はじめに
事例 3
  
     少人数の幼稚園 〜弘西幼稚園との交流を通して〜


教師(*ねがい,・援助)幼児の姿

○交流1回目 6月16日(弘西幼稚園来園)

(交流のねらい)
・弘西幼稚園との交流を通していろいろな友達と触れ合う。

・不安を見せたり恥ずかしがったりする幼児には
安心できるように援助する。
<弘西幼稚園の友達と交流しよう>
・去年一緒に遊んだ友達がいるな(年長児)
・弘西幼稚園にはどんな友達がいるのかな?(年少児)

*この交流の合間に,幼児一人一人の顔写真(名前付き)の手紙をやり取りする。


○交流2回目 6月29日(弘西幼稚園訪問)

(交流のねらい)
・弘西幼稚園との交流を通して,いろいろな友達と一緒に遊ぶ楽しさを味わう。

*自然な雰囲気で交流が出来るようにしたい。
「グループを作って一緒におやつを食べよう」
・不安や緊張のある幼児には,安心感をもてるように
言葉をかけるようにする。
<おやつを一緒に食べよう>
・A児(馬・年少),「先生,一緒におって。」と言い,なかなかグルー
プが決まらずに不安そうな様子。弘西幼の幼児に誘われてグループ
に入ること ができる。
・みんなで一緒に遊ぶと楽しいことが幼児に感じられ
るように,声をかけたり一緒に遊びに加わったりする。
<ムーミンの劇を一緒にしよう>
○3人の幼児が参加。他の幼児は観客として参加する。
・弘西幼の友達と一緒に劇遊びをすることが恥ずかしい

<考 察>

・1学期の交流では,少しずつ仲良しの友達ができ,弘西幼稚園の友達と一緒に遊ぶ幼児の姿は
見られるものの,積極的に誘い合って遊ぶ姿が見られない面もあった。2学期からの交流では,
1学期に作られつつある友達関係がさらに展開でき,かつ,幼児一人一人が主体的に行動して
いけるような交流をねらいとしながら計画を立てていくことにする。


○交流の前日 10月11日

・1学期の交流から間が空いているので,2学 期かの交流がスム ースに行くように,幼児と 以前弘西幼稚園の友達からもらった手紙を 見て,顔と名前を一緒に確認したり,1学期 の交流の様子を思い出したりする。
<弘西幼稚園にはどんな友達がいたかな?>
○1学期の交流の様子を思い出しながら友達との再会を楽し  みにする。
・「あっ,Bくん(弘)じゃ。覚えとる。」(馬:C児)
・「Dちゃん(弘)と一緒にお弁当食べたよ。」(馬:A児)


○交流3回目 10月12日(弘西幼稚園訪問)

(交流のねらい)
・名前を呼び合って遊んだり,誘い合って弁当を食べたりする。
・いろいろな友達と力を合わせて競い合ったり,応援したりして遊ぶ。

教師(*ねがい,・援助)幼児の姿めざす幼児像
*前回の交流から間があいているので,何かきっか
けがあればいいな。
「どんぐりを拾って,弘西幼の友 達に持って行って
あげようか。」
<オナモミ爆弾ごっこ>
○オナモミやドングリなどの自然物を拾い,  弘西幼稚園にお土産として持っていくこと にする。

・オナモミを爆弾にみたて投げっこをする遊びが 広がる。弘西幼稚園の幼児と自然と打ちとけて
いく。
・友達同士で遊
びを作り出す。

主体的2
*友達の輪がもっと広がるといいな。
「弘西幼3人,馬屋上幼2人の5人グループを作りま
しょう。」
<おやつや弁当を一緒に食べよう>
・C児(馬)はさっそく仲良しの友達B児(弘)と手
をつなぐ。
(幼児,それぞれにグループを作り始める。)
・前回の交流でグループを作るのに教師の手を借
りていたA児(馬)も仲良しの友達を見つける。
「Dちゃん(弘)と前のとき一緒にお弁当を食べた
んじゃ。」
・親しみをもって
友達とかかわる。

