冬 の 五 能 線


はやぶさ13号で一気に北上


年が変わって全国旅行支援は2割引に減額。地域クーポンも平日3,000円→2,000円に減額されたが、それでも使えるものは使って旅を続けよう。今回は大人の休日倶楽部パスを利用。本当は先月に予定していたのだが、五能線の全線開通を待って今月に行くことにした旅である。旅行支援が適用される期日まで待って宿泊予約を入れたが、それ以外の行程はずっと前に決まっていた。

2023年早々に元YMOの高橋幸宏さんが亡くなり、今回の旅は「ライディーン」を聴いて始まった。昔からの癖で、メロディを口ずさみつつ途中でベースラインに移行していく。おそらく我々の世代は「ライディーン」を歌うとみんなこんな風な鼻歌になるだろう。続いて「君に胸キュン」。当時は大人だと思っていたユキヒロさんは、この曲をリリースした頃はまだ30歳。思ったよりもずっと若かった。ブリッジの部分で半小節だけAメロが入り、この部分がいたく気に入っていた当時の私だった。その後続くブリッジで、その半小節分を無理やり精算してしまうのもいい感じである。思えばYMOのメンバーで最もYMOらしいのはユキヒロさんで、坂本さんで思い出すのは「メリー・クリスマス・ミスター・ローレンス」であり、細野さんだとはっぴいえんど時代の「風をあつめて」とかを連想してしまう。YMOの曲をずばり思い出すのは高橋幸宏さんなんだと、今さら分かった。

かつて湘南ライナーだった列車が2年前に特急に格上げされた「湘南号」

小田原で新幹線から在来線に乗り換え。券売機で大人の休日倶楽部パスと6枚の指定券を発券し、急いでホームに降りると、まだ特急湘南12号のドアは開いていなかった。乗り換え時間は12分だったが、焦って損した気分である。

定刻に発車した元湘南ライナーは、先行列車の影響なのかノロノロ運転。横浜駅を通過する時だけスピードを上げたりしてなんかチグハグ。結局10分ほど遅れて終着の東京駅へ。次の列車まで余裕を持っておいて良かった。

次の列車ははやぶさ13号。始発駅の東京を出ると、大宮、仙台、盛岡、新青森、終点の新函館北斗しか停車しない最速達の列車である。というわけで東京~新青森間は所要2時間58分。東海道新幹線ならば博多まで直通するのぞみ号の位置づけなので、当然仙台までは満席。隣席にも出張先に向かうと思われる若いサラリーマン氏が座ったが、別に窮屈だとも思わなくなってきた。スマホにTV番組を持ち出すようになってからは、テーブルを出してバラエティー番組を見ているうちに、あっという間に目的地に到着するからである。

隣の人は仙台で降り、その後新青森まで隣席に客は来なかった。浜松の人間にとっては仙台~青森間はすぐのような気がするが、実際は仙台でようやく半分ほど。徐々に雪景色になっていく車窓を見ながら、相変わらずTV録画を見ていた。盛岡以北の東北新幹線はトンネルが多いので、この方がストレスを感じなくて済む。

新青森には12時34分着。ここで奥羽北線の特急つがる4号に乗り換えて秋田に向かう。東京から秋田に列車で向かうなら間違いなく「こまち」を選択するところだが、津軽から秋北の雪景色を見たくて新青森経由にしたのである。奥羽北線の特急列車は本数がわずかなので、一日目の行程はこの列車を軸に決めていったのである。

果たして特急つがる4号に乗れば望み通りの雪景色。特に矢立峠を越えて平地となる大館から二ツ井あたりまでの米代川の車窓には思い入れがある。1996年12月、津軽鉄道のストーブ列車に乗った後の帰り道、そのころ走っていた特急秋田リレー号に乗りたくて奥羽北線を秋田に向かっていた。485系の特急たざわ号の車窓を彩った米代川の雪景色は私の心象風景となっている。その時に聴いていた「ノー・モア・ティアーズ」、「ブギー・ワンダーランド」、「自由のスパークル」のディスコヒット3曲を聴くと、今でもこの情景を思い出す。というわけで左の動画では、BGMにその3曲を入れて当時の車窓を再現している。興味があればどうぞ。

