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一 括 講 読

投稿時間:06/03/03(Fri) 22:37:09
投稿者名:ゆき
ホスト名:softbank221021180071.bbtec.net
Eメール:
URL :
タイトル:1年単位の変形労働時間制について
1年単位の変形労働時間制について ちょっと質問なんですが。
1年単位の変形労働時間制だと1日10時間、1週52時間まで割増賃金不要との事ですが、さらにその時間を超えて働かせた場合は違法となるのでしょうが?
すみませんがよろしくお願い致します。

投稿時間:06/03/04(Sat) 01:25:43
投稿者名:nemuta (ID: Un1NN0c)
ホスト名:pd32931.osaknt01.ap.so-net.ne.jp
Eメール:nemuta@abox.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:Re: 1年単位の変形労働時間制について
法第32条は、1週間に40時間(原則)、1日に8時間を超える労働を禁止しています。これが原則の「法定労働時間」です。

すると、

日月火水木金土
88888休休
休休88888   ならば適法ですが、

日月火水木金土
888888休
休休休8888   は違法ですし、また、

日月火水木金土
休88888休
休77899休   も違法です。

この3つの例の2週間はすべて労働時間は合計80時間であるのに、法第32条が週と日の両方で厳格に労働時間を制限しているために、日々の組み合わせや休日の配列によって適法になったり違法になったりする訳ですね。

すべての事業所が月や曜日による業務の繁閑の差が無いのであればこれでよいのですが、現実には冬は忙しいが夏は暇な事業所や、週末が忙しい事業所、月末が忙しいが月中は暇な事業所もある訳です。

そこで法第32条の週40時間(原則)1日8時間の制限を緩め、一定のルールの下に、あらかじめ定めた一定の期間を平均して週40時間(原則)になっていれば、ある特定の日の労働時間が10時間であっても、ある特定の週の労働時間が52時間であっても、それを「法定労働時間」の範囲内であるとみなすのが「変形労働時間制」です。

つまり「法定労働時間そのものが変形される」のであり、それが適法な変形であれば、例え52時間労働の週があっても、それが法定労働時間の範囲内になるのだから割増賃金は発生しません。

一年単位の変形の場合に、無条件に1日10時間、週52時間まで割増賃金不要になるのではなく、変形の結果、法定労働時間内になるので割増賃金が不要になることを理解してくださいね。

この変形にはルールがあり、例えば一年単位の変形であれば、1日10時間、1週52時間を超えて変形することができません。つまり変形の設計をする段階でこの制限を超えると適法にならず、変形労働時間制が成立しないのです。

この制限は変形の「設計図の書き方のルール」に過ぎませんから、ルール通りに変形されてさえいれば、変形期間が始まった後の現実の労働の現場においてたまたま52時間を超える週があっても、変形労働時間制の規定に反したことにはなりません。

そしてそれが結果的に法定労働時間を超える場合は、法第33条(災害時等の時間外・休日労働)または法第36条(協定による時間外・休日労働)の規定に照らして適法であれば問題ありません。もちろん割増賃金は発生します。

投稿時間:06/03/05(Sun) 21:41:44
投稿者名:しんじ
ホスト名:EATcf-640p54.ppp15.odn.ne.jp
Eメール:
URL :http://http://
タイトル:Re^2: 1年単位の変形労働時間制について
あの割り込んじゃって申し訳ないのですが、1年単位の変形労働時間制で1年の前半一日10時間、1週52時間、後半は一日6時間1週30時間設計図で変形労働時間制を採用された場合、年の前半で会社を辞めた人は割増賃金もらえずに終わりですか?もしもらえるとしたらどういう計算でもらえるのでしょうか?また時間外労働について36協定があった場合、もし1年単位の変形労働制の場合割増賃金は1年後にまとめて受け取る形になるのですか?そうだとすると会社としては割増賃金を払わなくてすんだり、払うのを遅らせたり出来て財務的に助かるような気がするんですが・・・ゆきさん割り込んですみません。先生教えてください。
>

投稿時間:06/03/06(Mon) 15:33:05
投稿者名:みか
ホスト名:filter.synapse.ne.jp
Eメール:
URL :
タイトル:Re^3: 1年単位の変形労働時間制について
> あの割り込んじゃって申し訳ないのですが、1年単位の変形労働時間制で1年の前半一日10時間、1週52時間、後半は一日6時間1週30時間設計図で変形労働時間制を採用された場合、年の前半で会社を辞めた人は割増賃金もらえずに終わりですか?もしもらえるとしたらどういう計算でもらえるのでしょうか?また時間外労働について36協定があった場合、もし1年単位の変形労働制の場合割増賃金は1年後にまとめて受け取る形になるのですか?そうだとすると会社としては割増賃金を払わなくてすんだり、払うのを遅らせたり出来て財務的に助かるような気がするんですが・・・ゆきさん割り込んですみません。先生教えてください。
> >

