連 闘


(中京からクランジへ)


〜たびうちV〜
第1場 中京競馬場
シンガポール航空国際カップ(国際GT)で、北海道営競馬の雄・コスモバルク号が、悲願のGT制覇を成し遂げた興奮も冷めやらない6月3日、私は中京競馬場のスタンドで、つかの間の休日を楽しんでいた。中京競馬場での中央競馬開催は年に3回(今年は阪神競馬場改修の代替開催があり年4回開催)。開催ごとに必ず1回は訪れる、私にとってのホーム競馬場である。今年は何かと忙しく、また6月初めにシンガポールで競馬観戦するとあって、初夏の中京開催はパスしようかとも思っていた。しかし忙中閑あり。シンガポールに旅立つ5日前の土曜日に、ひょこり時間ができて中京競馬場に足を運んだ。もし私が競走馬なら、中京とシンガポールの連闘となる過酷な競馬場通いだが、別に競走馬でもなんでもない身なので、単なるバクチ好きのオッサンという風評が立つだけである…

この日の成績は、右下の表でもお分かりのように、例によって午前中は快調に馬券を的中させていった。午前中の最後のレースでは、3連複を56点も買ったものの、見事万馬券を的中させ、儲けは1万円を超えた。ホクホク顔で昼休みに入った。


新装なった成田空港第1ターミナル南ウイング


話題のヌードルバーのうどん


国内最大級を誇るANAの第5サテライトラウンジ

中京競馬成績表('06.6.3) 単位;円
レース 投資 回収 収支 累計
中京2R 1,500 3,850 +2,350 +2,350
中京3R 1,800 2,110 +310 +2,660
中京4R 2,100 0 -2,100 +560
中京5R 5,600 16,030 +10,430 +10,990
中京6R 4,000 3,300 -700 +10,290
中京7R 2,400 0 -2,400 +7,890
中京8R 2,000 0 -2,000 +5,890
東京9R 2,500 2,250 -250 +5,640
中京9R 3,000 0 -3,000 +2,640
東京10R 2,700 2,010 -690 +1,950
中京10R 3,000 0 -3,000 -1,050
東京11R 3,000 0 -3,000 -4,050
中京11R 5,000 12,550 +7,550 +3,500
合計 38,600 42,100 +3,500 +3,500
午後になると、ぴたっと快進撃が止まるのも、いつもの通り。中京6R、東京9・10Rで的中するも、いわゆる「ガミリ馬券」で、いつしか1万円あった儲けは吹っ飛び、オケラ街道まっしぐらという勢いであった。

迎えた中京のメインレースは、準オープンクラスの関ヶ原ステークス。4番人気のトウカイエール号を軸に上位人気の5頭に流す3連複10点を、500円ずつ計5000円購入した。レースの方はハイペースとなり、道中最後方で進んだトウカイエール号が、直線で切れ味鋭い差し足を見せて快勝。2着に6番人気のジョウノビクトリア号が入線して、3連複は25.1倍の配当がついた。この的中で一気に借金返済して、3500円の儲けとともに家路に着いた。

第2場 成田空港第1ターミナル
私が中京競馬場に足を運んだ前日の2006年6月2日、ANAを始めとしたスターアライアンス各社は、成田空港第1ターミナル南ウイングに集結した。ANAにとっては、第2ターミナルからの大掛かりな引越しで、同時にチェックインカウンターやラウンジ等も一新したわけである。今回、シンガポールに行くに当たって、新しくなった第1ターミナルを利用するのが、ひとつの楽しみになっていた。

6月8日(木)、いつもはひとつ手前の第2ターミナルで下車する京成スカイライナー号を、終点まで乗り通した。案内表示に従って南ウイングの方に進むと、まだ新品独特の匂いが残るチェックインカウンターにたどり着いた。第1ターミナルを利用するのは、アメリカン航空でラスベガスに行ったとき以来で二度目、南ウイングに至っては初めてと、海外旅行初心者になった気分だった。カウンターのお姉さんも、まだオープンして1週間も経っていないので、どことなく緊張感が漂っていた。

