秘 境 駅 へ の 道


のぞみ99号グリーン車で九州へ


1月にも似たような場面があったが、坂本龍一さんの訃報がこの前の日曜日の夜に入ってきた。長い間がんと闘っており、もう覚悟ができていたつもりだが、やはりニュース速報で訃報が流れると辛いものである。1月にも書いたが坂本龍一氏といえば「メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス」が真っ先に思い浮かぶ。バラエティ番組「ごっつええ感じ」クリスマス特番のラストで、白い息を吐きながら冬の寒空の中でこの曲をピアノで弾いていた姿は、既に伝説と化している。そんなわけで旅立つ前の夜は、中学時代にみんなで合唱した「千のナイフ」を夜更けまで聞いていた。

明けて4月4日火曜日、6時32分に浜松を出るこだま763号で西へと旅立った。今回はエクスプレス予約のグリーンプログラムによる特典を使って、小倉までグリーン車を乗り通す。こだまのグリーン車なら毎度お馴染みだが、のぞみ号のグリーンとなると8年ぶりぐらいかもしれない。新大阪で乗り継いだのぞみ99号はN700S系で、枕はなくても頭の支え方が秀逸で、気持ちよく春の山陽路を走り抜けることができた。


列車で行こうとすると大変な重岡駅・宗太郎駅もドライブならわけなく訪問

小倉でのぞみを降り、ソニック13号に乗り継ぎ。白いヤツが来ればいいなと思っていたが、お馴染の青い883系だった。指定席料金込み2,500円の「九州ネット早得3」というキップを予約したが、ほぼ半額で乗れるのでかなりお得である。春休み中ということで平日の中間時間帯でも指定席はほぼ満席。いつものように車窓にビデオカメラを向けつつ音楽を楽しんだ。今日はおニャン子クラブのアルバム「サイド・ライン」を聴く。春の旅では恒例のアルバムで、リリースされたのが第1回のSpring Tourである山陰本線を旅したころで、当然その旅の事を思い出す。山陰を旅した時も桜が満開で、「春一番吹く頃に」が流れた時にはどこかの駅の桜の花びらが風に舞っていたな…などと回想する。今日も沿線の桜並木が車窓をかすめていく。一瞬、山陰線の鎧駅あたりを走っているかのような錯覚に陥った。

杵築あたりの峠を越えて、別府湾が見え始めるとほどなく別府駅に到着。ここで亀の井バスに乗り換えて新港町まで行く。立命館アジア太平洋大学行きなので、留学生がたくさん乗車しており、英語やら中国語やらが車内で飛び交っていた。15分ほどの乗車で新港町バス停に到着し、国道10号に出て少し歩くとイエローハットが見えてきた。ここに併設されているニコニコレンタカーに予約が入っている。


ホンダ・フィットのレンタカーと筆者

レンタカーは旧型のホンダ・フィットだった。オッサンには似つかわしくないピンクメタリックのクルマで、運転席側の後部は塗装がはげかかっており、お世辞にも状態は良いとは言えない。それでもさすがはホンダのクルマで、エンジンと足回りだけは快調である。さっそく運転席に座り別府インターを目指した。

東九州自動車道を佐伯に向けて南下。途中の大分松岡PAでビデオカメラをセットし、前面展望動画を撮影し始めた。スマホから大音量で流れる音楽がうるさいは、途中で三脚が倒れて撮影が一時中断するはで、ロクな動画にならなかった。それゆえこのページで紹介するのはやめたが、興味があればYouTubeを検索してみてはいかが?

佐伯ICで東九州道を降りて国道10号方面へ。快調なワインディングロードを走って行くと2~30分ほどで重岡駅に到着した。ここ重岡駅と南隣の宗太郎駅は、併せて「重岡宗太郎」と人名のようになるのは、鉄道ファンにはよく知られたことである。加えて佐伯~延岡間の「宗太郎越え」と呼ばれる区間は、特急列車は頻繁に走っているのに普通列車は1日に下り1本、上り2本しかないので、列車で駅を訪問するのは困難なのである。

