お き な わ の

離 島 の そ の ま た

さ き の 島


同方向を飛ぶ772(?)。奄美上空の邂逅

「暑さ寒さも彼岸まで」とはよく言ったもので、当地浜松に上陸した台風が過ぎ去ってから一気に季節が進んだ。秋の彼岸の中日にあたる秋分の日、富士山静岡空港からANA便で沖縄に飛んだ。今月2度目の三連休の初日。相当な混雑を覚悟していたが、予想に反してプレミアム・クラスは空席があり、私の隣席も空いていた。那覇までの2時間半の空の旅。ゆっくりくつろげそうである。

那覇到着まで残り1時間を切った頃、機長のアナウンスがあった。右下に同じ那覇行きの便が飛んでいるらしい。右手の窓から空を見回すと、ミニチュア模型のような飛行機(772か?)が、こちらよりちょっと速めのスピードで空を浮かんでいた。擦れ違う便は時折見られるが、同じ空港に向かう飛行機を見るのは初めてである。思わずカメラのシャッターを押してしまった。


1泊目は「サザンコースト宮古島」

那覇空港で飛行機を乗り継ぎ、17時過ぎに宮古島空港に到着した。レンタカー屋さんは空港から5`ほど離れた市街地にあり、今日宿泊するホテルから歩いて行ける距離だった。この日はホテルに行って泊まるだけの予定だったので、翌朝からクルマを借りるべきだったと後悔した。

宿泊先はホテルサザンコースト宮古島。伊良部島に渡るフェリー乗り場に近く、道路を挟んだ向かい側にはパイナガマビーチもあって大変便利な場所にあった。部屋からは部分的ながらも海が見えるので、1泊朝食付きでシングル7,000円はお得な感じである。

翌朝は10時前にチェックアウトし平良港へ。三連休中日ということで、伊良部島に渡るクルマでフェリー乗り場は混乱の極みだった。乗り場の係員に10時半の便に乗れるかどうか尋ねたところ「11時の便にした方が堅い」とのこと。在来型のフェリー乗り場と高速便の乗り場は離れているので、さっさとあきらめて11時出航の高速便乗り場に移動した。事前にネットなどで伊良部島への航路を調べたところ「高速船」と出ていたので、クルマは乗れないものだと思い込んでいたが、高速船の方も小さいながらも車載船である。順番は3番目。とりあえずこれで「離島のそのまた先の島」に渡れる。

伊良部島行きのフェリーは、高速便も在来便もクルマをバックで載せるタイプ。もともと自分はバックが得意でないのに加えて、車載デッキも狭いので所定のスペースに収めるのに苦労した。クルマを停めてしまえば、あとは15分の船旅を満喫するだけである。宮古島と伊良部島の間にある名も無い海峡を横切り、11時30分前に伊良部島の「サンマリンターミナル」に到着した。

伊良部島での行程は全く何も考えていなかったが、まずは島全体を見渡せそうな場所に行こうと思い、東海岸の牧山展望台を目指すことにした。昔から「バカと煙は高い所に上る」と言われているが、私は初めての地では真っ先に高い所に登ってしまう。そして全てを見た気分になって満足するのである。


ホテルの目の前に広がるパイナガマビーチ


この時期の朝に泳いでいる人もいて驚き


部屋からの眺め。一応オーシャンビュー


朝食バイキング。今回唯一のまともな食事


平良港フェリーターミナル「まりんぴあみやこ」


宮古〜伊良部は高速フェリーで所要15分


伊良部島に向けて高速航行


伊良部島の「サンマリンターミナル」に到着


○○は高い所が好き?まず牧山展望台へ

さて、牧山展望台から見えた伊良部大橋の建設現場に行って見ることにした。伊良部島側の取り付けは、埋め立てた上で「海中道路」風になるようだ。一方、宮古島側はいきなり橋梁区間で、ずいぶん雰囲気が異なる(宮古島側は翌日に訪問)。宮古島側には、この橋を紹介するゲストハウス(屋上は展望スペースになっている)のようなものがあった。2014年3月に開通予定で、今までフェリーだのみだった島の生活が便利になりそうである。やれ環境破壊だ、建設する業者が潤うことが最大の目的みたいなことを、島外の第三者が好き勝手に言ったりするが、島の人が荒天や夜間の時にも宮古島に渡れる安心感を考えるとかなり無責任な発言のように思う。そんなことを考えながら次のスポットに向けてクルマを走らせた。

今晩の宿がある下地島を目前にしながら、川(海峡?)をひとつ挟んだ道路を北上する。佐和田集落の路地に入り込み、それにもめげずどんどん進むと海に出た。そこが日本の渚100選に選ばれた佐和田の浜である。訪れた時はちょうど干潮で、遠浅の浜であるため有明海の干潟のようになっていた。足を踏み入れた途端にズブズブと潜りそうな雰囲気だった。まぁそれはともかく、佐和田の浜は夕陽の名所でもあり、泳ぐよりも眺める浜なんだろう。

