加 藤 友 信 の
My Favorite Albums

2 0 0 2 年 版


                     
2002年1月 『Glass Houses』 Billy Joel (1980)
@You May Be Right (ガラスのニューヨーク) EI Don't Want To Be Alone (孤独のマンハッタン)
ASometimes A Fantasy (真夜中のラブコール) FSleeping With Television On (チャンスに賭けろ)
BDon't Ask Me Why G(C'etait Tol) You Were The One
 (愛の面影<セテ・トア>)
CIt's Syill Rock And Roll To Me
 (ロックン・ロールが最高さ)
HClose To The Borderline (ボーダー・ライン)
DAll For Leyna (レイナ) IThrough The Long Night (ロング・ナイト)
新コーナーの一作めの紹介は、私が初めて買ったレコードにします。
1980年春、中学2年生になった私は、ラジオから流れる、ガラスが割れる音に続いて始まるロック・ナンバーに衝撃を受けました。それが1曲目の「ガラスのニューヨーク」。続いて当時放映されていた「ヤングOH!OH!」の洋楽紹介のコーナーで流れた、この曲のプロモーションビデオを観て、この曲を歌っているビリー・ジョエルに憧れてしまいました。スタンドマイクを振り回し、ずり落ちるサングラスを何度も上にあげながら熱唱する姿に、素直に「カッコイイ」と思ってしまいました。
で、生まれて初めてのレコード購入となったのですが、今でもBなんか聴くと新鮮な気持ちになれます。また、Cはビリー・ジョエル自身にとって念願の初の全米1位の曲で、ストレートなロックンロールが当時のアメリカ国民に受けたのでしょう。
アルバムの流れとしては、「ストレンジャー」「ニューヨ−ク52番街」のメロディアス路線から一転ロックンロール路線に変わりました。これについては当時、賛否両論あったようですが、その頃のビリー・ジョエルには「このままバラードをずっと作らなければいけないのか」というプレッシャーがあり、それを打破するためにロックに思いの丈をぶつけたと見ることができます。
2002年2月 『Middle Man』 Boz Scaggs (1980)
@Jojo DMiddle Man
ABreakdown Dead Ahead EDo Like You Do In New York
 (イン・ニューヨーク)
BSimone (シモン<僕の心をもてあそぶ>) FAngel You
CYou Can Have Me Anytime
 (トワイライト・ハイウェイ)
GIsn't It Time
HYou Got Some Imagination
2回続けて1980年発表のアルバムを紹介します。この2枚ともレコード(CDではない)で持っています。
さて、ボズ・スキャッグスの「ミドル・マン」ですが、AOR全盛時代にそのAORの王道を行くアルバムとして発表されました。ご多分にもれず私がAORにのめり込むきっかけとなった一枚でもあります。聴き始めた当初はデビッド・フォスターが楽曲とアレンジを担当していることもあり「洗練された音だなぁ」と率直に感じました。またバックを固めるTOTOを中心としたメンバーが、タイトなリズムを刻み心地よいサウンドとなっています。
聴きどころはA面で、歯切れのいいリズムで音抜けのよい「Jojo」、ストレートなロックの「Breakdown Dead Ahead」と続き、「Simone」に至ります。この「Simone」はボズの絡みつくようなボーカルとデビッド・ペイチのアコーディオン調のシンセサイザーのアンサンブルが素晴らしく隠れた名曲といえます。そしてA面ラストを飾る「トワイライト・ハイウェイ」は名曲「We're All Alone」を彷彿とさせるバラードで2月の夕暮れに聴くとかなりハマります。B面ではディストーションの効いたスティーヴ・ルカサーのギターが魅力の「Middle Man」とローズマリー・バトラーとの掛け合い的デュエットでノリの良い「エンジェル・ユー」が私のお気に入りです。
