目 指 せ S F C 〜

日 本 全 国 修 行 の 旅 @

.
この夏、ニュージーランド航空でオークランドに飛び、アメリカン航空でラスベガスに行ったことをきっかけに、航空会社のマイレージプログラムのサイトを頻繁に閲覧するようになった。もとより会員だったANAマイレージクラブについてもより深く知るところとなり、「いっちょSFCカードを作ってやろうか」と思い立った。SFCとはスーパーフライヤーズカードの略で、いわゆるクレジットカードだが、「スターアライアンスゴールド」のサービスを世界中の空港で受けられる特典が付いている。他社のマイレージプログラムの多くは、搭乗回数の多かった翌年1年間だけのゴールド特典だが、SFCについてはクレジットカード会員である限り(この制度が続く限り…)、ずーっと特典が受けられる。
さて、SFCになるためには、プラチナ会員以上のステータスが必要だが、プラチナステータスを得るためには、1年で50,000プラチナポイント(マイルとは違う)以上貯めるか、50回以上搭乗してかつ30,000ポイント以上貯めなければならない。ちなみに、この旅を企画した8月下旬時点での私の搭乗回数は8回、プラチナポイントは9,525ポイント。最短の方法は42回搭乗して20,475ポイント以上を稼げばいいことになる。

わずか15分滞在の大島空港


生活の足としての航空機


福岡空港で食べた「とんこつラーメン」

そこで「修行の旅」(上級会員になるために意味なく飛行機に乗りまくること)を計画することになるのだが、いかんせん、休みに限りのあるサラリーマンの立場であるため、10月と11月の超割期間中にそれぞれ3日間ずつ飛行機に乗りまくることにした。
せっかく大枚をはたいて日本国中を乗りまくるため、今まで乗り降りしたことのない空港を訪れようと思い、パズル感覚で旅程を作った(右下表参照)。今回初めて訪れる空港は9箇所。11月のパートUの旅では、岡山、能登、八丈島、大館、福江、対馬、庄内、鳥取、高知、高松、宇部の11空港を初めて訪れることになる。ただ飛行機に乗るだけでは、あんまり景色を楽しめないしウンザリだが、このように違った目的があれば、少しは気も晴れよう…。10月25日の深夜、私は「ムーンライトながら」に乗り東京を目指した。


乗り継ぎ途中の福島空港にて筆者


千歳行きの機中で1日目の日が暮れる


晩酌と夕食目当てのスーパーシート

便名 発地 時刻 着地 時刻
10

25

(土)
ANK841 羽田 8:25 大島 9:00
ANK842 大島 9:30 羽田 10:00
ANA249 羽田 10:30 福岡 12:15
ANK324 福岡 14:00 福島 15:40
ANK343 福島 16:10 千歳 17:30
ANA074 千歳 18:30 羽田 20:05
ANA4723 羽田 21:00 千歳 22:30
10

26

(日)
AKX1481 丘珠 8:40 中標津 9:35
AKX1482 中標津 10:00 丘珠 11:00
AKX1491 千歳 13:30 利尻 14:30
AKX1492 利尻 15:00 千歳 16:05
ANA378 千歳 17:05 富山 18:30
ANA892 富山 19:10 羽田 20:15
ANA975 羽田 20:55 関西 22:10
10

27

(月)
ANK671 関西 8:10 石垣 10:55
ANK436 石垣 13:45 沖縄 14:35
ANK175 沖縄 15:40 宮古 16:25
ANK176 宮古 16:55 沖縄 17:40
ANA462 沖縄 18:10 広島 19:50
ANA688 広島 20:40 羽田 22:00
黄字は今回初めて乗り降りした空港
久々の座席夜行で「もう少し寝とこう」と思い、山の手線内回りで1周したが睡眠不足は解消できなかった。そのまま品川から京浜東北の南行きに乗り込み蒲田下車。京急に乗る手もあったが、時間に余裕があるのでバスで羽田に向かった。
空港には6時半過ぎに到着し、さっそくチェックイン。するとチケットレスサービスで4枚のボーディングパスが出てきたものの、搭乗手続きが完了しているものは、大島往復の最初の2便だけ。恥をしのんでGHさんに「スルーでチェックインして欲しいんですけど」と告げると、福島までの搭乗券4枚が手続き済みと印字されて戻ってきた。
結局、この手続きは後々生きた。というのも大島便が遅れたため、羽田での福岡便への乗り継ぎ時間が足りなくなり、トランシーバーを持ったGHさんと待合室内を駆けずり回ったからである。もし、乗り継ぎ情報を入れておかなければ福岡便に乗り遅れ、その後の旅程が狂ってしまっただろう…。

