広汎性発達障害とは?

広汎性発達障害とは,自閉症とアスペルガー障害など自閉症に近い特徴をもつ発達障害の総称です.生まれつきの障害で,育て方や環境の問題ではありません.重症度はさまざまですが,軽症の人も含めると,人口の0.5〜0.9%もいると考えられています.

1. 広汎性発達障害(PDD)の診断

3つの特徴で診断されます.
(1) 対人関係の障害(場面に応じた適切な行動がとれない)
(2) ことばなどのコミュニケーションの障害
(3) こだわり,あるいは想像力の障害
3つの障害の程度によって,自閉症,非定型自閉症,アスペルガー障害などと診断されます. アスペルガー障害とは,ことばの遅れがなく,対人関係以外の困難が目立たない人達です.

2. 自閉症児の特徴

診断のところで述べた以外にも,PDDの人はさまざまな特徴をもつので,配慮が必要です.
・ まねをするのが苦手なので,教えるのに工夫が必要です.
・ 特定の音に対して敏感すぎたり,逆に鈍感であったりします.
・ 不安になるとなかなか収まりません.
・ 不安な体験や,いやな体験を,ずっと後になって思い出して落着かなくなります.
・ 人の表情や感情を読み取るのが苦手です.
・ 人がなにを考えているのか推し測れません.
・ 特に年少時は多動であることが多いです.
・ 得意なことと,不得意なこととのギャップが著しいことが多い.
・一度に多くの情報が与えられると混乱します.

3. 自閉症児の教育はなぜ困難か

(1)得意・不得意のアンバランスが著しいので,能力を正しく評価し,その子にあった教育が必要です.
(2)ただ禁止することは,かえって問題を増やすもととなります.替わりになにをやったらよいのか分からないからです.
(3)物事を教えるときに構造化という工夫が必要です.このことについては次に説明します.

4. 構造化ってなんだろう

"夜になったらパジャマを着る"ということを考えてみましょう.これを正しく行うためには,
(1)どのタイミングでパジャマを着るか判断することが必要です.自閉症の子は周りの状況から判断することが苦手です.また,ことばによる指示も理解できないことがあります.
→タイミング,状況を伝える工夫
(2) パジャマを正しい順番で身につけなければなりません.順序だった行動が苦手です.
→段階的に複雑な手順を習慣づける
以上のことを自閉症児に教えるためには,ことばだけに頼らない,見て理解する(視覚認知)ことは比較的得意であること,習慣づけを利用するなどに配慮が必要です.

構造化には,
@物理的構造化(決まったことを決まった場所でする)
Aルーチン化(課題や指示の手順を一定にする)
B一日のスケジュールを一定にして見て分かるように示す
Cワークシステムの確立
D視覚的構造化(目で見て分かるように示す)
などの方法があります.

5. 治療教育の原則

(1)親,学校が共同で…学習や習慣づけには繰り返しが必要ですし,みんなで理解しなければ自閉症児は安心して生活できません.
(2)個別の評価・個別プログラム…得意不得意がアンバランスなのでオーダーメイドが必要.
(3)健常者も歩み寄る…自閉症児の成長はゆっくりなので,子どもだけに修行させるのでは上手くいきません.
(4)構造化…自閉症児療育の基本です.
(5)理解しほめる
(6)低刺激…沢山の情報で混乱します.
(7)地域の理解・協力…親も子も気楽に床屋に行ったり,買い物ができるように.