いずれにしても80年代AORを語るには欠かせない名盤でオススメの一枚です。
2002年3月 『Side Line』 おニャン子クラブ (1987)
@STAND UP E春一番が吹く頃に
A雨のメリーゴーランド Fポップコーン畑でつかまえて
Bハートに募金を Gあんまりじゃない?〜恋なし子〜
C星のバレリーナ Hあなただけ おやすみなさい
D新・新会員番号の唄 Iワンサイド・ゲーム
1月、2月のこのコーナーの路線から一転、一世を風靡したアイドルグループの登場です。というのも毎年恒例の「Spring Tour」に欠かせないアルバムとなっているからです。
1987年の4月、山陰線鳥取から土讃線高知へ一夜の間に移動する旅をしました。それ以来15年間、毎年春になると旅をしたくなり、嵩じて恒例行事になった訳です。その最初の旅に持っていったカセットテープのうちの一本がこのアルバムで、それ以来「Spring Tour」といえばこのアルバムということになってしましました。
このアルバムはアイドルグループのアルバムと評してしまうには惜しい一枚で、実に多様な楽曲から成り立っています。最初から3曲目まではノリのいいロック(ポップス)で軽快に始まり、さぁ旅に出ようという気にさせてくれます。Cは一転マイナー調でカッコイイ曲に仕上がっています。Dはファンサービスのための曲なので飛ばして、B面1曲目。これがこのアルバムの中で一番の名曲で、特に高井麻巳子さんのボーカルが泣かせます。車窓の桜を見ながらの旅にハマリます。Fはお世辞にも上手いとはいえない渡辺満里奈さんのボーカルですが、なぜか心がなごみます。秋元康さんの詞の世界にもどっぷり浸かれます。Gはシンセベースのリズムが往年のテクノポップを連想させる異色の一曲。Hはフィルスペクターか大瀧詠一かというようなサウンドで、8分の6拍子のスローテンポともあいまって幻想的な曲に仕上がっています。そしてラストは軽快なロックで締めるという構成で、D以外はトータルで聴きたいアルバムに仕上がっています。
また、今年もこのアルバムを聴きながら花見の旅に出たくなりました。ところでこのアルバム、CD化されてんのかな?
2002年4月 『TOTO W』 TOTO (1982)
@Rosanna EAfraid Of Love
AMake Believe FLovers In The Night
BI Won't Hold You Back GWe Made It
CGood For You HWaiting For Your Love
DIt's A Feeling IAfrica
このアルバムを始めて聴いた時のことは鮮明に覚えています。というのも中学を卒業し、高校に入学する間の春休みに初めて上り大垣夜行に友人と一緒に乗った晩が初めて出会った瞬間だからです。その晩、天竜川駅で東京行きの夜行列車を待ちながら聴いていたFMラジオの番組でこのアルバムを特集していて、「いいアルバム」だなぁと思いながら聴いていました。
中学時代からTOTOというグループが好きで、新しいアルバムも期待していたのですが、この「W」は前3作以上の出来栄えで今でもTOTOの最高傑作だと思っています。世間的にも評価が高く、リリース翌年のグラミー賞で最優秀ロックアルバム賞等を受賞しています。
さて内容ですが、全編にわたって故ジェフ・ポーカロの繰り出すリズムは変拍子で、ロックアルバムとしては異例のことでした。まず1曲目の「ロザーナ」の厚みのあるサウンドに度肝を抜かれます。続いての「メイク・ビリーヴ」も変拍子。3曲目の「ホールド・ユー・バック」は春の海の夕暮れが似合うバラードで、これは正統派です。4、5曲目とクールなサウンドが続きA面が終了。B面はハードなロックのメドレーで始まりますが、これもリズムは単純な8ビートではありません。「ウィ・メイド・イット」は爽やかなロックンロール。そしてラス前の「ユア・ラヴ」がこのアルバム中最もリズムをとりにくい曲で、アマチュアバンドには真似できない芸当でしょう。そして最後の曲は全米1位に輝いた「アフリカ」。この曲の詩を噛み締めた高校時代でした。
この「W」というアルバムは、あなたの好きなアルバムを挙げてと言われた際に真っ先に連想するアルバムであり、またリリースから20年経った今でも、私がオーディオのサウンドチェックに使うほど高音質のアルバムであります。まだ聴いたことがないという貴方はぜひご試聴を・・・
