木更津市は房総半島のほぼ中央部に位置し、アクアラインを使えば東京まで1時間という立地条件にある。人口は122,752人。
「かずさアカデミアパーク」などビッグプロジェクトの立ち上げなどで、一時は相当の地価上昇があった。現在は逆にその反動からか、「地価下落率全国一」とあまり芳しくない状況に陥っている。
(「かずさアカデミアパーク」は当初計画は約1000haにバイオとかの最先端企業を誘致する県の計画。しかし、進出企業は3社だけ。土地開発公社の不祥事もありましたが、こっちもかなりやばいかも。)
(市内商業地の平均価格は、平成9年でuあたり25万231円だったものが平成14年では8万1017円と5年間で1/3になっている。)
駅舎新築、西口再開発、下川崎市区の工業団地問題と当羽生市との共通点も多く、大規模小売店舗の進出そして撤退と、それらが地域に与えた影響や、これからの打開策などを調べるため、視察先としました。
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木更津駅西口再開発ビルの再生について
木更津駅西口地区第一種市街地再開発事業の概要
概要 | 事業の主旨 | 21世紀の市の発展と広く南房総広域生活圏の核となりえる施設を目指す |
施工面積 | 約1.8ha |
施工者 | 木更津市 |
総事業費 | 約216億円(内60億円が税金投入のようです) |
事業期間 | 昭和58年度〜昭和63年度 |
権利者数 | 土地所有者 62人、借地権者22人、借家権者39人 合計123人 |
建物 | 1街区A棟 | B1〜9Fの10フロアー。B1の食品街だけで面積5137u(B棟含む)。 1F〜7Fは、ファッション、衣料品、子供用品、 スポーツ用品、リビング・寝具、住まいと着物の各売り場。 8Fは催事場。9Fはレストラン街。 |
1街区B棟 | 1F〜2F専門店街(自由通路とデッキでA棟とつながっている) 3F公共施設(木更津市役所木更津駅前連絡所・木更津駅前ホール) |
2街区駐車場棟 | 地下1段地上5段の機械式立体駐車場。 平面駐車を含め152台収容。2169u |
A・B棟 延床面積 | 4万3067u |
木更津駅西口地区市街地再開発事業により建設された建物(愛称:アインス)の所有権(32.5%)を取得し、全体の管理運営にあたる法人として「木更津都市開発株式会社」が、木更津市、地元権利者、地元経済界の出資により、昭和60年、第三セクター方式で設立される。
資本金1億3960万円の内訳は、木更津市が6500万円(46.6%)、地元経済界3600万円(25.8%)、地元権利者3860万円(27.6%)。
ところが、キーテナントである木更津そごうの経営が悪化しはじめ、木更津市も支援せざる得なくなる。
変遷 | 平成7年5月 | 木更津そごう賃貸料10%引き下げ |
平成8年3月 | 木更津そごう賃貸料8.4%(3500u分免除)引き下げ |
平成10年4月 | 立体駐車場(収容台数152台)を撤去し、平面駐車場(収容台数30台)に改修 |
平成11年9月 | 木更津そごう賃貸料30%引き下げ |
平成11年11月 | 木更津そごうから9階フロアーが返却される |
平成年12月3月 | 木更津そごうから6・7・8階3階フロアーが返却される |
平成12年4月 | 木更津そごうが11月末で撤退を発表 |
平成12年7月13日 | 木更津そごう自己破産 |
平成13年12月21日 | 木更津都市開発且ゥ己破産 |
市の支援として、都市計画税、固定資産税の1/2減免、駐車場・駐車料金の減税、賃料30%の値下げ、アインスビル2フロアーの返却と市による同フロアーの借り上げ、2億円の増資引き受け、8階フロアを市が公共施設等の誘致を含め利用、一億円の貸付(平成10年〜)などなど、代表取締役社長(非常勤)が木更津市長ですから、この三セクにできうる限りの支援を行います。
しかしながら、平成13年12月、木更津そごうの破綻から1年半後、木更津都市開発鰍ヘ約74億7796万円の負債を抱えて倒産してしまいます。
