残響時間



 音が発せられると、音は室内一杯に拡散、反射を繰り返しながら、一定の大きさに達します。その音が止められると、その瞬間から室内の音は減衰をはじめ、ついには音は聞こえなくなります。この減衰過程に聞こえる音を残響と読んでいます。
 
 室内において、音が小さくなっていくのは室内表面に音が衝突したときに、反射しないエネルギーがあるからで、そのエネルギーを一括して吸音と呼びます。

 残響は室空間に音響的性格を与える要素であるから、音を聞くことを目的とする建築空間は残響をいかに扱うか、建築音響設計上の重要な課題となります。

 残響時間はたとえ同じ2秒であっても、室内の大きさによって聞く感じが変わってきます。例えば、6畳の部屋と2000席の大ホールで同じ残響時間2秒としたとき、前者は同一時間内の反射が多くなりワンワンとした感じを受け、耳への刺激が大きくなります。後者は非常に聞き易い部屋となります。室容積と残響時間は比例の関係にあって、室空間が大きくなれば残響時間は長くしなければ、良い音空間(最適残響)とはならないのです。

 残響時間は長すぎると、その室内の言語が聞き取りにくくなり(明瞭度の低下)、音楽は前後の音が重複して不調和音が応じて不快になります。しかし短すぎると、音に豊かさが無くなります。すなわち残響時間は短すぎても長すぎても、良い音空間とは言えなくなるのです。

 この残響時間は室内の音響特性について述べる場合にもっとも基準となるもので、簡単に室内の音響性能を述べる場合にこの残響時間の長さで判断することが多いです。もっとも、これは簡単に判断するものであって、実際には残響時間だけでは良い悪いは判断できない場合もあります。例えば、残響時間がホールとして最適な値であっても、 エコー が出ているホールはよいホールとは言えないなど、残響時間だけで判断するのは間違いです。


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