さ よ な ら 3 8 1 系


新快速Aシートに乗ろうとしたが


そもそも今回の旅は、昨夏の山陰線西部の旅の反省をもとに計画された。昨夏の旅は学生時代に50系客車で通った長門古市駅が忘れられなくて、その再現を狙った。しかし長門古市駅の通過時刻が当時は19時前、昨年は16時台ということで夏の夕暮れの寂寞感がなかったのである。それならということで日没時刻が一年の中で最も遅い7月上旬に、19時半ころの列車で現地を訪ねる計画を立てた。しかし今春のダイヤ改正で小串発下関行きの接続がとれなくなり断念。次善の策として美祢線を使い、長門市18時台の小串行きで長門古市を訪ねることにした。

JR西日本の株主優待券が届き「e5489」で手配をしようとしていた7月1日、美祢線全線と山陰線の長門市~小串間が大雨のため橋が壊れ、長期にわたって不通となった。まぁこの旅に関しては復旧してからでも行けるので、別のルートに行程を組み直した。それは来春に引退予定の381系特急型電車のお別れ乗車として、特急やくも号に乗ることを目的に岡山~(やくも)~出雲市~(スーパーおき)~山口と周遊するルート。この行程でネット予約し、旅立ちを待っていた7月9日に次なる問題が巻き起こった。北九州と中国地方を襲った大雨のため「やくも」「スーパーおき」の全列車が運休となった。旅を翌日に控えてあたふたしたが、とりあえず「やくも」にさえ乗れれば良いと考え、姫路~(スーパーはくと)~鳥取~(スーパーまつかぜ)~米子~(やくも)~岡山という行程に変更した。旅行前日の夕刻には明日の「やくも」は全便予定通りに運行という知らせがあり、胸をなでおろした。


姫路から鳥取まで特急スーパーはくと5号に乗車。豪快な走りだった

2023年7月10日、浜松から米原まで新幹線で向かい、米原駅でe5489で予約した米原→福山の乗車券と、スーパーはくと、スーパーまつかぜ、やくも、新幹線の特急券を受け取った。ここで一緒に野洲~姫路間の新快速3号のAシートの指定券も発券したのが、あとあと響くことに。本来ならチケットレスでも乗車OKだが、指定券を紙のきっぷで残したいというスケベ心が招いた災いだった。

Aシート連結の新快速は野洲始発なので、まずは米原から野洲まで快速列車という名の各駅停車で移動。JR琵琶湖線は各駅停車でも十分速い。

野洲でいったん改札を出て一息入れて、あらためて新快速が発車するホームに行った。発車数分前に列車入線のアナウンスを聞いて驚いた。「本日はAシートを連結しておりません…」

Aシートが登場して4年余り。乗れそうで乗れなかったAシートに今日こそ乗れるとわくわくしていたが、結局いつもの転換クロスシートで姫路まで移動した。せめてもの幸いだったのは、いつもはめちゃ混みの新快速が空いていたこと。最後尾の12号車に座ったからかもしれないが…。

姫路駅でAシートの払い戻しをするため、いったん途中下車。改札で聞いてみると、払い戻しはみどりの窓口とのこと。で、そこに行くときっぷの発券を待つ人が30人以上。これでは次のスーパーはくとに間に合わないと思い、窓口の外にいた係員氏に「事故 姫路」のスタンプだけ押してもらった。スーパーはくとからスーパーまつかぜを乗り継ぐ間に鳥取駅で1時間以上の待ち合わせ時間があるので、その時にできるだろうと思っていた…。

姫路からはスーパーはくと5号のグリーン車に乗車。株主優待券で料金も半額になっているので、普段は乗れないグリーン車に惜しげもなく乗れるのである。さて乗車した車両は智頭急行のHOT7000系気動車。阪神大震災直後の迂回ルート列車で乗ったのが初めてなので、かれこれ30年くらい走っている車両である。それにしては外観も古さを感じないし、リニューアルされたアコモデーションも優秀で、コンセントも付いている。これに乗って新幹線のような路盤の智頭急行線を一気に北上し鳥取に着いた。

さて鳥取でAシートの払い戻しに挑戦である。JR西日本の窓口は人員削減が進み、ここ鳥取駅も例外ではなく長蛇の列となっている。まぁ私も大抵のことは指定券発券機とe5489でやってしまうので、窓口に人がいなくても問題ないが、今回のようにイレギュラーなことが起こると困ってしまう。ようやく自分の番が回ってきたが、窓口の駅員さんは「米原駅でないと払い戻せない」と出まかせを口にする。「いやいや姫路駅で証拠のスタンプを貰って、1年以内ならどこの駅でも大丈夫と言われた」と話すと、キップを持って奥にこもってしまった。それから10数分経ってようやく払い戻しに成功。列の待ち時間を含めて30分以上費やしてしまった。たった600円の払い戻しなのにタイパの悪いことだった。

鳥取駅での77分の待ち合わせの間に、少なくとも地元の名物グルメを堪能するつもりだったが、見事に打ち砕かれてしまった。しかたなく少し早めにホームに行くことに。幸いにもスーパーまつかぜ7号は発車15分前に入線してきた。

スーパーまつかぜはキハ187系で運行。外見は地味な列車だが、振り子機能を持つ車両。カーブの多い山陰線の高速化を目的に導入された。今回乗車の区間では前半部の鳥取~倉吉間がカーブの多い山間部を走り、能力を遺憾なく発揮した。前面展望は左の画像から見られるが、とにかく腕が疲れて時折画角がずれるのはご愛敬ということで…。


福山城至近のベッセルイン宿泊

米子駅からは待望の381系のお別れ乗車。16時26分発のやくも24号は、所定では国鉄色の車両で運行ということで楽しみにしていた。しかし実際やって来たのは普通のゆったりやくも塗色でがっかりやくも。おそらく昨日の全便運休で車両繰りが狂ったのだろう。まぁ乗車してしまえば外の色は関係ない。お別れ乗車なのでグリーン車を奢り、2時間ちょっとの乗車を楽しんだ。

新見駅を挟んだ曲線区間では、自然振り子機能に酔ったのか、はたまたた午前中から飲んでいるハイボールに酔ったのかは定かではないが、夢のような地獄のような時間だった。岡山に近づくにつれて徐々に暮れなずんでいき、終点には18時39分に到着。これが最後の国鉄型特急電車の乗車と思うと名残惜しいが、一方で来春登場の新型振り子電車の273系に期待を寄せている。まぁとにかく姫路から鳥取、米子と乗り継いだ振り子特急シリーズは終わった。

岡山から宿泊地への福山には500系のハローキティ新幹線に乗車。福山城の横にあるベッセルイン福山駅北口に泊まるのだが、翌朝にはエクスプレス予約グリーン特典によるN700系8両編成と16両編成のグリーン車乗り較べが待っている。そんなわけで福山に到着し、千鳥足になりながら駅前のホテルになんとかたどりついた。。。

鳥取から米子まで山陰線特急のスーパーまつかぜに乗車。 その②もあるよ


払い戻しに30分以上かかった鳥取駅


一日め最後の列車はハローキティ新幹線


最後の国鉄型特急電車として老体に鞭を打つ381系。お別れ乗車なのでグリーン車に


チェックイン時に見た福山城ライトアップ


ホテル最上階から福山駅の105系を望む

<終>

旅と音楽のこころへもどる