ヒルトン・シンガポールを出発して競馬場へ


競馬場はMRT南北線クランジ駅に隣接


クランジ競馬場の入場門にて筆者


ラウンジ入場料込みでSG$20


ラウンジ・ハイビスカスでゆったり競馬観戦

イミグレを抜けて、ANAラウンジへ直行。スターアライアンス各社が共同で運用するため、第2ターミナルの従来のラウンジよりも格段に広くなった。話題のヌードルバーが気になり、入室と同時に足を運んだが、私が抱いていたイメージよりも簡素で、メニューも1種類だけ(今月はうどんで来月はそば)だった。それでも、ラウンジで暖かいものが食べられるようになったのは進歩で、半人前ほどの小ぶりのうどんも美味だった。

もうひとつの話題のサケバーは、喫煙所と対角の位置にあり、私が苦手な日本酒だけを置いていることもあって遠慮した。無料で使えるPCや、リクライニングシートを備えた個室風の仮眠スペースもかなりの広さであったが、利用することはなかった。愛煙家にとっては、喫煙所の丸椅子に座って、自分のPCを無線LANで接続している方が、ずっと快適なのである。まぁとにかく、ANAは期待を煽りすぎた感もあったが、待合所であるラウンジは広いのがなにより。出発前に快適に過ごせるようになったのは確かである。

第3場 クランジ競馬場
イギリスの植民地時代にルーツを持つこともあって、シンガポールの競馬は上流階級の社交場の雰囲気である。香港もそうだが、会員シートが設けられ、そこに入場するにはちゃんとした身なりで行かねばならない(とはいっても襟付の半袖シャツにジーンズ以外の長ズボンでOKだが)。ということで、旅先ではサンダルで過ごす自分も、ちゃんと靴を履いてMRTに乗り込んだ。

競馬場はMRT南北線のクランジ駅に隣接している。私が宿泊したヒルトン・シンガポールを始めとして、外国人の泊まるようなホテルは南北線の沿線にあるため、MRTで乗り換えなしで行ける。ちなみにヒルトン最寄のオーチャード駅からは40分ほど。運賃は片道$1.90(約140円)である。

第1レースの開始時刻は18時であるため、1時間前の17時頃競馬場に到着したら、ちょうど会員席の受付開始時間だった。窓口のお姉さんにパスポートを見せ、「ハイビスカス・プリーズ」と言うと、$20(約1450円)と引き換えに、名刺大の入場券を渡された(左の画像参照)。競馬場の入場口とラウンジへの改札口は、この入場券を自動改札機に通すことで通過できる。

香港でもそうだが食事をしながら競馬観戦

「@Hibiscus」という案内表示を手掛かりに、競馬場内を上がったり下がったりして、ようやく会員エリアの改札口にたどりついた。「ハイビスカス」はシンガポール・ターフ・クラブ会員専用の観戦ラウンジで、外国人にも開放されている。隣は馬主席で、入口は別でも中でつながっていた。セルフサービスのレストランが併設されていて、食事をしながら優雅な気分で競馬観戦できる。さっそくビールとフライドチキンを注文した。

ところで、シンガポールは公共の場所では室内禁煙。喫煙所を探し回っていたら、パドックに行き着いた。パドックが喫煙所を兼ねているのである。おかげでレースが終わる度にパドックに直行。日本ではめったにパドックに行かない自分が、にわか正統派競馬ファンになってしまった。


馬連・3連単・4連単・ワイドのマークシート


夕闇せまるパドック。喫煙コーナーも兼ねる

<馬券の買い方>
ここでは、日本の競馬ファンに馴染みがある「馬連」「ワイド」「3連単」に絞って馬券の買い方を説明します(右の画像参照)。
@MEETING欄の「SIN」をマーク
ARACE欄にはレース番号をマーク
BBET TYPE欄には、「馬連」なら「FCT」を、「ワイド」なら「PFT」を、「3連単」なら「TCE」をマーク
C1st or BOX〜4th欄は以下の通りです
・馬連/ワイドの1点買いなら「1st or BOX」欄と「2nd」欄にそれぞれ1頭ずつ馬番をマーク
・馬連/ワイドのボックス買いなら「1st or BOX」欄に3頭以上の馬番をマーク
・馬連/ワイドの流しなら「1st or BOX」欄に軸馬の馬番をマークし、「2nd」欄に流す馬の馬番をマーク
・3連単はJRAのフォーメーションのマークの仕方と同様で、「1st or BOX」欄に1着の馬番、「2nd」欄に2着の馬番、「3rd」欄に3着の馬番をそれぞれ1つ以上マーク
DUNITS欄には1点の購入金額をマーク(1ユニットは$2)
Eその下の2つの欄は、コンピュータにランダムに買い目を決めてもらうためにある欄ですので無視しましょう。
・・・・・・・・・・・・・簡単でしょ!

