Spring Tour 2022 遥かなる向島渡船と耕三寺 |
ひかり533号はN700Sでの運行
|
今でこそSpring Tourは2月に行くのが恒例となっているが、35年前に初めてSpring Tourに出掛けたのは4月になってからである。その旅に持って行ったアルバムは、おニャン子クラブの「SIDE
LINE」。というわけで、今回の旅でも、その35年前のアルバムを聴いた。今度の参院選でおそらく国会議員になるだろう生稲晃子氏がフィーチャーされたアルバムで、「ダーリン、チュッチュッチュッ」と歌っていた頃とは隔世の感がある。夕やけニャンニャンに出ていた頃の彼女は、それこそ虫も殺さないような、おとなしいキャラクターだったが、国会議員になれば怖いオバさんになってしまうんだろうな。ま、支持政党でないところから出馬するので、どうでもいい感じではあるが。。。
|
岡オカの115系D編成を2本つなげた6両編成。往年の大動脈である山陽本線を行く
|
海沿いの喰海で尾道ラーメン
その「SIDE LINE」を聴いていると、私の乗る広島行きひかり533号は京都駅を発車。山側に座っていた私は車窓を凝視。まもなく京都鉄道博物館を通り過ぎる。ここで私が探しているのはSLでも0系新幹線でもなく、休憩所となっている50系客車。初めてのSpring
Tourで青春18きっぷを握りしめて乗った高松~高知の夜行列車がこの50系客車である。今となっては遥かな記憶であるが、こうして35年前の旅の残り香を感じられることが嬉しい。
さて東海道から広島まで直通するひかり号は珍しく、わざわざこれに乗るために一番列車のこだま号で浜松を出発したが、このひかり号は静岡に停車するのに浜松に停車しないのが恨めしい。まぁそれはともかく、新大阪でまとめて乗客が下車するのかなと思っていたが、そうでもなかった。新神戸、姫路と五月雨式に降りていき、最後まで残った客も岡山で下車していった。そこから福山までは貸切状態。といっても15分そこそこの時間であるが。
福山で在来線に乗り継ぐ。三原行きの405Mは今や貴重である115系電車。岡山電車区のD編成とよばれる3両編成を2本つなげた6両編成で、往年の大動脈である山陽線を走る。最後尾のクモハに乗車したが、なんといっても「爆音」と呼ばれるモーター音がいい。中学1年のころ、始めたばかりの鉄道趣味の仲間の家に集まり、ソファをボックスシート風に並べ、ステレオから東海道線の走行音を流して旅気分。その音源は113系だが、モーターは同じMT54である。線形が良くスピードが出せる東尾道までは100キロ以上でぶっ飛ばす。目をつむると中学生のころの鈍行列車の旅の情景が甦ってくる。
東尾道を発車して少しすると尾道水道が見えてくる。そのうち尾道大橋の下を通過し、右手は民家が連なる坂道、左手は海沿いに並ぶ商店街。尾道の典型的な風景に心が躍る。そして右にカーブしたホームに滑り込む。若い頃から何度も訪問し、未だに私が最も好きな町である尾道に到着した。
朝6時半すぎに浜松を発ってきているので、尾道到着は10時前である。10時から開店するラーメン屋さんを見つけておいたので、まずそこに向かう。海に面した尾道商店街の一角に、のれんがかかったラーメン屋さんを発見。それが探していた店「喰海」(くうかい)である。さっそく尾道ラーメンを注文。尾道ラーメンは背脂がこんもり乗っているので、脂っこいかと思えば実はさっぱり。あっという間に完食した。これで尾道に爪跡を残せたので、あとは余裕である。店から福本渡船の乗り場が目と鼻の先にあり、久々に向島に渡ってみようと思う。
大林宣彦監督の尾道三部作といえば、私が尾道好きになった原点の作品である。その中でも最もお気に入りなのが、富田靖子、尾美としのり主演の「さびしんぼう」。富田靖子さんが高校に制服で通学するシーンは美しく、思わず広瀬すずかと見間違えるほどである。その女生徒・橘百合子は向島に住んでいて、本土の高校に渡船で通学しているという設定。その渡船が福本渡船である。映画の公開から37年経た現在でも、福本渡船の雰囲気はほとんど変わらず、それが私を向島に渡る気にさせたのである。
対岸の向島には5分もかからず、乗船料は60円と安い。帰りは駅前に行く渡船に乗ろうと思い、そちらの乗り場まで500メートルほど歩く。その間にハンディカムを回し、映画さびしんぼうのことも触れているので、よろしければ左の画像からyoutubeをご覧あれ。
駅前に行く渡船は千光寺の屋根を模したと思われる船橋が目印。呼び名はいろいろあるが「駅前渡船」が通りがいいらしい。先の動画の中で「車が乗っていない」と発言しているが、正確には「乗っていない」のではなく「乗せていない」とのこと。なるほど、これでは「さびしんぼう」の通学シーンのごみごみ感がないなと思った。それはともかく向島滞在15分ほどで再び本土へ。駅前渡船の運賃は100円だった。
