ロンドン地下鉄乗車体験−1

 ロンドンに世界最初の地下鉄が、開通したのは、1863年のことで、長い歴史を持っている。ロンドン地下鉄車両現在、12路線、約250駅あり、ロンドン中を網の目のように走っている。
 ロンドン地下鉄は、Underground(アンダーグラウンド)と呼ばれているが、円筒形のトンネル内を走っていることから、別名、Tube(チューブ)とも言われている。このせいで、車両が大きくなく、車内の容積を大きくするために、ドアが、日本のような平らな板ではなく、上部が内側に湾曲しているのである。ロンドン地下鉄 駅ホーム車両の断面をひとことで言うと、かまぼこ型である。天井の平面の部分が少なく、あとは、曲線状になっている。だから、非常に狭く感じられる。
 ドアの話になったので、一つ言っておくが、日本のように自動でないものが多い。旧型車両は、自動ドアであるが、新型車両は、省エネのためか、ドアの横にボタンが付いていて、そのボタンを押すことによって、ドアが開くことになっている。また、閉まる時は、どうかというと、これは自動で閉まる。日本のように、乗車人数が多くないので、この方式の方が経済的だと思われた。この点では、外国の方が先進的であるだろう。
 興味深い、車両のことについて、さらに詳しく述べるが、1編成は、5,6両くらいで、日本の地下鉄のように長くなく、従って、駅ホームの長さも短い。外観は、旧型車両では、全面銀色で、新型車両では、赤・青・白で構成されている。旧型車両は、ロングシートとボックスが混在(セミクロスシート)していて、通路は、かなり狭い。シートも、きれいではなさそうだった。しかも、冷房装置がない。窓は開かず、唯一、小さい換気窓が付いているだけで、トンネル内の空気は、地上の空気と比べると、5度くらい温度が高いので、混雑時は、非常に蒸し暑いのである。
 次に、日本では、まず見かけないなあと思ったものが旧型車両には一つある。それは、日本で言う「吊り革」である。だが、日本のように、白い輪が、ベルトによって吊り下げてあるのではなく、ねずみ色の電球型をしたプラスチック製の物体が、太いつるまきばねのようなものによって、吊り下げられているのである。握った感じは、手にちょうどフィットするので、日本の吊り革を握るより、安定感がある。
 もう一つ、車両編成について、日本と異なる点がある。それは、各車両間で行き来できないのである。つまり、連結部分には、ホロがなく、連結器だけしか付いていない。車両前後には、ドアらしきものがあるが、そこには、立ち入り禁止のステッカーが貼られている。これは、ロンドン地下鉄の新型車両や、パリの地下鉄でも同様であるが、地下鉄に限ってのことである。国鉄の地上路線では、日本のように各車両間が行き来できるようになっている。
 これらの旧型車両の構造に比べて、新型車両は、すべてロングシートであり、シートも旧型車両よりも大変きれいで、窓も広く、室内は、明るい印象を受ける。そして、冷房装置も付いているので、満足できる。ロンドン地下鉄車両(ドア)さっき述べたような“吊り革”は、新型車両にはなく、赤色の保護棒が張り巡らされている。以上のことから判断すると、新型車両は、日本の車両のように近代的で好感が持てる、と私は思う。
 次に、車内の様子について述べるが、ひとことで言ってしまえば、日本ほど、きれいではない。新聞紙や空き缶が落ちているのは、日本もそうであるが、全体的に、不潔である。しかし、新型車両ともなると、まあまあ、という程度である。きれい好きな日本人の感覚で乗車するからだろうか。
 そして、乗車している人々の様子についてであるが、一番最初、ヒースロー空港から乗車した時、感じたことは、様々な人種がいるということだ。まさに“人種のるつぼ”といった感じで、日本では味わえない雰囲気である。だが、アメリカなら分かるが、イギリスまで、多くの人種が入り乱れているとは、驚きであった。一緒に行った、添乗員とも言うべき人が言うには、数年前までは、こんなに多様化していなかったそうである。ロンドンも、国際都市化して来たのだなあと、思い知らされた。その様々な人々が、狭い車両の中にいるので、異様な匂いがする。オーデコロンの匂いがぷんぷん漂っているのだが、慣れればそうでもない。これも、日本とは違う一面である。


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