2002年5月 『Long For The East』 松岡直也 (1984)
@The Latin Man DThe End Of The Way(この道の果てに)
ALong For The East EA Pastoral
BNuage FThe Prime Of Life
CA Head Wind
このアルバムが発表されたのは1984年の暮れで、私の暗黒の受験生時代でした。年が明けた2月の京都への受験旅行の際にもこのアルバムをお供に連れて行きました。そして晴れて大学生となり下宿生活が始まったのですが、初めての帰省で故郷に帰る東名バスでこのアルバム聴いた時が最も印象的でした。ゴールデンウィークを利用しての帰省だったのですが、牧の原台地の大茶園の鮮やかな新緑が、このアルバムの持つ爽やかさと相まってウキウキしたものです。
1曲目は松岡直也さんらしからぬボーカル入りの曲ですが、A面の2曲めから4曲めにかけてが爽やかで、つながりが良く薫風の中でのドライブにピッタリはまります。B面1曲目はこのアルバムの佳境というべき曲で特に和田アキラ氏の奏でるギターソロに当時の私は憧れてしまいました。一転、次の曲は静かな曲調となります。前作「夏の旅」で「田園詩」として発表された曲のセルフカヴァーで、前作とはまったく異なったイメージとなっています。最後の曲は陽気なラテンのノリでこのアルバムを締めくくっています。
フュージョンのアルバムはいくら名作であっても、その中に1曲くらいは「使えない曲」が入っているものですが、このアルバムは全曲聴き応えがあり、松岡直也さんのリリースした数多くのアルバムの中でも最高傑作といっても過言ではないアルバムだと思います。
2002年6月 『MELODIES』 山下達郎 (1983)
@悲しみのJODY(She Was Crying) Eメリー・ゴー・ラウンド
A高気圧ガール FBlue Midnight
B夜翔(Night-Fly) Gあしおと
CGuess I'm Dumb H黙想
Dひととき Iクリスマス・イブ
1983年の6月、私が高校2年生の時に初めて遠征試合を経験しました。遠征といっても隣の愛知県に行くだけなのですが、初の遠征ということで期待と緊張が入り混じって気分が高揚していました。ちょうどその頃このアルバムがリリースされ、今でも1曲目の「悲しみのJODY」を聴くと、曇り空の愛知池ボート場の情景が目に浮かんできます。2曲目の「高気圧ガール」は当時の航空会社のCMのタイアップ曲で、6月の声を聞くと今でも通信カラオケで歌っています。「こ〜ぉきあつぎゃぁ〜るぅ」と巻き舌で歌うのがポイントです。BCと佳曲が続きDは現在の達郎氏の曲にもつながる「癒し系」の曲です。
B面に入ってEはチョッパーベースのイントロから始まるファンキーなナンバーで当時の達郎氏のアルバムには必ず1曲はこういう曲が入っていました。FGHといかにもB面らしいミディアムテンポの静かな曲が続きますが、中でも「あしおと」はサビからの歌い出しが印象的です。山口百恵の「横須賀ストーリー」以来、倒置法とも呼べるこのような構成の曲にはまってしまっています。そしてラストを飾るのは名曲「クリスマス・イブ」。およそ20年前の曲とは思えない味わいのある曲で皆さんもよくご存知でしょう。当時、達郎氏のイメージは「夏」でしたが、この曲によって一気に「クリスマス」のイメージに変わりました。当時達郎さん自身も「自分は夏のイメージだから、クリスマスにも聴いてもらえるようこの曲を書いた」とコメントしていました。それにしても「高気圧ガール」と「クリスマス・イブ」という季節的に正反対の曲が同居していることが興味深いアルバムです。
2002年7月 『A LONG VACATION』 大滝詠一 (1981)
@君は天然色 E雨のウェンズデイ
AVelvet Motel Fスピーチ・バルーン
Bカナリア諸島にて G恋するカレン
CPap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語 HFUN×4
D我が心のピンボール Iさらばシベリア鉄道
