最終更新日2000/7/14

激情/ザ・レビュー'99 (00/11/2 1000days劇場)
脚本:柴田侑宏、演出:謝珠栄/構成演出:岡田敬二


※宙はこの前に「エリザベート」を観ましたが、そっちは特に書くこともあまりないので (とゆーかあまり記憶がない)のでここで簡単に書きとめることにしますと、 作品自体お馴染みになって前のような感激感動はなかったけど 主役達がマネキン人形の競演のようにひたすら美しい舞台(木原敏江の少女漫画のようだった)で とても楽しめたことと、組替で来たじゅりぴょんルドルフ(よかった)が パレードの時にりりしい表情を保ちきれず(?)ニコニコ〜っとなっては またシリアス顔に戻り、二つの顔行ったり来たりの様子がおかしかったことくらいです。
で、激情 大人気の宙組なので、チケット入手困難。あきらめかけましたが、 舞台写真の花總に惹かれ、どうしても花總カルメン観たい!の一心で、 1000days初サバキで観てきました。

たいへん熱のこもった、良い舞台だったと思います。

花總が本気になってるのがすごい、本気になるとこの人はすごい。すごい集中力。
特に酒場での踊りが素晴らしい!迫力!女王様! めずらしく踊りの後のセリフがゼーハーゼーハー息切れしていました。

お下品な口調もステキでした。
最初、え、これが花總?!とびっくりしたくらい 低い声を使っていて、 トランプ占いの場面の「ちくしょう!もういちど」 とか、さりげなくドスがきいているのがいいです。 はっきりいってたまりません。セリフがいちいち快感。
娘役の「さりげなくドス」のセリフまわしって大好きなんですが、 星組のあやちゃんの後は千紘れいかくらいでしょうか、主役級では。 花總がこんなにやってくれるとは思いませんでした。

カルメンとしてはあまりセクシーとか妖艶とかは感じられない(細すぎるせいもある?) けど、ぴんと張った緊張感と、ほの暗い魅力がありました。

今回のカルメンはすごい謎の人物には間違いない。 獄中に夫がいるのにホセに恋して強引に仲間内に連れてきて、 夫が戻ってきたらへいぜんと「あたいの亭主さ」だとお。 独自の倫理観をもつ、やりたい放題の意味不明女なんだけど、 この作品ではホセが主役で、狂言まわしの作者メリメが ホセの激情ぶりに憧れてその物語を追っているというかたち、 なのでカルメンはホセをふりまわして燃えさせる存在で あればいいのでしょうきっと。

しかし。メリメ役のたかちゃんがパッとしないので、 その趣向はあまり活きなかったように思います。 こういう狂言まわし役ってものすごく難しそうなんだけど、 (「エクスカリバー」のワタル君もつらかった) とにかくほとんど印象がなかったので。 たかこちゃんは二役のガルシアはなんだかすごい迫力で びっくり、大インパクトだったんですけどね。

ずんこちゃんは、ぬぼーと大きい外見と、単純そうなところと 歌う時のカッとなる様子(「エリザ」でもやたら怒りっぽい トートであった)なんかがホセにぴったりでした。 ずんこちゃんの大人の男・・・は、私はどうしても子供っぽさを 感じてしまってイマイチなのですが、上記の理由から このホセはいい雰囲気でした。声が出るから迫力あるし。

ミカエラのあっこちゃんは・・・
あっこちゃんのことは大好きなんですが、今回は地味すぎる・・・
せめてあの野暮ったい服でなく、聖母マリアちっくな白いドレスとかに してあげて欲しかった。

エスカミリオのわたる君、ちょっと元気無い・・・
「誠の群像」の黒田どんで見せた迫力は、どこへ行った!
わたる君がんばってくれい。

ところで「カルメン」というと、思い浮かぶのは、 エキゾチックな南国のほこりっぽい空気の中、 濃い〜男と濃い〜女の、肉弾相打つ、ロマンチックで ドラマチックな、一大恋愛スペクタクル!!! というイメージなのですが。
この舞台はまるで違った・・・
日比野克彦さん起用による いつもの宝塚らしくない非常に抽象的な舞台装置(なんか落着かない) だったり、カルメンが針金系(?)謎の女だったり、ホセの生き方を メリメが追ってたり・・・・それにせりふにも、「私と仕事のどっちが大事なの?!」なんてその辺で よく聞くようなのが出てきたり、ジプシー達が突然、学歴で差別するな、 なんて歌うし(ジプシーと学歴なんて、しかもあの時代で?とっぴな組み合わせでびっくり)。

なんかさいきん流行りの神経症ちっくな現代劇を観ているような 気分になってしまいました。
こうなると観客はにわか香山リカ先生となってしまい、分析しなくてはならないんじゃないか! という思いにかられる人も多かったのでは(ほんとか)
カルメンは幼児期の家庭環境が原因で男性破壊願望があるのだろうとか、 ホセは母親の影響による強迫観念があって、ラストの幻のカルメンはやっと自分を 許してくれた母親の姿なのだ、とか、うんぬん

いかんいかんこれでは正しい「カルメン」ではない。
あ、「カルメン」でなくて「激情」だからいいのか。

しかしもしカルメン役が花總じゃなかったら 随分印象も違ってたかもしれないと思うと、 この「激情」は花總ワールドと言ってもいいかもしれない。

ということで花總パワーに圧倒された後の「ザ・レビュー」は反動で 少々物足りなく感じてしまったのでした。

ショーだけもいっかい観たい!と思うことは良くありますが、 「お芝居だけもいっかい観たい!」と思ったのは初めてのことでした。



なお、ずんこちゃんサヨナラの「砂漠の黒薔薇」は、ついに未見です。
あまりにも世間の評判が悪かったのでそれならテレビでやるまで待とうと思い、 無理して見にいくのはやめました。(「皇帝」よりひどいって、そんな作品が いったいほんとにあるのでしょうか!)

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