二  都   物  語 Singapore&KualaLumpur
マーライオンと宿泊先のコンラッドホテル→
☆昨年の投資を回収
昨年秋の2回の「修行」によってめでたくANAの上級会員になれたが、その修行の費用は航空券代だけでも約40万円。対費用効果を見ればバカバカしいの一言だが、 その無駄な搭乗の結果、いくらかの搭乗マイルと上級会員向けのアップグレード券を手に入れた。既に他のページでも書いているが、この春の香港旅行で10万円を回収し、 夏のロサンゼルス往復で26万円を回収した。今回のシンガポール往復航空券にアップグレード券を使うことにより、 ビジネスクラス運賃383,100円と実際の航空券代46,000円の差額337,100円を回収し、40万円かかった修行の旅の費用がようやくペイできたことになる。

そういう訳で10月15日金曜日、成田16時30分発のNH901便のビジネスクラスで日本を脱出した。シンガポール線は、ANAの国際線機材のうちでもハズレの部類で、国内線スーパーシートのようなビジネスクラスの座席だし、ビデオもオンデマンドではないけれど、外国人客を中心にけっこう座席は埋まっていた。


マーライオンの前でアリバイ作りの記念撮影


近代的な建物と川沿いの出店が好対照

☆結局はマーライオン
シンガポールには22時半頃の到着で、イミグレーションでまず時間を費やし、空港からホテルへはMRTを乗り継いだりで、ようやくホテルにチェックインする頃には日付が変わってしまった。シンガポールでは1泊するだけだが、なるべくゆったりしたいという理由で「コンラッド・センテニアル・シンガポール」を奮発した。ANAの上級会員向けのキャンペーンでヒルトンのゴールド会員になっていたせいか、部屋のアメニティなども充実していて、クマのぬいぐるみはお土産として持ち帰って来た。

翌日は、15時25分のクアラルンプール行き列車に乗るまではフリーである。とりあえず、日本で明日行われるGTレース「秋華賞」の馬券購入だけ済ませたいと思い、ホテル内のビジネスセンターに行ったが、受付のお姉さんに英語がうまく通じず、ネットにつながるパソコンが借りられるかどうか確認できなかった。ホテルよりも街角のインターネットカフェの方が気分的にも値段的にも手軽なので、ホテルを早々にチェックアウトして町歩きを始めた。


マレー半島への玄関口・シンガポール駅


駅のホームにイミグレーションがある

まずは、ホテル周辺のショッピングセンターを回ってみたが、インターネットカフェは見つからず断念。ホテルからMRTの駅の間にコーヒーショップがあり、そこには無料でネットにつながるパソコンがあったが、閲覧に制限がかけられていて、どうしてもJRAのサイトには行きつかなかった。それじゃぁということで、シンガポール随一のショッピングゾーンであるオーチャード・ロードに転進した。MRTサマーセット駅に隣接している小さなショッピングセンターの中にインターネットカフェを見つけ、ようやく所期の目的は達成された(結局購入した馬券はハズレたが…)。1時間ほどネットにつないで代金は5シンガポール・ドル(約300円)だった。

せっかくシンガポールに来たんだからマーライオンくらい見ておこうと思い、再度MRTに乗車した。ラッフルズ・プレイス駅で下車し、マーライオンはどっちの方角だろうと見回してみたが、案内らしきものは出ていない。シンガポールの10月頃の昼下がりというと、太陽がほぼ真上にあるため、晴れていても方角が分からなくなってしまう。あっちこっち迷った挙句、ようやくマーライオン公園に着いた。「シンガポールに行った」というアリバイ作りのため、結局マーライオンの前で記念撮影をした。

“EKSPRES SINARAN PETANG”号の最後尾


1等車の車内。ビジネスクラス相当


☆マレー鉄道の旅
この旅の一番の目的はマレー鉄道に乗ることである。MRTにみたび乗車してアウトラム・パーク駅で下車。そこから15分くらい歩いてKTM(マレー鉄道)シンガポール駅に着いた。日本でいえば夏の気候なので、汗だくだく。Tシャツが塩を吹いていた。

さて、マレー鉄道のキップはインターネットで購入できる(eチケット)ため、外国の鉄道でいつも苦労する、発券のやりとりをせずに済み、気が軽い。それでもチェックインとかは必要なのかなと思い窓口に立寄ったが、ミールクーポンみたいなものをくれただけだった。やがて改札開始時間になり、他の乗客の列に続いてホームに入った。ホームにはマレーシアの入国手続きがあったが、パスポートをちらりと見るだけで、入国スタンプすら押されなかった。こんなにあっけないイミグレーションは、私の人生では初のことで「本当にこれでいいのかな?」と気に病んでしまうくらいだった。


歩き回って疲れた表情の筆者


マレーシア国境の前で下車して出国手続き

15時25分の定刻より若干早めに発車。まずはシンガポールの西側を回り込む形で淡々と走る。25分くらい走ると駅に到着し、ボーっとホームを眺めていると、警官みたいな人がこっちをにらんで「降りろ!」というジェスチャーをしている。どうやらシンガポールの出国手続きを、この駅でしなくてはならないようだ。鉄道で国境を越えるという体験は初めてだったので、鳩が豆鉄砲をくらったような表情をしながら、空港によくあるタイプのイミグレーションの列に並んだ。