※ちなみに単勝、複勝馬券は別のマークシートを使用し、1ユニットは$5です。

左回りの長い直線をサラブレッドが激走


マークシートと引き換えに発行される馬券
左側は馬連のボックス馬券で$39的中したもの
右側はワイドの流し馬券でハズレたもの



専用モニターもあるが、やっぱりターフビジョン


シンガポール競馬成績表('06.6.9)
単位;SG$
レース 投資 回収 収支 累計
1R 24 39 +15 +15
2R 20 0 -20 -5
3R 22 0 -22 -27
4R 20 0 -20 -47
5R 20 0 -20 -67
6R 20 22 +2 -65
7R 222 356 +134 +69
合計 348 417 +69 +69

シンガポール・ターフ・クラブの
公式サイトはこちら


手に汗握るゴール前の攻防


熱帯の夜のとばりが下りナイター競馬を楽しむ


メインレースで単勝に突っ込む


ナイター競馬は芝の鮮やかさが印象的だった


メインレースで大勝負。見事に勝った


複勝1.4倍はおいしすぎる

海外の競馬場で困ることが2つある。ひとつは日本のような詳細な競馬新聞がないこと。もうひとつは馬券の買い方である。一応、競馬専門誌はあるものの、中身はハイビスカスの入場券と一緒に窓口で渡されたオフィシャル・プログラムとほとんど同じであった。プログラムには過去6レースの着順とタイム差が掲載されていたので、これを解読しながら予想をしていった。馬券の買い方は、上の囲みで書いた通りであるが、これを解明するのが一苦労で、パドックでたばこを吸っていた現地のお父さんに聞いたり、発売窓口の空いている時間を見計らってお姉さんに聞いたり大変だった。苦労の甲斐あって、18時発走の第1レースは馬連ボックスが的中し、幸先のいいスタートを切れたが…

クランジ競馬場は左回りで、内回りと外回りの芝コースの内側にファイバーサンドのダートコースがある。この日は外回りの芝コースだけを使用していたが、最後の直線は500b以上もあり、東京競馬場並みである。1800bのスタートは向正面の奥深い引き込み線にあるので、京都競馬場の左回り版と言った方が適切かもしれない。とにかく日本で1・2位の広さを競う競馬場と同じ規模なので、大したものである。カクテル光線に浮かび上がった鮮やかなターフの上を駆けていくサラブレッドを見ながら、至福の時間を過ごすことができたが、左上の成績表でもお分かりのように、第2レース以降は下降線。第3レースは日本人調教師である高岡さんの管理馬2頭が人気になっていたので、応援の意味もこめて2頭の馬連に$10賭けたが、見事に振られてしまった。

まるで先日の中京競馬のリプレイを見ているようだ。とにかく勝ち癖をつけねばと、馬連5頭ボックスを購入した第6レースで的中させて一息ついた。そして今日のメインレース。シンガポールのドメスティックGV「3歳チャレンジ(1stレグ)」に思い切って突っ込むことにした。というのも1番の「WHY BE」という馬が前々走まで5連勝。前走はGTで5着だったが、勝ち馬と3/4馬身差だった。他の馬は、良くて重賞で入着するかしないかのレベルだったので、全馬57`の定量戦ならガチガチの銀行レースだと判断した。しかし、シンガポールのファンは分からないもので、上位人気が拮抗し、「WHY BE」が1番人気ながらも、最終オッズは単勝2倍、複勝1.4倍だった。私はそれぞれ$100ずつ購入し、これで負ければ帰りの電車賃しかないというところまで追い込まれた…

レースの方は、「WHY BE」がスタートから終始先頭をキープし、最後の直線では他馬をさらに突き放す圧勝劇!!中京競馬と同様、借金を返済した上に、$69儲けて悠然とクランジ競馬場を後にした。「ふっふっふ。さすがワシ…」
<おしまい>

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