事例2 「少人数の幼稚園」

1年生との交流をとおして

はじめに

教師の願い…年上の人と触れ合い, 手伝ってもらったことをうれしく思うことによって,
          年下 の人と接するときに思いやりをもち相手の身になって行動できるようにしたい。
ねらい…1年生に助けられながら,一緒に行動することを楽しむ。
活動の流れと当日のねらい

手紙をもらう

手紙を渡す

10/18 芋掘りをしよう
・1年生と力を合わせて芋を掘り,一緒に活動する楽しさを味わう。

  ・芋の入っている様子をじっくり見て,数や大きさ,形などに関心をもつ。

11/21 焼き芋パーティーをしよう
・1年生と一緒に焼き芋をし,一緒に活動する楽しさを味わう。

12/6 昔遊び大会に行かせてもらおう
・したい遊びの方法ややわからないことなどを1年生に尋ねながら一緒に遊 ぶことを楽しむ。

幼児の様子と教師の援助

運動場で遊ぼう
・幼稚園で日頃している「段ボールかくれんぼ」を一緒にする

幼児の様子援助と環境
初め,ペアになった初対面の1年生と一緒に
行動することに不安を示す幼児も見られ,
ペアの間ではほとんど会話はなかった。しかし,
「かくれんぼ」の遊びを楽しむうちに,
「もう1回しよう」「もっとしたい」という声が
聞かれる。最後に,一緒に栗拾いをする約束をする。
・1対1で話したり教えて
もらったりして,深い
かかわりができるように
ペアで行動するようにする。
・ペアになった1年生と
恥ずかしがらずに触れ合える
ように仲立ちとなる。

1年生からもらった手紙(模造紙へ言葉と一緒に
自分の顔 と名前が書かれてあるもの)を友達と一緒に見て,
「これは ○○ちゃん,これは△△ちゃん」「これは
誰かな?」と一人 一人確かめている。
主体的1
・1年生の名前を覚え,
関心が持続するように,
1年生からもらった
手紙を廊下のよく見える
所へ貼っておく。

・「かくれんぼ」をしたことをきっかけとして,1年生が業間休みに幼稚園を訪れ,
一緒に玉入れやかけっこなどをして遊ぶようになる。また,そのときに運動会
で1年生が演技した「慎吾ママのオハロック」の踊り方を教えてもらう。
はじめに
登園してすぐに「オハロック踊ろう」とA児が言うと,
皆,遊戯室に集まってくる。後から登園してきた幼児たちも
音楽を聞きつけて「入れて」と集まってくる。全員で
リズムに乗って教えてもらったとおりに何度も踊る。
主体的1・心豊か3
・いつでも踊ることが
できるように,テープと
デッキを置いておく。

栗拾いをしよう
・小学校自然公園の栗園へ行き,一緒に栗を拾う

手紙を渡す→「なかよしペア」になる→一緒に用意をして栗園に行く
「私が足で(いがを)押さえるから,○○くん取ってな」
と言われ,次々と栗を集めていく。「今度は僕がやってみ
る」「いいよ」と役を交替しながら二人で力を合わせて取
っている。
主体的2・4
・しっかりかかわる
ことができるように,
前回と同じペアにして
栗拾いができるように
する。


「大きい栗よ」「こんなに拾ったよ」と
うれしそうに二人一緒に周りの教師や友達に
見せている。
心豊か2・3
・協力するように,用具は
二人で1個とする。
・二人で拾い方を工夫する
ような言葉をかける。

芋掘りをしよう
・幼稚園の畑で一緒に芋掘りをする

「(芋が)離れんように掘るんよ」と1年生に言われ,
そっと掘るペアや,「ここにもあるよ」と言われて
次々に掘り上げ,掘った芋の数が増えることを喜ぶペア,
同じつるでつながっている芋の数を数えるペアなど,
1年生と言葉を交わしながら掘っていく中で,
数や形,性質などに関心をもつ姿や力を合わせる姿が見られる
心豊か6・ 主体的4
・芋のつき方や
掘り方など様々な
ことに気付き,
関心をもつように
援助する。

掘った芋を並べ,みんなで見て収穫の喜びを共有し,
芋をどうするか相談する。幼児から「お家の人と食べたい」
「焼き芋をしたい」「給食の先生の所へ持っていきたい」
などの考えが出る。
主体的2
・幼児の思いや考えを
受け止め,収穫の喜びや
周りへの感謝の気持ちが
感じられるようにする。

焼き芋パーティーをしよう

芋を新聞紙やホイルでくるむときに,1年生に
「こうやるんよ 巻ける?」とやり方を見せてもらい,
まねてする幼児や,戸惑っていると1年生が
「初めに少し巻いて左と右を折って…」と言葉で教えてくれ,
その通りにやってみる幼児などが見られる。
・分からないことは
1年生に尋ねるように
しむけて,自分から
かかわっていくように
する。

芋を火の中に入れるとき,幼児と手をつないでゆっくりと
火のそばまで連れて来て,膝を曲げて幼児の高さに合わせて
入れやすいように心配りをする1年生。教師が幼児に
「○○君,優しいね」と言うと,うれしそうに「うん」と
うなずき,その後も一緒に行動する。
心豊か6
・1年生の思いや
優しさに
幼児が気付くように
援助する。

昔遊びを教えてもらおう
    ・1年生の教室へ行く→「なかよしペア」の1年生からプレゼントをもらう

〔コマ回し〕
担当の1年生のコマ回しを見ていたY児。
「すごい。やってみたい」「どうやるん。教えて」と
1年生に尋ねる。1年生は「いいよ」と紐の巻き方を教え,
何度巻いても途中ではずれてしまうY児のそばに
ついていてくれるので,Y児が繰り返し取り組む姿が
見られる。
主体的1・心豊か2・4
・いろいろなコーナー
で遊べるよう見守る
・必要な言葉が使える
ように援助する。

〔やじろべい作り〕
「ここは私がするから,持っていて」
「ここは持っていてあげるからやってごらん」など
1年生に自分でできる所と難しい所を教えてもらい,
できることは自分でして作り上げていくことができて
喜ぶ姿が見られる。
主体的1・3・心豊か6

考察
・1回目の交流では初対面の1年生もおり,恥ずかしかったり不安だったりして
戸惑う幼児も見られた。いつも同じ1年生とペアになり,一緒に行動し計画性をもった交流を
重ねたことで,幼児の気持ちも次へとつながっていき,自分から1年生にかかわるようになったと考える。

・いつも年上の立場で幼稚園で生活している年長児も,小学生とのかかわりによって
自分より年齢が上の人とのかかわりをとおして,教えてもらったりまねしたりして
様々な刺激を受けることができた。新しい踊りを知ったり芋の入り方に気付いたりするだけで
なく,年下の人への接し方を感じとった。年少児にとっても,年長組の幼児よりさらに
年上の人とのかかわりによって,優しくしてもらう心地よさを感じることができた。

・小学生との交流は,小学校と連携をとって子どもたちの成長を長期的に見通すことに
つながるので,これからも小学校の先生と連絡を密にとっていくようにしたい。
はじめに