スペーシアXで大名旅行 |
コクピットラウンジで大名旅行 |
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東武鉄道の社運を賭けた新型特急電車「スペーシアX」が走り始めてから3か月あまり。そろそろ当初の混乱も収まったかなと思い、10月31日14時に浅草を発車するスペーシアX7号を予約した。1か月前にネットから予約したら、運の良いことに1号車コックピットラウンジの最前列の席を押さえることができた。というわけで今回はカフェカウンターで購入できるツマミ類をすべて賞味することを目的に大名旅行を敢行することになった。 当初は東名浜松北から東京駅まで東名バスで行く予定だったが、東名リニューアル工事中だったことを忘れていた。この期間中は多摩川の橋の上や大和トンネル付近で激しい渋滞となるので、せっかく予約したスペーシアXの極上席をフイにしかねない。東名バスは渋滞区間の手前で降りることにして、かつ家を出る時間を大幅に繰り上げることで時間の余裕を作った。 | ||
東武鉄道の社運を賭けたスペーシアX。コクピットラウンジでの優雅な旅を楽しむ |
当日は朝3時頃に目が覚めてしまい、結局大幅に繰り上げた予定よりもまだ早い時間に家を出た。東京行きのこだま始発に間に合ってしまい、それで静岡まで乗車。静岡駅で東名ハイウェイバスに乗り換えとなる。 現在、静岡と東京を結ぶJRハイウェイバスは新宿や渋谷に直行するライナー便が主力だが、それこそ国鉄バス時代から走っている歴史ある路線が今回乗車する便である。それは静岡駅を発車して東名上にあるバスストップをくまなく停車していく「急行便」というバスである。各停なのに急行を名乗るのは訳が分からないが、昔々遠鉄バスと静鉄バスが共同運行していた「東名静岡浜松線」の種別は快速だったし、もっと時代を遡ると国道1号を経由していた都市間路線バスもあったわけで、それに比べれば高速経由でスピードが速いから急行を名乗るようになったのではないかしら。とにかくバスの世界は奥深い。 東名リニューアル工事の影響で車線規制があったりするが、静岡県を通過してしまう車両はもとより新東名の方を走るので交通量が比較的少ない。速度が低下することはあっても渋滞することもなく松田バス停まで着いてしまった。小田急に乗り換えるためにここで下車した。 東名松田バス停は山の中腹にあり、JR御殿場線の松田駅や小田急の新松田駅へは坂を下ることになる。これが逆に鉄道から高速バスへの乗り換えだと急坂を登ることになり大変である。いつもの通り動画を撮影し、乗り換えシリーズの一本としてYouTubeにアップ予定である。 小田急の株主優待券が余っているので新松田から一旦小田原まで乗車。あらためて小田原からロマンスカー(EXE)で新宿に向かう。小田急の特急列車の座席はロマンスシートと呼ばれるが、特徴として隣同士の座席を仕切るひじ掛けがない。まぁカップルで乗るのならいいが、特にEXEあたりだと通勤特急に使用されるのであまり按配が良くない。オジサンどうしが肩を触れ合って2人掛けとなる可能性が高いからである。 幸い終点まで隣席に座る人が現れなかったのでロマンスシートでもそこそこ快適だった。さて新宿から浅草に向かうのだが、さまざまな行き方が存在する。時間は余裕たっぷりなので少しでも安く移動するため東京メトロの路線同士を乗り継ぐことにする。すなわち丸ノ内線で赤坂見附に行き、対面乗り換えの銀座線で終点の浅草まで行くパターンである。いずれも18メートル級の車両の6両編成なので輸送力が足らず、いつも混んでいる路線である。それでも上野を出ると車内は閑散としはじめる。この区間が日本最初の地下鉄開通区間であるのに・・・。 東部浅草駅では明日乗車するスペーシアの個室のキップを予約・発券しなければならない。行程表から希望書に列車名を書き写し、窓口氏に渡すと「こんな列車はない」と言う。どうやらスペーシアXが走り出す前のダイヤの旅程で旅行当日を迎えてしまったらしい。新ダイヤでは当初の予定よりもスペーシアきぬの時刻が1時間半繰り下がっているので、当然その後の新幹線も予約を取りなおす羽目に。グリーン早得が効かなくなるので、しぶしぶこだまの自由席で予約を取りなおした。 一連のすったもんだの作業を終えてもスペーシアXの発車まで1時間ほどあり、ちょっと浅草の新仲見世通りを散歩してみた。ほとんど海外からの旅行者としかすれ違わない状況に「人酔い」してしまい、早々にタバコの吸えるカフェに避難した。田舎の地元では味わえない感覚である。 スペーシアX乗客専用の待合室があるとの噂を聞いていたので、発車30分前に浅草駅に舞い戻った。実際は待合室などなく、リニューアルされた専用ホームにベンチが置かれている程度でがっかり。それも先客がすべてのベンチに座っており、この人たちはいつから待っているのだろうかと思ってしまった。で、ようやく発車の15分前にお目当てのスペーシアXが入線。