葡 京 娯 楽 場 , 沙 田 馬 場


羽田空港至近でコスパが決め手

今年の国際GTデーは12月11日である。日本からの航空スケジュールの都合で、必ず前日に現地に飛ぶ必要があり、帰りもキャセイの深夜便を除けばレース当日の便に間に合わず、2泊3日以上の日程が必要となる。つまり月曜日は有休を使わねばならない。今回のチケットはANAのマイレージを使った特典航空券で、せっかくなので新しくなった羽田から飛ぼうと計画した。すると前泊しないと羽田発香港行きに間に合わなくなり、1日日程が延びてしまった。そんなわけで12月9日金曜日に仕事を終えて新幹線に飛び乗り、川崎の日航ホテルに泊まった次第である。ルームチャージで6,500円。天下の日航ホテルもデフレ価格である。

毎週馬券を買い続けて、はや15年。競馬をテレビ中継で観るだけでなく、たまには実際に競馬場に出掛けて、生の迫力も体験してきた。他のコーナーでも書いているように、JRAの10競馬場はおろか、地方競馬の17か所も実際に訪ね、日本国内の全ての競馬場に足跡を残している。国内だけでなく、韓国のソウル、釜山、香港の沙田、ハッピーバレー、マカオ、シンガポールのクランジ、アメリカのローレルと、海外でも7か所の競馬場を回っている。しかし自分の旅の日程に合わせて競馬場回りをしているので、大レースを現地で観ているのは数えるほどしかなく、海外では2004年4月25日に香港・沙田競馬場で開催されたクイーン・エリザベスU世カップのただ1回だけである。生涯のうちに凱旋門賞やドバイワールドカップを見るのが夢であるが、現実的な目標としては「香港の国際GTデーで日本の馬を応援してみたい」と思っていた。そして、ようやく今回その目標が達成できたわけである。


朝日が眩しい羽田空港国際線のANAラウンジ


フルフラットのファーストクラスシートであぐら


ANAの羽田⇔香港はヘンな時間に食事が出る


香港に入国せずにターボジェットで直接マカオへ


クラシカルなホテルリスボア玄関

翌朝6時半にチェックアウトし、京急で羽田空港へ。チェックインカウンターやイミグレーションがガラガラに空いていて7時過ぎにはANAラウンジに着いた。改装後の羽田空港の国際線ターミナルが初めてなので、当然羽田空港の国際線ANAラウンジも初入場。成田空港のラウンジ同様、うどん・そばのカウンターがあり、サンドウイッチやおにぎりもあって、ホテルの部屋で軽く朝食を食べてきたのが悔やまれた。まぁそれでも軽く食べてしまったけどね。

搭乗時刻になり、出発ゲートに行くとエコノミーが満席らしく、さかんにビジネスクラスに無償アップグレードをしていた。もともとビジネスを予約している自分にとっては「なんだかなぁ」と感じたが、機内に入って杞憂であることが分かった。というのも最前列の自分の席はファーストクラスの席だったからである。2007年2月に成田⇔パリを往復した時に、人生最初で最後のファーストクラス体験(もちろんマイレージを使った特典旅行)と思っていたので、ここでこのシートに巡り合うとは思ってもいなかった。嬉しくなってCAさんに記念撮影をお願いした次第である。

さて、国際線のフライトなので当然のように食事が出てくる。昼食(!?)として提供されたのが10時過ぎ。5時台にホテルでパンを食べ、7時台にラウンジでおむすびとサンドウィッチを食べた自分にとっては「またか!」となってしまったが、アルコールの力を借りて残さず食べてしまった。ともあれ、まともな食事は、この後27時間ありつけなくなるということをこの時は知らなかった…。

香港までの5時間のフライトは、ヨーロッパ線や北米の東海岸線に投入されているボーイング777-300ERのファーストクラスシートなので快適だった。オンデマンドでビデオを見たり、オーディオサービスを聞いたりできるので、途中トイレに立つ時も一時停止できてかなり便利。プログラムも充実していて、特にオーディオサービスの80年代ビルボードチャートを振り返る番組は涙もの。30年前の12月のチャートを特集していて、私のサイトの1コーナー「30 Years Ago Now And Then」で今月取り上げたジャーニーの「ドント・ストップ・ビリービン」が番組のオープニング。最後の3曲は、ポリスの「マジック」、フォリナーの「ガール・ライク・ユー」、オリビア・ニュートンジョンの「フィジカル」で、後ろの2曲は来月取り上げる曲である。その2曲については年が明けてから私のページを見ていただくとして、ポリスの「マジック」についてちょいと述べたい。この曲は本当に久々に聞いたが、アルバム「ゴースト・イン・ザ・マシーン」からのシングル・カットで、ピアノのバッキングが力強く、まさに私好みの曲。30年前のリリースとは思えないカッコ良さで、飛行機を降りた後も耳に残ってしまった。あらためて評価したい一曲だった。

