Last update:1997/08/23


「尾崎 豊」と出逢えた人生

小鉄と尾崎との出逢いは、まだ小鉄が高校3年生だった時。
出逢いは、小鉄自身も気が付かないうちに始まっていたのでした。


★ Act1.『出逢い』


【序章】

冬休みを前にした、期末テスト真っ最中の頃。私は友達の勉強を見てあげるため、学校の帰りにマックに
寄っていた。学校が違う彼女は、あまり勉強が好きな方ではない。あの時代の言葉で言えば、いわゆる
「ヤンキーくずれ」といったところか。
仲がいいわけではなかったが、よく一緒にくだらない話をしていた。それぞれに友達を持っていたが、彼
女とだけはなんとなく気が合った。
マックでも、勉強はそっちのけで彼女はしゃべり続けた。私は、適当に話を聞きながら自分の勉強を始め
ていた。時々、勉強しな!と注意しながら、それでも彼女のおもしろい話を楽しんで聞いていた。
その時だった、と思う。彼女が話し出したのは。
「こないだデビューした、尾崎豊、って知ってる?」
詳しい言い回しは覚えてないが、こんな感じだったと思う。
私も彼女も、音楽が好きだった。よく話をしたが、彼女と趣味が合ったことは1回もない。勉強してる最
中だったせいもあり、適当に聞き流していた。彼女は、尾崎についていろいろ絶賛してたようだが、哀し
いか
な、私は内容はひとつも覚えていない。
それが、私自身気付いていなかった、尾崎との出逢いだった。



【ラジオ】

冬休みが終わったばかりの頃。受験を目前に控え、部屋で勉強していた。私は、音楽がないと勉強できな
いタチで、その日もラジオを聴きながら勉強をしていた。
その時、「落書きの教科書」という言葉が耳に飛び込んできた。数Tの勉強をしていた私の手が止まった。
曲を聴き続けながらぼんやりと目の前の教科書を見ると、やはりそこには落書きがしてあった・・・
「たばこをふかして」「家出」「盗んだバイク」と、ずいぶん尖った歌詞が聴こえてきた。聴いてて心が
痛かった。ただ、名前も顔も知らないこの歌手の優しい声とは合わない歌詞だな・・・と思った。それで
も、どこかに共感や優しさが感じられた。
そのうち、「100円玉で買えるぬくもり」という歌詞が私を包み込んだ。
「ああ・・・これだ・・・これなんだ・・・」何かに出逢えた気がした。
曲が終わり、DJが曲の紹介をした。尾崎豊、15の夜、先月デビューしたばかり、アルバムは十七歳の
地図・・・・
ラジオから次の曲が流れる頃、私の数Tの教科書には落書きが追加されていた。

  「尾崎 豊」 「15の夜」 「十七歳の地図」

それを見ながら、友達の顔が頭に浮かんだ。なんだかうれしかった。



【十七歳の地図】

次の日、学校の帰りにレコード店を探した。高校の駅近くの店には置いてなかった。浦和駅で途中下車し
て、大きなレコード店に行ってみた。「あ」から順番に探していくと、厚紙で作られた見出しに大きく
「尾崎豊」と書いてあるのを見つけた。レコードを手に取ると、一目散にレジへ向かった。
家に帰って聴いてみると、ラジオで聴いたあの曲が確かに収録されていた。でも、アルバム全体の感じは
あの時感じたものとは違っていた。ラジオで聴いた限りでは、もっと反体制的なイメージが強かった。が、
全曲聴いてみるとバラードあり、ロックありのいい感じのアルバムだった。夢中になった。聴けば聴くほ
ど新しい発見があった。
それからは家でも学校の行き帰りでも、毎日尾崎を聴き続けた。



【友達】

2月になってから、受験の直前に久しぶりに例の友達に会った。彼女は大学へは行かないらしく、今は教
習所通いをしているらしい。
「尾崎のアルバム、買って毎日聴いてるよ」
と告げると、彼女はうれしそうに笑ってくれた。彼女の事を初めて理解できた気がした。
・・・卒業して以来、彼女には会っていない。



To be continued...

 次回は、Act2.『3枚の宝物』







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