夏のタイトル防衛戦
ANAクラウンプラザ神戸に宿泊

昨年12月に酒折でJR線を完乗したが、今年3月16日に早くもそのタイトルは返上となってしまった。というのも、JR西日本のおおさか東線新大阪〜放出間が新規開業し、その区間が未乗となったからである。いわば今は暫定王者の状態。早いうちに未乗区間をやっつけて、JR線全線乗車というタイトルを防衛するために、青春18きっぷを片手に西へと旅立った。

まずは7時06分発の豊橋行きに乗車。浜松駅からの朝の下り普通列車は、この列車と8時32分発の列車が要注目である。それは、この2本の列車のみ、特急型の373系を使用しているからである。もちろん座席は、フルリクライニングシート。日本にはさまざまな普通列車があるが、青春18きっぷだけで乗れる列車としては、最も豪華な列車のひとつである。さて、この列車に乗ってからスケジュールを勘違いしたことに気付いた。8時32分の列車に乗る予定が、1時間半前の列車に乗ってしまったのである。今さらリスケをするのも面倒なので、この後は気分次第で来た列車に乗ることにする。豊橋駅からは特別快速で大垣へ。いつもの313系の転クロシート。ロングシートが続く東への旅と違い、西への18きっぷの旅は気楽である。

大垣から米原への列車も313系で、代わり映えがしない。米原に到着し、ホームの反対側に停まっていた列車に乗り継いだ。新快速姫路行き。堂々の12両編成である。車内はシートの窓側がほとんど埋まっている状態で、さすがは人気の新快速である。このまま新大阪まで乗って行ってもいいが、なにせ1時間半も早く予定をこなしているので急ぐことはない。始発列車の多い野洲で新快速を降りて、同じ223系の快速(高槻まで各駅停車)に乗り継いだ。野洲を発車した直後はガラガラの状態で、これ幸いとアルコールを飲み始めた。とはいえ天下のアーバンネットワーク。京都に近づくと立ち客が出るほど混みあった。水筒に入れた水割りだから平気であるが、缶ビールとかだったらひんしゅくを買うだろうな…。

京都から先、高槻までは各駅停車なので、いつもは新快速しか乗らない私にとっては新鮮だった。特に高槻のひと駅手前の島本は、駅の北側に水田が広がり、京都と大阪の間にあるとは思えない風景。大阪や京都の会社に勤めるなら、こういうところにマイホームを買いたいなと、全く自分に関係のない妄想をするのも旅の空ならではである。


青春18きっぷだけで乗れる最高峰の列車かも


混みあう区間を前に野洲で新快速を下車

新大阪で下車し、今回の旅の目的であるおおさか東線の新規開業区間に乗るため、ホームを移動する。おおさか東線ホームに着くと、天王寺あたりでよく見る黄緑色の201系電車が停車していた。未乗区間に乗るので駅名標を写していると、妙なことに気が付いた。これから放出、久宝寺方面に行くので、そちら側の次の駅は南吹田であるのは当然である。問題は逆側の次の駅。大阪ではなく西九条となっている。おおさか東線は今後、梅田貨物線を経由して北梅田駅(仮称)に乗り入れる予定で、現状は(はるかやくろしおが走る)梅田貨物線の次の駅である西九条を表示しているようである。

新大阪を出ると、しばらく東海道線と並走し、東淀川駅の左側を通過。右にカーブをしながら跨線橋を上り、東海道線を越えると南吹田。高架線のまま、阪急との乗り換え駅のJR淡路、城北公園通、JR野江と進む。JR野江は京阪との乗り換え駅で、大阪の東を南北に貫く路線らしく、私鉄との連絡駅が多い。そして右側から学研都市線が合流し鴫野。JR東西線方面へは、ここで乗り換えるのが便利だが、おおさか東線は次の放出まで別の線路を走っている。そのまま放出まで乗り通して、無事にタイトル防衛に成功した。


新大阪で発車を待つおおさか東線の201系


放出→三ノ宮へ乗り換え要らずの321系


西九条・南吹田…隣駅に注目

予定では、このままおおさか東線を久宝寺まで乗り通すつもりだったが、2008年3月の鳥取へのドライブの時に、放出から久宝寺までは乗っている。その一方で、放出から京橋までの学研都市線は、1992年3月以来長い間乗っていない。JR東西線が開業した1997年以降、学研都市線とJR東西線をスルー乗車したこともないので、尼崎方面に向かう方が正解なのではと思った。幸い今度の尼崎方面行きは、JR神戸線に乗り入れて三ノ宮を通る西明石行き。乗り換えなしに三ノ宮まで行けるなららくちんなので、久宝寺に行くのをやめて学研都市線に乗ることにした。

ロングシートとはいえ、321系電車のシートは長時間座っていても疲れない。おまけに京橋から尼崎までは、大阪のど真ん中を通るのにずいぶんと空いている。というわけで、新大阪まで飲んでいた水割りを解禁し、三ノ宮までの1時間にわたって禁断のロングシート呑みを決行。酔っぱらってしまえば、天下の大動脈であるJR神戸線もよよいのよいってなもんで、あっという間に三ノ宮に到着した。

三ノ宮から新神戸に向かえば今日の行程は終了だが、その前に駅周辺でやっておかねばならないことがある。まずは金券ショップを探し、在来線の神戸〜大阪と大阪〜京都の回数券のバラ券を購入。お代は、それぞれ370円と520円である。続いてみどりの窓口で、明日の新神戸→新大阪の新幹線自由席特急券と、新大阪→京都の在来線自由席特急券(乗継割引)を購入。こちらのお代は、それぞれ860円と320円である。実は明日、京都から乗る列車の関係で、朝のラッシュ時間帯に三ノ宮から京都まで移動せねばならない。日本第2の都市圏で、下手をすれば京都までずっと立ち放しにならないとも限らず、なんとかそれを回避すべく考え出した奇策である。

