Rail Trip『その先の日本へ』@南紀白浜
JR西日本エリア入りは名神高速バスを選択


このところ鉄道を使わない旅だったり、海外へ出掛けたりで、旅の志向が変わってきた。それはそれでいいのだが、ちょっと原点回帰が必要かなとも思い、「国内」「鉄道」にこだわった旅をすることにした。4〜6月という日本が一番美しい時期に、3回シリーズで『その先の日本へ』と題して綴っていこうと思う。第1回は南紀白浜である。

2007年4月21日土曜日。名古屋駅を8時5分に出る名神高速バスに乗車。5月末で期限切れとなるJR西日本の株主優待券を有効利用するため、JR西日本のエリアへどのようにアクセスするか悩んだ結果がこれである。鉄道にこだわると言っておきながら、のっけから高速バスでは格好がつかないが、初乗りとなる近江鉄道へのアクセスは、これがベターな選択である。バスは快調に名神高速を走り、1時間15分で名神多賀バス停に到着した。

多賀SAの中にあるバス停から近江鉄道多賀大社前駅へは、高速道路の側道を歩いて10分足らず。そのまま電車に乗ってしまうのでは芸がないので、昔ながらの風情が残る門前町をもう10分歩いて多賀大社に参拝した。

多賀大社から駅に戻って、10時08分のワンマン電車に乗車。幅の細い1両だけの電車だが、走り出して見ると野太い釣り掛けモーターがダイナミックに唸る。高宮までの一駅だけだったが、なかなか興味深い体験ができた。

高宮からは近江鉄道の本線で彦根に戻り、いよいよJR西日本エリアへ。窓口で今日のキップと、次回の出雲へのキップを購入したが、割引で半額になり全部で13,790円也。かなりのオトク感があった。彦根から新快速で京都に移動。京都に着いたのはまだ正午前だった。


行き止まりの多賀大社前駅にて


駅前に大鳥居が立つ近江鉄道多賀大社前駅


風情のある門前町を歩いて多賀大社に到着


京都始発のオーシャンアローで一路南紀へ


切目駅を通過すると車窓に太平洋が広がる


白浜駅でオーシャンアローを見送る

京都からはいよいよ本格的な鉄道の旅。キオスクでアルコールやつまみを仕入れ、特急オーシャンアロー17号自由席の進行方向右側に陣取った。旅行にいい季節の土曜日の行楽特急だが、始発の京都から乗るお客さんは僅かで、席は選び放題だった。12時33分に京都を発車。

このところJRの特急も全面禁煙化が進んで、愛煙家にとっては寂しい限り。流れゆく車窓をつまみにビールを飲み、タバコを吸う。これが旅の醍醐味だと私は強く思う。今回から3回にわたって取り上げる旅では、ぜひそこのところを伝えたいと思っている。

そうこうしているうちに、新大阪、天王寺で新たな乗客を迎え入れ、わが自由席も9割がた席が埋まった。直線の続く阪和線を快走し、和歌山からはいよいよ紀勢線、オーシャンアローの振り子機能が発揮される区間である。

20年前に特急しなの号の豪快な走りを体験して以来、私は振り子列車に乗るのが大の楽しみである。紀勢線でも381系での乗車体験があるが、今日乗車した283系オーシャンアローは初体験である。特に左右に車体を傾け、速度を落とさずS字カーブを抜けていく様は、豪快さと優雅さを兼ね備えており美を感じる。乗っても楽しく、見て美しい、そんなオーシャンアロー号である。

車窓に太平洋が見えてくると白浜も目前である。京都から2時間40分余の乗車だったが、久々に列車の中でリゾート気分が味わえ大満足だった。


見るからに行楽客が目立つ白浜駅


見どころが多い白浜でまず千畳敷に立寄る


黒潮といわれるだけあって青色が濃い


東尋坊に匹敵する三段壁の断崖


平草原公園の展望台から太平洋を望む


平草原で寝そべる筆者。転地効果抜群


名も無い公園から、こんな絶景が眺められる。やっぱり日本は奥が深い

事前にネットなどで下調べをしていたものの、車内で酔いがまわってしまい、ノープランで白浜駅前に止まっていた路線バスに乗り込んだ。白浜は駅と旅館街や観光スポットが離れており、クルマで来なければ必然的に路線バスのお世話になる。運転手さんもその辺は心得ており、バスを降りていく人全員に「おおきに」と声を掛け気持ちが良い。

車内に掲げてある路線図を眺め、まず千畳敷で降車ボタンを押した。曇りがちだった天気も白浜では太陽が顔を出し、すがすがしい。千畳敷を海岸の方に下りていくと、さすがに黒潮と言われるだけあって、太平洋の海の青さが濃い。しばし岩の上で佇んだ。

次は、歩いて三段壁へ。10分ほど歩くうちにアルコールが汗となって流れ歩調が軽くなった。三段壁は東尋坊のような断崖を黒潮が洗い、荒々しい眺めだった。種類の違う景観が歩いて行ける場所に隣接しており、観光都市白浜の面目躍如といったところである。

白浜の最後の訪問地は平草原公園。ここは山の上の平原で、展望台からは白浜の温泉街や太平洋を眺めることができる景色のいい場所である。季節折々の花が鑑賞できることでも知られ、この日はツツジが満開だった。公園の芝生に寝転がり、のびのびと旅の空を楽しんだ。

さぁ空港に戻る時間である。平草原から南紀白浜空港までは約2`。アップダウンのきつい道をひたすら歩く。途中、名も無い公園から見た景色が、この旅一番の絶景だった。赤い空港の誘導橋の向こうには白浜の街並みと海に浮かぶ無数の小島。そして海の向こうは雄大な紀伊山地。日本には、まだまだ知らない場所があると感じた一瞬だった…

徒歩で南紀白浜空港に到着。お疲れさん

<第1回 おわり>

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