島の外周を時計回りに走り、次のスポットは白鳥崎である。佐和田の浜を出てから人家がなく、白鳥崎周辺もケアセンターが1軒ぽつんと建っているだけ。伊良部島の集落は、港のある佐良浜と元の役場があった伊良部に固まっている感じである。無人の外周道路を駆け抜けて、白鳥崎に到着した。

白鳥崎は伊良部島の最北端に位置する。火山岩か珊瑚礁か分からないが、ごつごつした岩礁が隆起したような地形だった。海の色はエメラルドグリーンで透明度は抜群。伊良部島でも有数のダイビングポイントらしい。真夏のような太陽が照りつけるなか、しばしたたずんだ。

白鳥崎のすぐ隣に「西海岸公園」という大雑把な名前だが、あずまやがあるだけの公園がある。そこから海岸沿いに東に目を向けると、断崖の上に鷹のような像が立っている。2〜3分ほどクルマを走らせると、果たして巨大な鳥の後姿があった。ここが「フナウサギバナタ」という展望スポットである。フナウサギバナタとは「船を見送る岬」という意味で、伊良部島の中では牧山展望台と並んでしっかりとした構造物がある展望台である。巨大な鳥はサシバという渡り鳥で、越冬のため初秋に日本から東南アジアに向けて移動する。一日480`も移動するらしいが、休息場所は決まっていて、そのうちのひとつが伊良部島・下地島ということである。ちなみに、この日の宿の名前は「オーシャンハウスinさしば」で、もちろんサシバが休息する当地にちなんで名付けられた(と、宿で貰ったパンフレットに書いてあった)。とにかくリアルで巨大なサシバが印象的な展望台だった。

フナウサギバナタを出て、外周道路を南下すると佐良浜集落に着いた。これで伊良部島を一周したことになる。集落のはずれにサバウツガーと呼ばれる古い井戸があるというので行ってみた。あずまやのある展望台風の高台から、124段の階段を下った海辺にその井戸があった。水道ができるまでは、高台にある佐良浜の人たちの水はこの井戸が唯一の頼り。そのため1日に3〜4回水桶をかついで、この階段を上り下りしていたという。階段の上りでは、手ぶらでも息が切れ、昔の女の人の苦労を思い知らされた。


牧山展望台より佐良浜方向の森と海の眺め


建設中の伊良部大橋の全容も一望のもとに


伊良部大橋の伊良部島側は埋め立て地


伊良部大橋の宮古島側は橋梁区間


開通すれば観光名所になりそうな風景


レンタカーのデミオ。佐和田の浜にて


西海岸公園展望台からの眺め


フナウサギバナタのサシバ


サバウツガーへの急な下り階段

ふたたび佐良浜のフェリー乗り場の前を通り、伊良部島の周回は2周目に入った。伊良部大橋の建設現場を過ぎてしばらく行くと、伊良部島のビーチの中では最も賑わう「渡口の浜」に到着した。弓形の白浜に透明感のあるエメラルドグリーンの海。離島からさらにフェリーに乗るという困難なアクセス条件さえなければ、シーズンには芋を洗うような混雑になりそうである。あいにくの曇り空だったが、夏の名残を惜しむかのように家族連れやカップルが水遊びをしていた。沖縄のビーチは少なくとも10月までは遊泳可能なので、まだ夏真っ盛りなのかもしれない。

「渡口の浜」の近くで川(海峡?)を渡り、いよいよ下地島に上陸。まずは国の名勝および天然記念物に指定されている「通り池」を訪ねた。伊良部島・下地島を通じて最も観光客とすれ違ったスポットで、さすがに「国指定」のタイトルは重い。だが実際に現地に立ってみると、海沿いに丸い池が2つ並んでいるというだけで、とりたてて何が凄いとかではなかった。水深40〜50bほどの池が並列していて、底の方で双方がつながっており、さらに海ともつながっているということがポイントらしい。つまるところはダイビングしない限りは、この池の凄さがちっとも分からないわけである。というわけで通り池から早々に退散し、この旅のクライマックスとなる次のビューポイントに向かった。

下地島の西海岸を北上すると右手に滑走路が見えてくる。これが下地島空港で、日本で唯一のパイロットを訓練するための空港である。また、北側(17エンド側)にある桟橋のような進入灯は、数々の航空機の写真に登場している。ここには、空の青さ、珊瑚礁の海そして朱色の桟橋があり、絶妙な色のコントラストを織りなしている。同時に迫力ある航空機の離着陸も見られることから、航空ファンの聖地となっている場所である。私は、この場所に立ってフロリダのキーウエストを連想してしまった。7マイル・ブリッジをドライブして、彼の地にも立ってみたいものである。

