生誕50周年記念 八 雲 立 つ 出 雲 の 国 |
姫路駅前のホテル日航姫路に宿泊 | |
今月、誕生日が来て50歳になった。今さら誕生日といっても何の感慨もないが、50歳の誕生日は待ち焦がれていた。というのも「大人の休日倶楽部」などの会員資格が50歳であるためで、晴れてシルバー割引の仲間入りを果たしたわけである。まぁ今回の旅の方は50歳とは関係なく、この一年を慰労すべく「ダラダラできる旅」をするわけであるが…。 さてブルートレイン全廃以降、ダラダラできる列車がほとんどない状況だが、唯一残るのがサンライズ出雲・瀬戸である。こちらには喫煙できる個室も連結しており、タバコをくゆらせながら水割りを飲むという至極の時間が過ごせ、しかも途中で寝たくなったら乗り過ごしの心配なくゴロ寝できるという、往年のブルートレインを彷彿とさせる奇跡的に残った夢のような列車である。しかも年末年始、ゴールデンウィーク、お盆の超繁忙期には臨時増発されるということで、運行1か月前の発売日に予約した。それが今回乗車する「サンライズ出雲92号」である。通常の上りサンライズ出雲は、始発の出雲市駅を18時台に発車するが、この臨時列車は15時33分発。往年の上りブルートレインは始発駅を日の高いうちに発車するのが普通だったが、そんな余裕のある旅は廃れてしまった。15時台に夜行列車に乗るくらいなら、飛行機や新幹線でその日のうちに帰宅したり目的地に着いた方がいいに決まっている。ゆえにそんな列車は、ひとつ残らず消えてしまった。臨時列車とはいえ、往年の夜汽車のダイヤで走るサンライズ出雲92号は、万難を排して乗るべき列車であると思ったわけである。 そんなこんなで出発当日の12月25日は、仕事後の18時37分発のひかり481号で旅立った。この列車には前の職場の時から何度も乗っているが、来春のダイヤ改正で動きがある。ダイヤ改正のたびに気にかけていた700系新幹線の動向は、ついに「ひかり」からも撤退し、一部の「こだま」に残るだけとなる。ということは山陽区間で16両編成の700系は走らなくなる(臨時列車を除く)。このひかり481号も、ダイヤ改正後はN700系で運転されることになり、そうなれば当然全席禁煙となる。先ほども述べたとおり、タバコを吸いながら呑める列車が大好物なので、今度のダイヤ改正の内容はちょっと悲しい。山陽区間まで通しで走る700系ひかり号にあと何度乗れるか分からないが、せめて今日はクリスマスソングを聞きながら、姫路までこの列車を堪能しようと思う。 | ||
会社終わりに幾度となく乗車した700系ひかり |
岡山駅にて入線待ちをする特急やくも7号 |
それにしても、西明石まで後続ののぞみ号に抜かれないこの列車は速く感じる。いや酔っぱらってしまったせいかもしれぬ。さっきから聞いているクリスマスソングの数々は、いつもよりも早回しで聞こえる。浜松から姫路まで2時間5分。ちょうどいい酔い加減のところで列車を降りた。今宵の宿は姫路駅の目の前にあるホテル日航姫路。サンライズ出雲の発売日にマルスを打ってもらうため、バーターでJTBに予約をお願いした宿である。 翌朝は8時57分のひかり493号でスタート。1日に1本だけの新横浜始発列車。N700系の16両編成なので自由席は5両も付いている。東海道区間ではさぞかし混んでいたろうが、姫路ではガラガラである。わずか20分で岡山に到着してしまい、もっと遅く走ってもらいたいくらいである。 岡山では47分の待ち合わせで、やくも7号に乗り継いだ。2両つないでいる自由席には長蛇の列だったが、私が予約した2号車は半分ほどの埋まり具合で、隣の席には始発から終点まで乗ってこなかった。発車してしまえば、381系振り子式特急電車の独特の乗り心地で、倉敷までの山陽線内でもカーブとなれば容赦なく車体を傾ける。この走りはわりと眠気を誘うようで、ホテルでしっかり寝たにもかかわらず、伯備線内は居眠りしっぱなし。すっきり覚醒したのは峠越えした後の根雨あたりだった。 窓の外は雨が降ったりやんだり。この時期に山陰に来るので、こんな天気になることを覚悟していたが、実際に雨が降っていると気持ちが萎える。この列車が出雲市に到着するのは13時7分。サンライズ出雲が発車するのは15時33分。この2時間半ほどをどう埋めるかが焦点だが、まだ迷っていた。事前に用意したプランは出雲大社だが、もう何度も行っているので氷雨に打たれてまで行くのはちょっとと思う。さりとてきっぷは出雲市まで買っているので、松江で降りて一畑電車で宍道湖北回りもちょっとしずらい。