重岡駅始発の大分行きがあるので、上り列車は3本もある駅掲示の時刻表を眺め、対向ホームの駅名表を撮影してすぐに出発。メインは秘境駅の宗太郎駅である。その宗太郎には10分ほどで到着するも、駅の場所がよく分からない。鉄道の架線が見えるので線路があるのは分かるのだが、駅への進入路が分からないのだ。結局民家の庭先をかすめるようにして進むと宗太郎駅を発見。この駅での様子は左の画像からYouTubeでどうぞ。


「秘境駅」宗太郎駅を訪ねた

宗太郎駅をひとしきり見学した後、さらに国道10号を南下。ほんの2~3分で大分・宮崎県境を通過し延岡市へ。もうこの頃になるとフェリーの出航時刻が心配になっており、「時間がないのになんで別府とは逆方向に走っているの!」とキレ気味に運転していた。20分後ようやく人里が見え始め、東九州道の北川IC最寄りの「道の駅 北川はゆま」に到着。ここから再びビデオを回し始めた。

宮崎と大分の県境区間の東九州自動車道は、トンネルまたトンネルの区間。例えるなら山陽新幹線か、東北新幹線の盛岡以北みたいな感じである。そんな単調な区間を、眠い目をこすりながら運転するのは拷問に近い。そんな時は、あと数時間後にフェリーで飲めるビールのことを思い浮かべて気を紛らした。北川ICから30分も走ると佐伯ICで、国道10号と比べると相当早い。ほとんどが対面通行とはいえ、最高速度80キロの自動車専用道路の威力を思い知った。

帰りは大分ICで降りて、海沿いの国道10号を別府に向け北上。予定通り17時すぎに別府に到着し、レンタカーを返却後、歩いて別府国際観光港へ。今年になってから就航開始した新造船「さんふらわあ くれない」は船体が拡大したので、従来のターミナルには入れなくなったのか、新たに建造された新ターミナルから乗船することになった。このターミナルが従来の建物の北側に建っているので、駅から見ると遠い方向になってしまった。別府駅から徒歩ではアクセスが難しくなってしまい残念。そんな新ターミナルにイエローハットから迷うことなく一発で行き当てたのは奇跡というしかないだろう。

さっそく真新しいターミナルに入館。春休みということでチェックインカウンターには長蛇の列。新ターミナルには自動チェックイン機のようなものがなく、これではネット予約の意味がない。20分ほどかかってようやく自分の番が来て、予約番号を見せると、ものの10秒ほどで手続き完了。乗船前から疲れ果ててしまった。


さらに巨大になったさんふらわあ

カウンターに並んでいる間に乗船が始まっており、私が乗船した頃には船内はお祭り騒ぎだった。早々に自分の部屋に向かい入室。スーペリアシングルはインナーの部屋なので窓がないのが不満だが、シャワー、洗面所、トイレが備わっており、引きこもるには十分な設備である。またテレビと冷蔵庫もあるので缶ビールを持ち込んでも冷え冷えの状態を保てる。不満なのはWiFiが部屋まで届かないのと、ポットがないこと。コーヒーを入れようと給湯室を往復しないといけないことと、携帯を持ってロビーまで行くのがかったるかった。上階の窓際ほど携帯の電波もWiFiも飛んでいるようなので、今度乗船する時には部屋の位置をよく吟味せねばならない。

さて、自室で呑んでいるといつの間にか寝入ってしまい、肝心の船内散策は真夜中になってしまった。船内設備や朝食のメニューは左の画像からYouTubeにジャンプしてぜひご覧あれ。なにはともあれ日本初のLNG燃料フェリーということで、航行中もエンジンが船室に響かず静かで快適だった。でも私にとってはエンジン音がうるさい従来船でも、デラックスシングルに引きこもって海を見ながら飲んだくれるのが至上の喜びなんだよなぁ。。。

重岡駅の古風かつ簡素な駅舎


佐伯弥生PAから眺めた里山の風景


重岡駅と宗太郎駅の訪問の様子を動画に。宗太郎駅は入口が難しい


さんふらわあ くれないの船内の様子を動画に。スーペリアシングルは窓がないのが不満


さんふらわあ くれないの700円の朝食バイキング。船内とは思えない値段と空間

<終>

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