Spring Tour '08

西のサイドラインふたたび


開通ほやほやの新名神・土山SAにて


1987年春、青春18きっぷを握り締めて鳥取〜岡山〜高知と鈍行列車を乗り継いで旅をした。それが毎年恒例となるSpring Tourの原点だった。今でこそ頻繁に海外旅行に出掛け、西はパリ、東はニューヨークまで足を伸ばしているが、当時貧乏学生だった私は、修学旅行で訪ねた神戸以西には行ったことがなく、山陰・山陽・四国に行ったのは初めてだった。折りしも「おニャン子クラブ」の全盛期で、その旅に持っていった彼女達のアルバム「サイド・ライン」にひっかけて「西のサイドライン・ツアー」と呼んでいる。あれから21年を経て、今度はクルマで山陰から岡山へと駆け抜けることを思い立った。

クルマでの一人旅は、ガソリン代や高速代がまるまるかかるため高くついてしまうが、ETCの各種割引で多少安くあげることができる。よく知られているところでは通勤割引がある。朝6時から9時と夕方17時から20時の間にインターを通過し、100`までの区間で高速道路を利用すると料金が半額になるという制度である。1泊2日の旅行では、4回割引適用のチャンスがあり、今回のドライブでは全てのチャンスを生かした。


信楽ICでいったん降りて割引適用

また、ETCを載せていなくても、今年の6月30日までは新名神早期開通割引という制度がある。これは、鈴鹿、亀山PAスマート、亀山、甲賀土山、信楽、草津田上の各ICを利用して新名神高速道路を走行すると料金が割り引かれるというものである。

新名神がこの3月に開通したことで走行距離が短くなった上に、お得な割引制度があるということで、今回のルートは伊勢湾岸道から東名阪を経由し新名神へと進めることにした。

前述の通勤割引適用のため、浜松からぎりぎり100`以内にある伊勢湾岸道・東海ICで高速をいったん降りる。このインターは順方向にひとつ交差点を挟むだけで、出口料金所と入口料金所が一直線になっているため、ほとんど時間的なロスがない。快調に木曽三川を通過し三重県へ。四日市で東名阪に合流するが、休日の朝はここが渋滞の名所となっている。合流地点から四日市ICを過ぎるまで8`に渡ってノロノロ運転に付き合わされた。


京都丹波道路・南丹SAでひと休み


鳥取までの長い道のり


春まだ浅い丹波路を鼻歌まじりのドライブ


山陰線を行く普通電車に行く手を遮られる

新名神は快適な道路だった。開通直後ということで、唯一のSAである土山では芋を洗うような混雑だったが、片側3車線の区間が多く道路自体はガラガラだった。途中の信楽ICでいったん降りて早期開通割引の条件を満たし、再び名神方面へ向かう。草津で名神と合流し、大阪圏を前に多少クルマが多くなったが、9時過ぎに京都南ICに到着した。

京都南ICから国道1号に合流するのに手間取ったが、基本的に京都市内は空いており、沓掛から京都丹波道路に入る。30`ちょっと走って丹波ICへ。ここからは夕方まで一般道のドライブとなる。

国道9号線は山陰本線と寄り添うように走っている。21年前の「西のサイドラインツアー」では、山陰本線のディーゼルカーに乗ってアルバム「サイド・ライン」を聴いた。ちょうど沿線の桜が満開の頃で、「春一番吹く頃に」の高井麻巳子の歌声が、散り行く桜の花びらにマッチしてウルウルしたのを覚えている。今回も日本のあちこちから桜便りが届き、浜松では満開手前だったが、丹波路はまだ春浅く、桜のつぼみは固かった。それでも久々に「サイド・ライン」を聴きながら、鼻歌まじりにドライブすると当時の情景が蘇ってくる。

福知山市内では国道9号線が生活道路の一部となっており、鳥取までの一般道路区間では最も酷い渋滞にはまったが、抜ければ再び快適な田舎道。養父で山陰本線は9号線と別ルートに別れるため、私も9号線と別れて豊岡方面にハンドルをきった。

豊岡へ向かう国道312号は、バイパスのところどころが未開通で、へんなところで右左折を強いられたり、山陰本線の踏み切りに引っかかったりで、カーナビ未設置車にとっては辛かった。逆に豊岡からさらに田舎に向かう国道178号は、地域高規格道路の香住道路が共用されていて走りやすかった。


余部鉄橋の手前には大きな看板が立っていた


余部鉄橋を通過する普通列車を見上げる


余部鉄橋真下に広がる日本海。山陰っぽい


余部鉄橋を背景に筆者。工事車輌が見える

で、しばらく進むと忽然と余部鉄橋が現れる。今回の最大の目的地でもあり、通過する列車をカメラに収めたり、記念撮影をしたりで慌しく動いた。鉄橋の付け替えが決まってから観光地と化しており、鉄道に興味がなさそうな女の子や家族連れが至る所にいたのは興味深かった。

余部鉄橋を14時ころ出発し、つづれ折りの峠道を何回か登り降りして、再び国道9号線へ。鳥取県に入るとすぐに鳥取砂丘への案内表示が出てきた。鳥取砂丘は海まで行くと大変なので、道端にクルマを停めて眺める程度にとどめ、先を急いだ。もうこの辺では日も傾きかけていたから正直焦りもあった。


おおさか東線の終点久宝寺駅


日も傾きかけた頃ようやく鳥取砂丘にたどり着く


岡山道・高梁SAにて。眠気のピークだった


片町線放出駅からおおさか東線の初乗りを開始

白兎海岸で競馬中継を見ながら小休止した後は、岡山に向けて押せ押せのドライブ。倉吉から中国山地越えを開始し、湯原ICから岡山ICまでは高速道路を走る。ただ多くの区間は片側1車線であるため、前のクルマに追いついてしまうと抜けなくなってしまう。こうなると眠気が襲ってくるもので、窓を開けたりガムを噛んだりでなんとか眠気を追い払った。岡山までの80`ちょっとの間に3つのジャンクションを通過したのもいい眠気覚ましになった。岡山市内で国道53号の渋滞に1時間はまって宿泊先のホテルオークラ岡山に到着したのは19時だった。

翌日は、浜松まで高速を一直線に帰るだけだったが、この3月に開通したJRおおさか東線に試乗した。わずか9.2`の区間だが、JR線を一区間残して全て乗車している私にとっては、新規開業となれば乗らないわけにはいかない。大阪東部の工業地帯を通る地味な路線だったが、放出〜久宝寺を往復してタイトルを守ることに成功した。
<おわり>

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