いっそのこと木次線の亀嵩に行って蕎麦を食べようと思ったが、2時間半では戻ってこれないことが判明。そうこう考えているうちに列車は宍道湖畔を通り過ぎ、終点出雲市に着いてしまった。 結局選択肢はなくなり、出雲大社を往復することにした。ただし傘を差すのが必至なので、荷物とジャンパーはコインロッカーに預けることにした。まずは一畑電車で出雲大社を目指す。バタデンに乗るのはいつ以来か…。ワンマン列車だが、どの列車にもアテンダントさんが乗り観光案内するようになっていた。川跡で元東急車から元京王車に乗り換え。出雲大社に近づくにつれて雨が激しくなってきた。頭端式の出雲大社駅前に到着すると、横のホームにはデハニ50形が鎮座していた。屋根のないホームの端から雨に濡れながら、元京王車とデハニ50が並ぶ姿を望遠で撮影。撮りテツさんではないが、いいショットをモノにするためには少々の雨でもへっちゃらな感じである。 しばらく来ないうちに出雲大社の正門はすっかり整備されていた。記録を見ると前回の訪問は2007年の5月となっている。10年も経っていれば変わっていない方がおかしい。しかし正門から参道を行けば記憶のままで、しょぼつく氷雨もいい風情となっている。拝殿前でアリバイ作りのための記念撮影をし、前回の時に回った覚えがない本殿の裏まで歩いてみた。本殿には簡単に入ることができないので、塀の外側から遠巻きに本殿を撮影した。年末年始の休みに入っていない暮れの平日ということで参拝客はわずかであったが、中国系の外国人の姿が目立つ出雲大社だった。 一畑バスに揺られて出雲市駅に戻り、発車30分ほど前にホームに上がった。先発する岡山行きのやくも24号は入線していたが、お目当てのサンライズ出雲92号は入線前だった。しかし既に撮りテツさんはホームの端っこで列車の入ってくるのを待ち構え、始発駅から夜汽車に乗ろうというご同輩たちは、思い思いにホームに散らばっていた。やがて15時26分に入線するとの案内があり、この日のために用意したと思われる、ラミネート加工されたガムテープ貼の乗車表示に合わせて乗客が移動した。そのうちに列車は定刻通りに入線し、ホームの乗客は列車に吸い込まれ、私もそのうちの1人となった。拍子抜けするほど出雲市から乗ったお客は少なく、隣のホームからやくもが出発すると、その3分後に追いかけるように発車した。 |
出雲大社前駅で並ぶ元京王車とデハニ50 |
数年ぶりに来たら正門がきれいになってびっくり |
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出雲大社の拝殿を背景に雨中の筆者 |
御本殿の前にある八足門、東回廊、観察楼 |
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御本殿は簡単に入れないので塀越しに撮影 |
15時26分ごろサンライズ出雲92号が入線 |
始発駅を15時台に出る夜行列車 今宵の宿となるシングルルーム 指定された個室は喫煙車両の6号車6番。1階の部屋で進行方向に向かって背中側にテーブルがある、壁にもたれかかれない配置のハズレ部屋だった。まぁそんなことは構わず、持ち込んだつまみや酒を部屋に広げて宴会を始めた。これから気持ちが悪くなるほど飲んでも、この列車を降りるのは14時間以上後だと思うと気が大きくなる。まずは山陰線を東に1時間、そして米子を出ると今度は伯備線の単線区間を延々と走る。時刻表上では、米子の次の停車駅である新見までは1時間42分かかる。一方、米子を6分早く出る先述のやくも24号は、途中で根雨に停車するが、新見には40分も早く到着する。そう、サンライズ出雲92号は臨時列車ゆえ、至るところで行き違いの運転停車を繰り返すのである。通常の特急は普通列車を待たせてゆっくり通過するケースがほとんどだが、1年に数回しか運転されない当列車は、相手が普通列車だろうが当然のように2〜3分停車する。生山では10分以上停車した。そうこうしているうちに窓の外は薄暗くなっていく。天候が思わしくないため、いくら西日本で日の入りが遅いといっても限度がある。新見に着くころにはすっかり日が暮れてしまった。 |
山陽線に入り、宵の内に明石海峡大橋を通過 |
深夜2時ころ、浜松駅1番ホームに運転停車 |
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定刻どおり朝5時56分に横浜駅に到着 |
横浜から鈍行グリーン車に乗り、根府川の海 |
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<終> |