15分くらいで列車に戻り、再び鉄道の旅が始まった。駅を出るとすぐにジョホール水道に架かる橋を渡ってマレーシアに入国した。かつてサッカーの日本代表チームがフランスワールドカップの出場権を賭けて戦った町=ジョホールバルで少し停車し、それから後は延々とゴムのプランテーションが車窓を流れていった。単調な風景に眠気を覚え、起きたりまどろんだりを繰り返していた。


ジョホール水道の橋上にある国境線


ゴム林の間に太陽が落ちていく

さて、今回乗車したシンガポールとクアラルンプールを結ぶ列車は「EKSPRES SINARAN PETANG」という愛称の付いた昼行特急列車である。3等級の運転で、私が乗ったのは1等車(ファーストクラス)である。もっともシンガポールからクアラルンプールまでのキップ代は68シンガポールドル(約4,400円)だから、同じ区間のエコノミークラスの航空券代よりもずっと安い。6時間かけて乗り通すと列車に乗ったなという満足感(疲労感?)が得られるので、結構オススメである。

さて、日も暮れて車窓も期待できなくなったので、どんな編成なのか車内を歩いてみた。1等車は機関車のすぐ後ろで、その後ろがビュッフェである。考えてみれば朝から満足な食事は取っていなかったので、ビールとサンドイッチとカップラーメンを売店で購入し、テーブルで広げた。他愛もない食事でも車窓を見ながらビュッフェで食べると何倍もおいしく感じるものである。私は満足して自席に戻った。




ホテルの部屋よりKLタワーを望む


長距離列車ゆえ供食設備(ビュッフェ)も完備


KLセントラル駅に45分ほど遅れて到着


部屋の正面にはプルダナ湖の森が広がる


KL(クアラルンプール)セントラル駅


宿泊先のヒルトンとKLセントラル駅


列車はいつしかクアラルンプールの郊外にさしかかり、電車と頻繁にすれ違うようになってきた。21時頃、終点も間近というところで臨時停車。信号所らしいホームも何もないところで停まっていて、聞き取り辛い車内のスピーカーからは、車掌が何ごとか放送しているのが聞こえたが、なにぶんマレー語のためさっぱり要領がつかめない。結局そこで30分くらい停車して、終点KL(クアラルンプール)セントラル駅には定刻より45分遅れて、22時15分頃到着した。この夜の宿泊先である、ヒルトン・クアラルンプールは駅と直結しているため、いくら遅れても気にはならなかったが…。

このホテルは1ヶ月ほど前にオープンしたばかりで、ハード的には気持ちよかった。しかしソフト面では、まだこなれていなくて、習熟期間が必要だと感じた。ただ、値段はコミコミで345リンギッド(約9500円)なのだから、あんまり指摘しても仕方ないかも…。


クアラルンプール旧中央駅とKTM電車


旧中央駅はホテルになっていた


旧中央駅の向かいにあるKTM本社


クアラルンプールタワー前広場にて筆者


コンクリート塔としては世界一の高さ


☆クアラルンプールを町歩き
翌朝、私はホテルの自室で地図をにらみながらウンウン唸っていた。クアラルンプール国際空港を18時50分に出発するシンガポール行きの時刻までフリーで、どこに行こうか決めかねていたからである。結局、KL(クアラルンプール)タワーには必ず行こうと決めて、ホテルをチェックアウトした。まずは、KTMのクアラルンプール旧中央駅を見ておこうと思い、KLセントラル駅の構内を通り抜けて大通りに出て、北の方角へ歩き出した。この通りは基本的に歩行者向けには作られておらず、歩道が途中で無くなったり、街路樹がなくて直射日光をまともに浴びながら歩かねばならず大変だった。15分くらい歩くと旧中央駅に着いた。近代的な現在の駅もいいが、クラシックないでたちの旧駅の風情も捨てがたい。しばらく駅周辺で撮影をして、次の目的地のKLタワーに向かうことにした。歩くのはもう懲り懲りなので流しのタクシーを拾った。

マレーシア独立を象徴する「ムルデカ広場」


ペトロナス・ツインタワーを望む


クアラルンプール市民のゲタ代わりのLRT


KLIAエクスプレスで空港まで直行


タクシーの運転手さんはいい人だったけど、英語が通じずクアラルンプールで最も有名な場所のひとつだと思われるKLタワーの名前を出してもチンプンカンプンだった(KLタワーはマレー語では別の名前だった…)。タワーが見える場所まで走ってもらい「あの塔だ」と指差すと、ようやく合点したようで、あとはスムーズに運ばれた。

KLタワーで「クアラルンプールに行ったどー」的なアリバイ写真を撮ると、ようやく肩の荷が下りた。高いところからクアラルンプールの名所を見て、さも全て見たような気になって、帰路に就くことにした。最寄のLRTの駅「ダン・ワンギ」駅まで歩いたが、こちらは街路樹が整備されていて、汗もかかずに駅に到着した。駅の改札を通ってホームに向かおうとすると、後ろから叫び声が聞こえた。無意識のうちに振り返ると、その叫び声は私に向けられていることが分かった。声を上げたお父さんに恐る恐る近づくと、彼は私のパスポートを持っていた。どうやらLRTのキップを買う時に落としてしまったらしい。謝意を表しながらパスポートを受け取り、私は「クアラルンプールにはいい人が多いな」と思いながらLRTに乗り込んだ…。

KLIAエクスプレスはわずか28分で空港に到着


シンガポール航空の電動シートに感激

<おしまい>

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