LIGHT RESORT IN SASEBO

多忙な毎日の中で、たまには旅の空で一日何も考えずに過ごしたいものだと切に思う。こういう場合、季節が夏なら海や山のリゾート地で過ごすのが定番だが、ひとり旅には似つかわしくない。そこで、軽くリゾート気分を味える、ちょっとひねった旅の計画を立ててみた。

今年の夏はボートの大会が毎週のようにあったり、地元の祭りの役が回ってきたりで、9月になるまで海外旅行に行けそうもない。日本に居ながらにして海外旅行気分を味わうために、行き先は完全英語放送であるAmerican Forces Network(AFN=旧FEN)を聴ける場所から選ぶことにした。国内では北から順に三沢、東京、岩国、佐世保、沖縄に放送局があるが、三沢はこの時期ヤマセの影響で天候がすぐれず、リゾート気分を味わうのは難しい。東京は人が多いし、浜松でもAFN東京が聴けるので論外。沖縄では本当のリゾートになってしまい、この時期にひとりで行くのは辛い。ということで西日本の2つの都市から選択ということになった。岩国もずいぶんご無沙汰で心が動いたが、佐世保のホリデイインが税サ込み7,277円で泊まれ、プールが付いていることが決め手になり、8月5日の宿泊予約を入れた。
さて、2日間の日程だと、1日目に目的地まで行って、2日目に目的地から帰ってくる平べったい行程になりがちで面白くない。経費も余計にかかるが、無理をしてでも前泊をした方が旅を楽しめる。というわけで8月4日(木)の仕事を終えて浜松駅に直行した。こだま551号を米原駅で捨てて新快速に乗り換える。JR西日本の株主優待券を有効に使うためである。今年度の株主優待券から乗車券・特急券とも額面の5割引になりオトク度がアップしたが、ご存知の通り大事故があったため株価は大暴落。乗客の安全を第一に考える鉄道会社になって欲しい。米原発20時39分の列車に乗って三ノ宮到着は22時21分。地下鉄に乗り換え、この日の宿であるホリデイインエクスプレス新神戸には23時前に到着した。

ホリデイインエクスプレス神戸の朝


六甲山系を背景に緑深い新神戸からスタート


Light Resort気分が味わえる中日は、なるべく早くホテルに着くために、「のぞみ」〜特急「みどり」の乗り継ぎとした。本当は新神戸を23分早く出て、同じ「みどり」に乗り継げる「ひかりレールスター」の指定席が良かったのだけれど、前夜の米原ではきっぷが取れず「のぞみ1号」を予約した。500系の普通車指定席は2000年の秋に博多から東京まで乗り通したことがあるが、窓際だと頭の方に行くにしたがって壁が迫ってくる。あの座席は圧迫感があり少しも快適でないので、思い切ってグリーン車を奢った。普通車指定席との料金差は、5割引のため2,220円に縮まり、コストパフォーマンスとしては上々である。


日本の鉄道を代表するトップランナーのぞみ1号


佐世保線では日本の夏の原風景が広がる

新神戸から2時間少々で博多に到着し、ここからが本格的な旅気分である。783系特急「みどり9号」の自由席で佐世保まで1時間46分の旅路である。肥前山口で併結のかもめ17号と別れ、単線の佐世保線に入ると日本の夏の原風景が広がる。青い空に白い雲。田園地帯の向こうにはなだらかな稜線を持つ山々。お気に入りの松岡直也のアルバム「マジェスティック」を聴きながら列車の揺れに身を任せていると「旅っていいなぁ」と心の底から思えてくる。


ホリデイイン佐世保の最上階で過ごす


名は体をあらわす「みどり9号」783系


特急みどりの側面。窓ガラスに映る筆者にも注目


佐世保駅が高架になってからは初めて来訪


屋上のプール。昼下がりは空いていてのんびり

高架化されて近代的になった佐世保駅前をひとしきり眺め、今宵の宿のホリデイイン佐世保にチェックイン。まだ14時前で、こんなに早く宿に入るのは、日本では初めてじゃなかろうか。まずはお目当てのプールに直行。屋上の一角にあり、小ぶりではあるが空いていてのんびり過ごすことができた。AMラジオのダイヤルをを1575KHzに合わせ、AFNの軽快な音楽とDJを聴いていると、ここが日本ではない感じがしてくるから不思議である。

夕方、少し佐世保のアーケード街を散歩してみた。あまり予備知識なしに現地に入ったが、外国人バーが街の至る所にあって、米軍基地の町らしさを感じた。これで連れがいれば「ちょっと入ってみるか」という気になるのだけれど、おとなしくホテルに戻って夕食とした。


アルバカーキ橋の向こうにホリデイインが建つ


閑静な土曜日朝の佐世保公園


日本であって日本で無い場所


西鉄バス「させぼ号」が福岡空港に到着

翌朝は、10時の高速バスに乗ればいいので、普段の旅のパターンからすると、かなりゆっくりめの9時頃チェックアウトした。ホテルと佐世保駅の間にある佐世保公園にちょっと寄ってみた。土曜日の朝ということでひっそりとしており、隣接する米軍基地も緊張感からは程遠かった。

駅前のバスターミナルから西鉄高速バス「させぼ号」に乗車すると、博多に遊びに行く若い女の子や、福岡空港から飛行機に乗る家族連れで満席。それでもシートピッチに余裕があるリクライニングシートなので、車内ではのびのび過ごせた。前の座席の背ずりには佐世保市内で使えるクーポンの綴りが付いたリーフレットが挟んであったので、ぱらぱらと目を通してみた。今回体験できなかった外国人バーや佐世保バーガーの紹介がされていて、次回佐世保に来たときの楽しみにしておこうと思った。バスは快調に高速道路を飛ばし、お昼前には福岡空港に着いた。今年の夏の心の洗濯ツアーは、ここで幕を閉じた。
<おわり>

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