色の話といえば、やはりこの話しを抜きに進めることはできないでしょう。 
「色気」について。

夫に先立たれた女性。ひとり残され、不幸そうな境遇にある女性をなんとかしてあげたい、そんな気持ちが男たちの心にはたらく、というのもあるでしょう(実は内心、やっかいな亭主が死んで喜んでいる女性もいるのかもしれませんが)。
 あるいは、この人の夫の席はいまや空席、その席にちょっと腰掛けてみたい、そんな下心も男性の胸に熱く響いてくる理由かもしれません。
 しかし、実はこうした、心理的な魅力とともに、未亡人が美しく見えるのには、色の効果というものが、大きく働いてます。
 未亡人が着ている喪服、この黒い色こそが、その人を数段魅力的に見せているのです。
黒に対してみなさんどのようなイメージをお持ちでしょう。例えば黒い色を見て連想する事柄とは。
「夜」「カラス」「ハイヤー」「髪の毛」「靴」
このような具体的なモノを連想する一方で、いろいろな人生経験を積んだ大人の方々の頭にはもっと抽象的なキーワードも浮かんできます。
 「死」「孤独」、「葛藤」、「沈黙」、「死」、「重厚」、「豪華さ」
 こうしたモノ以外の連想です。
 つまり、喪服を着た黒髪の女性は、黒を全身にまとった瞬間に、孤独感を漂わせ、葛藤に心を震わせ、死を見つめながら沈黙し、重々しく、それでいてどこが豪華な雰囲気をまわりに与えることになるのです。
 もちろん黒色から想像されるイメージは、これ以外にもたくさんあります。
 「不気味」「悪」「男性的」「拒絶」「絶望」
 なども黒から多くの人が連想するキーワードです。
しかし、先ほどの未亡人の置かれた(夫に先立たれた不幸そうな女性)といった状況がそろうと、想像たくましい男性の胸中には、黒の持つ魅力的(自分の思いに都合の良い)な側のイメージが、連想として次々に引き出されることになります。

さらに決定的な効果がもう一つ。
黒の持つ「額縁効果」です。
黒に囲まれたものは、他の色に比べて締まった印象になり、グッと引き立つ効果があります。引き締まってこちらに迫ってくる。
ただせさえ、孤独で重厚で豪華な存在が、キリッと引き締まって迫ってくるわけですから、心がさわがないわけがありません。

この額縁効果、いわば未亡人効果は、未亡人の専売特許ではなく、実はいろんな分野で利用されています。
代表的なのはテレビです。家電というのは、だいたい白物(シロモノ)家電といわれるくらい、白を基調とした色の製品が多いのですが、ことテレビに関してはほとんど黒かそれに近い色が使われています。実は、これも未亡人効果(額縁効果)を狙ってのことです。
画面に映る映像を、黒い枠をつけることで、ぎゅっと締まらせ、こちらに迫ってくるような印象を与えています。この効果を出すためには、黒以外ではダメなのです。(本文より抜粋)

なぜ未亡人は美しい