鳥 取 大 返 し


レフ京都八条口byベッセルに前泊


昔からやってみたかったことのひとつに日本最長の山陰本線を一気に乗り通すということがある。ただし最西端の益田~幡生間は特急列車が運転されていないので、特急列車だけでこれをすることはできない。しかし鳥取~新山口間を5時間20分ほどで結んでいる特急スーパーおき号があり、疑似的な体験は一日あれば可能である。せっかくなので日長な時期の7月前半にこれをやってみようと思った。すなわち京都駅を7時32分発車の特急きのさき1号で出発し、城崎温泉駅で特急はまかぜ1号に乗り継ぎ、さらに鳥取駅で特急スーパーおき5号に乗り換えて新山口駅到着が19時14分。日の出の後に出発し日没前に終点に到着できるプランである。

浜松をどんなに朝早く出ても京都駅に朝7時半に着くのは不可能なので、京都駅八条口にほど近い「レフ京都八条口 by ベッセルホテルズ」に宿泊した。ベッセルなら朝食バイキングが楽しみだが、早くに出発ということで泣く泣く素泊まりプランを選んだ。

さて最初に乗車するのは特急きのさき1号。287系の4両編成で幡生向き先頭車両の1号車が半室グリーン車となっている。JR西日本の株主優待券を利用してきっぷを発券しているので、せっかくなのでそのグリーン車を予約した。2列+1列のアブレストでゆったりと旅が楽しめる。

京都駅を発車し、しばらくは複線の嵯峨野線を進む。反対方向の上り列車は通勤通学客で満員だが、月曜日の朝からそれを尻目に特急グリーン車でコーヒーを飲むのはちょっとした優越感がある。まぁよくある朝のシーンも園部で終わり、ここからが長大なローカル線と呼ばれる山陰本線の真骨頂となる。まずは初っ端の園部~綾部間で、急峻な地形に突っ込み一気にスピードが落ちてしまうのである。

綾部からは福知山盆地を行き、高架線路から見える福知山城が印象的である。福知山からは一転して県境の峠越え。兵庫県に入った和田山駅からは但馬地方の里山を走り、車窓に円山川の川面が出てくると豊岡、そして終点城崎温泉駅となる。城崎では約1時間の待ち合わせとなるので、温泉街をぶらり散歩。ちょうどいい暇つぶしとなった。


日本で唯一「スタバ」がない県に誕生した「すなば珈琲」に入店

城崎温泉駅を10時49分に発車する特急はまかぜ1号に乗車。気動車のキハ189系に替わり、上り勾配ではエンジンの咆哮がたくましい。鳥取までの1時間19分の乗車だが、この区間はトンネルとトンネルの間に日本海がちらっと見えるので割と好きな線区である。特に有名な余部橋梁は絶景ポイント。特急はまかぜ号に乗る価値はここだけで十分だといっても過言ではない。その後、浜坂、岩美と停車し、鳥取駅到着は定刻の12時07分だった。

鳥取市内は小雨が降っており、なるべく傘を差さずに動きたい。そんなわけで鳥取名物の「素ラーメン」を食べたい。そこで鳥取駅前のサンロード商店街に店を構える中華料理屋「だいぜん」に入店するも、まさかのラーメン取り扱いなし。代替として大好物の麻婆飯をいただいた。これはこれで良かったのだが、鳥取に来たのだからなにか足跡を残したい。というわけで一本東の通りにある「すなば珈琲 “新”鳥取駅前店」に立ち寄った。名物の「砂焼きコーヒー」を美味しくいただいた。

駅から雨に濡れないで行ける店を2店ハシゴして13時半ごろ鳥取駅に戻ると構内放送で驚くべき事実に遭遇した。島根県内での大雨のために山陰本線の浜田駅付近で運行見合わせ。そのためこれから乗車予定の特急スーパーおき5号は米子で運転を取りやめるとのことである。これは困ったことになった。そもそも明るいうちに新山口まで行こうとして特急スーパーおき5号を予約したので、山陰線西部が乗れないのなら鳥取より先に行く意味がないのである。

実は2018年2月に大分で同じようなことを体験していて、小倉~大分で乗った特急ソニックのグリーン車は無手数料払い戻し。おまけに小倉まで戻るソニックも無料でグリーン車に乗車できた。今回もこの手を使おうと思い、鳥取駅の清算窓口で京都に戻ることを伝え、京都駅できっぷを払戻すことになった。

次の上り普通列車まで約2時間。もう改札の外に出るわけにもいかず待合室で過ごした。今回の旅でこの時が一番辛かった。15時21分発車の浜坂行き鈍行で鳥取を脱出。この後は時の過ぎるのが早かった。香住駅で途中下車して後続の特急はまかぜ6号に乗り換え。和田山まで乗車して、和田山から福知山まで普通列車でつなぎ、福知山からは特急はしだて8号に乗車して京都に戻った。ちなみにこのはしだて号は京都丹後鉄道のKTR8000形「丹後の海」で運行していて、少々うるさいもののシートの座り心地は素晴らしかった。

旅の最後は京都駅での払い戻し。ここではいろいろとやり取りがあったが、既に特急きのさき号と特急はまかぜ号の特急券は回収されているので、その分の特急料金が払い戻しできないことで落着した。つまり乗車券とスーパーおき号は無手数料で払い戻し。JR西日本の株主優待券は使用済みのまま回収された。貴重な優待券が使用済みになったのは痛かったが、まぁ鳥取往復が割安でできたので良かったのかなと納得するしかなかった。

鳥取名物「素ラーメン」がないため麻婆飯


大返しの途中で香住駅で途中下車

<終>

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