事例4 自然の中の幼稚園


保育園児との交流をとおして 〜一緒に自然公園を探検しよう〜
はじめに
ねらい…他園の幼児に親しみをもち,自分から進んで声をかけたり共に行動したりする。

     自分たちで考えを出し合いながら,交流の進め方を工夫する。

自然公園…馬屋上小学校の所有する山。幼児は四季を通じて散策している。特秋は落ち葉 や木の実,栗やどんぐり拾いなどで,これま          で3園の幼児たちや1年生との交流 の場としてきた。

交流日のねらい
   ・初めて会う幼児や教師と挨拶をしたり言葉を交わしたりして,親しみをもつ。
   ・秋の自然の中で同じグループの幼児と一緒に行動し,自分の思いを伝え合いながら様々な ことに気付く。

流れ
幼児の様子(T;教師 C;幼児 幼C;幼稚園児 保C;保育園児)教師の援助
@10/24『保育園の人と遊ぼう』『手紙を出そう』
T「保育園の友達が馬屋上幼稚園に遊びに来たいんだって」
C「いいよ」「遊ぶ」
T「どこで一緒に遊ぼうか」「どこを案内したいかな」
C「ブランコ」「(部屋の)中で遊ぶ」
T「他にみんなが案内したいところはないかな」
C「あ!自然公園」
 「それがいい」と他の幼児も同意する。
T「じゃあ,一緒に自然公園へ行こうか」
C「うん」「はーい」とはりきって返事をする。
心豊か3・主体的2
・幼児の関心や
期待が高まる
ように話す。

A10/26『自然公園を探検したいな』『チームを作ろう』
T「自然公園って何回も行ったね いつも先生と一緒に行っているけど
  今度行くときも同じでいいかな」
C「先生いなくても行けるよ」
T「今度保育園の友達が来るときには子どもだけで行く?」
C「探検だ」
T「それじゃあ,チームに分かれる?」
C「そうしよう」
T「何も用意しなくていいかな」
C「そうだ,地図がいる」
C「チェックポイントを決めたら?」
チェックポイントを入れて地図を作ることにする。
心豊か3・4・主体的2
・幼児が自分の
思いや考えを
表現できるよう,
幼児の思いを
大切にしながら
相談するように
する。

B10/26『地図を作ろう』
自分のチームの地図に色を付けたり写真を貼ったりする。
「保育園の友達はどんなところを探検するか分からないね」
と教師が言うと「地図を見せてあげたらいい」と言葉が返ってきたので
幼児と相談して作り,保育園に届ける。
心豊か1
・地図や写真を
印刷する。
・地図を届ける。
・保育園児の
メンバーを確認し
知らせる。

「保育園の人が来るの明日?」「明日,探検?」と教師に尋ねる。
日付を 覚えてからは「あと○回寝たらだね」と数える。
10/30には同じチームになる保育園児の名前も分かる。
心豊か6

C10/31『探検しよう』
保育園児を迎え,チームごとに自然公園へ出発する。
幼稚園児2名,保育園児3〜4名で,5〜6名編成である。

〔分かれ道で〕
保C「次はこっちじゃろうか」
幼C「地図を見せて」「違うよ,こっち」と自信をもって言う。
保C「よし,行こう」
幼C うなずき,進んでいく。
主体的2・4
・秋の自然が感じ
られるように
援助する。
・グループの幼児
触れ合えるように
見守る。
・グループ行動の
た め,安全面の
配慮 をする。
〔歩きながら〕
幼C「白いキノコがあるんよ」と知っていることを伝える。
保C「どこに」
幼C「このへん…あった」
保C「本当だ」「毒キノコかなあ」と驚いている。
心豊か3
〔落ち葉と土とが重なっている所で〕
幼C「ここってふわふわしとるんよ してごらん」と軽く跳んで見せる。
保C「本当じゃ すごい」「気持ちいい」と言って同じようにする。
幼C「お布団みたいじゃろ」と笑顔で言う 一緒に跳んで感触を楽しん
   でいる。
心豊か6
年少児の手を引いたり「おいで」と声をかけたりして気遣いながら進む
年長児の姿も見られる。
心豊か1
〔最後に出発したチーム〕
「あっちで声がする」「あっちへ行こう」と駆け足で進んだり,「みんなは
どうしたかな 声が聞こえない」と心配顔になったりして,落ち着いて
行動できない。

D10/31『発見したよ』
〔探検を終えて〕
「どんぐりやまつぼっくりがいっぱいあった」
「鳥の声が聞こえた」「鳥の家があった」
「”めぐみのいずみ”なのに水がなかったなあ」
「芽が出たどんぐりを見つけた」
「赤い実があった」「黄緑の実もあったよ」
「きのこがあった 毒きのこかな」
「木のトンネルがあった」など見たり聞いたり触れたりした
ことをそれぞれの幼児が言葉にする。
心豊か3
・幼児の気付き,
感性が引き出せる
ようにしっかり
耳を傾けていく。

E11/7『手紙をもらったよ』『返事を書こう』
保育園から手紙が届く。開けるとそれぞれ違う色の手紙が5枚
入っている。(写真と手紙が貼ってある)
「いろんな色がある」「これチームの色じゃ」「僕は赤チームだった」
「私黄色チーム!」など,興奮気味で,そのときのことを思い出して
友達同士で話をする。そして返事を書く。
心豊か2

〈考察〉
はじめに

・幼児たちは自然公園に何度も行き自然に触れ,発見をしたり感動したりして様々な経験を
積み重ねてきた。また,身近な秋の自然の中で他園と交流するのも4度目となり,他園の
多くの幼児と触れ合ってきた。そのため,初対面の幼児や教師であったにもかかわらず,
言葉を交わしたり相談したり案内したりして,親しみをもって一緒に行動する心豊かな姿が
見られた。

・交流前に幼児と相談し,チームを作って探検することを決めたり,手紙や地図を作って
送ったりして準備を進めてきたことで,考えを出し合い友達と力を合わせ主体的に取り組む
姿が見られた。幼児自ら保育園児や探検ごっこに関心をもち,期待や意欲が高まって,
交流当日も自分の思いを相手に伝えたり進んで行動したりすることができたと考える。

・グループごとにチェックポイントを通っていったので,ゴールを急いだり競ったりする
姿もあった。自然の中でもっとじっくりと見たり聞いたり感じたりして進めるよう,
コースの進み方やチェックポイントの内容など検討の余地がある。

・他園と心の交流をする際,事前に打ち合わせをしてねらいや互いの思いを細かく伝え合い,
共通理解することが大切である。