さて、そんなこんなで現地時間の13時前に香港国際空港に到着。普通なら香港への入国手続きのため長蛇の列に並ばないといけないところだが、今宵はマカオ泊まりであるので、そのまま入国せずにターボジェットのチケットを購入。出航は14時30分なので多少時間があったが、空港内は公衆無線LANがタダなので、ネットサーフィンをしながら時間を潰せた。船に乗り込んでしまえばマカオまで1時間。入国手続きの列が長く、多少手間取ったが、フェリーターミナル前からカジノ・リスボア行きの無料シャトルバスに乗車して、16時過ぎにホテル・リスボアにチェックインした。


リスボアの自室窓からはウィンカジノが正面に


左に同じだが、夜は噴水アトラクションが綺麗


葡京娯楽場(カジノリスボア)で一発勝負


逆方向のバスに誤乗し「バラ」ターミナルに着く


内港に面したバラターミナル。対岸は大陸


沙田馬場(シャティン競馬場)でひと勝負


スポンサーはキャセイ航空。漢字で国泰航空


ハッピーバレーにもあった記念撮影スポット


お祭りムード満点の展示物


香港バーズに出走のトレイルブレイザー号


第4レース、@トレイルブレイザーは6着

昔からマカオでカジノといえば「リスボア」なので、ホテル・リスボアに泊まったのもカジノ目的だった。しかし部屋に着くと疲れがどっと出て、カジノに行くのが面倒になってしまい、そのまま部屋でぐうたらしていた。そのうち夕食を食べに行くのも面倒になり、出掛けに浜松のコンビニで買ったビーフジャーキーやらスルメやらを食べて空腹をしのぐ始末。結局そのまま寝てしまい、カジノはチェックアウト後の一発勝負にかけることにした。ホテル・リスボアに宿をとった意味が全くなかったが、クラシックホテル独特の居心地の良さが、私をそうさせたのかもしれない…。

チェックアウト後の一発勝負はブラックジャック。1,000香港ドルをチップに換えて全て張った。結果はディーラーのバーストで、1,000香港ドル儲けた。

カジノの前にいるはずのシャトルバスが見つからず、仕方なく路線バスに乗ることにした。フェリーターミナルに行くはずの系統番号のバスに乗車したら、連れて行かれたのは逆方向のバラ・ターミナル。まぁホテルの部屋から一歩も出ずにマカオを終えるところだったので、観光気分で周辺を散策。海沿いのウッド・デッキで記念撮影をしたりした。後で調べてみると対岸は大陸で、誤乗もそれなりに意味があったのかも…。


日本期待の星、カレンチャンと池添騎手


前走GTでは連に絡んだパドトロワ号

香港競馬収支表 (11.12.11開催) 単位HKD
レース 投資 回収 収支 累計
1R 20 0 -20 -20
2R 20 32.5 +12.5 -7.5
3R 100 0 -100 -107.5
4R 240 0 -240 -347.5
5R 610 0 -610 -957.5
6R 20 61.5 +41.5 -916
7R 420 0 -420 -1,336
8R 350 0 -350 -1,686
合計 1,780 94 -1,686 5.3%

高層マンションと観客の熱狂が香港らしい


復活が待たれる昨年の牝馬三冠馬アパパネ号


会員席からパドックを見下ろす

マカオから沙田競馬場に行くにはかなり骨が折れた。まず9時45分発のターボジェットに揺られて、1時間後に香港フェリーターミナルへ。地下に降りて上環駅より地下鉄港島線で1駅移動し中環駅へ。そこから筌湾線に乗り換え、香港島から九龍半島に入り油麻地駅へ。エスカレーターを昇って観塘線に乗り継ぎ九龍塘駅へ。跨線橋を昇り降りして東鉄線に乗り換えて馬場駅に到着。上環から乗り継ぎを含めて1時間の小旅行だった。旅の荷物を持った移動なので、リュックがずっしりと肩にのしかかり、息が切れた。

さて九龍塘駅で乗り継ぐあたりから、競馬新聞を持ったオジさんたちが目立ち始め、こういうところは日本と変わりないところ。と同時に、香港ではあまり目にしないスーツ姿の白人の人達が目立って増え、国際レースの雰囲気満点である。馬場駅から長い陸橋を渡って、ようやく沙田競馬場の入場ゲートに到着。外国人専用ゲートで150香港ドルを支払い、ツーリストバッジを購入。これで香港ジョッキークラブの会員専用エリアに入れるようになり、国際GTデーの雑踏が多少緩和される。またゲートでは「CXHKIR」(キャセイパシフィック航空香港国際レースの頭文字か)とつばに印刷された野球帽が配られ、いいお土産になった。