投稿時間:06/03/06(Mon) 07:22:30
投稿者名:nemuta (ID: Un1NN0c)
ホスト名:pd32749.osaknt01.ap.so-net.ne.jp
Eメール:nemuta@abox.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:Re^3: 1年単位の変形労働時間制について
えーっと…
まず「1年単位の変形労働時間制で1年の前半1日10時間、1週52時間、後半は1日6時間1週30時間」という変形はできません。

変形期間が3か月を超える場合は、連続3週間を超えて48時間を超える週の労働時間を設定することができず、また変形期間を3か月毎に区切った各期間の中に、48時間を超える週の初日が3を超えて存在してはならないからです。

またさらに、単純に1年を半々にと考えるなら、後半が週30時間であれば前半は週50時間以内でないと1年を平均して40時間以内になりません。

それはさておき…

お尋ねの例のような場合、1年の途中で退職することが明らかな労働者であっても1年単位の変形労働時間制による勤務をさせることは可能です。

この場合に、1年単位の変形労働時間制のもとで労働日、または週ごとに発生する時間外労働についての割増賃金は、変形期間中の入退職に関係なく、毎月の賃金支払のつど精算することは当然です。【*注】

そして、これらの精算が終わっているという前提で、さらに変形期間中の退職時において、変形期間の初日から退職日までのその者の総労働時間(すでに前記の精算によって時間外労働の割増賃金が支払われた時間を除きます)が、その期間を通して平均して週40時間を超えるようであれば、その超えた部分の時間については割増賃金の必要があります。(法第32条の4の2、H11基発45通達)

>>続く

投稿時間:06/03/06(Mon) 07:24:59
投稿者名:nemuta (ID: Un1NN0c)
ホスト名:pd32749.osaknt01.ap.so-net.ne.jp
Eメール:nemuta@abox.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:Re^4: 1年単位の変形労働時間制について
続き>>

具体例を言うと、

・ 1月1日から12月31日を変形期間とする1年単位の変形労働時間制を取る事業所において、
・ 1月から6月までの総労働日数が130日、1日の労働時間は9時間、週の労働時間は45時間
・ 7月から12月までの総労働日数が130日、1日の労働時間は7時間、週の労働時間は35時間
であるとします。

この場合に、6月末に退職した労働者がいたとして、

まず1月から6月までの労働日(1日9時間)に9時間を超えて労働した日がある場合や週45時間を超えて労働した週がある場合、または法定休日に労働した日がある場合の割増賃金は、各月の賃金で精算されていなければなりません。この点は変形期間中に退職しない者も同じです。【*注2】

本題に戻って…

この清算が毎月済んでいるとすれば、退職時の時間外割増賃金の計算の対象となる総労働時間は、

・ 各日の労働時間が9時間
・ 1月から6月までの総労働日数が130日
ですから、退職時の時間外割増賃金の計算の対象となるこの間の総労働時間は 9×130=1,170時間です。

そして1月から6月までの暦日の日数は、31+28+31+30+31+30=181日ですから、この期間で週平均40時間に納まる総労働時間は 40×181÷7=1,034.285時間です。

従って 1,170−1,034.285=135.715時間分の割増賃金を退職時の賃金で支払わなければなりません。

なお、当然ですが36協定は必要になります。

【*注】
変形期間中の時間外労働となる時間の計算方法は、H6基発1通達・H9基発195通達で示されています。詳しくは、上の過去ログボタンを押して、過去ログ72の[3680]および[3682]を参照してください。この過去ログは1か月単位の変形で説明していますが、日と週についての計算方法は1年単位の変形でも同じです。
【*注2】
今回の具体例では1月〜6月の変形内容がすべての日と週で原則の法定労働時間を超えているために、単純に9時間を超えた日で時間外労働時間をカウントし、さらに法定休日ではない休日に出勤した場合に45時間を超えた週で時間外労働をカウントすればいいのですが、計算の対象となる変形期間中に原則の法定労働時間未満の日や週がある場合の計算は上記【*注】で参照されるログにあるように複雑になります。

投稿時間:06/03/06(Mon) 10:20:51
投稿者名:しんじ
ホスト名:203-165-84-121.rev.home.ne.jp
Eメール:
URL :
タイトル:Re^5: 1年単位の変形労働時間制について
有難うございました。そうも言ってられませんが、変形労働時間制は結構ややこしいですすね。家に帰ってじっくり考えてみますが、概ね理解できました。

投稿時間:06/03/06(Mon) 12:08:39
投稿者名:nemuta (ID: Un1NN0c)
ホスト名:pdf5311.osaknt01.ap.so-net.ne.jp
Eメール:nemuta@abox.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:Re^6: 1年単位の変形労働時間制について
> 有難うございました。そうも言ってられませんが、変形労働時間制は結構ややこしいですすね。家に帰ってじっくり考えてみますが、概ね理解できました。

そうですね。この件に限らず、法令を守り、かつあらゆる現場の要請に応えるのは容易ではありません。

しかしそれができる能力があるからこそ、独立開業もできるし、顧問料もいただけるのだと思います。それを考えれば、難しいことをむしろ歓迎したいと思いませんか?