秋田駅到着は15時27分。今夜の宿は駅直結のホテルメトロポリタン秋田。旅行支援の手続きでもろもろ時間がかかったが、明るいうちに部屋に入ることができた。最上階(とはいっても9階)のプレミアムフロにアップグレードされたので、1人で泊まるには広すぎる豪華な部屋。特に浴室は外が見える窓があり、その窓を開けると半露天風呂が楽しめる。ホテルではいつもシャワーのみにとどめているが、今日ばかりはバスタブにお湯をためて、頭は真冬、体は熱帯という雪国の露天風呂気分を味わった。


ホテルメトロポリタン秋田に宿泊

翌朝は地元の名物料理も取り入れた朝食ビュッフェを味わい、朝8時前にチェックアウト。旅行支援やらポイント利用などで1泊朝食付きで8,152円で泊まれたうえに2,000円の地域クーポン付き。ちなみにこちらのクーポンはリゾートしらかみ号に持ちこんだツマミに消えている。

さて、そのリゾートしらかみ1号は8時19分に秋田駅を発車。HB-E300系というハイブリッド気動車で、今日は橅(ぶな)編成という濃緑の車両である。東能代で奥羽北線と別れを告げ、同時に進行方向が逆になった。ここから海側の席になる(A席が海側)。五能線は圧倒的に海側の方が景色が良いので、座席を指定する時には注意が必要である。

日本海が見え始めるのは東八森を過ぎてから。ここから80キロにわたって日本海と付かず離れず走るわけである。最初のビューポイントは秋田・青森の県境付近。ここでは列車が徐行するので車窓を存分に味わうことができる。

上りの姉妹列車であるリゾートしらかみ2号と深浦で列車交換すると、五能線の旅は後半戦。追良瀬、驫木、風合瀬といった難読駅の周辺は日本海が線路脇まで迫り、車窓からも波しぶきが確認できた。

千畳敷を過ぎると線路は東よりに進路を変え、鯵ヶ沢を過ぎたところで日本海に別れを告げる。そしてここからは津軽平野の雪景色。時おり地吹雪で車窓が真っ白になったりしながらも列車は淡々と進む。五所川原で動いているのか廃車なのか分からない津軽鉄道の旧型客車を見かけると、五能線の旅は終わりに近づく。雪で全く見えない岩木山の麓を走り、川部で奥羽北線と合流。とりあえずここで五能線は終了。

進行方向が再度逆になって、後ろ向きのまま7分ほど弘前まで走る。弘前で大量に乗客を降ろし、みたび進行方向が変わって奥羽北線を青森方面へ。復路は川部を通過し、大釈迦峠を越えて新青森に13時21分に到着。秋田を発車してから5時間02分の長い長い旅路だった。

これでリゾートしらかみ号には初夏と厳冬の2回乗り通したことになるが、機会があれば雪解けの季節や紅葉の季節にもまた乗りに来たい。しかし日本で最も人気のある鉄道路線なので、オンシーズンになると混雑しそう。となれば今回のような厳冬期に、荒れ狂う日本海の車窓を、ぬくぬくとした車内から、ちびちびと酒を飲みながら眺めるのが一番いいのかもしれない。。。


雪の時期に大館~鷹ノ巣間を乗りたくて、この列車から行程を決めた特急つがる


プレミアムフロアにアップグレードされた


窓を開けると半露天になる浴室


部屋の窓からは秋田駅が望める


翌朝は秋田駅がホテル直結で楽々


郷土料理も並ぶホテルメトロポリタン秋田の朝食バイキング


日本で最も人気のある五能線を走るリゾートしらかみ。全線乗り通すと5時間以上

<終>

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