1日目ラストはエアドゥのコードシェア便


札幌地下鉄東豊線で2日目開始


栄町よりリムジンバスで丘珠空港へ

さて、離島航路の大島線だが、いかにも日常生活の足らしい雰囲気で、オバサマ達の井戸端会議的会話が飛び交っていた。大島空港では往路の便が遅れたため、わずか15分の滞在しかなかった。また前述の通り、福岡便の乗り継ぎ搭乗だったため、往路の便を降りた途端、搭乗ゲートに呼び出され「もし間に合わなかった場合は次の便を押さえてございます」と言われた。そして、飛行機の中でもCAさんに徹底的にマークされたりもした。
まぁ無事に福岡行きには間に合い、福岡空港では次の福島行きまで2時間近く空き時間ができた。せっかく福岡に来たので本場の「とんこつラーメン」を食べて行こうと思い、空港内のラーメン屋でじっくり味わった。替え玉も可能だったが、体を動かさない旅の途中ゆえカロリーオーバーになることを嫌いやめておいた。さて、福岡のカードラウンジはなかなか具合がいいという風評を耳にしていたので、ちょっくら寄ってみた。1ソフトドリンク、2時間まで無料という制限もあったが、なかなか居心地は良かった。次に立ち寄る千歳のカードラウンジは「1ソフトドリンク・1時間まで」となっており、カードラウンジもだんだんセコくなっているのは否めないが…

ローカルムードたっぷりの丘珠空港

福岡空港ではエアーニッポンの発着は第1ターミナルからである。その1タミまでがかなり離れていて、時間ぎりぎりまでラウンジで粘っていたら、搭乗に間に合わないところだった。福岡市内は快晴で気温も上がっていたため、福島行きの飛行機の中では汗だらだらだった。
福岡発福島行きANK324便と、その後の福島発千歳行きANK343便は、同じ機材・同じクルーだろうと予想していたが、果たしてその通りだった。乗り継ぎの福島空港では、ターミナルビルをバックに記念撮影をしただけで、そのまま乗ってきた飛行機に乗り込んだ。
千歳に向かう間に日が沈み、街の灯きらめく千歳空港に到着した。今日の予定は、もう一度千歳〜羽田間を往復して終了だが、いい加減飛行機にも乗り飽きてきた。そこで夕食がサーブされるという時間帯ということもあり、スーパーシートに変更してもらうことにした。差額4,200円だが、アルコール飲み放題で、かつ松花堂ふうの弁当がついて、ゆったりとしたシートに座れるなら十分モトはとったように思う。

根室中標津空港にて筆者

千歳離陸時に落雷があり、20分ほど遅れたものの、羽田では到着ゲートを出ることなく折り返すことができるので問題はなかった。ちょうど搭乗ロビーの衛星テレビで、Jリーグ・ジェフ市原対ジュビロ磐田の試合が放映されていたので、しばし観戦することに。後半30分過ぎのジュビロ1点リードという場面から見ていたが、「なんとか逃げ切れそう」と思った矢先の後半42分、相手のエースストライカー崔にゴールを決められた。ほどなく搭乗のアナウンスがあり、肩を落としながら札幌行きに乗り込んだ。
21時の札幌行きは「エア・ドゥ」運行のコードシェア便で、もちろん超割運賃で乗れるが、素人目にもいつもと様子が違って見えた。シートの色、CAさんの制服、シートポケットに入っている冊子など、なにからなにまで新鮮である。たまには気分を変えて、他社運行便を乗ってみるのもいいなと思った。
1日目は千歳から札幌市内まで電車で移動して終了。ホテルで寝ている間に‘こむらがえり’を起こしてしまい七転八倒したが、翌朝の移動の際にも時々ズキズキ痛んで難渋した。
さて2日目は、その足をかばいながら地下鉄東豊線で終点栄町まで移動し、バスに乗り継いで丘珠空港に到着した。100万人都市の札幌市内にある空港とはとても思えない鄙びたローカル空港で、滑走路も短くプロペラ機のみ就航している。この夏YS-11で初めてプロペラ機に乗った私にとっては、これから乗ろうとしているDHC-8(ダッシュエイト)はもちろん初めての機材だった。シート配置は2-2で観光バス的な感じだが、進行方向右手の1列目と2列目のシートが向かい合っており、「鈍行列車(?)」を連想させるクロスシートであった。