投稿時間:06/03/06(Mon) 12:20:11
投稿者名:しんじ
ホスト名:203-165-84-121.rev.home.ne.jp
Eメール:
URL :
タイトル:Re^7: 1年単位の変形労働時間制について
確かにおっしゃる通りですね。簡単だったら自分でやっちゃいますよね。あやふやな理解でなくお金の取れるレベルを目指します。

投稿時間:06/03/04(Sat) 02:48:27
投稿者名:ゆき
ホスト名:softbank221021180071.bbtec.net
Eメール:
URL :
タイトル:Re^2: 1年単位の変形労働時間制について
詳しい説明ありがとうございました。
私なりの解釈なのですが
変形労働時間制をしただけでは結局1日10時間、週52時間超えてしまったら違法だけど それを違法にさせないために36協定で(協定による時間外・休日労働)を労使間で締結しておく ある意味変形労働時間制するなら36協定もしておいた方が良い という事
と私なりの解釈なのですが 合ってますでしょうか?
たびたびすみません。

投稿時間:06/03/04(Sat) 21:52:13
投稿者名:nemuta (ID: Un1NN0c)
ホスト名:p296976.osaknt01.ap.so-net.ne.jp
Eメール:nemuta@abox.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:Re^3: 1年単位の変形労働時間制について
何度も言いますが、1年単位の変形労働時間制の限度(1日10時間、週52時間)は、1年単位の変形労働時間のプランを設計する際に許される変形範囲の限度です。

1か月単位の変形労働時間制にはこんな限度はありませんから、例えばある年の2月が次のようなカレンダーであった場合に、

日月火水木金土
休88888休
休88888休
休88888休
休88888休

日月火水木金土
休44444休
休44444休
休1212121212休
休1212121212休

このような変形をしても、週平均40時間の枠に入りますから、このまま労働させても法定労働時間内であり割増賃金は要りません。

1か月単位の変形の場合は1か月以内に時間の精算が終わりますから、多少無茶な変形であっても労働者の生活や健康は守られますのでこれでも良いかも知れませんが、1年単位の変形の場合にこのような極端な変形を許してしまうと、例えば、夏の4か月間は毎日4時間労働で、冬の4か月間は毎日12時間週60時間労働で法定労働時間内だと言うことになります。

これでは労働者の生活や健康が守れませんので、1年単位の変形労働時間制の場合には変形の限度(1日10時間週52時間)を設けたのです。

>>>続く

投稿時間:06/03/04(Sat) 21:53:06
投稿者名:nemuta (ID: Un1NN0c)
ホスト名:p296976.osaknt01.ap.so-net.ne.jp
Eメール:nemuta@abox.so-net.ne.jp
URL :
タイトル:Re^4: 1年単位の変形労働時間制について
続き>>>

また、変形労働時間制の変形の限度の規定と、36協定の要否は全く別の問題です。

1年単位の変形の場合、1日10時間週52時間までは変形可能ですが、これは変形プランの設計段階で要求される制限ですので、1年単位の変形労働時間制のプランを立てる段階でこの時間の制限を超えて変形の設計をした場合には、その超えた部分が時間外労働になるという考え方をするのではなく、変形プランそのものが不適切なので修正しなければならないと考えてください。

そして適切な1年単位の変形労働時間制の変形プランが作成され、そのプランに基づいて変形期間に入って実際に労働していく中で、仮に52時間労働とした週に60時間労働した場合や、10時間労働とした日に12時間労働した場合のように法定労働時間となる変形の制限を超えて労働させた部分があったり、労働時間が変形期間を平均して結果的に週40時間を超えた場合には、ゆきさんのお考えのとおり、その部分は時間外労働になり原則違法ですが、36協定があって割増賃金を支払えば合法になります。

念のために申し添えますが、1年単位の変形労働時間制の場合に、1日10時間週52時間の制限が守られていれば時間外労働になることはないとは限りません。変形期間を通じてすべての日が1日10時間以内であり、かつすべての週が52時間以内であっても、変形期間を通じて週平均40時間を超えている場合をはじめとしていくつかのケースで時間外労働の問題が発生する可能性があります。その場合はやはり36協定が必要となり、割増賃金も必要になります。

投稿時間:06/03/05(Sun) 09:27:19
投稿者名:ゆき
ホスト名:softbank221021180071.bbtec.net
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URL :
タイトル:Re^5: 1年単位の変形労働時間制について
書き込み本当にありがとうございました。
時間が経ってまた忘れてしまうといけないので nemuta さんの書いてくれた文面を紙に書き込んでおいてもし忘れそうになったらまた見て理解が頭に定着するようにしたいと思います。
この度はありがとうございました。



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