「名古屋人の嗜好」
尾張藩は倹約を奨励していたところ。徳川御三家だったことから、明治政府に冷遇されたため、堅実で実利的な気質が形成された。ゆでる時間を節約するために、うどんを平たくしたものが「きしめん」だし、何にでも八丁味噌を入れてしまうのも節約精神の現れとも言われている。名古屋では、わかりやすいものが好まれる。食べ物では、味噌煮込みうどんをはじめ、スパイシーな手羽先唐揚、激辛の台湾ラーメンなど味の濃いモノが好まれるし、映画でもブルース・ウィリス主演作のような、派手で単純なものがヒットするのである。「文化は無駄から生まれる」と言われるが、名古屋は無駄を排除しすぎたため、文化的な嗜好が薄くなってしまったのかもしれない。
「味噌カツ」
味噌カツはトンカツに味噌ダレをかけたもの。愛知県だけではなく岐阜県、三重県北勢部でも食べられている。もともとは、串カツに、この地方の特産である八丁味噌を使った「どて煮」に浸して食べたのが始まりと言われている。食べてみると、意外にしつこくなく、まろやかでコクがある甘みがする。味噌カツは愛知県では定番なので、トンカツ屋をはじめ喫茶店などでも食べることが出来る。愛知の人は、味噌かつ、味噌煮込み、コーチン鍋など、何にでも八丁味噌を入れてしまう。おでんをコンビニで買うと味噌がついてくるぐらいなので、「名古屋の人はバッグにチューブ入りの携帯用の味噌を入れて持ち歩いている」という噂が飛び交ったこともあるほど。しかし、全国的にみて、一般的な味噌は米味噌であり、豆味噌(八丁味噌)は、中京地域のみ。麦味噌のうち白味噌は、九州を中心に中国西部、四国西部。北関東では、大麦を使った赤味噌がある。普通のみそは煮立たせると味が落ちるが、熟成に時間をかけた豆味噌は、煮込めば煮込むほどおいしくなるといわれる。つまり、八丁味噌は、余ったら、何度でも、何にでも使えるという意味でも、節約精神十分な名古屋人向きなのだ。
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