ご存知のとおり、青春18きっぷでは新幹線も在来線特急も乗れないので、もしそれを利用するなら乗車券から別払いになる。新神戸から京都まで、朝のラッシュ回避のため新幹線に乗ろうとすると、乗車券1,080円、自由席特急券1,730円の合計2,810円の出費となる。一方で、新大阪→京都を在来線特急に乗ることになるが、今回私が購入したきっぷの合計は2,070円。ケチ臭くて恐縮だが、JRのきっぷのルールを駆使することで、お得にきっぷが買える好例のひとつとして披露させていただいた。

さて、用事が済んだので今夜の宿であるANAクラウンプラザ神戸に向かおう。新神戸まで地下鉄でひと駅だが、バス停が目の前にあったので、市バスで行くことにした。地下鉄で行ってもバスで行っても、運賃は210円である。ホテルには14時15分過ぎに到着。チェックインは15時からだが、少し早めに入れてもらえラッキー。15時前にはシャワーを浴びて、26階のシングルルームで飲み直しをはじめた。

次第に太陽が西に傾き、そのうち日が暮れて、夜の闇が神戸の街を包みだしても、まだしつこく飲んでいた。このホテルの26階からの神戸の夜景は「見下ろす夜景」だが、私の記憶に残る神戸の夜景は「六甲の山々に上がっていく夜景」である。それは社会人になって3〜4年のころ、会社の慰安旅行で神戸のポートピアホテルに泊まった時に見た夜景。夕食後、ひと回りほど年上の先輩の部屋に、若手の男女の社員が酒を持ち寄り、夜景を見ながらいろいろなことを語り合った。その時の話題の中で、ビートルズのアルバムの中で何が一番好きかという話題になり、私が「アビー・ロード」と答えると、そのひと回り上の先輩も「俺も…」と強く同意され、「いい音楽に世代は関係ないんだ」と感じたことを覚えている。

そんなことを思い出しているうちに、曲が聴きたくなった。それは30 Years Ago Now And Thenというコーナーで今月(2019年7月)に取り上げた曲。すなわちナタリー・コールの「ミス・ユー・ライク・クレイジー」である。ポートピアホテルに泊まった頃は、アメリカン・ブルーに憧れて、ニューヨークの夜景のCMを食い入るように見ていた。そのCMに少しだけ似ている神戸の夜景を見ながら、遠き日の思い出を肴に盃を重ね、夜が更けていくのだった…。

翌朝は、8時前にホテルをチェックアウトし、新神戸駅からこだま号で新大阪、そして特急はるか号で京都に移動した。はるかの方はハローキティのラッピングで、いいおっさんがカメラを向ける構図は、ちょっと気恥ずかしかった。で、今日のメインイベントである抹茶色の117系に乗車した。それこそ4か月前の紀勢線の旅で、さんざん乗っているので有難味が薄れるが、絶滅危惧種の117系に乗れる機会があれば、乗っておきたいのがファン心理である。紀勢線より湖西線の方が線形が良いので、モーター全開で加速する場面も多く「おぉっ」と思う。特に京都から大津京の間は、トップスピードでトンネルに入るので、往年のMT54のうなりが心に響いた。

高架橋の上から琵琶湖が見え隠れしているうちに終点の近江舞子に到着。次の電車まで20分ほどの連絡だったので、その時間を利用して湖岸の水泳場に行ってみた。いわゆるビーチであり、とても湖に見えない風景とともにカメラにおさまった。

駅に戻り敦賀行きの新快速に乗ると、ここからは帰り道。まずは近江塩津まで223系の転クロにおさまった。近江塩津では米原行きに6分の連絡。乗り換え自体は向かいのホームなので数秒で完了するが、秘境駅の匂いがするこの駅の駅舎が撮りたい。既にホームに米原行きは停車しているので、かなり焦りながら駅舎の外に出た。北陸線と湖西線というメイン路線の、それも特急電車がひっきりなしに行き交う接続駅にしては、1日200名ほどしか利用客がいない駅。一体どんなところかと思ったが、意外に立派な駅舎が建っていた。おまけに駅前には若者がたむろしていて、とても秘境駅というムードではない。イメージが崩れてうなだれながら列車に戻った際、階段につまづいて盛大にすっ転んだのが、唯一にして最大のこの駅の思い出になった。

米原に到着すると、もう浜松に戻ってきたような気がする。平日だと朝7時台に浜松行きの新快速があるから、あながちオーバーな話ではない。関ケ原越えの大垣行き電車に乗っていると、久々に地肌丸見えの伊吹山を眺めることができた。この夏はかなり久しぶりに青春18きっぷをまるまる1冊買ったので、こんな風に普段見られなかった車窓と出会えるはず。次回の夏の旅を楽しみにしながら、ゆっくりと浜松へと戻った。


15時前には部屋に入りシャワーの後ひとり酒


26階からの神戸の夜景を見て昔を思い出す


500系新幹線に続き「はるか」もハローキティ


絶滅危惧種の117系の前で記念撮影


終点の駅としては質素な近江舞子駅


まるで海のような近江舞子の水泳場にて


ここからは帰り道〜まずは新快速で北へ


秘境駅?若者がたむろする近江塩津駅

<終>

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