1981年リリースの日本音楽史に残る名盤なのですが、私にとっての思い出は1985年の7月頃にあります。当時大学1年だった私は悪友の下宿に入り浸って麻雀に明け暮れる日々でした。その友人の下宿のミニコンポからエンドレスで流れていたのがこのアルバムです。無論エアコンのない4畳半の部屋で男4人が集まって卓を囲んでいるわけで、ムシ暑さはピークの状態。そんな中このアルバムが一服の清涼剤となっていた訳です。
全編名曲揃いのアルバムなのですが、私の好みはA、BそしてEです。「Velvet Motel」は夏のリゾートにぴったりで、長い夏休みが取れなくても3分少々でリゾート気分に浸ることができます。「カナリア諸島にて」は、さくらももこさんがエッセイで「ミカンの輪切りの唄」と書いているのが印象的です。なんでもこの曲の名前がわからないままレコード屋さんに行き、うろ覚えの歌詞を店員さんに説明するのに「ミカンの輪切りを紅茶に浮かべるような歌詞の曲が入ったレコードなんですけど・・・」とやったようです。「雨のウェンズデイ」は歌詞が秀逸です。やはり梅雨時の今がちょうど聴きどきでしょう。
21年も前の日本でこんなアルバムを作ったなんて、やっぱり大滝さんの偉大さを感じずにはいられません。
2002年8月 『ABBEY ROAD』 The Beatles (1969)
@Come Together FHere Comes The Sun
ASomething GBecause
BMaxwell's Silver Hammer HYou Never Give Me Your Money
COh! Darling ISun King
DOctopus's Garden JMean Mr Mustard
EI Want You(She's So Heavy) KPolythene Pam
LShe Came In Through The Bathroom Window
MGolden Slumbers
NCarry That Weight
OThe End
PHer Majesty
1982年の夏休み、所属していたボート部の合宿で浜名湖畔の村櫛に私は来ていた。昼間のハードなトレーニングを終えて、夕方ユースホステルの大部屋でひと休みをしていた。西日のきつい蒸し暑い部屋でFMラジオのスイッチを入れると「ヒア・カムズ・ザ・サン」が流れてきた。20年経った今でもこの夏のひとこまの情景は忘れられない・・・
この夏休み、NHK-FMで夕方にビートルズの全曲を何日間かにわたって特集していて、私はすっかりビートルズ通になってしまいました。そして、この思い出があるために「ビートルズで一番好きなアルバムは?」と聞かれると、決まって「アビー・ロード」と答えています。ビートルズが最後に作ったアルバムとして知られていますが、内容も実に濃いものになっています。A面はジョンのシャウトも聞ければ、リンゴのほのぼのとした歌声も聞けます。でも最もお気に入りは「サムシング」でしょう。ジョージ・ハリスンの淡々とした歌いっぷりが静かな曲調にマッチしています。
そしてB面は春を待つ曲なのに夏の思い出になってしまった「ヒア・カムズ・ザ・サン」から始まり、クラシックを思わせる曲調の「ビコーズ」へと続きます。そして次からが当アルバムの売りどころの壮大なメドレーとなります。
Mの「ゴールデン・スランバーズ」から始まる3曲のメドレーは黄昏時に聴くとハマリます。ポール・マッカートニーが自身のソロ・ライヴでも必ず最後に取り上げているので、まだ原曲の雰囲気を彼のライヴで感じ取ることが出来るかもしれません・・・ただし「ジ・エンド」でのジョン、ポール、ジョージによるギターの再現は永久に無理ですが。
全世界に多大な影響を及ぼしたビートルズの最高傑作として「アビー・ロード」は必ず持っておきたいアルバムのひとつです。
2002年9月 『Songs In The Attic』 Billy Joel (1981)
@Miami 2017 (Seen The Lights Go Out On Broadway) FSay Goodbye To Hollywood さよならハリウッド
ASummer, Highland Falls 夏、ハイランド・フォールズにて GCaptain Jack
