摂食障害(Eating Disorder; ED)

摂食障害の概念の確立

1874年 
Gullがanorexia nervosaと命名し報告.心因性の障害として認識された
1914年 
Simmondsが下垂体機能低下症を報告してから30年あまり内分泌異常が注目されたが、その後再び心因性の障害と考えられている
1973年 
Bruchが摂食障害として包括
1983年 
カレン・カーペンターが拒食で死亡

摂食障害の分類(DSM-IV改変)

   T.神経性無食欲症 Anorexia Nervosa(AN)
A. 標準の-15%以上の体重減少(☆)
B. 体重増加に対する強い恐怖
C. ボティイメージの障害
D. 無月経
  U.神経性大食症 Bulimia Nervosa(BN)
A. むちゃ食いのエピソードの繰り返し
B. 体重増加を防ぐための代償行動
C. むちゃ食いや代償行動は週2回3ヶ月以上持続
D. 体型へのこだわり
  V.その他の摂食障害
定型的なANやBNの基準を満たさない摂食障害、むちゃ食い障害(BED)など
  ★AN,BNの下位分類          
AN 制限型
むちゃ食い-排出型
BN 排出型
非排出型

  ☆標準体重 22×(身長m)2      
150cm160cm
標準体重 50kg56kg
-15% 42kg 48kg 月経異常
-30% 35kg 39kg 重要臓器の障害
-40% 30kg 34kg 身体的に危険

摂食障害の有病率

AN 青年期-成人期前期の女性の1%
BN 同時期の女性の数%

摂食障害の経過・予後

・ANの5〜7割が数年で体重・月経回復,10年で6〜10数%死亡(合併症・自殺)
・BNの半数が5年で回復,BNでの死亡は少ない
・AN〜BNへの移行は多い

精神医学的合併症

・EDの半数にうつ病が合併
・EDのかなりの症例が人格障害を合併

摂食障害の要因

 
遺伝要因などの素因     
衝動性など  
生育環境     
親の役割をする子供、不安の高い環境  
特有の性格の発展     
頑張屋さん、完全癖、対人的過敏性  
発病のきっかけ     
理想の挫折、息切れ、孤独、ダイエット  
持続要因     
やせが自信になる、引きこもり、依存の手段としてのやせ

摂食障害の人の性格特徴

・All or Nothing
完全癖,コントロール欲求
・All Good or All Bad的な対人関係
・見捨てられ不安,人の顔色を察知して動く
・慢性の空虚感と自傷
・投影性同一視
…自我境界のあいまいさ 例)自分が相手を拒絶→相手が拒絶している
・保護され抱えられることに対して両価的
抱えられる→コントロールを失う,全部思い通りにならなくなる不安
抱えられない→見捨てられ不安
・言語的接近の限界と,体験を通して安心感を獲得することの重要性

治療の目標

・摂食障害の症状を0にすることが第一ではない
・その子にとっての摂食障害の意味を共有
→新たな支え、自信,
 摂食障害に頼らないでよいように・・・
・ほどほどの生き方,ほどほどの関係
(ほどほどで大丈夫であるという体験)
・守られた空間の中での対人関係の練習
・対人関係の広がり、家族の役割の回復
・身体管理
・・飢餓自体が生理学的に不安を強くする

さまざまな治療アプローチ

T.精神療法
個人療法   
摂食障害の意味の共有と新たな目標
  なにが誘発しているのかの認知
コントロール不能の症状から対処可能な症状へ
  対人関係の改善
家族療法    
家族内での子供の位置を変化させる
一人で頑張る子供から、必要なときには親に助けを求められる子供へ
     親の役割の回復
U.行動療法
   
体重を指標とした行動規制     
・・重症例は受容的対応のみでは変化が困難
V.身体管理・栄養指導
   
DIV,IVH,経管栄養
★状態によって、優先度を判断し、適切なアプローチを組み合わせる
★ A-Tスプリット: 管理医と精神療法家の役割を分担, 症例によっては、規制を加える管理医が、同時に精神療法を行うことが困難

治療チームの役割

治療環境を良い空間に
・良いところを見つけて誉める
・ガリガリの体を貶さない
・過度に感情的な対応、他人との比較は避ける
・体型に関するコメントは慎重に
・・・具体的な血圧やデータなどに関する指摘は比較的安全
・対人関係の練習台としてのスタッフ  
日常の話題で付き合うことも大切
・スタッフ間の連携が大切
患者はあたかもスタッフを分断するような動きをする.連携することで、支える場をつくる(分断されては患者にとっても安全な空間でなくなる)