空車回送でなく実車で到着したので車内清掃で待たされる。ようやく乗車が許されたのは発車5分前。その時の模様は左上の動画に詳しい。 浅草を発車するとコクピットラウンジの乗客ひとりひとりにアテンダントがメニューを置いていく。そのメニューに挟んであるトランプのようなカードが、同じ号車の後方にあるカフェカウンターでの優先注文が可能になる目印となる。とりあえず飲み物は「日光ラガー」を注文し、ツマミの方は当初の目的どおり全種類を注文。すなわち「あさのポークジャーキー」「頂鱒のスモーク」「頂鱒とらっきょうのリエット」「オニオンコンソメラスク」の4つを注文。それ以外にも本日のジェラート、酒粕のジェラート、一口羊羹などを追加注文。しめて総額6,340円を散財した。乗り物の豪華な座席と食堂車的な車両では金に糸目を付けないのをモットーとしているが、いささか使いすぎのようである。それでもこれらの飲み物とアペタイザーのおかげで極上な時間を過ごすことができた。 終点の鬼怒川温泉には16時03分到着。温泉旅館にチェックインするに相応しい時刻であるが、旅はまだまだ続く。各駅停車に乗り換えて新藤原に行き、そこでリバティ会津131号に乗り換えて終点の会津田島到着という行程が残っている。スペーシアXの豪華な空間から通勤車両然としたロングシートの車両に乗り換えるという落差を楽しみながら東武鬼怒川線の終点・新藤原に到着。ここでキップを買い直し16時51分発のリバティに乗車。鬼怒川温泉以北の相互発着の場合は特急に乗車しても特急料金は不要。スペーシアXと比べるとビジネス特急臭を隠せないが、特急料金無料なら極上な車両である。日が暮れて真っ暗になった会津田島には17時42分の到着。そのまま駅前のグリーンホテルミナトに投宿した。 翌朝は霧が街中を包む幻想的な風景が広がった。まずは会津田島駅を8時07分に発車するAIZUマウントエクスプレス2号に乗車した。ガワは3セク特有の軽快気動車なのに、アコモはリクライニングシートが並ぶ乗り得列車である。そのシートに身をゆだねながら、徐々に霧が晴れ青空が見え始めた会津鉄道最南部沿線の車窓に見入った。 快速列車を会津高原尾瀬口駅で下車し、1時間半のアイドリングタイム。そのまま乗車しても鬼怒川温泉に行けるが、この旅のひとつの目的を果たすために敢えて下車したのである。しかしながら駅周辺で時間をつぶす当てもない。とりあえず駅舎に直結した階段を降りて「憩の家」という観光施設を覗いた。さらにそこから川を渡り、三滝と呼ばれる小さな滝を見学。さらにグーグルマップ上には「滝の上」という観光スポットも表示されていたが、こちらは見つからずじまい。かつて国鉄会津線の終点だった会津滝ノ上駅が、何回か名前が変わって現在では会津高原尾瀬口駅となった。そのルーツともいえる「滝の上」はぜひ訪れてみたいスポットだったが、ホントにあるのだろうか? |
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鬼怒川温泉から新藤原へは一転ロングシート |
東武鉄道と野岩鉄道の接続駅・新藤原 |
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鬼怒川温泉以北は特急料金無料 |
会津田島の朝は霧に包まれて・・・ |
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南会津の拠点駅らしい堂々とした駅舎 |
会津高原尾瀬口駅の階段の先にある憩の家 |
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2扉でクロスシートがドア間に7組×2列の6050系。旧国鉄急行型の雰囲気がある |
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滝ノ原を探したがこちらは「三滝」 |
旧駅名は会津滝ノ原。かつての終着駅 |
鬼怒川温泉「まさよし食堂」で昼食 駅に戻ると鬼怒川温泉駅行きの各駅停車が入線していた。この車両の乗車がこの旅のひとつの目的である。かつて日光鬼怒川エリアでは普段使いで乗車できた東武6050系も、残るのは野岩鉄道の車両のみである。デッキこそないが2扉でボックスシートが並ぶ車内は国鉄急行型車両を彷彿とさせる。車齢からみてそれほど長くは活躍できないはずなので、乗れるときに乗っておこうということである。走り出すと野岩鉄道の連続トンネル区間でその魅力を発揮する。迫力のあるモーター音が、かつて夜行列車で乗車した165系を思わせるのである。鬼怒川温泉までの47分間でその魅力を味わい尽くした。心に残るひとときだった。 |
スペーシアの個室を1人で貸し切るのが夢だった。夢の値段は5,420円也 |
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<終> |