行 き 合 ひ の 空 | 車窓にはいわし雲〜行き合ひの空 |
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北陸新幹線が開業した2015年3月14日のダイヤ改正で、国鉄の急行型電車は全滅したと信じ込んでいた。2013年5月には無くなりつつある急行型電車を偲んで、わざわざ乗りに出掛けたこともあった。しかしついこの間、絶滅したと思っていた急行型電車が、2台だけであるが現存することを知った。七尾線で413系近郊型電車と編成を組む、クハ455-700番台がそれである。そもそも413系自体が、急行型の457系の台車や電装品を流用し、車体だけ新製した車両である。その413系誕生時に、余剰車両だったサハ455を先頭車化改造し、不足していた413系の先頭車の代わりに編成に組み込まれたのがクハ455-700番台である。以後、北陸線や七尾線で活躍し、令和の世となった現在までひっそりと走り続けていたのである。 さて、そのクハ455-700番台も老朽化し、今秋から順次521系に置き換えられ、今年度中には引退することになった。そうと知ったからには乗りにいかねばならない。いわゆる「葬式テツ」は苦手であるが、国鉄急行型電車といえば、私の鉄道趣味の黎明期だった昭和54年10月に153系に乗って以来、40有余年にわたってお気に入りの車両だった。それがいよいよ乗れなくなるのなら、万難を排して最後の姿を拝みに行くのがファン心理というものである。 2020年9月23日、私はしらさぎ7号で金沢に向かった。JR東海ツアーズの「鉄道+ホテル」のプランを珍しく使っている。というのも「Go To トラベルキャンペーン」で、JRのチケット代もひっくるめて35%割引になるからである。もともとの値段も、新幹線と特急で浜松〜金沢を往復し、ホテル代も含んで23,900円と十分安いが、Go To トラベルキャンペーンで15,535円となる。これに気が付くまで、JR西日本とJR東日本の株主優待券を使って一周するルートを考えていたが、ホテル代抜きでもどうしても2万円ほどになる。導入時には時期尚早だとか言われていたが、旅行需要をかなり喚起するキャンペーンであることは間違いないようである。 | ||
石川県に入ったあたりから、車窓にはいわし雲が広がった。一方で反対側の窓には入道雲がよぎる。あ〜これが行き合いの空かと思った。今回の旅でも、引退する車両を追っかける一方で、4日後には新型車両のお披露目会が開催される。これも行き合いの空だなぁと思いつつ、金沢に到着した。 金沢駅で若干の時間があり、すっかり名所となった駅前の鼓門を見に行った。シルバーウィークが終わった直後というのに、たくさんの観光客が記念撮影に興じており、その姿をカメラに収めた。金沢観光はこれで終了。すぐに駅に戻り、七尾線が発着するホームに上がった。七尾線の車両運用は413系グループの6編成が一体となっており、クハ455-700番台が組み込まれた編成が来るかどうかは運次第である。 狙いを定めた一本目の列車は金沢15時30分発の七尾行き。残念ながらすべて413系の3両編成だった。とりあえず南羽咋まで行く。ハズレの編成ではあるが、413系も同じように今年度中に引退の予定であるので、車内のアコモデーションや、昔懐かしいMT54のモーター音などを堪能した。1時間弱で南羽咋に到着し、ここで下車。棒線の無人駅で改札すらなく、ホームに立っている待合室が唯一の建造物である。 今降りた列車が次の羽咋で上り列車と交換し、その上り列車で金沢方面に折り返す。もしこの列車がオール413系の編成なら、途中の高松でまた下り列車に乗り換えなければならない。行ったり来たりで、最悪の場合は金沢に戻るのが21時過ぎになる。できれば今度来る列車がお目当ての列車であってほしい・・・。 |
しらさぎ7号で金沢入り |
すっかり金沢の名所となった鼓門 |
南羽咋駅にて筆者 |
こちらも廃車間近の413系 |
お目当てのクハ455が入線 |
窓側にも肘掛が付く 奇跡的に2台だけ残っていた 駅前のホテル金沢に宿泊 果たして、その金沢行きの列車の先頭車は、お目当ての列車のひとつであるクハ455-702だった。先頭形状では413系とは見分けがつかないが、側面に回ると急行型電車であることがよく分かる。片開きの2つ扉、ボックスごとにずらりと並ぶ側窓。私が少年の頃に慣れ親しんだ、153系や165系に連なるデザインである。 |
ボックスシートと冷房が急行型の面影 |
残り僅か…痰壺付きの洗面所 |
国鉄急行型電車に別れを告げる |
ホテル金沢の部屋より駅前を望む |
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片開き2扉とボックスごとの窓が並ぶ外観は国鉄急行型電車の特徴を今に伝える |
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