新東名開通記念

Roll On Down The Highway


細切れの京都縦貫道を走り由良川PAに到着

2012年4月14日(土)15時、晴れて新東名高速道路 御殿場JCT〜浜松いなさJCT間と引佐・清水の各連絡路合計162`が開通した。一度に開通する長さとしては過去最長だそうだ。静岡県民にとって、そんな輝かしい瞬間が来る数時間前に、私は東名に乗って静岡県を脱出した。時折大粒の雨が降る、しょぼい春の朝だった。

渋滞の名所だった東名岩津バス停付近は、昨秋の集中工事の時に暫定3車線化され、ほとんど渋滞することは無くなった。代わりに車線が狭くなり制限速度が60`になってしまった。しかし名阪国道同様、ここを制限速度で走っているとかえって危険な目に遭う。かくして、この区間は道幅は狭い、路肩も狭い、大型トラックに追い立てられるという「3車線地獄」となり、極度のストレスを強いられることになった。それでも、ここは流れるだけまだマシな方。東名阪の四日市JCT〜四日市IC間は休日になると必ず渋滞し、一部区間は3車線化したものの焼け石に水。改めて今春のリフレッシュ工事から車線幅を狭め、路肩を削る「3車線地獄」化工事を行う予定だ。今回のドライブでも高速道路上で渋滞していたのは、この区間だけで、四日市JCTの流入から四日市ICを抜けるまでに30分以上かかってしまった。早く並行する新名神を整備して欲しいものだ。


数々の映画やドラマの舞台となった伊根町の舟屋(重要伝統的建造物群保存地区選定)。民家が海に浮かんでいるように見える

快適な新名神から旧態依然の名神に入り、少し先の大津あたりから行楽渋滞が始まるという情報を得た。もとより京都市内には入らず、大山崎ICから京都縦貫道の沓掛ICへショートカットするつもりだったので、瀬田から京滋バイパスに入った。一度でも走った事のある人は知っているはずだが、この京滋バイパスも不当に疲れる道である。道幅が狭く、路肩が無い上に、アップダウンが多くてカーブがきつい。その上、大型トラックの通行量が多いので、前後左右をトラックに囲まれて息が詰まりそうになる。そのくせ宇治トンネルを抜けて平野部に出ると、今までの地獄絵がウソのようにスイスイ走れるので、いかにコロニー状態で走っていたのかがよく分かる。

大山崎ICの複雑なランプウェイを抜けて下道へ。ここから約11`一般道を走る。まずは国道171号を京都方面へ。信号に引っ掛かりながらも大きな渋滞もなく向日町へ。左折し、生活道路に毛の生えたような県道を走るが、東海道線のガードをくぐるところで渋滞。ようやく信号で右折するも、交通量が多くペースが上がらない。右手に洛西竹林公園が見えた。この辺一帯は竹林が多く、「竹の里」という地名も見られた。そういえばエジソンが発明した白熱電球は、ここから南に数`ほどの八幡市の竹をフィラメントにして成功したという。昔の京都はこんな竹林が多かったんだろうなと思った。そうこうしているうちに案内標識に「国道9号線」の文字が見え始め、国道9号に入れば「京都縦貫道」の緑の案内板が目立つようになる。大山崎ICを出て30分。再び高速道路に流入した。

京都縦貫自動車道は4年前に前の愛車であるコロナで走っている。そのドライブは新名神開通直後だったので、今回のドライブとも意外なところでつながりがある。4年前と同様に沿線唯一の丹南PAで休憩を取り、終点の丹波ICまで走り抜けた。国道9号線を2`ほど走ってすぐに国道27号に分かれる。山陰線は概ね国道9号線と並行しているが、京都縦貫道の未開通区間である京丹波町内は、今走っている国道27号線と寄り添うように走っている。安栖里駅の周りには満開の桜の木が立っており、今から25年前の4月に山陰本線を鈍行で旅をした時のことを思い出した。