BStreetlife Selenader 街の吟遊詩人は… HYou're My Home 僕の故郷
CLos Angelenos ロスアンジェルス紀行 IThe Ballad Of Billy The Kid さすらいのビリー・ザ・キッド
DShe's Got A Way JI've Loved These Days 楽しかった日々
EEverybody Loves You Now
私は秋になるとライヴアルバムを聴きたくなります。このルーツを辿ると1981年に発表された2枚のライヴアルバムに行き着きます。当時中学3年生だった私は、夏で部活動を引退したため、15時半ころ学校を終わると真っ直ぐ家に帰り、16時から始まるNHK-FMの「軽音楽をあなたに」という番組を欠かさず聴いていました。9月の終わりか10月の初めか定かではありませんが、ライヴアルバムの特集をしていて、そこで取り上げられたうちの1枚がこの「Songs In The Attic」だった訳です(もう1枚は来月紹介の予定)。
澄み渡った青空を窓越しに見ながら聴く、そのライヴサウンドは耳に心地よく、それ以来「ライヴアルバムを聴くなら秋!」となった次第です。
このアルバムの1曲目で取り上げられている「マイアミ2017」はその当時から好きな曲だったのですが、奇しくも昨年9月11日の「同時多発テロ」を連想させる歌詞だったため、テロ以降さまざまなところで流れました。皆さんも耳にしたことがあるかもしれません。メロディアスなピアノのイントロから始まるのですが、途中で軽快なロックに転調し、再度エンディングでピアノに戻るという壮大な流れが印象的です。この曲をはじめ何万人収容のアリーナで収録されたF、Gなどはライヴならではの残響感がすばらしく出ていて迫力があります。その一方で、Cなどはこじんまりとしたカフェで収録されたらしく、食器の「カチカチ」という音まで入っており、これまた素晴らしく臨場感があります。
ライヴアルバムは通常「ベスト盤」的な趣があるのですが、このアルバムの収録曲はまさに「押し入れの奥から引っ張り出してきた曲」ばかりで当時話題となりました。いまでもビリー・ジョエルのそのセンスの良さに惹かれます。
2002年10月 『Captured』 Journey (1981)
@Majestic JDo You Recall
AWhere Were You KWalks Like A Lady
BJust The Same Way LLa Do Da
CLine Of Fire MLovin', Touchin', Squeezin'
DLights NWheel In The Sky
EStay Awhile OAny Way You Want It
FToo Late PThe Party's Over(Hoplessly Love)
GDixie Highway
HFeeling That Way
IAnytime
前月に引き続きライヴアルバムを紹介します。先月のエピソードの時に聴いたもう1枚がジャーニーのこのアルバムです。おそらくジャーニーの最高傑作のアルバムである「エスケイプ」がリリースされる直前のことですので、その前作「ディパーチャー」までの各曲が収録されています。
Oの「お気に召すまま」やその前作「インフィニティ」の代表曲であるN「ホイール・イン・ザ・スカイ」も、もちろんいいのですが、このアルバムの魅力はもう少し別のところにあります。
ライヴならではのメドレーであるD「ライツ」からE「ステイ・アワイル」などは、「どこから曲が変わったの?」と思えるほどスムーズに曲がつながっていて感心します。別の見方をすれば似たような曲を作っているということですが・・・。
また、H「フィーリング・ザット・ウェイ」とI「エニタイム」などはコーラスが美しくスタジオレコーディングよりも、このライヴアルバムがベストテイクと思わせます。いかに彼らの実力が高いかという証左でもあります。
しかし、なんといってもライヴアルバムの魅力はその迫力にあります。私がその中でも気に入っているのはG「デキシー・ハイウェイ」のドライブ感あふれる演奏です。ニール・ショーンのギターとスティーヴ・ペリーのハイトーンのヴォーカルが絡み合い、聴いている者をグイグイ引っ張っていくような曲です。秋空の下のドライヴのお供にいかがでしょうか?
