NON-RESERVED


ゴールデンウィークでもガラガラの山陽こだま


のっけからいきなり恨み節で申し訳ないが、2009年のゴールデンウィークはカナダのバンクーバーに行くはずだった。しかし、今回の新型インフルエンザ騒ぎのため、「大人の判断で」出発2日前に延期を決定。というわけで予定外の空白の5日間が生まれてしまった。

さて、この日程を埋めるべく国内旅行をしようと考えたが、高速道路は例の「1000円乗り放題」の影響で、とてもじゃないが使えない。かといって飛行機も新幹線も予約がとれるほど甘くない。「さぁ、どうしたものか」と関西汽船のホームページを覗いていたら、あったあった。5月4日の夕刻に大分を出るダイヤモンドフェリー運航便に、1室だけスタンダードクラスのシングルルームに空きがあった。速攻でそれを押さえ、5日朝の大阪発高速バス「東海道昼特急」も奇跡的に予約が取れて、晴れて九州へ旅立つ準備が整った。

で、九州へのアプローチはどうしたかと言えば、こだまの自由席で勝負することにした。というのも2年前のゴールデンウィークに山陰に行った時、5月3日夕刻から夜の新幹線がガラガラに空いていたという経験があったからである。当初、5月3日の午前中に出発する予定で旅程を組んでいたが、より万全を期して前日に旅程を組み替え、浜松14時57分発のこだま657号で九州へと旅立った。


ホテルより米軍基地方向を望む


徳山駅コンコースから徳山港を望む

目論見どおり15号車喫煙自由席はガラガラ。さっそくワンセグで春の天皇賞を見ながら缶ビールを開けた。馬券が当たらなくても、それはご愛嬌。16時からは、いつもの日曜日同様「トーキングFM」と「安部礼司」を楽しんだ。いつも聴いているプログラムも、流れる車窓というシチュエーションだと新鮮で、他愛のない話にも素直に笑える。これだから旅は止められない。

新大阪で小休止のあと、17時38分発のこだま769号に乗り継ぎ。2&2シートでグリーン車並みの空間が確保されている。空いているのをいいことに前の座席を回転させて、4席を1人で独占。ゴールデンウィーク真っ只中、前のシートに足を投げ出して「走る居酒屋」状態にできるなんて、ほんとに「こだま」はいいねぇ。10分停車がザラにあって、時間は死ぬほど掛かるけどね…(ちなみに新大阪〜広島間の所要時間は3時間8分。距離は341.6`だから、表定速度は109km/h!)。

ダラダラと飲んでいるうちに広島に「あっという間に」到着。在来線に乗り換えて岩国へ。岩国泊まりとしたのは、他で何度か書いているようにAFNがあるから。北米に行きそびれたので、せめてラジオだけでも北米気分に浸りたかった…。日本にある米軍基地はいろいろと問題があるけど、AFNという存在は評価しにゃいかんね。

翌朝再び山陽線で徳山に移動。岩国と徳山の間の在来線は、私が最も好きな区間のひとつである。波穏やかな瀬戸内沿いを走り、「いわた」「島田」と馴染み深い駅もある。少なくなったとはいえ、「ピリピリピリ」とハイトーンの発車ベルも旅情を誘う。岩国から1時間、名残惜しいが徳山で列車を降りた。

徳山からは、スオーナダフェリーで国東半島の竹田津へダイレクトアクセス。徳山港は駅から目と鼻の先で、クルマを使わなくても便利な場所にあり、なぜ今まで使わなかったか不思議なくらいである。古き良き船旅が楽しめる桟敷の2等船室に寝転がっていると、竹田津までの2時間もあっという間である。

14時に竹田津港に入港。徳山港もちっちゃな乗り場だったが、大分側はもっとちっちゃな建物だった。いかにも漁村といった場所に、平屋建ての事務所がぽつんとあるだけ。何でも屋のような売店と、立ち食いうどん屋が同居しており、どことなく昭和の匂いがした。

50分の待ち合わせで、宇佐駅行きのバスに乗車。定刻に7〜8分遅れてバスが到着し、こんな田舎で渋滞する場所なんてあるはずもなく、早発防止のため始発をわざと遅らせたんじゃないかと勘繰りたくなる。で、このバスが、まぁ飛ばすこと。最後列の座席に座っていたが、ヨーイングとピッチングは、さっきまで乗っていたフェリーの比ではなかった。

