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(株)ナンバーワン戦略研究所

エリアマーケティング

1.エリアマーケティングの必要性とは エリア、つまり地域を主体としたマーケティングのこと。
言葉を変えれば「地域密着型の販売戦略」といってよい。
メーカーや卸、販売会社の場合は比較的早くから地域密着戦略を展開している企業が多い。
今まで本社でマーケティング戦略をたてて、それを各支社や支店で実践展開させていた企業も、支社や支店、営業所で、それぞれの地域にあったマーケティング戦略を立案展開させている。(まれに、各支社・支店でテンデバラバラに戦略を立案し、展開している企業もあるが、これは論外。いかに地域別戦略といっても企業としては戦略の共有化が前提だ)

一般的に「地域密着」というと、地域の催事に参加したり、寄付したりするようなイメージが強いが、ここで言っている「地域密着」とはそんな狭い意味ではない。
地域にとけ込みつつ、それぞれの地域にあったやり方をとることなのである。今まではどちらかというと、地域と向かい合い、地域の実状を無視して、こちら側のやり方を一方的に押しつけて来た。 しかし、これからは、そんなやり方は通用しない。

たとえば、ファミリーレストランは既に地域別のメニュー対応をするようになっているし、最近は、全国どこでも同じメニュー、同じサービスを提供していたファーストフード業界も、例えばケンタッキーフライドチキンでは店によってメニューを変えているし、マクドナルドも店長の権限を強化して、学生街ではドリンクバー、喫茶需要の多い店では陶器のカップを使ったりしている。  またチェーンストア理論の申し子ともいえる、SM(食品スーパー)も鮮魚や青果は地場ものを取り扱うのをはじめ、それぞれの地域にあった品揃えや売り方をするのが一般的になりつつある。時代は確実に地域密着、エリアマーケティング、地域戦略時代になっているのである。
また,地域ごとのシェアを上げればテリトリーのシェアも上がる。テリトリー全体のシェアを上げるためには、細分化した地域毎のシェアを上げることが必要だ。
例えば、全国展開している企業が全国のシェアを一気に上げるためには、強大な武器が必要になる。メーカーであれば、画期的な新製品を発売するとか、卸ならM&Aを進めるなどしなければならない。銀行の場合でも、よほど画期的で差別化された商品やサービスがなければ、テリトリー全体のシェアアップは容易ではない。しかし、ある特定の地域のシェアを上げるのはそれほどでもない。全社のシェアを上げるより、支店や営業所や店舗のシェアアップの方がしやすいし、テリトリー内のある地域のシェアを上げる方がやりやすい。地域毎のシェアを上げていけば、必ずテリトリー全体のシェアも上がってくるのである。