2002年11月 『Tapestry』(つづれおり) Carole King (1971)
@空が落ちてくる F君の友だち
A去りゆく恋人 G地の果てまでも
Bイッツ・トゥ・レイト Hウィル・ユー・ラブ・ミー・トゥモロー
C恋の家路 Iスマックウォーター・ジャック
Dビューティフル Jつづれおり
E幸福な人生 Kナチュラル・ウーマン
言わずと知れた70年代を代表する名盤なのですが、私がこのアルバムと出会ったのは意外と遅く1996年の晩秋だったと思います。部屋に差し込む午後のひだまりの中、まったりとした時間を過ごしたのを覚えています。そして忘れられないのはその年の12月の東北地方への旅のひとこま。ストーブ列車で有名な津軽鉄道に乗った時に、彼女の歌声を聞きながら、その暖かなストーブを囲んで心が和む瞬間を過ごしました。
最近TVCMで使われ耳に馴染みのある@Aから、このアルバムの中で私が最も好きなB「イッツ・トゥ・レイト」へ続く流れでキャロル・キングの世界へ否応なく引き込まれます。「イッツ・トゥ・レイト」はさまざまな曲のパーツがひとつに上手くまとまっており「つづれおり」のタイトルどおりの曲といえるでしょう。
いかにもキャロル・キングらしい曲調のCDを挟んで、E「幸福な人生」は雪原を走る鈍行列車で聴くのにお似合いなスローテンポの曲で、この曲を聴くと津軽平野の真っ白な世界が甦ります。
B面は名曲「君の友だち」から。この曲はジェームス・テイラーの歌で以前から馴染んでいたのですが、彼のものよりこちらの方が重厚感があります。ピアノの弾き語りというスタイルがそうさせているのでしょうか…。一転Gは軽快な曲で展開をはかり、Hはこれまた名曲「ウィル・ユー・ラブ・ミー・トゥモロー」。やさしく歌い上げる彼女の歌に30歳代の女性がハマッてしまうのもよくわかります。
Iを軽く歌った後がタイトルチューンの「つづれおり」。「My Life Has Been A Tapestry…」から始まる曲ですが、私は人生で苦しい事があった時に、この曲の冒頭の部分を知らぬ間に口ずさみ勇気付けられました。そしてラストはK「ナチュラル・ウーマン」で静かに終わっていくという構成です。
私はこのアルバムを取り上げるために、このコーナー「My Favorite Albums」を立ち上げたといっても過言ではありません。お気に入りのアルバムは?と聞かれて真っ先に思い浮かぶものが「つづれおり」です。このアルバムを聴くのにいい季節は、やはり晩秋から冬でしょう。70年代の名盤はアコースティックで心が温まります。
2002年12月 『Double Fantasy』 John Lennon & Yoko Ono (1980)
@(Just Like) Starting Over GWatching The Wheels
AKiss Kiss Kiss HI'm Your Angel
BClean Up Time IWoman
CGive Me Something JBeautiful Boys
DI'm Losing You KDear Yoko
EI'm Moving On LEvery Man Has A Woman Who Loves Him
FBeautiful Boy (Darling Boy) MHard Times Are Over
かろうじてリアルタイムで間に合ったジョン・レノンだったのですが、彼は1980年12月8日に凶弾に倒れてしまいました。ちょうどこの「ダブル・ファンタジー」が発表された直後の出来事で、この事件の直後からラジオでは24時間体制でこのアルバムを掛け続け、彼の死を悼んだものです。それ以来12月になるとこの「ダブル・ファンタジー」を聴きたくなるのですが、個人的にはオノ・ヨーコの部分は飛ばして聴きたくなるのも事実です。というのも、このアルバムはジョン・レノンとオノ・ヨーコの合作という形になっており、1曲ずつ交互にボーカルをとっているのですが、いかんせんオノ・ヨーコの部分は音痴で下品な楽曲であるため聴くに堪えないからです。
現在でも彼の命日前後になるとよくラジオから流れてくる@「スターティング・オーバー」やI「ウーマン」は、彼の「イマジン」とも勝るとも劣らない不朽の名作なのですが、このアルバムに収録されているオノ・ヨーコの曲は今までオン・エアされているのを聴いたことがありません。特にAは我々日本人が聞くには直接的すぎて「なんだかなぁ」という感じです。まぁ逆説的にいえば、間にオノ・ヨーコの曲が挟まっているということでジョン・レノンの良さが際立つのかもしれませんが・・・
このアルバムの中での私のお気に入りの曲は@、D、F、G、I、Kですが、私が最も好きなジョン・レノンの曲は「ラヴ」であることも付け加えておきましょう。この曲が陰鬱で寒々しい12月の曇り空に最も映える心温まる曲だと思っています。12月は私の誕生月でもありますので、より一層思い入れが強まります。

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