「豆腐ちくわ」
豆腐ちくわは鳥取県内でも鳥取市でのみ製造されている。江戸時代末期にはすでに食べられていた。岡山城の城主であった池田光仲が1648年鳥取城に転封(左遷)になった時、領民に豆腐食を奨励したことがきっかけになっていると思われる。江戸中期には、すった豆腐を棒状にして細い竹につけ、加熱処理した「ちくわ豆腐」が登場している。そのころの鳥取藩では、藩の財政が貧しく、庶民の生活も質素倹約が強いられ、良い漁港が少なく漁獲高も少なかったことから魚を食べることさえ贅沢とされていた。僅かの魚も無駄にしないためにも考え出されたのが豆腐との混ぜ合わせだった。山村の多い鳥取では田んぼの畦に大豆が栽培され、豆腐の消費は比較的多かったことから豆腐を利用した食品として考えられたものと思われる。まさに質素倹約の生活の中から生まれた食品といえる。因幡は真面目な人が多く、かつ、タテ人脈の地域だけに、殿様の奨励通りに豆腐ちくわが広まっていったのだろう。
サッと焼いて、おろしポン酢。最高です!!ねぎ入り豆腐ちくわおいしくてヘルシー10P26apr10
「素ラーメン」
鳥取市には「素ラーメン」という食べ物がある。「素ラーメン」というと、そばやうどんのように、具のないラーメンというイメージがあるが、うどんの汁に中華麺を入れたもの。(素ラーメンがあるのは、姫路駅の駅そば、あと高松市内にも一店あるようだ。秋田にはラーメンスープの稲庭うどんがある)鳥取市内では「武蔵屋食堂」と「鳥取市役所食堂」、それに「大ろや民芸喫茶食堂」で食べられる。
武蔵屋食堂は、うどん、そば、丼物、それにラーメンを出している店。素うどん、素そばもある。スープはまさにうどんつゆで、具はかまぼことモヤシ、それに天かすが入る。この天かすが入っているためラーメンぽくなるのだ。中華麺は、細めの縮れ麺で460円(大盛りは600円)。実は、素ラーメンを最初に出したお店が、この武蔵屋食堂。学生に、おいしいものを腹いっぱい、安く食べさせてあげたいという親心から出来たのだという。「大」は、麺が2玉入っていてボリウム満点。鳥取市役所食堂の素ラーメンは250円。もやしとネギ、かまぼこが入っている。こちらも麺の量が多い。大ろや民芸喫茶食堂の素ラーメンは300円。ネギとかまぼこがのっているシンプルなラーメンだ。
鳥取県は因幡と伯耆で気質は大きく異なる。因幡(鳥取市など県東部)は口下手だが、真面目で粘り強い勤勉なタイプ。因幡の言葉に「煮えたら食わぁ」という言葉がある。もう煮えているのに、誰も食べようとせず、誰かが食べるのを待っている、消極的な気質を言ったもの。長い間、米作中心だっただけに、保守的で引っ込み思案。社交性にも欠けるし、流行にもすぐ飛びつかないところがある。生活は地味で堅実で、無駄遣いが嫌い。そのため、うどん屋では、うどんでもそばでも素うどん、素そばがある店が多い。安くて量が多い素ラーメンが定着したのもうなづける。
ご当地グルメ研究所