久 々 、さ ん ふ ら わ あ
2か月連続でN700Sこだま運用に当たる

このコロナ騒ぎが1年以上も続くとは思ってもいなかった。「もう大丈夫だろう」と昨秋に計画した、2月の「36ぷらす3」の旅を見合わせる事態になった。そのため宮崎でくだんの観光列車を下車した後に、宗太郎越えに使用するつもりだったJR九州の株主優待券の使い道がなくなってしまった。暖かくなれば流行が収まるだろうとの見込みで、別府→大阪のフェリー「さんふらわあ」の予約を2月に入れて、様子を見ていたところ、予定していた宮崎行きのJAL便がコロナの影響で欠航となり、計画を根本から見直すことに。それではということで、浜松から別府までグリーン車(と元グリーン車)だけを乗り継ぐ旅に変更したが、旅立ちの日が近づくにつれて、特に大阪での感染状況がひどいものになってきた。後々振り返れば第4波と呼ばれそうな状況の中、「ひとり旅かつ、お店で食事をしなければ大丈夫じゃないか」というあまり根拠のない理由をつけて、2021年4月13日の朝、九州に向けて浜松駅を旅立った。

浜松駅に入線してきたこだま851号を見て「おぉー」という声を思わずあげてしまった。というのも入線してきた新幹線はN700S。先月に続いて2か月連続で、その運用に当たってしまった。しかも今回はグリーン車に乗る。従来のN700Aに比べて、暖色系のシートになっており、シートも気持ち硬くなっている。昔はグリーン車といえばふかふかのシートが当たり前だったが、それでは長時間乗車するとかえって疲れるということで硬いシートになっているようだ。まぁとにかく、エクスプレス予約のこだまグリーン早得料金なら、400円追加するだけで指定席からグリーン席にアップグレードできるので、今回のように最新鋭の車両に当たると乗り得感が強い。


浜松→別府 グリーン車(元グリーンもあるが)乗り継ぎ

さて快適なシートに身をゆだねながら聴く音楽は、先月のSpring Tourで聴きそびれた、春を連想させる曲たちである。まずは松岡直也さんの「ハートカクテルvol.1」を聴く。ギターを弾くのは先月に亡くなった和田アキラさん。松岡直也バンドでギターを担当したのは、私が最も好きなアルバムのひとつである1984年暮れリリースの「Long For The East」からなので、私の大学受験時代。ちょうど京都の大学を受験しに行くときに、これから通る関ケ原あたりで聞いたのを覚えているので、松岡さんと4〜5年以上一緒にやっていたことになる。ということは私の大学時代をまるまるカバーしているのか…。特に思い出深いのは、1988年秋から始まったNHK教育の「ベストサウンドW」のギター講師役として、松岡さんと一緒に出演していたことである。アマチュアのギタリストを指導しながら、超絶なテクニックを披露し、「誰がマネできるんだ?」とツッコミを入れたくなるようなシーンもあった。「ハートカクテル」でも、3分少々というフュージョンとしては短い楽曲ながら、玄人受けするカッティングやソロを聴かせている。まだ64歳ということで、まだまだこれからという感じだったが、私が松岡さんの曲を聴いている間は、そのギターテクはおそらく色あせないのだと思う。

そんなことを思いながら車窓を眺めていると、浜松→新大阪の2時間はあっという間。左の動画にも収録しているが「AMBITIOUS JAPAN!」の歌い出しのチャイムが鳴って、終点新大阪が近づく。TOKIOのメインボーカルだった長瀬氏が先月末で芸能界を引退してしまったので、このチャイムの原曲が生で聴ける機会は、もう今後は無いのだろう。車内チャイムでいうとJR西日本の「いい日旅立ち」バージョンが昔は圧倒的に好みだったが、数年前ラジオでふいにAMBITIOUS JAPAN!がかかったのを聴き、「あぁこっちもなかなかいいね」と思ったことがある。作曲は昨秋亡くなった筒美京平氏。なんだかこのこだまでは、亡くなった人あるいは引退した人ばかり連想してしまう。


1食で東名阪が味わえる幕の内


最悪な事態もよぎった遅れ

新大阪で乗り継いだ列車はこだま851号。500系の「ハローキティ新幹線」で運用される列車である。鉄道ファンにはよく知られていることだが、500系8両編成の6号車指定席は、かつて500系が16両編成の「のぞみ」として運用されていた頃のグリーン車を、普通車として転用している。そのためシートピッチはグリーン車のままの状態でゆったりとしており、シートもそのまま使っているので乗り得列車となっている。ただし、フットレストだけは撤去されており、ここがなんとも惜しいところ。今回のように4時間以上乗車する場合は、フットレストのありなしが乗車時の疲れに直接関わって来るからである。ともあれ、新大阪→小倉間の乗車券+特急料金は、今回「おとなびWEB早得(こだま)」で予約しているため、格安の5,750円。のぞみが2時間ちょっとで走る距離を、4時間20分もかかるが、なんにせよ在来線を乗り継いでいくよりもラクなのは間違いない。機会があればまたチャレンジしてみたい。