三連休のためなのかよく分からないが、訓練の航空機は全く来ない。どんよりとした曇り空でもあるので、明朝もう1回来ればいいと思い、17エンドを後にした。宿に入る前に下地島空港の管制塔建屋にも寄ってみたら、ANAカラーのターボ・プロップ機ボンバルディアDHC-Q400が羽を休めていた。やはり空港には飛行機がよく似合う。調べてみたら、1994年まで南西空港のYS-11がこの空港に就航していたとのこと。確かに隣接する宮古空港にない誘導路があるなど、空港施設自体は充実している。まぁお客さんは少なかっただろうが。

下地島空港を表敬訪問して、2日目の行程は終了。14時半ころその日の宿となる「オーシャンハウスinさしば」にチェックイン。通された部屋は公営住宅の雰囲気満点の1DK8畳敷き。5月の本部半島もそうだったが、沖縄の宿にはこんなところが多い。キッチンがあるので何かと便利なのだが…。


夕陽が有名な佐和田の浜。干潮時はズブズブ?


白鳥崎の入江。海の色とリーフが離島っぽい


渡り鳥のサシバは秋に伊良部・下地でひと休み


苦労が偲ばれるサバウツガーと呼ばれる井戸


伊良部島屈指のビーチ、渡口の浜は曇り空


下地島に渡って「通り池」訪問。潜ってこその池


最終目的地の下地島空港に到着


1994年までYS-11によって定期便運航


パイロット訓練用空港にDHC8-Q400が休む


17エンド側から見た下地島空港滑走路


航空ファンの聖地ともいうべき下地島空港17エンド進入灯。次回はここで飛行機を撮影したい


オーシャンハウスinさしばの建物群


1DK・シングルルームのベランダから見た朝


先島諸島にも秋の気配のひつじ雲

せっかく日の高いうちにチェックインしたので、ホテルライフを満喫したいところだが、畳の部屋で競馬中継を見ながら水割りを飲んだのでは、家でゴロゴロしているのと変わらない。まさに普通の土曜日の午後を過ごしてしまった感じ。それでも窓の外の景色が非日常的ならばいいが、こちらも一般住宅(実はコンドミニアム)の向こうに畑が広がっているので、普段見慣れた田舎の風景である。そんなわけで、暗くなってくると本当にやる事がなくなってしまい、そのうち酔いに任せて早寝してしまった次第である。まぁ、これはこれで悪くはないが…。

翌朝は空にひつじ雲がかかり、蒸し暑いものの空は秋色だった。曇り空だった昨日よりもましな天候になったので、宮古島に戻る前にもう一度、下地島空港の17エンド進入灯に行ってみた。海の色が昨日よりも明らかに鮮やかで、納得のいく写真が撮れた。あとは飛行機が飛んでいればなぁと思った次第。これをしおに下地島を後にして、まっすぐ伊良部島を突っ切り、佐良浜のサンマリンターミナルから高速フェリーに乗船。宮古島平良港には10時前に到着した。

クルマは12時半まで借りているので、平良周辺で何ヶ所か回れる。とりあえず、宮古島側の伊良部大橋建設現場を見た後、すぐ隣のトゥリバー海浜公園に行ってみた。すっかり晴れ上がり、気温が上昇。人工海浜らしいサンセットビーチを散歩したが、夏のような日差しで汗まみれになった。たまらずクルマに避難し、エアコンを全開。次のビーチが、この旅最後の訪問地になる。

宮古島の有名なビーチといえば前浜ビーチと砂山ビーチ。前浜ビーチには2004年に訪問しているので、砂山ビーチにこの旅の最後を飾ってもらおう。駐車場にクルマを停めて砂山を登ると、峠付近で急に視界が開け白砂青松が姿を現す。けっこうキツい上り坂なので、この風景を見ると「あぁ苦しい思いをして登ってきた甲斐があった」と思う。そのまま蟻地獄に落ちていくように、砂の坂道をずり落ちるとビーチに到着。真夏並みの日差しが照りつけ、青い空、緑の海、白い砂が強烈なコントラストを作っている。ビーチにはシュノーケルを持った女の子連れやカップルが多く、これまでのビーチよりスポーティーな感じである。もちろん、このロケーションに引き寄せられた家族連れや、海に入らない見物客も多かったが。

砂山ビーチの名物は海に向かって左手にある岩穴。穴の向こうには海が見えるので、これを背景に記念撮影をする観光客がひっきりなしである。挙句の果てには「記念撮影のため、洞穴内立ち止まり禁止」という看板が立っていたりする。先島諸島の旅の終わりは、この有名な岩穴の画像に飾ってもらおう→

トゥリバー海浜公園サンセットビーチにて筆者


有名な砂山ビーチはまだ夏の雰囲気


家族連れやカップルが盛夏顔負けの海水浴


砂山ビーチの岩穴がこの旅の終着点

<おしまい>

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