心豊か6
*みんなで協力したり応援したりしながら楽しく運動
遊びができるといいな。
<みんなで運動会遊びをしよう>
○昼食後,弘西小学校の運動場で運動会遊び
をする。2チームに別れ,玉入れとリレーをする。
リレーでは,チームごとに作戦をたてたり,走る
順番を決めたりして遊びを楽しむ。
・ルールの違いなど不慣れな面もあったが,弘西
幼の幼児の中に入って楽しく参加している。
・進んで遊びに取
り組む。

主体的1・3


○交流4回目 10月19日(弘西幼稚園来園)

(交流のねらい)
・弘西幼稚園の友達との再会を喜び,一緒に遊ぶうれしさを味わう。
・自然公園を案内して,秋の自然の中でのびのびと遊ぶ。

・これまでの自然公園での経験を生かして, 馬屋上幼稚園の幼児が主体となって交流を 深めるチャンス。
「みんなが弘西幼稚園の友達を『つどいの広
場』まで案内してあげようね。」
○隣接小学校の自然公園で幼児は様々な自
然遊びを経験している。幼児にとって親しみの
ある自然公園に弘西幼稚園の友達を案内し,
一緒に秋の自然の中で楽しく遊びたい。
・進んで活動に
取り組む。

主体的1
*カニの発見を通して友達との関わりを深め
て欲しい。

・カニをつかまえる
<『つどいの広場』でカニを見つけたよ>
(他の友達にもカニがいたことを教えてあげたい)
「見て,カニがおるよ。」 C児(馬)
声を聞いた子どもたちがカニを見に集まってくる。
「どこにおるん?」 (弘)
「ほら,あそこの石のところ。」 C児(馬)
「あっ,ほんまじゃ。」 (弘)
「見せて。ほんまじゃ,カニがおる。」 E児(馬)
(つかまえたカニを見て)
「カニ,ゲットじゃ。」 C児(馬)
その様子を弘西幼の幼児がうらやましそうに見て
いる。
(その様子に気付いて)
「それ(カニ)あげるわ。」 C児(馬)
(うれしそうに) 「ありがとう。」 (弘)
・カニの発見に
感動する。
・友達と関わる
ことを楽しむ。

心豊か2・6


・友達に対して
思いやりの気持
ちをもつ。

心豊か6
*仲良くなった友達のグループで一緒に行動
して,より交流を深めて欲しい。
「探検に行くから,仲良しの友達と2人組になっ
て並びましょう。」

*複数の友達と一緒に行動したいというA児の
気持ちを汲んであげたい。
「3人組でもいいよ。」

*幼児が自分で考えて行動できるといいな。
「道が2つあるなあ。どっちに行こうか?」
<自然公園を探検しよう>
○前回までの交流で,幼児の間にもそれぞれ仲
良しグループが出来ている。
・C児(馬),さっそくB児(弘)と2人組になり,真っ
先に列の先頭に来る。

・A児(馬)は仲良しの友達が2人いる。
「先生,3人組がいいんじゃ。」
A児(馬)はうれしそうに3人で手をつないで並ぶ。

(探検の途中で分かれ道になる)
・C児(馬)「こっちの道に行こうや。前に行ったこと
がある。道が狭くなるから,一列になって行かんと
いけんのんじゃ。」
・友達との関わり
を楽しむ。
・自分の思って
いることを表現す
る。

心豊か6・3

・進んで取り組
む姿。

主体的1
・幼児の嬉しそうな気持ちに共感する。
<ぼく達は“や”のチームだよ>
・弁当を食べる時,C児(馬)が名前に“き”のつく
友達とグループを作っているのを見て・・・
「ぼくたは“や”のチームじゃな。」と,E児(馬)は
嬉しそうに言う。
・人とのかかわり
を楽しむ。

心豊か6

<考 察>
・交流を前にし,手紙のやり取りをして,お互いの園の幼児の顔と名前が確認できるようにし,さらに交流の前ごと に顔と名前を 確認したことで,交流を重ねるうちに友達の名前を呼んで話をしたり,遊んだりする姿が見られる ようになった。

・1,2学期ともに1回目の交流からあまり間をあけることなく続けて交流を行ったことで,友達関係も保ちやすかっ たようである。

・以前から身近な環境である自然公園での経験を積み,慣れ親しんでいた場所での交流の機会をもつことで, 自信をもって道案内をしたり,弘西幼の幼児に積極的に声をかけるなど,主体的に活動する幼児の姿が多く  見られた。