道東の自然豊かな根室中標津空港。空の青さと広さが印象的


道東では紅葉まっさかりだった


霧の摩周湖も今日はくっきり


阿寒湖も上空から見渡せた


リムジンバスで千歳空港に向かう

根室中標津空港はナナカマドが色づき、晩秋の日差しがやさしく包んでいた。ここを拠点に道東を旅したら、どれほどいいかとは思うが、現実は25分で折り返さなければならない。せめてもの慰めに、機内から北の大地に広がる紅葉まっさかりの森林を撮ったり、「霧の摩周湖」という謳い文句とは裏腹に今日は全体がはっきり見渡せる摩周湖や、マリモで有名な阿寒湖を上空からカメラに収めたりしていた。
そうこうするうちに再び札幌の町が眼下に広がり、定刻より少し遅れて丘珠空港に戻ってきた。
今度は札幌駅までバスで直行することにする。往路にも乗車した北都交通のリムジンバスに乗り、札幌駅を目指した。いつもの日曜日と同じパターンでFMラジオの「ハート・オブ・サンデー」を聞くが、普段と違って「AIR-G」で聞いていると思うとワクワクする。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」なんかを流していた。

今回の旅程の最北端「利尻空港」


早くも雪を被った利尻富士の頂上は雲の中。寒風が吹く利尻空港にて
札幌駅前には11時40分ころ到着した。計画ではJRの快速「エアポート」で千歳に向かうつもりだったが、丘珠空港から到着したバスのすぐ前に、千歳空港行き11時45分発のバスが発車を待っていたため、足の痛さも手伝って、何も考えずに乗り継いでしまった。しかしこのバスがとんだ食わせ物で、JRの快速なら千歳空港まで36分で行ってしまうところを、倍の70分もかかってしまう。所要時間の長さに気づいたときには後の祭りで、バスは国道36号線をひた走っていた。なぜ、これほど時間がかかるのだろうか?それは、このバスが高速走行するのは北広島ICから千歳ICまでの間で、高速に乗るまでは、札幌市南部の月寒あたりで丁寧に乗客を拾っていくからである。時計と睨めっこで、かなりイライラしながらバスに乗っていたが、13時前に千歳空港に着き、事なきを得た。
バスに乗ったおかげで昼飯は食いそびれてしまったが、次の予定は今回の旅程で最北端の地・利尻までの往復。旅のハイライトを前に身が引き締まる。利尻への機材も中標津同様DHC-8で、千歳空港では必ず沖留めされるため、バスでの搭乗となる。機内に入って指定された座席に腰を下ろした途端、今までの気疲れで眠ってしまい、目覚めると稚内上空だった。稚内の南方で飛行機は左に大きく旋回し、日本海に浮かぶ利尻・礼文の島々に向かう。利尻富士はうっすら雪化粧をしていた。
わずかな折り返しの時間を利用して記念撮影をしたが、建物の外に出ると冬の季節風のような風が吹き荒れ、我慢できないほど寒い。気温は8℃と機内でアナウンスがあったが、体感温度は氷点下といったところである。
利尻からは最南端・石垣島へ向けて一直線である。利尻〜千歳〜富山〜羽田〜関空〜石垣と乗り継いで、石垣到着は20時間後の明朝11時前である。こうして考えてみると、日本も広いと感じる。
最初の乗り継ぎ地点の千歳空港では、先ほど食いそびれた当地名物の札幌ラーメンを食べることができて、しごくご満悦である。その後わずかな時間であったが、カードラウンジに寄り、日曜日の夕方のルーティン作業である「トーキングFM」に耳を傾けながら、たばこの吸いだめをしていた。

千歳空港では定番の札幌ラーメン試食


富山空港にて闇に紛れる筆者


出発時刻を過ぎても長蛇の列が続く

富山空港では、18時50分発のJAL658便(B767使用)と、私が利用しようとしているその後の19時10分発のANA892便(こちらもB767使用)の2便の東京行きの乗客が入り乱れて大変なことになっていた。セキュリティチェックを待つ人の列が延々と伸び、ついには出発予定時刻の19時10分を過ぎてしまった。その時間を利用して100円10分のインターネットPCから自身のHPの掲示板に書き込んだので、けっこうその時のあたふたした感じが伝わっているかもしれない。
結局15分ほど遅れて出発したものの、羽田での待ち合わせ時間で吸収することができ、今日最後の搭乗となる関空行きANA975便は定時に出発した。この便を待つロビーのテレビでも、機内のNHK第1放送のラジオサービスでも日本シリーズ第6戦の中継を聞き盛り上がっていたが、機内アナウンスでもわざわざ「第1チャンネルにて日本シリーズの中継を放送しております」とやっていたのにはビックリした。

