敷地に隣接する小野小町の墓や小町山妙性寺は大宮町に伝わる 小町伝説の根拠となる物である。これら2点を結ぶ線分に基づいた 軸線に従って構成される骨格(軸組)は小町の足跡を改めて視覚化 する試みであり、建築は当地における土着性を獲得する。
当時絶世の美女と呼ばれていた小野小町も宮中に仕えていたころ は身に纏っていたであろう十二単を手がかりに建築の形態表現の 考察を行う。十二単は女性本来の容姿以外にも、それが形成する シルエットとしての美しさを主張し丸みやふくよかさといった見ため以上に、想像力を強いる 根元的エロティシズムを備える。肉体は骨格を官能的なカーブでおおう 魅力的なシルエットを与えられ、表裏の二元性がこの建築に才と色を備え させる。