|
尾道ラーメンを味わい向島に渡船で渡る。大林監督の尾道三部作さびしんぼうの舞台
|
ごく普通の路線バスながら高速道路を走るおのみちバス瀬戸田線。島から島へ
|
社会人生活を始めた頃、添乗員として訪問し参拝した耕三寺。西の日光のゆえんも納得
|
耕三寺の五重塔を背景に筆者
尾道駅前に戻り、なんだかんだで時間を過ごし、11時55分発のおのみちバス瀬戸田港行きに乗車。まぁいたって普通の路線バスだが、しまなみ海道を走るバスの宿命で、西瀬戸自動車道という高速道路を経由する。その割にはシートベルトの装備もなかったのが不思議であるが。尾道駅前を発車すると市街地を東に向かい、尾道大橋のたもとで左折。このまま大橋を渡るのかと思いきや、市民病院まで往復し一つのお役目を終了。もと来た道を戻りいよいよ尾道大橋を渡る。向島ではこまめにバス停で停車し、尾道~向島の日常の足の役目が終了。島南部の向島ICからいよいよ高速道路に入る。
高速道路上にある向島バスストップと因島重井バスストップに停車するが、他の高速バスが軒並み停車する因島大橋バス停には停まらない。そうこうしているうちに生口島北ICで高速を降り、生口島内のバス停を停まっていく。生口島では主要なバス停しか停まらず特急バスの様相である。そして尾道駅前発車から約1時間かけて瀬戸田の耕三寺バス停に到着。尾道と耕三寺を結ぶこのバスの第三の役目の終了である。このバスの停車するバス停は、あとは終点の瀬戸田港のみ。もちろんここから歩ける距離である。
耕三寺にはバス通りから一本奥まった通りまで歩く必要がある。30年前に添乗員として初めて訪ねて以来、何度かここに来た覚えもあるが、正直まったく記憶にない。ほぼ初見の状態で耕三寺の山門に到着した。
|
日光東照宮陽明門にそっくりな孝養門
|
小さいながらも綺麗な瀬戸田港ターミナル
|
三原起点でしまなみ海道訪問に結構おすすめ。弓場汽船の高速船で瀬戸田から三原へ
|
駅前の三原国際ホテルに宿泊
耕三寺の受付で入館料大人1,400円の表示にびっくり。拝観料ではなく入館料としているのがミソで、仏閣としては昭和になってから建てられたもので、歴史的建造物ではない。それよりもパビリオンとして観た方が正解で、わざわざ日光東照宮に行かなくても、ここで陽明門とそっくりなものが見られる。他にも金閣寺を模した茶室、平等院鳳凰堂を模した本堂など。石山寺の多宝塔を模した多宝塔に至っては登録有形文化財である。そういえば上の画像の背景に使った五重塔も、室生寺の五重塔のレプリカだった。とにかくいっぺんにいろいろな国宝級の建造物に似たものが見られるので、それはそれで面白かった。
耕三寺の裏手にある「未来心の丘」も含めて小1時間ほど滞在し、もうお腹いっぱい。予定では15時05分の高速船に乗るつもりだったが、時計を見ると13時45分。急げば1本前の14時ちょうどに間に合うかもしれない。耕三寺を出て左手に進み、瀬戸田商店街を冷やかしながら歩くと海に出た。右を見ればこじんまりとした瀬戸田港ターミナル。時計は13時50分を少し回ったところで、余裕で14時の船に間に合った。
瀬戸田港には、鳴り物入りで登場し、STU48も乗船したという観光船「SEA SPICA」が着岸しており、まるで「掃き溜めに鶴」のようだった。私はそれよりもずいぶん小ぶりな高速船「シーホーク」(弓場汽船)で三原港に向かう。三原までの所要時間は28分で、瀬戸内の島影を見ているうちにあっという間に到着。運賃は840円と安く、しまなみ海道へのバイパスルートとしても十分使えると思う。
三原港と三原駅は本当に近く、三原港前の交差点から三原駅まで見通せる距離である。港と駅の間に建つ三原国際ホテルホテルが今日の宿。1ブロック隣のスーパーマーケット(コンビニ?)「おかず工房」で惣菜をたっぷり買い込み、日の高いうちからホテルの部屋で痛飲したことである。。。
|
駅至近。昭和の風情が残る三原港ビル
|
ホテルの6階より夕暮れの三原駅を望む
|
EX予約グリーン特典で三原→浜松をグリーン車移動。東京まで行けば600ポイント最長
|
半室グリーン車の豪華なシート
翌朝はエクスプレス予約のグリーン特典でアップグレード。600ポイントだとこだまにしか効かないが、こだまグリーン車どうしを乗り継げる最西端の三原駅から利用する。まずは新幹線に乗る前に三原駅の北口に回る。最初に来た時にはびっくりしたが、北口はお城の石垣の間ににぽっかりと口を開けている。そのまま新幹線の高架下に石垣が続いており、三原城の天守はまさに三原駅なのだ。その辺の話は左の動画でレポートしているので、よろしければ見てちょーだい。というわけで延べ4時間ほど、こだま号のグリーン車に揺られて浜松到着。グリーン車が嬉しくて朝6時から呑みテツ。まだ11時前なのにすっかり酔っぱらってしまった。。。 |
|
|
<終> |