つまり、テリトリー全体のシェアを上げるために、地域毎のシェアを上げるのだが、そこで、無視できないのが地域特性なのである。狭いわが国でも地域により、気候・風土、県民性、産業特性、年齢別人口構成比のちがいがある。これらのちがいにより、当然のことながら戦略は変わってくる。もちろん、広域でなくとも同じ県内でも地域特性のちがいがあるのは言うまでもない。
もうひとつ忘れてはならないものがある。それは競合状況である。1位の地域の場合と2位、3位の地域の場合では戦いの仕方も同じではない。孫子の兵法のなかにも、十倍の兵力なら包囲する、五倍の兵力なら攻撃する、二倍の兵力なら敵を分断する、互角なら勇戦する、劣勢なら退却するというのがあるが、同じ企業の支店や営業所のポジショニング、ライバルの数などのちがいにより、戦略は変わってくるのである。
そこで、その地域にあった戦略を、それぞれたてて展開していく、つまり地域戦略が必要になるのである。
2.地域によって売れるもの、売れないものがある 例えば、北海道や九州は、大袋や徳用品が売れる。逆に、北海道はジブリやディズニーのDVDが売れない。名古屋はロマンス映画がダメでアクション映画がヒットする。豆腐は盛岡が世帯当たり年間102丁も食べているが、札幌はわずかに58丁と盛岡の半分強だ。カップめんは、青森が5541グラム食べているのに対して、神戸は半分以下の2160グラムである。
それぞれにワケがあるのだが、地域によって商品の売り上げのバラツキが存在するのである。だからこと、エリアマーケティングが必要なのである。
特に最近、ご相談やコンサルで増えているのは、どうしてこの地域はうちの商品が売れているのか?売れないのか?といった、商品の地域別売上の原因究明と対策である。当研究所では、定量情報に加え定性情報を加味して、原因と対策をアドバイスしている。
全国津々浦々、同じように売れているもの、使われているものなどない。今までのマーケティング、あるいはエリアマーケティングでは、定量情報のみを力任せに活用してきたが、定量情報に加え、定性情報(県民性や消費購買特性など)を活用しないと原因はわからないし、まして対策はたたないのである。
3.ネットでも工夫すべきだ コンビニの弁当や総菜は、年々、地域限定品が増えているが、一般のメーカーが地域ごとの商品を作るのは簡単ではない。しかし、売り方(キャッチコピーやPOP)を変えることは、それほどではない。価格意識が強い地域では「お買い得感」を、新しいもの好きな地域は「新商品」をアピールすることが必要である。これはリアルショップだけではない。ネットショッピングでも、この地域は売れるのに、なぜこの地域は売れないのか?という相談が増えている。売れない原因を手繰っていけば解決策が出てくるのである。
それがエリアマーケティングなのである。
4.エリアマーケティングの進め方 1.テリトリー・商圏の把握
@顧客マップの作成
メーカーや販売会社,卸の場合は、あらかじめテリトリーが設定されているが、このテリトリーが望ましい形になっているか、また形式上のテリトリーと実質上のテリトリーが合致しているか、現状を把握することがエリアマーケティングの前提となる。
 そのためには、まず顧客マップを作らなければならない。地図を準備し、顧客をプロットしていく。担当者がそれぞれ自分の顧客をプロットすればよい。
この顧客マップを作ると、数表では見えないもの−たとえば、どの地域に顧客が多いか少ないか等がよく見えてくる。最近はパソコンのマップソフトも安くなってきたため、GISソフトを使って取引先マップを作成する企業も増えてきている。
 待ち商売型の小売・サービス業の場合は,まず商圏の形や大きさを掴まなければならない。商圏とは一口で言うと「顧客の地理的分布」のことだが、商圏の形や大きさがわからなければ、折り込みチラシやポスティングを実施する場合の配布地域も決まらない。商圏は立地や競合状況などにより、それぞれ形も大きさもちがう。そのため、まず商圏の形・大きさを把握することが必要になるのである。そこで、待ち商売型の小売・サービス業の場合は,来店客調査を実施する。来店した顧客に、住所を聞くのである。全顧客を対象とし、調査期間も正確な分析をするため、長くすることがポイントである。但し、都市中心部のビジネス業務地区の場合、住所を聞くと結構離れた住所を答える顧客が多い。これは店の近くの会社に勤めていて、昼休みや会社の帰りがけに来店している顧客で、その住所から直接来店しているわけではないから、その場合は会社の所在地を聞くことになる。
Aマップのチェックポイント
 顧客マップが出来たら、以下のチェックを行う。
 1.地元地盤強化ができているか?
 五大原則でも述べたように、地元地盤強化ができているかをチェックする。出来てい ない場合は原因を考えてみる。もちろん、この段階では感覚的な判断ではあるが… 。業績の上がっている支店や営業所,店舗は、地元地盤強化ができているし、ダメなところは店周強化ができていないことが確認出来るはずだ。
 2.顧客分布のバラツキの原因は何か?
 顧客マップをよく見ると、取引先はきれいに分布していない。比較的集中しているところ、逆に点在しているところが必ずある。これは、データを見ているだけではわからないものであり、マップを作る意味でもある。この顧客分布のバラツキの原因を確認する。どの地区から多く来店しているか、逆に少ないのはどの地区か?顧客マップと比較してみる。ライバルの拠点あったり、河川、鉄道、道路や坂などがあると、極端に少なくなってしまうことが多い。正確に見るためには町丁目字別にカバー率を算出する。
エリアマーケティングでは、マップをどこまで有効に使うかがポイントになる。
2.市場環境の分析
 市場環境分析とは、企業や支社・支店・営業所・店舗を取り巻く環境をデータを基に して、もう一度見直してみること、つまり戦う土俵の総点検という意味である。