京丹波わちICから再び京都縦貫道に入る。上下各1車線の対面通行だが、交通量が圧倒的に少なく走りやすい。ここでも沿線唯一の由良川PAで休憩をとって、天橋立・伊根の舟屋周遊の体制を整えた。宮津天橋立ICを通過し、カーナビに無い地蔵トンネルを抜けて終点の与謝天橋立ICで高速道路を下りた。

すっかり晴れ上がった春の午後。国道178号線を北上する。傘松公園のケーブルカーや天橋立の北端を左右に見ながら先を急ぐ。ほとんどの区間は若狭湾を右手に見ながらのルートだが、バイパス区間は例によってトンネルが多くなる。3つ目のトンネルを抜けたところで右折し、伊根港方向へクルマを走らせた。


海に面していない側は普通ののどかな街並み


舟屋と舟屋の間から海がちらりと見える


舟屋の特徴である漁船のガレージ側


道の駅「舟屋の里 伊根」より伊根漁港を遠望


リゾートっぽい橋立ベイホテル


傘松公園を往復するケーブルカー


往復キップの復路は使用せず

14時過ぎに今回の旅の目的地、伊根の舟屋に到着した。漁村では全国初の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。「男はつらいよ」や「釣りバカ日誌」といった国民的映画や、NHKの連続テレビ小説「ええにょぼ」の舞台としても知られている。そういうわけで、かなりのネームヴァリューのある土地だが、伊根漁港には釣り人が数人いるだけで、観光客はまばらであった。手前の天橋立までは観光バスがばんばん入ってくるが、こちらは地味な感じなのでツアーコースに組み込みにくいのだろうか。まぁとにかく港の防波堤から対岸の舟屋群を望遠でカメラに収めた。一応これで満腹感があったが、それでもここまで来たからには実際の舟屋を見ないわけにはいかないので、クルマで移動し舟屋の町並みを歩いてみた。普通の民家が立ち並ぶ、ごくありふれた通りだが、民家の間からは海がちらちらと見えいいムード。海側に回ってみると舟屋の特徴である舟置き場が海に口を開けていた。一般的にはクルマのガレージが通り側にあるが、そいつが海側にあるところが特徴である。このような構造を見て誰もが心配するのが津波への備え。平成5年の北海道南西沖地震の時には実際に津波が来たようだが、住居部分は2階にあるため、舟は流されても命までは持っていかれなかったようである。

ひととおり舟屋群をぶらぶらした後、漁港と国道178号線バイパスの間にある道の駅「舟屋の里 伊根」に立ち寄った。土産屋と食堂がある、ごくありふれた施設だが、2階建ての切妻造がいくつか並んだような建物になっており、舟屋群をイメージしているのが分かる。山の中腹にあるので、さっき歩いてきた舟屋群を見下ろすことができ、海と山のパノラマが楽しめる。道の駅建物の脇には、さらに高所にある舟屋の里公園へ上る階段があり、一番上まで行ってみたが桜並木があるくらいで、特に見るべきものは無かった。ただ、切妻造を模した道の駅施設を見下ろすことができるので、「あぁ確かに舟屋に見える」と確認できた。

目的を果たしたので天橋立方向に戻る。伊根から今宵の宿である「橋立ベイホテル」までは20`ほど。15時過ぎにチェックインし、部屋に入った。年度末は仕事が忙しかったので、海の見える部屋でゆっくり過ごそうと思い、海側のツインルームをシングルユースで予約したが、2階の部屋をあてがわれたので、海も天橋立も部屋からはちらっと見える程度。まぁ1万円そこそこでリゾート気分を満喫しようと思っていた自分が甘かった。さっそく競馬中継を見ながら酒盛りをした。飲み進んでいくうちに眠くなり、まだ外が明るいうちにベッドに横になってしまった。こういうのも旅の贅沢なんだろうか…。

