み ず た ま り に あ お ぞ ら |
池袋・メトロポリタンからスタート |
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1992年から94年にかけて公私にわたって梅雨時の東北に旅行に行っていた時があり、梅雨の声を聞くと、そのころの情景が思い出される。たまたま今年は大学時代からの友人の「つっちぃ」が仙台に転勤になったこともあり、10年ほどご無沙汰だった仙台よりも北側の東北に行ってみようという気になった。ここのところ飛行機と新幹線を組み合わせたような平べったい旅行が続き、いささか食傷気味だった。今回もコース的にはそんな行程になりがちだったが、土休日だけ運行される快速「フェアーウェイ」号があるのを思い出し、アクセントが付けられそうだ。また、陸羽東線のディーゼルカーを夕刻に組み込み、1993年の旅の情景が再現できそうである。鳴子温泉で途中下車して外湯に浸かる時間も捻出し、旅らしい行程になってきた。6月17日の勤務終了後に出発することに決め、さっそく手配に取り掛かった。 2005年6月18日土曜日、前泊していた池袋の「ホテル・メトロポリタン・クラウンプラザ」を6時過ぎにチェックアウト。池袋駅のホームには北関東のゴルフ場に行くと思われる中年ゴルファーがたむろしていた。運行当初は、閑古鳥が鳴いていた「フェアーウェイ」号も常連客をつかみ、その名に違わぬ列車に成長したようである。池袋を6時31分に発車。始発駅こそ新宿であるが、赤羽からは485系特急電車が通い慣れた東北線。停車駅こそ多いが、時折見せる120`運転など、往年の「はつかり」「ひばり」などを彷彿とさせる。早起きをしたので途中居眠りなどをしたが、走りっぷりを十二分に堪能して8時56分に那須塩原に到着した。 |
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フェアウェイの名に違わぬゴルファーの群れ |
通い慣れた東北線を走り那須塩原に到着 |
那須塩原で東北新幹線に乗り換え9時27分に郡山に到着。駅そばを軽く食べた後、9時59分のつばさ105号をつかまえた。本来、福島で乗り換えるべき「つばさ」を一駅前でつかまえたのは、福島で自由席の乗客が入れ替わったすきに着席できるのではという思惑があったからである。しかし、郡山でつばさに乗車した瞬間に、その作戦は甘かったことを思い知らされた。デッキ・通路とも年末年始の民族大移動時を思わせる混みようだったからである。これほど混み合っていると立っているのも辛い。福島駅で一旦ホームに降りてグリーン車を覗いてみたが、ここも満席。結局、指定席の通路に落ち着いて、カーブの連続する板谷峠を越えたことである。 |
さくらんぼ狩りシーズンで超満員のつばさ105号 |
新庄・かむてん公園でホッと一息つく |
11時12分到着のかみのやま温泉で、ようやく指定席に動きが出て着席する。車掌さんがきたら指定席の差額料金を払うまでと、タバコに火をつけ、ようやく人心地が付いた。次の停車駅山形で大きな乗降があって、ようやく当初の目的の自由席に腰を下ろした。最後まで堂々と指定席に座っていればよさそうなものだが、我ながらセコイなぁと反省する。終点の新庄まで駅ごとにぽつりぽつりと降車があり、しまいには前の席を回転させて足を投げ出せるほどの乗車率になってしまった。 新庄では45分ほど乗り継ぎ時間があり、駅前に出てみた。駅の裏手に「かむてん公園」があることを知り、とりあえず行ってみた。だだっ広い公園だったが、まだ出来て間もないのか木陰がなくて困った。山形の北部は梅雨前線の影響がなく快晴だったのだ。 |
この旅の目的地のひとつ鳴子温泉に到着 |
鳴子温泉の外湯めぐりでは欠かせぬ「滝の湯」 |
12時55分の鳴子温泉行き鈍行列車はキハ110系気動車だった。ワンマン仕様ながら進行方向左側のシートは回転シートで、窓に向かって45度の斜め向きにも固定できる観光仕様だった。しかし陸羽東線は地元の足。そんなけったいな方向に固定している乗客は誰もおらず、私も普通に前向きにして座った。途中の赤倉温泉駅を過ぎたあたりから、次第に山深くなっていき、それと同時ににわかに曇ってきた。この時期の東北地方は「やませ」の影響で日本海側は晴れていても、太平洋側では曇りがちになる。ほどなく鳴子温泉に到着した。
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気軽に入れる鳴子温泉駅前にある足湯 |
この田園地帯を見たくてここまで来たのだ |
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仙台転勤間もない「つっちぃ」と軽く一杯 |
その「つっちぃ」と差し向かいで飲む筆者 |
世間的には根強い温泉ブームがあり、鳴子温泉で降りれば必ず外湯めぐりとなるのが人の常だが、私はそれほど温泉好きではない。しかしまぁ折角だから、ひとっ風呂浴びようと思い、駅にほど近い「滝の湯」という公衆温泉に行った。150円の入湯券を自動販売機で買い、脱衣場に入ると着替えもままならないほどの混みよう。それでも白いお湯と打たせ湯を体験して駅に戻った。なんか温泉に入っただけという感じで、これだったら少し値が張るけどもホテルの温泉にゆっくり入った方が良かったかも…。
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仙台駅前・だんまや水産のおすすめメニュー |
「おばんですチケット」で楽天-横浜戦を観る |
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応援団の熱狂とともに夜は更けていく |
再び陸羽東線のディーゼルカーの旅に戻り、この旅のハイライトとなる古川郊外の田園地帯に差し掛かる。1993年の旅では、たまたまその時に聴いていたエリック・クラプトンの「ホーリー・マザー」が梅雨空の田園地帯にマッチして、忘れられない車窓となった。今回、当時のままに再現してみたがイマイチ感動が薄い。列車に乗って空想していれば満足だった当時の自分と、基本的に旅のスタイルが変わってしまったことが原因だろう。こうなると「つっちぃ」と飲むことだけが唯一の楽しみである。予定を繰り上げて17時30分に仙台に到着した。 ホリデイイン仙台に早々にチェックインし、つっちぃの所に電話を掛ける。18時半過ぎに合流し、仙台駅前の「だんまや水産」という居酒屋に腰を落ち着けた。平成15年4月1日、静岡・清水の合併の日に、同じく大学時代の友人のこうへいクンと静岡で飲んで以来だから2年ぶりである。今度は我が浜北市が浜松と来月合併することになり奇遇である。ひとしきり近況を語り合ったあと、つっちぃが「今から楽天の試合を観に行かない?」と持ちかけてきた。何かと話題となった楽天の今年最後の交流試合ということもあり、ふたつ返事でOKした。 仙台から地下鉄のようなJR仙石線でふた駅め、宮城野原から歩いて7〜8分のところに楽天イーグルスの本拠地「フルキャストスタジアム」がある。19時半以降に入場すると「おばんですチケット」という割引チケットが買え、外野の芝生席なら700円で入場できる。我々も700円のチケットで入場し、宴会の続きを始めた。雨のため1時間くらい中断しており、20時過ぎに入場したが、まだようやく5回を終わったところだった。鳴り物のない応援はメジャーリーグ風で、9月に予定しているヤンキースタジアムでの観戦に思いを馳せたことである。ずいぶんアルコールが回り、お互い満足のうちに夜は更けていった… |
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<おしまい> |