国際GTデーらしく、場内はいろいろな催しや展示がされており、いやがうえにも気分が盛り上がる。面倒くさくてカジノをパスした昨夜とは別人である。雑踏をかきわけ会員エリアに進み、関所でバッジを見せてエリアに入る。文字通り肩の荷が下りると同時に空腹を覚えた。カフェテリアで27時間ぶりにまともな食事(といっても「なんとか麺」だったが)をとり、人心地がついた。

上環駅のキオスクで買った競馬冊子を見ながら馬券検討。12時25分発走で時間がないので、とりあえず前走で2着ながら斤量が1ポンドしか増えてない馬を選んで、単勝と複勝を10香港ドルずつ購入。結果は8着でハズレだったが、同じように前走2着の馬が勝ち、予想の方向性はあっていると逆に自信を深めた。香港の競馬の多くはハンデ戦であり、今日もGT以外はすべてハンデ戦。ハンデの増減に目をつぶって、前走で成績のいい馬を狙うのが手っ取り早いのかもしれない…。


本場場に入り返し馬を待つアパパネ号


レースではゴール板を一番に駆け抜けてほしい


第7レース香港マイル。アパパネは画像にない


メインレースの香港カップはスタンド前発走


大声援のスタート直後ゴール板前通過風景


5,000円弱追加してクラブラウンジにアクセス


最後はリーガルリバーサイドホテル

第2レースでは、連続2着だったM番を選び、2着に入って複勝が的中。シメシメ。これならヒドイ目に遭いそうもない。第3レースは重賞に出ているメンバーが揃うオープンクラスのレース。前走で重賞2着に入っているD番から馬連で総流しをかけてみた。結果は6着でハズレ。でも1着にはオープンクラスで前々走1着、前走2着の馬が来ており、馬の選択を間違っただけ(?)。

そして第4レースは早くもGTの1レースめ、2,400bの香港バーズが発走する。日本からは安藤勝己騎手が乗るトレイルブレイザーが出走する。アルゼンチン共和国杯を勝ち、ジャパンカップでは4着と健闘しているが、自分も含めて現地でも低評価。それでも応援の意味を込めて馬連とワイドの総流しをしたが、勝ち馬とコンマ4秒差の6着に敗れた。まぁ見どころはあったので、アウェイでは健闘の部類だと思う。

さぁ、勝負の第5レース。香港スプリントには、目下5連勝中でスプリンターズステークスを勝ったカレンチャンと、同レースで2着に入ったパドトロワが出走する。サッカーで言うなら、遠くアウェイの外国で日本代表を応援する気持ち。なんとか勝って、君が代を歌いたいものである。


アップグレードした部屋は川に面した高層階


香港島の100万ドル夜景には劣るが、なかなか


朝を迎え沙田競馬場のスタンドが確認できた

レースは、注目のカレンチャンが好位につけ第4コーナーを回ったところで5番手。思わず「差せ、差せ」と声が出たが先行した馬を捉えられずにコンマ3秒差の5着に敗れた。ちなみにパドトロワはビリ。上位3頭は香港馬で、短距離路線の香港馬の層の厚さを感じずにはいられなかった。

第6レースは、例によって近走の成績のいい馬の単複を買い、見事勝利。でも各10ドルの投資では焼け石に水。残るGTの2レースに期待といったところである。そのGTレースのラス前は、1,600bの香港マイル。日本からは昨年の牝馬三冠馬アパパネが出走する。今年はヴィクトリアマイルを勝った後、6着、14着、3着とどうにも波に乗り切れない。得意のマイルに戻って復活を期待したいところである。馬券の方は、アパパネにイマイチ信頼がおけないため、アパパネを含めた馬連7頭ボックスで購入した。結果は、好位につけたアパパネが最後の直線でズルズル後退。勝ったのは、日本にも来たことのある9歳馬エイブルワン。近走がパッとせず全くのノーマークだったので、馬券もハズレた。

メインレースは日本馬が出走しない2,000bの香港カップ。ここは冷静に予想できるので、1,300香港ドル以上の負債を解消するチャンスである。10頭立てながら、なかなか絞りこめず、結果3連複7頭ボックスの35点買いで勝負。スタート時には、夕暮れの沙田競馬場が今日一番の盛り上がりとなり、国際GTの面目躍如。最後の直線では観客の誰もが立ち上がり、思い思いに大声を張り上げた。香港馬カリフォルニアメモリーがレースを制して、地元ファンは大熱狂。私は3着馬が抜けて、気も抜けた。馬連のボックスにしていれば33倍になっていたのに、結果は大ハズレ。いそいそと沙田競馬場を後にするしかなかった。

この夜の宿であるリーガル・リバーサイドにチェックインし、フロント氏が勧めるがままに440香港ドルを支払い、部屋をアップグレード。競馬場ではかなりの散財だったので、金銭感覚がマヒしてしまったようである。部屋から夜景を見ていると、川の下流の方角に一際明るいスタジアムのような施設があった。翌朝、確認してみると、そこは沙田競馬場。どうやら旅打ちの終わりに相応しい部屋にしてもらったようである。
<終>

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