翌朝は早くに目が覚めてしまい、ネットのチェックを暗いうちからやっていたが、そのうちやる事がなくなってしまった。11時まで部屋で過ごせたが、8時にはチェックアウトしてしまった。とりあえず昨日行けなかった天橋立に行こうと思い、再び国道178号を北上。天橋立の北端にあたる府中地区までクルマを走らせた。MapFan Webによると天橋立には府道が通っており、府中側から宮津市街に通り抜けられるように見えたが、実際に現地に行くと125cc超の車両は通行止めだった。全長3.6`の天橋立を歩いて往復するのはさすがに気が引けたので、松並木をほんのさわりだけ歩き、外側のビーチ(府中海水浴場)を見てすぐにクルマに戻った。まだ朝の8時半。このまま帰途に就くのは癪なので、ケーブルカーにも乗ってしまえ。ということで、駐車代500円+ケーブルカー往復運賃640円を払い、傘松公園に行くことに決めた。

ケーブルカーの乗り場は、丸い郵便ポストと公衆電話が鎮座する普通の鉄道の駅の雰囲気。ちょうど8時45分の傘松公園行きが発車するということで、往復きっぷを購入し、そそくさとケーブルカーのボックスシートに腰を下ろした。発車ベルにつづいてタイフォンを鳴らしてケーブルカーが発車。普通の列車なら進行方向に向いて座るのが常だが、上りのケーブルカーの場合は逆向きに座らないと景色が楽しめない。桜並木の間をしずしずと上っていき、乗り場が遠ざかっていく。やがて府中の町並みの向こう側に天橋立が姿を現し、乗客から歓声が上がった。5分ほどで傘松公園に到着し、ケーブルカーを降りた。

ここは股のぞきで有名な場所で、ケーブルカー乗り場の近くにはウッドデッキの展望台が整備されている。あたりを見回すと、さらに高い場所に小倉屋という土産物屋があることが分かったので、そこまで登ってみた。小倉屋は営業していなかったが、ケーブルカーを降りた場所よりも標高が高いだけ「斜め一文字」と呼ばれている天橋立の風景が際立って見えた。ひとしきり景色を堪能したので、来た道とは別の階段を降りた。だが行けども行けどもケーブルカー乗り場にたどりつかない。そうこうしているうちに左手の上の方から9時発のケーブルカーのタイフォンが聞こえてきた。「しまった。道を間違った」と思っても後の祭り。今更、階段を上ってケーブルカーに乗るのも癪なので、そのまますたすたと坂を下り、府中のケーブルカー乗り場まで下りてしまった。というわけで、パノラマハウスほかの傘松公園自慢の展望施設は見れず仕舞。今回の教訓…@ケーブルカーは往復きっぷを売っていても片道きっぷを買うべし。A観光地では、帰りに見ればいいやと後回しにするのはご法度。


切妻の舟屋を模した道の駅建物と筆者


橋立ベイホテルの部屋は少しだけ海が見える


天橋立をクルマで通り抜けようと思ったら…


日本三景のひとつ。天橋立の碑にて筆者


白砂青松という言葉通りの府中海水浴場


丹後海陸交通 府中駅(ケーブルカー乗り場)


