事例1「少人数の幼稚園」 はじめに
○背景… 本園は少人数で,年長児と年少児のかかわりはなくてはならないものである。 昨年は,秋から冬にかけて年長と年少で
角ドッジをして子供たちの大好きな遊びとなった。今年度になってまた年長児が始 め たくなり,人数が足りないこともあって,
年少児を誘う。時期的に年少児には角ドッジは難しいので昨年の1学期に遊んだころがしドッジをしようと年長児が考える。
○A児について…体を動かして遊ぶことが好きで,ころがしドッジにも興味を示す。
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年長児が「うさぎ組さん,角ドッジしよう」と年少児を誘いに来る。角ドッジを 知らない年少児が返事に困っているので,教師が「小さい組はしたことないな, 小さい組でもできるかな」と年長児に言うと,「そうだ,(小さい組のときにした) カエルとザリガニのころがしドッジは?」と言う。教師が「やり方を思い出して 教えてくれるかな」と言うと,「わかった,遊戯室に来て」と返事があり,年少児と 年長児が遊戯室に集まる。そして,年長児を中心に遊び方を説明して, ころがしドッジを始める。途中でコートの外の年長児同士がボールを同時につかみ 取り合いになる。教師が周りの幼児に「どうしたらいいかな」と投げかけると,他の 年長児が「ジャンケンしたらいい」「ジャンケンして勝った方のボール」と考え, 他の幼児も賛成する。そこで二人はジャンケンをし,遊びを再開する。 |

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A児,ころがしドッジに参加しているが,ルールを気にせずに思いのままに行動 している。そのうち「Aちゃん,線から出た」「線から出たらいけんのに」と友達に 言われ,泣きそうになる。さらに「Aちゃん,いつもじゃもんな」と言われて 泣きながらコートから出ていく。教師は友達から言われた理由や 友達の気持ちをA児に伝える。 |
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・すぐにボールに当たる,ボールが 捕れないなど自分の思うようにならない ことがあると,やめようとしたり 泣いたりするので,その度にA児の 気持ちを受け止めながら友達の思いや 遊び方を伝え,ルールを守って遊ぶ 楽しさに気付くようにする。 |
・教師も参加し一緒に遊びを楽しむよう にすることで,友達と遊ぶことを楽しみ 友達とのかかわりが深まるようにする。 |
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ボールを二人同時につかむ。周りの幼児が「Aちゃん,ジャンケンよ」と言うと, 仕方なさそうに「うん」とうなずき,ジャンケンをする。その結果,A児は負けて しまい,「いやだ」と言って納得しない。 |
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・一生懸命ボールから逃げる姿やボ ールの取り合いでジャンケンをする 姿を認め,みんなで決めたルール を守って遊ぶと楽しいことに気付く ようにする。 |
*繰り返し遊びに参加して友達と かかわることで,遊びの楽しさを感じ, その場に応じて気持ちをコントロール しよ うとする姿が増えてきた。 |
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初めてチャンピオンになる。教師が「Aちゃんがチャンピオン
おめでとう」と言うと,周りの幼児も「Aちゃん,おめでとう」と言い,A児は「もう1回しよう」と最高の笑顔になる。次の回,友達同士が 同時にボールを捕ったときに「ボール持っていてあげる ジャンケンして」とA児が仲介する。 | 主体的1 |
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みんなで作戦を考えているとき,A児も「思いきり,えいっと転がしたら いい」と自分の考えを友達に言う。周りの幼児もうなずく。教師は 「よく考えたね みんなも同じ気持ちだって」と代弁する。 |
心豊か3
主体的2 |
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「Aちゃん,泣かなくなったね」「うん」と周りの幼児たちが話をして いるのを聞いてうれしそうな表情になる。 | 心豊か6 |
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・周りの幼児がA児の変容に気付き 始めているので,さらに他の幼児 へと広まり多くの友達に受け入れ られるようにしていく。 |
*A児の変容に,友達の存在は
いろいろな面を認めることで,様々な欠かせない。友達がA児の 場面で A児の成長が見られる。 |
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6/26 〜9月 |
A児が「先生,ころがしドッジしたい」と言うので,一緒に友達を
ころがしドッジしよう」と呼びかけ,その声で「するー」「いいよ」と大勢集まり,誘いに行く。すると,皆から「いいよ」という返事が返ってくる。 次の日か らは,一人でも友達を誘いに行くようになり,「みんなー, 遊びが始まるようになる。 |
主体的1 主体的3 |
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・自分から友達にかかわることで 一緒に遊ぶ楽しさが感じられる ように援助する。 |
*教師が友達を誘うきっかけを
作ったことにより,自分で友達を誘う ことができ,以後も自分から声を かけるようになった。 |