その後、木更津そごう分の財産は担保権設定金融機関によって競売にかけられます。が、複雑な所有権や占有関係などが嫌われてか、競売に入札する企業等はなく、破産管財人の調停というか条件提示(所有権をしに一本化の上10億5000万円で譲渡)がなされ、市議会もこれを承認し、平成15年9月定例会後、市の財産となったのです。
ビルはただ維持できません。清掃、空調や設備(消防関係、電気関係、水道関係)、警備、エレベータ、エスカレータ、サイン表示などなど。テナント入居が決まり、適切な家賃収入を上げないと、また同じようなことにもなりかねません。
「地元の商店街から生鮮食料品店が消え、実際の買い物も大変になってしまった。」「まず、第一にスーパーの誘致にあたり、入居が決まった。」「100円ショップ、カラオケ・ゲームセンターなども入居しそう。」「パスポートセンターなど公共施設の誘致を進めている。」とのことですが、あれだけの広さを埋めるのには、まだまだ大変だろうと思います。
また新しく管理運営の三セクを設立し、文字通りゼロからの再スタートを切った木更津駅西口再開発ビル。なによりも、度重なる血税の投入を避け、利益を上げ、納税によって地域に貢献する。地域の商業を活性化し、多くの市民のニーズにあった商品・サービスを提供する。道はまだまだ険しいように感じました。
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そのほか中心市街地の活性化の取り組みとして2つほど事例を上げていただきました。
ひとつは「商店街への集客を高めるための「空き店舗活用事業」−ふれあいプラザ本町−」
長引く不況や大型店の撤退などから空洞化が進んでいる中心市街地。特に生鮮食品を売る店がなくなってしまい、交通弱者であるお年よりなど買い物にも不自由になってしまった。
そこで商店街が空いた店舗を買い取り、羽生のキヤッセのような地場産品(朝取り野菜など)販売所を開設した。売り場の奥にコミュニケーションスペースを設け、通所介護施設「宅老所」を併設。運営はNPO法人「井戸端会議」が行っている。
郊外型店舗に自動車で買い物に行く層は考えず(駐車場がない)、自転車や徒歩での顧客に的を絞り、地元の老人の憩いの場所として人気が出、商店街への来街者が1日あたり500〜700人増加。各個店においても10%程度の来店者増で売上も増えているとのこと。羽生でもやってみたらどうでしょう。
もうひとつは「商店街の賑わいを促進するための「イベント事業」
−かずさYOSAKOI木更津舞尊(ぶそん)とライトアップ事業−
市名由来の伝説とヨサコイソーラン踊りを融合させたお祭りを新設。平成15年度で24団体が参加。埼玉県の朝霞市からもチームが出場したとのこと。
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さらに・・・
官製イベントとは違った、「カウンターカルチャー」とでもいいましょうか、搦め手からの街づくりとでも申しましょうか、(その意思のあるなしは別として)街の活性化に大きな役割を果たしている人たちがいます。
グループ名は、「氣志團(きしだん)」。
知らない人は、ネット検索でぐぐってください。私なんかの世代だと「なつかしぃ〜」って感じなんですが。
なんとこのグループ(木更津出身)のイベントに4万5千人もの人たちが押し寄せ、市内の宿泊施設は超満員。大変な経済波及効果を及ぼした。
平成14年に放送されたテレビドラマのロケ先として、また、そのドラマが人気を呼び、なんと映画化されるに及んで、大型店退店以来、明るい話題のあまりなかった木更津市に間違いなく元気を呼び込んだと思われます。 天から降ったようなこの効果は、悪いことばかりじゃないんだ、って市の職員さんたちが一番喜んだかも。(市職員の野球チームがエキストラとして試合に出たとうれしそうに話していました。)
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