国東半島は、主な名所旧跡が半島内部に集中しており、外周道路の国道213号線沿いには見るべきものが無い。その代わり車窓は抜群で、海岸線をアップダウンする度に息を呑む景色が広がる。

結局、バスに乗車した時に出ていた遅れは取り戻せずに、終点宇佐駅に到着。とにかく宇佐に来たからには宇佐神宮に立ち寄りたい。宇佐駅舎も八幡宮にあやかって朱塗りである。バスが遅れたので、宇佐での持ち時間は1時間。ちょうどいいバスがない。雨も降り出したこともあり、普段は滅多に使わないが、非常手段で往路だけタクシーを使うことにした。約4`に1,280円。一人旅は無駄も覚悟しないといけない。

宇佐神宮は駆け足で参拝。といっても境内が広いので本殿までの往復に25分くらいかかった。それにしても、ここまで雨など降っていなかったのに、この旅唯一のスポットで傘を差さねばならないとはついていない。ついていないといえば、帰りの宇佐駅行きのバスが直前で通過してしまい、踏んだり蹴ったり。遅れて欲しくないバスが遅れ、遅れて欲しいバスが定刻発車とはどういうこと?まぁ、直後を続行していた、大分空港行きバスに拾ってもらい、岩崎というバス停で降りて駅まで歩いた。駅までは徒歩5分ほどで事なきを得たが…

で、これだけ駆け足で宇佐神宮を往復したのに、人身事故の影響とやらで、大分に向かう鈍行列車が15分も遅れているという。ダメな時はダメなもので、おとなしく宇佐の駅名標を撮影したりしていた。大書きされたUSAの文字に「今頃はシアトルにドライブしていたのに…」と恨み言が口をついた。


神宮を模した駅名標にUSAの文字

おそらく、この旅で最も混雑した列車を西大分で降りると、そこには雨に濡れて雰囲気のいい木造駅舎があった。なんでも明治44年の開業以来の建物らしい。そっとカメラに収めて大分港のフェリーターミナルへ。ここも列車とのアクセスが良く、駅から7〜8分で乗り場に着いた。

スタンダードクラスのシングル個室が、株主優待割引で7,680円と、神戸まで移動するにも関わらずビジネスホテルに泊まったくらいの値段である。船内では、2日連続で酒盛り。大いに酔っ払い、そのうち眠ってしまったようである。翌朝、船内放送で目覚めると極度の二日酔いだった。

下船後も二日酔いの影響は続き、大阪で高速バスを2時間以上待つのがおっくうになった。住吉から乗車したJRの快速電車を、なりゆきで米原まで乗り通してしまった。米原では豊橋行きの新快速にナイスな接続。結局、バスに乗るより1時間半以上早く帰宅できた。帰宅後ネットをチェックしたら、乗車予定だったバスは1時間以上の遅れが出ていた。行き当たりばったりの旅も、たまには上手くいくこともある。


2&2シートで「走る居酒屋」を楽しむ筆者


観光都市岩国の玄関口・岩国駅


転換シートのシティライナーで徳山へ移動


瀬戸内海に架かる大畠大橋が車窓を過ぎる


徳山と国東半島を結ぶスオーナダフェリー


古き良き船旅が楽しめる2等船室の桟敷


竹田津到着まであとわずか。甲板にて筆者


国東半島の先端にある竹田津港に入港


竹田津港のフェリー乗り場。ここも昭和の匂い


ようやく宇佐駅行きのバスが到着


国東半島の外周道路・国道213号を行く


生憎の雨だったが宇佐神宮にお参り


鬱蒼とした境内。新緑に朱色の鳥居が映える


宇佐に来たなら一度は寄ってみたい宇佐神宮


宇佐神宮よろしく朱色を大胆に使った宇佐駅舎


旅も終盤。鈍行列車で大分市内に移動


明治44年の開業以来現役の西大分駅舎


大分港西大分地区フェリーターミナルに到着


一晩寝るには十分なスタンダードクラスシングル


神戸港六甲アイランドに到着。お疲れさま

<おしまい>

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