雪 の 只 見 線 |
ホテルシーラックパル宇都宮 |
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ネットやSNSの功罪はさまざまなところで言われているが、誹謗中傷などではなく簡単に情報が入ってしまうため結果的に取り越し苦労となるのもデメリットなのかもしれない。というのも今回の旅の目的である只見線が1月8日(金)から県境区間で運休となってしまい、成人の日がらみの三連休はまったく動かなくなってしまった。その情報を逐一チェックしていた私は、只見線が運休してしまうことを考えて右往左往。1か月前に「えきねっと」で予約しているため、経路変更するにも指定券払い戻しなどがあり簡単ではない。迂回路となる磐越西線までもが一時的に運休する事態だったので、堅く考えて雪の影響がない常磐線~磐越東線への経路変更も視野に入れていた。 旅行前日になって只見線が運行を開始。さすがに定期客(高校生)のことを考えて平日はなんとしても動かすんだろうなぁと感心したが、ネットの運行情報には「只見線(会津川口~大白川駅間)は、通常運転を予定していますが、終日遅れや運休が発生する場合があります。」との表示。「場合が・・・」の可能性は2~3割と見積もり、今度は途中で動かなくなってしまった場合の善後策を検討することに。運送約款などを当たり、結局ホテルなどをキャンセル料100%で取り消したとしても、旅行を途中で取りやめて無賃送還で熱海まで戻るのが一番ネタになりおもしろそうである。というわけで旅行当日に熱海駅できっぷを発券するまでに運休とならなければ、只見線の行けるところまで行くということにして旅行当日を迎えた。 | ||
伝統の駅弁「チキン弁当」のパッケージ |
チキン弁当を肴に午前中から一杯 |
東京行きこだま号の二番列車で熱海駅に到着。車内でも只見線の運行状況を確認していたが、昨日の運行情報同様で「運休となる場合がある」との表示は変わらなかった。というわけで熱海駅頭の指定席発売機で発券。もう後には引けない。 JR東日本の株主優待券を利用しているので熱海駅からは在来線で移動。JREポイント利用のグリーン車に乗車。朝8時前に熱海駅を出るのでまだまだ通勤時間帯なのだが、1階の真ん中あたりの席に座ったので、幸いにも隣に乗客が座ることもなく優雅に上野まで移動した。 上野からは上越新幹線のグリーン車を利用。株主優待券で4割引きになるからグリーン車を奢ったが、少しでも長く乗るのだったら始発駅の東京から乗るのが道理である。でも「えきねっと」ではどうしても上野からの乗車しか表示が出なかった。えきねっとは便利だけど、特急のこの区間を利用したいという選択ができないのが玉にキズである。 上野駅の地下の新幹線ホームは初めての利用。リクライニングを控えめに倒してさっそく呑みテツを開始した。東京の伝統駅弁「チキン弁当」を肴にスーパードライで旅の前途を祝した。上越国境の大清水トンネルを抜けると車窓は雪景色へと変わる。越後湯沢で大量のインバウンド客を降ろし、列車はスプリンクラーの水を浴びながら浦佐を目指す。越後湯沢と対照的に浦佐で降りたのは地元の用務客風の人しかいなかった。 故田中角栄氏の政治駅という説もある上越新幹線の浦佐駅。ここで1時間以上の乗り換え時間があったが、駅前は閑散としていておまけに時雨れているので駅の外に出歩く気になれなかった。結局ほとんどの時間はぬくぬくとした待合室で過ごした。 浦佐駅から小出駅へ上越線で二駅移動し、いよいよ只見線の旅となる。会津若松から小出に向かう只見線の下り始発列車が今日の10時41分に小出駅に無事に着いているので、「大幅な遅れ」はともかく「運休」という事態は回避できそうである。13時12分に始発の小出駅を定刻で発車。会津若松方がキハ110、小出方がキハE120の2両編成。窓ガラスに色がついていないキハ110に座りカメラを回した(左上の動画参照)。車内の混み具合はボックスに1人ないし2人組が座る程度で快適。インバウンド客にも知られた路線であるが、大雪の時期に直前に4日連続で運休した威力は凄いなと感じた。 大白川駅と只見駅の間で県境を越えて福島県に入る。トンネルと鉄橋が連続し、左側の車窓からは田子倉ダム湖の湖面が見え隠れする。ちょっと里に出たなと思うと只見駅。ここで10分ほど停車するので乗客は思い思いに車外に出てホームを往復したり列車を撮影したりする。小出駅からほとんど車内のメンバーが変わらず、おそらく会津若松まで全線乗り通すのだろう。自分もそうだが4時間半も乗り詰めでご苦労なことである。 次の長時間停車は会津川口の10分間。この駅を出ると徐々に人里に下って学校帰りの高校生がどっと乗ってきたりする。17時11分着の西若松までは平原に積もった雪明りで日没後もなんとか車窓が見えていたが、西若松で6分停車した後はいよいよ夜汽車の雰囲気。ほとんど定刻通りの17時24分すぎに終点の会津若松駅に到着した。 只見線列車とこの後に乗る快速あいづ6号の撮影をしている間に時間がなくなり急いで磐越西線の快速列車に飛び乗った。E721系の4両編成で、郡山方の1両の中扉と後扉の間だけ指定席。そしてそこだけリクライニングシートである。普通列車に指定席を連結しているのは全国的にも珍しいので興味本位で乗車した。快適だったが混んでおり、普通車に座れるんだったら敢えて指定席車に座らなくてもいいかもとも思った。 郡山からE5系やまびこの自由席で宇都宮まで移動し、東口に出て宇都宮ライトレールに乗車。去年の3月にぶらり旅で宇都宮に泊まった時に実車を見ていたが、実際に乗車するのは初めてである。まずは併用軌道区間の宇都宮大学陽東キャンパス停留場まで乗車。併用軌道といえども信号待ちにかかることなくすいすい走る。また方々の路面電車と比べると圧倒的に揺れが少なく未来的な感じがした。この日の晩は停留場近くのホテルシーラックパル宇都宮に宿泊し、明朝あらためて全線完乗を果たすべく終点の芳賀・高根沢工業団地に向かう。 そして翌朝8時ごろ陽東キャンパスの停留場から下り列車に乗車。地方都市の一般的な人の流れは朝の通勤時間帯なら上り列車に乗客が集中し、下りの方はそれほどでもないのが普通だが、ここ宇都宮ライトレールは全く逆。すなわち工業団地に向かう下り列車に通勤客が集中するため、この時間は信じられないほどの混み方だった。久々に体を動かせない満員列車に乗ってほとほと疲れた。それも終点までの30分以上の間ずっとである。 一方で折り返しの宇都宮駅東口行きの上り列車はガラガラ。LRTは4名ボックス席があるが、始発から終点までの50分弱にわたって自分のボックスにひとりも他の乗客が座らなかったのである。つくづくその土地の電車は実際に乗ってみないと分からないということを感じた。 というわけで只見線とライトラインのお話はこれでおしまい。冒頭の話に戻るが、もしネットもSNSもない時代なら大雪で只見線が4日間も不通だったとしても、知らずに現地に行って普通に予定通りに旅をこなしていたということになる。情報過多の時代も功罪半ばである。 |
旅行前には散々振り回された只見線の旅も現地では平常運行 |
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雪が降りしきりホームは積雪の只見駅 |
宇都宮からの帰りは東武鉄道を選択 |
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初めての宇都宮ライトレール乗車は現地に来てはじめて気づくことだらけ |
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<終> |