今回の旅程の最南端「石垣空港」

翌朝、関西空港にほど近い日根野駅前のホテルで目覚めると快晴。今日は、この旅で唯一、空港を離れて散策をする時間を持つので、天気がいいに越したことはない。ホテルの無料送迎バスで空港に向かい7時半前にはチェックイン完了。月曜の朝だというのに閑散とした搭乗ロビーで、ビジネスムードには程遠い、浮かれた感じの乗客に混じって石垣行きの出発を待った。
関空から石垣までは3時間近いフライトだったが、四国から宮崎、鹿児島湾上空から南西諸島の島々へという感じで、適当に景色が楽しめたので退屈することはなかった。石垣島着陸直前がハイライトシーンで、珊瑚礁とエメラルドグリーンの海を見て、私は思わずリゾート気分になってしまい、高中正義の「ブルー・ラグーン」のギター・フレーズを口づさんでいた。
石垣空港に到着してみると、10月も末だというのに行きかう人々は「Tシャツ・短パン」の夏の格好で、「ジャケット&スラックス」の私は違和感があり、正直恥ずかしくなってしまう。すぐにジャケットをコインロッカーに押し込み、シャツの袖をたくしあげた。

珊瑚礁の海を見ながら思わず高中正義の「ブルー・ラグーン」を口づさむ


石垣空港では「八重山そば」を試食


八重山諸島独特の様式美。「宮良殿内」の赤い瓦に異国情緒を感じる

特に下調べもなく島に到着したので、とりあえず案内所で地図をもらい、海辺まで歩くことにする。気温は27〜8℃はあるようで、ものの2〜3分も歩くと汗がにじんできた。空港から港に向かう「バイパス」と呼ばれる道を20分ほど歩いて、ようやく浜辺に到着した。珊瑚礁の海のようだが、ちょうど引き潮の時間らしく「鬼の洗濯板」のようになっていた。ちょっと南のリゾートっぽくない浜辺であったが、ようやく訪れた「旅らしいひととき」を存分に楽しんだ。
浜辺から再び20分ほど歩いて、石垣港エリアに到着。日本国中どの島にも当てはまるが、その島の一番大きな港に、その島の一番の繁華街がある。それは飛行機の時代になっても変わらない。そんなことを思いながらバスターミナルに向かった。ターミナルで時刻を確認すると、次に搭乗予定の13時45分の沖縄行きに間に合う空港行きのバスは、1時間以上前の12時40分発!それほどゆっくりしていられない。ローカル・ダイヤを呪った。

沖縄県民悲願の鉄道「ゆいレール」

少しでも石垣島らしいところを見ておこうと、地図を確認すると、歩いて5分ほどのところに「宮良殿内(メーラドゥヌズ)」という国指定文化財を見つけた。さっそく歩き出すと、ここに着くまでの裏通りにも、異国情緒があふれていた。石垣で囲まれた赤瓦の屋根の家が点在し、旅気分を十分堪能できた。宮良殿内は王族時代の士族屋敷らしく、立派な門構えが印象的だった。文化財である庭園はたいしたことなかったが…。
さて、ここが旅の折り返し点。もう少しゆっくり島を見て回れれば良かったが、そうもいかず予定のバスに乗って石垣空港へ。空港では名物の麺類を食べるのが日課になってしまったが、ここでは「八重山そば」を注文した。以前一度だけ食べたことのある「ソーキそば」に似た、うどんを細くした麺で、「蕎麦」だと思って食べるとどうにも違和感がある。関西風の薄口仕立ての汁だったので、関西の人の口には合うかもといった感じだった。

宮古空港は赤い瓦の民俗風建築

わずか15分間の滞在で折り返す

広島行きのポケモン機と沈みゆく太陽

最後の乗り継ぎ地点・広島空港
あとは、ひたすら飛行機を乗り継ぐだけ。まずは石垣から沖縄へ。この秋に開通した沖縄県民悲願の鉄道(モノレール)「ゆいレール」をカメラにおさめて、後ろ髪ひかれる思いで宮古へ。ゆいレールはいずれ乗りに来なければなるまい。
この日の沖縄地方の飛行機はどういう訳か、のきなみ15分くらいずつ遅れていて、初日の大島往復の時と同様に、宮古往復の機内でもCAさんにぴったりマン・マークされてしまった。修行の旅のつらいところである。結局、宮古島の滞在は15分に短縮されてしまい、民俗風に建てられたターミナルビルを背景に、記念写真を撮っただけで戻ってくるハメになった。宮古島も宿題として積み残してしまった。
次の広島行きも15分ほど遅延するという案内があり、その広島行きとなるポケモン・ジェットのすぐ横を沈んでゆく太陽を見ながら、旅の終わりの感慨に耽っていた。浜松より1時間以上も遅い日没の後は、2便にわたるナイト・フライト。広島発羽田行きの機中のオーディオサービスで、ダイエーが日本シリーズを制した瞬間に立ち会った。
羽田には22時10分ころに到着。浜松まで行く新幹線の最終が出た後なので、往路同様「ムーンライトながら」乗車となる。浜松到着は3時23分。辛いところである…
<つづく>

日本全国修行の旅Aへ

旅と音楽のこころへもどる