はじめに
事例 7
3世代同居・地域の行事が盛んな地域
〜『マスカット苑』の高齢者とのふれあい〜

<銭太鼓が上手にできるようになったよ−『マスカット苑』訪問までの背景−>
10月 7日(土)−銭太鼓の会・パート1−
地域の『銭太鼓の会』の方に来ていただき,銭太鼓を披露していただいた演技を見て,
「やってみたい。」と幼児が興味を示したので,早速教えていただくことにした。
(自分から関心をもち,意欲をもって取り組む・主体的2
最初はなかなか思うようにできなかったが,遊びの中で継続して続けていくうちに,だんだん上達していった。
「上手になったかどうか見てもらいたいな。」



11月14日(火)−銭太鼓の会・パート2−
銭太鼓の演技に自信をもちはじめた様子なので,再度『銭太鼓の会』の方に来ていた だき,幼児の演技を見ていただいた。

会の方:「とても上手にできていましたよ。私達もお年寄りの方に銭太鼓を見せてあげることがあるのだけど,みんなのような小さい子ども達が銭太鼓を見せてあげたら,お年寄りの方ももっと喜ぶと思うわ。」
教師:「(それを聞いて)みんなどう思う?」
幼児:「見せてあげたい。」
教師:「そういえば,この地域にも高齢者がたくさんいる所があるね。」
幼児:「知っとる。『マスカット苑』。」
教師:「そうだね。みんなも『マスカット苑』で銭太鼓を見せてあげたらいい ね。」
幼児:「うん,行く。」
教師(※援助,◎
配慮)


◎遊びの中で銭太鼓ができる よう環境を整えておく。
















※幼児の思いに共感する。

<『マスカット苑』に行こう>
(『マスカット苑』訪問のねらい)

・自分の祖父母より高齢の方と触れ合うことにより,体の様子や健康状態に気付く。
・いろいろな人に親しみをもって接し,優しい気持ちをもつ。
・自分たちのできることを考えて活動し,高齢者の方と一緒に楽しむ。
はじめに

幼児から「高齢者に銭太鼓を披露したい。」という声が上がったので,学区内にある施設『マスカット苑』を訪問することにした。
教師:「『マスカット苑』に行って,銭太鼓の他にはどんなことをしようかな?」
A児:「手話の歌を歌う。」(先日,学芸会で発表したので演技に自信をもっている。)
B児:「優しくする。」
C児:「肩たたきをする。」
D児:「なにかプレゼントをあげる。」
E児:「手紙を書く。」
F児:「幼稚園で作ったお芋を持って行く。」
(意欲をもって取り組む・主体的2
(相談して問題を解決する・主体的4
(人に対して思いやりの気持ちをもつ・心豊か1
教師:「たくさん出てきたね。じゃあ,どういう順に進めていこうかな。」
幼児:「プログラムを作ったらよく分かるよ。」
教師:「そうだね。じゃあプログラムを作ろうかな。」
※幼児の思いを受け入れる。












※幼児の考えに共感する。
はじめに

<プログラムを作ろう>

幼児たちが中心になって考えを出し,『マスカット苑』訪問のプログラムを作成した。交流当日,プログラムを見ながら幼児が中心となって会を進めていった。

(意欲をもって取り組む・主体的2
『マスカット苑』訪問プログラム幼児の思い


◎『マスカット苑』と連絡をとり,
高齢者の健康状態を聞くなどスムーズに行くように事前に話し合っておく。










※中には体の不自由な
高齢者もいることに幼児
が気付くように話をする。
1.挨拶をする
○今日は一緒にいろんなことをして遊びたいな。
2.自己紹介をする
(住んでいる地域,組,名前,好きなものを言う)
○マスカット苑の人達に自分たちのことを知ってもらいたいな。
3.プレゼント(手紙,芋,花束)を渡す
○みんなの気持ちを書いた手紙や,幼稚園で育てた芋や花を高齢者の方にプレゼントしたいな。
4.をうたう
「おじいちゃま おばあちゃま」
「いぬのおまわりさん」
「うさぎとかめ」
「ももたろう」
○みんなの歌を聞いてもらいたいな。

○高齢者の方も一緒に歌えたらいいな。
「どんな歌なら一緒に歌えるかな。」
5.銭太鼓をする
○頑張っている姿を見てほしいな。
6.手話の歌「みんなともだち」を歌う
7.高齢者の方と一緒に手遊びをして遊ぶ
「ぐー・ちょき・ぱー」
「しあわせなら手をたたこう」
○一緒に遊びたいな。どんなことができるかな。
「マスカット苑にはどんなお年寄りがいるんだろうね。
8.挨拶をする
○一緒に遊べて楽しかったな,お礼を言おう。


<マスカット苑を訪問しよう>
当日の朝
E児:「今日は,おじいちゃんやおばあちゃん達に優しくしてあげるんじゃ。」
F児:「歌や銭太鼓を頑張って見せてあげる。」

マスカット苑の訪問を楽しみにしている幼児の様子が見られる。

訪問
・最初は少し緊張気味の様子であったが,次第に緊張もほぐれ, 高齢者の方と笑顔で話をする幼児の姿も
見られた。
・プレゼントを渡した時に高齢者の方から「(この子と)一緒に写真撮りたい。と言われ,嬉しそうに笑顔で応
える幼児の姿もあった。

訪問のあとで
幼児にマスカット苑を訪問した感想を聞く。
A児:「おじいちゃんやおばあちゃんと友達に
なったんよ。」
(人と仲良くし,かかわりを楽しむ・心豊か6
B児:「銭太鼓や歌でいっぱい拍手をしてくれて嬉しかった。」
C児:「一緒に遊んだり手をつないだりして楽しかったよ。」
(心を動かしいろいろなことに感動する・心豊か2
D児:「“ぐー・ちょき・ぱー”の時にやり方を教えてあげて一緒にやったんじゃ。おばあちゃん,楽しそうじゃっ
たよ。」
(人に対して思いやりの気持ちを持つ・心豊か1
※恥ずかしがったり不安になったり
しないよう幼児に声を掛ける。


















≪考 察≫
・『銭太鼓の会』や『マスカット苑』など,地域の方や施設との連携を図り保育に取り入れたことで,幼児は人とのかかわりを 楽しんだり,演技に対する自信をもったりするなど,様々な体験をすることができ,より一層豊かな心が育っていったのでは ないかと思われる。

・身近に祖父母がいる(3世代同居)幼児がほとんどなので,高齢者とのかかわりに戸惑っている様子はあまり見られなかっ たが,自分の祖父母よりもさらに年長の方たちと触れ合うことで,高齢者の健康状態に気付き,いたわりや思いやりの気持 ちがさらにもてたのではないかと思われる。
はじめに