ドライブ中ながら短時間でも鉄道旅行気分に


レールの左右には満開の桜が咲き誇る


「斜め一文字」で有名な傘松公園からの眺め


京都福井県境の舞鶴若狭道舞鶴PAにて


三ケ日JCTからは新規開通区間を走る


浜松いなさJCTで晴れて新東名本線区間に

クルマに戻り、これからは大いなる帰り道。与謝天橋立ICから京都縦貫道に入り、綾部JCTから舞鶴若狭道に進路をとった。春のドライブのお供は、社会人2年目に編集した「Spring Tour Attendants W」というカセットテープが定番である。もっとも今ではカセットテープではなく、CDに焼いてクルマに積みっぱなしになっているが。「On The Road Version」とサブタイトルが付いているが、その名の通り「道」にちなんだ曲ばかりで構成されている。1曲目はイーグルスの「テイク・イット・イージー」、2曲目はジャクソン・ブラウンの「孤独のランナー」。この辺は初めてアメリカ本土に行った時に、インターステイトを走るバスの車内で聴いた時には感動モノであった。佳境はB面(繰り返すが今ではCDなのでそんなものはないが)で、ウイリー・ネルソンさんの「オン・ザ・ロード・アゲイン」、REOスピードワゴンの「ロール・ウィズ・ザ・チェンジズ」、バックマン・ターナー・オーヴァードライヴの「ハイウェイをぶっ飛ばせ(原題 Roll On Down The Highway)」と続くあたり。この3曲はアメリカ人のハイウェイへの憧憬がもろに出ている感じである。ボブ・ディランが1963年に“Well, I'm walkin' down the highway.”と演ってから、何かといえば「Down The Highway〜」と歌ってしまう能天気なところが好きだなぁ。「Roll On Down The Highway」なんかは、“ON”と”DOWN”という接続詞を連続させてまで、「Down The Highway〜」って歌いたかったんだろうなぁ…


浜松SAランプウェーに並ぶ車列


浜松SA渋滞の間に都田川橋の橋脚を撮影


路肩で待つこと30分。ようやく浜松SAへ


ピアノの街・浜松をイメージしたSAの建物


この写真を撮るために小1時間かかった

舞鶴PAを出ると、まる1日ぶりに京都府を脱出して福井県おおい町へ。再稼働ですったもんだしている大飯原発ってどこの話って感じるくらい、のどかな対面通行が続く。小浜ICで高速を降り、鯖街道を通って滋賀県へ。北陸道の木之本ICまで1時間半ほど下道を走った。正午前に再び高速道路に入り、米原JCTから名神高速へ。小浜で給油をして以来走り通しだったので、少し疲れを覚え伊吹PAで休憩をとった。ここからは自宅までノンストップで帰れる距離だが、最後のお楽しみが待っている…。

14時前に静岡県内に入り、走行車線を流れに乗って走る。そのうち新東名の看板が目立つようになり、案内にしたがってランプウェイへ。三ヶ日JCTより昨日開通した真新しい道路を走る。かなりの交通量だが、80`前後で流れている。奥山高原の見慣れた風景を左に見ながらのんびりとドライブ。やがて新東名の本線区間と三遠南信道を分ける浜松いなさJCTに差し掛かり、1回転と1/4の大きなカーブを回り込んでスーパーハイウェイに突入した。データを更新していないので、カーナビでは山奥の道なき道を突っ走っている。三岳山トンネルというわりあい長いトンネルを抜けると、路肩でハザードを点けている車列が見えた。浜松SAに入るクルマの渋滞である。私もその列に加わったが、サービスエリアに駐車するまでに1時間弱もかかってしまった。まぁおかげで土木学会田中賞を受賞した都田川橋を思う存分眺め、写真も撮れたので良かったけどね。浜松SAの売店はうちの会社で運営しているので、知った顔も見かけたが、芋を洗うような混雑の中、ほとんどパニック状態の客応対中だったので声を掛けるのも憚られた。そういうわけで、ピアノをモチーフにした建物をバックに愛車を撮影しただけでさっさと浜松SAから脱出した。

浜松SAから浜松浜北ICまでは片側3車線なのでスムーズに流れ、開通記念に出口で愛車を撮影。このインターは小学校区でいうと自宅の隣の学区にあるので、インターから自宅まではほんのちょっとの時間である。開通の盛り上がりが醒め、もう少し落ち着いた頃に新東名のサービスエリア巡りをするのもいいかなと思った。

ドライブの終わりに浜松浜北ICで愛車撮影

<終>

旅と音楽のこころへもどる