑ぶりから考えると意外だった。熊本〜高森間で考えると、往路は乗り換え1回の所要1時間31分で1,190円。一方復路は乗り換えなし1時間46分で1,000円。繁華街の通町筋あたりで下車するなら所要時間も逆転するので、バスの方が圧倒的に有利だと思うのだが…。

バスは沿線でも有数の観光スポット白川水源を通過し、駐車場にはクルマやバイクが満車状態。しかしバスへの乗車はなく淋しい限り。中松から南阿蘇鉄道と離れ県道28号線へ。元々役場があった久木野から徐々に乗車する人が出てきた。蕎麦で有名な土地柄もあってか、満開の蕎麦の花が沿線を彩り、その背景には雄大な阿蘇五岳が車窓を過ぎ去る。南阿蘇は有名な観光地ではないが、いいところだなと実感する。

阿蘇外輪山を長いトンネルで越え、バスは熊本空港に寄る。ここからは都市間バスからリムジンバスに性格を変えて熊本市内を目指す。空港でほぼ満席となって、水前寺公園あたりから下車する乗客が目立ち始める。イベント開催中の熊本城を横に見ながら熊本交通センターに到着。ここで福岡空港行きのバスに乗り換えるために下車した。

熊本交通センター内のコンビニで焼酎と氷を買い求め、福岡空港行き高速バスひのくに号に乗車。車内では高速バス版「走る居酒屋」状態になった。空いているから他の乗客の目を気にすることもない。トイレ付だから底なしに飲んでも大丈夫。そんなこんなで、日が傾きかけた福岡空港に着くころにはへべれけになってしまった。「ちゃんと飛行機に乗れるかな…?」


乗車チャンスもあと5ヶ月。100系自由席にて


九州新幹線乗り入れでリニューアルした熊本駅


立野駅で南阿蘇鉄道に乗り継ぐ行楽客


前後に機関車がつくトロッコ列車ゆうすげ号


ハロウィンの飾り付けがされたレトロ調の車内


レトロ調列車MT-3010形。終着駅の高森にて


日本晴れの空に溶け込む高森駅の青い屋根


県道28号線脇にある別所池と里山風景


棚田に稲束。日本の秋の原風景


白川水源のひとつ高森湧水トンネル公園


単線トンネルの線路部分に水が流れる


時期外れの七夕飾りが並ぶトンネル内部


ストロボ効果を利用したウォーターパール


トンネルの最奥部は滝のように湧水が落ちる


湧水トンネル公園に連なる水辺の公園


高森〜熊本を結ぶ産交バス快速たかもり号


阿蘇五岳の麓に広がる蕎麦畑を車窓の友に


熊本交通センターで乗り継ぎ福岡空港へ

<おしまい>

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