@地域分析
エリアマーケティングを展開するためには、前述したように、それぞれの地域の特性を分析しなければならない。それではじめて、地域にあった戦略を立案・展開していくことができる
のである。特に重要な項目は次の5つである。
  1)人口・世帯数とその傾向
  2)産業特性
  3)市場体質
※地域は体質から「うちもの」地域と「よそもの」地域に分けることができる。
「うちもの」地域とは他の地域から人や企業があまり進出せず、住民も商店も工場も地元の人や地元の企業が圧倒的に多い地域のこと。うちもの地域は人間関係を重視する土地柄のためよそものに対しては排他的だから、地元企業としては有利な地域といってよい。シェアの集中度は高く、安定度も高い。「よそもの」地域とは他地域から人も企業も数多く入り込んできた地域のこと。もっともよそもの地域といっても県外よそもの地域と、県内よそもの地域がある。このよそもの地域は排他性は少ないから、よそもの企業は不利ではなく、逆に力を発揮しやすい。シェアは分散型になりやすく、変動しやすいのが特徴である。
 4)今後の発展性
 5)地域特性のまとめ
以上の点より、テリトリー内の地域特性、つまり他の地域とのちがいをまとめる。地域特性はわかっているつもりのことが多いはずだが、いざまとめようとすると、結構考えてしまうはずだ。これは、実はよくわかっていないのである。
また,よそもの企業の場合は以下の情報も整理しておくことが必要だ。
 6)歴史
 わが国の地域間のつながりや対抗意識は、長い間の歴史によって形成されてきた。だから、歴史のなかに、エリアマーケティングを考えていくうえで重要なヒントが隠されている。地元以外の場合、結構知っているつもりでも、地元に比べ、その地域のことがよくわかっていないはずだから、しっかり調べる必要がある。市区町村役場にある市(区・町・村)勢要覧などにも、簡単な歴史が載っているので、参考にすること。
 7)県民性
 わが国の地域毎の性格である「県民性」は、ヨーロッパの国々の国民性に匹敵するほどのちがいがある。また、同じ県でも静岡の東部と西部、青森の東部と西部、長野の北部と南部のように性格が大きく異なるところも多い。だからビジネスでもそれぞれの県民性に合ったやり方が要求されてくる。
 一般的に港町は開放的で新しいもの好き、内陸部は保守的。雪国は粘り強く、南国は淡泊であきらめがよい。特に商人気質の強い大阪などは「ナニワ商法」になれるまで結構苦労する人も多い。
 県民性は排他的か開放的か、また金に細かいか、おおざっぱかで整理するとわかりやすい。(ちなみに世帯当たり預貯金が最も多いのは福井)例えば名古屋は排他的で金に細かいし、熊本は排他的だが金より感情が優先する、大阪は開放的だが金に細かいし、東京は開放的で金にもおおざっぱな地域といえる。これだけのちがいがあるのだから、それぞれの地域に合ったやり方が必要だ。どの地域でも同じやり方では通用しないし、相性も問題になる。ビジネスを展開していくうえでこの県民性の違いを無視する訳にはいかないのである。
A業界動向分析
1)末端顧客の動向
 2)総需要推定
B自社データの分析
 1)商品別売上分析
 2)自社顧客分析
C競合状況
 1)競合企業は?
  2)競合企業情報
  3)強みと弱み
3.テリトリーの細分化
@細分化の必要性
 テリトリーの把握ができたら、地域を細分化する。細分化には地域、顧客層、部門・商品など 多くのテーマがあるが、地域戦略では地域を細分化するのが基本である。細分化する狙いは二つある。
 ひとつは、地域により特性の違いがあるからである。人口の増減、年齢別人口構成、単身・二世帯 ・三世帯住宅比、農林・水産・工業・業務地区やベッドタウンなどの産業特性などの違いから、 需要やマーケットシェアが異なってくるのである。
二つ目は、戦いをより局地戦にすることである。弱者は広域戦(テリトリー全体)の戦いをしていては勝つチャンスがない。細分化することにより、広域戦を局地戦にしていくことで、 敵の死角や弱点を掴むことができるし、勝つチャンスも生まれてくるのである。
A細分化のしかた
 メーカーや卸売業は、河川、山、国道、鉄道などで細分化する。但し,小売・サービス業の場合は、 データの分析の手間を考えると、町丁目字で細分化すればよい。この細分化した地域をエリアと呼ぶ。
4.エリア分析
 テリトリーの細分化ができたら、いよいよ重点エリアを設定することになる。重点化はあくまでも 戦略的に決めなければならない。そのためには以下の情報を、細分化したエリア別に整理しておく ことが必要だ。
 情報は少なすぎると重点エリア設定を間違えてしまう、かといって情報が多ければ正しい設定が できるというものではないし、多すぎると迷うことにもなりかねない。第一時間もかかるし、 分析が目的ではないのだから、以下の4項目でよい。
1.市場規模
2.成長性
3.競合状況
4.市場体質…うちもの地域とよそもの地域
5.重点エリア設定
 テリトリーのエリア特性のまとめができたら、いよいよ重点エリアを設定する。
ここでは、どのエリアを重点化するかが最大の問題である。この選び方が間違ってしまうと、エリアマーケティングの成功はない。
6.全顧客ローラー作戦
 重点エリアが決まったら、いよいよエリアマーケティングの中核であるローラー作戦を展開することになる。近年、大きく売上やシェアを上げた企業や支店は、業界を問わず必ずといっていいほど、このローラー作戦を展開している。
7.NO.1になるための戦略立案のしかた
 戦略立案では、目標の決め方、標的の決め方、他社顧客を奪取するための差別化戦略が重要だ。

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