500系らしからぬ色味のハローキティ新幹線


500系6号車指定席は元々グリーン車両


883系ソニックの革張りグリーン車にて


タクシーから撮影した「さんふらわあ」


デラックスシングルにひきこもった「さんふらわあの旅」

新大阪を出発した時は今にも雨が降りそうな天気だったが、本州の西端に近づくにつれて天候が回復してきた。新関門トンネルを抜けて、いよいよ1年2か月ぶりに九州に上陸。飛行機ではなく、地べたを走ってくると感慨もひとしおである。小倉駅で下車し、JR九州の発券カウンターに行って、ソニック35号のキップを買った。その際、窓口氏から「鹿児島本線の踏切障害でソニック35号は20分ほど遅れている」との案内があった。実は、別府駅からフェリー乗り場に行くまでの時間に余裕がないため、「ソニックが遅れなければいいが…」と出発前から懸念していた。そのため前もって遅れた時のプランを練っていた。最悪の場合はさんふらわあを諦め、宗太郎越えをして宮崎から飛行機で帰って来るプランまで想定していた。しかし、さんふらわあのコールセンターに問い合わせると、「手続きは出航1時間ほど前にお済ませください」と書いてはいるが、最悪出航の30分前までに(ゆえに18時15分までに)済ませば大丈夫とのこと。ソニック35号の別府駅到着は定刻17時25分なので、20分遅れてもタクシーで別府観光港まで行けばなんとかなりそうである。最悪の局面は回避できそうな感じので、ほっと一息ついた。フェリーの船室で食べる用に、名物の「かしわめし」を購入して、ホームに降りた。

結局、ソニック35号は小倉駅発車の時点で16分遅れとなった。途中でかなり回復運転をしたが、時間を縮められたのは線形の良い宇佐駅まで。それ以降は単線区間も混じることもあってかスピードが上がらず、別府駅には13分遅れで到着した。予定では17時30分の路線バスで別府観光港に向かう予定だったが、当然のことながらそれは叶わず、駅前のロータリーに停まっていたタクシーに乗車して港に向かった。話好きの運転手さんから、コロナ禍の観光地別府の状況を聞きながら10分ほど走ってさんふらわあターミナルに到着。ちなみに3時間ほど駅前で客待ちをしていたとのこと。タクシー代金は1,250円だった。


小倉で買ったかしわめしを船内で


南海高師浜駅前にて筆者

結果論ではあるが、ゆうゆうと出航時刻に間に合い、久々のさんふらわあの旅が始まった。かつて関西汽船の株主であったころには、毎年のように大阪別府航路の個室を半額料金で利用していた。しかし不況のため関西汽船が商船三井に吸収合併されることになり、株を手放してしまった。おそらくそれ以来乗船していないので、およそ12年ぶりとなる。まぁなにはともあれ久々の船旅に心が躍る。

定刻の18時45分に出港。九州の日没は遅く、出航後もしばらくは西の空が明るかった。遠ざかっていく別府の灯りが印象的で、多少高くてもデラックスシングルを予約して良かったと思う。とはいえ、昼間の新幹線からウィスキーの水割りを飲んでいたので、夜の時間は思いのほか短かった。明朝は6時35分の到着なので、早寝でちょうど良かったが…。

翌朝は4時半ころ目覚め、立て続けにコーヒーを飲み、二日酔いを追い払った。空はどんより曇っており、ちょうど昨日大阪を通過した時と同じような天気である。そのうち神戸の灯りが見え始め、白々と明けてきた。ちなみに別府出航後と大阪到着前の模様は、右上の動画で長々とカメラを回してるので、興味があったらぜひどうぞ。


別府観光港さんふらわあターミナル


大阪南港に到着したさんふらわあ あいぼり


大阪南港と堺を高速経由で結ぶバス


大阪中心部、平日朝8時台とは思えない


頭端式ホームの汐見橋駅に到着


大阪難波から一駅。秘境駅 汐見橋駅

船内放送で、大阪南港さんふらわあターミナルからの各地アクセスの案内があり、どうも堺方面に直通する路線バスが出ているらしい。ターミナルに到着後すぐに船を撮影に行ったため、正規の動線から外れてしまい、ATC(アジア太平洋トレードセンター)の中でバス停の位置が分からず迷ってしまった。6時48分のバスが堺行きの始発だったが、6時52分ごろバス停を探し当て、タッチの差で遅れてきたバスに乗れた。観光バスタイプのワンドア車両で、南港の各施設と堺駅・堺東駅を循環運行しているらしい。途中で阪神高速を経由するため、普通の路線バスタイプではなく、観光バスタイプで運行していることが分かった。堺駅には7時半頃着いたので、実質30分ほどでさんふうらわあ乗り場と堺駅を結んでいる。運賃は510円。時間と手間を考えると、割とコストパフォーマンスの良い路線である。

堺駅からは南海の通勤電車に乗って南へ北へ。まずは高師浜線に乗るために羽衣に南下。今年の5月から羽衣駅の高架化工事のため、3年間にわたってバス代行運転となるため、その前にどうしても乗っておきたかった。羽衣を出れば高師浜まで高架線が続くので、地上にある羽衣駅のところがネックなのがよく分かった。

続いて混雑する上り列車で岸里玉出に北上。ここの区間が感染防止という点では最も緊張を強いられた。岸里玉出から汐見線に乗り継ぐと、大阪の中心部を朝の8時台に走っているとは思えないのどかさ。30分間隔と都会らしからぬ頻度で走っているが、全線にわたって複線というもったいなさ。駅のホームの上屋を見れば、大正か昭和初期のものをそのまま使っている感じで、歴史を感じさせた。終点の汐見橋駅の地下には阪神なんば線の桜川駅があり、近鉄で帰る身にとっては、難波でで南海と近鉄を乗り換えるよりも10倍くらいラクである。というわけで、南港⇔堺のバスの効果で、予定よりも1時間早く大阪を脱出。感染症予防という観点からすれば、今朝はいいジャッジができたと、自分で自分を褒めたたえた。

結局近鉄のひのとりで名古屋に戻った

<終>

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