飛 ば ず に 行 く 海 外
〜 旅 打 ち 釜 山 編 〜

「あかつき」の最後尾はレガートシート車輌


航空機の航続距離が短く、また大量輸送ができなかった昭和初期までは、海外に行くといえば外航船で行くのが当たり前であった。特に、ヨーロッパへは列車で下関に行き、関釜連絡船で釜山へ、そこから鉄道を乗り継ぎシベリア経由で1週間以上かけて行くのが一般的だった。時は流れて21世紀の現在でも、関釜連絡船の名残がある。ひとつは下関と釜山を結ぶ「関釜フェリー」、もうひとつが今回乗船した博多と釜山を結ぶ高速船「ビートル」「コビー」である。もっとも、浜松在住者が、地理的に一番近い外国である釜山に行くには、時間的な面ではもちろん経済的な面でも飛行機を使うのが有利である。日本航空の名古屋〜釜山の直行便で9月末に往復すると、最安値25,000円。高速船は往復運賃で24,000円。博多までの陸上交通費を考えれば、その差は歴然である。

さて、とにかく博多までの交通費を少しでも安く上げるため、今回は格安チケットショップの回数券にJR西日本の株主優待券を組み合わせて行く事にした。9月28日金曜日、定時まで会社で勤務し浜松駅へ。18時36分発のひかり421号で京都に向かい、寝台特急「あかつき」号のレガートシートに乗り継いだ。

レガートシートとは料金面で優位に立つ夜行高速バスに対抗するため、1990年に登場した普通座席車輌である。長距離を走る夜行バスに導入されつつあった独立3列シートに倣って、リクライニング角度が深い独立したシートを並べている。眠るという目的では、国際線のビジネスクラスシートに匹敵する内容である。乗車には指定席特急料金+運賃だけで済み、値段を抑えている。車端部の11席は女性専用席となっており、トイレも女性専用となっている。ただ、この日は女性専用席に1人しか乗っていなかったが…。

あかつきの他の車輌は全て寝台車で、株主優待券が使用できない。ということで久々に座席での一夜となったが、就寝前のひとときは快適だった。京阪神の帰宅ラッシュを眺めながら水割りをちびりちびり。優越感を覚える瞬間である。ただ、禁煙車であるため、タバコを吸うときには10号車から5号車まで移動を強いられるのには辟易としたが…。

21時55分に姫路を発車したのをしおにリクライニングシートを倒した。酔いも手伝ってすぐに眠りに落ちたが、岡山や福山で、新たな乗客を迎えるたびに物音で目が覚めた。そのうちに首が痛くなってきて眠れなくなってしまった。最近の良くできたスリーピングシートは、枕の部分が可動して、眠るのに最適なポジションが得られるが、登場以来25年以上経過したレガートシートでは望むべくもなく、眠れない夜を過ごすハメになってしまった。次に乗る機会があるかどうか分からないが、空気枕が必要だと痛感した。

0時21分、三原を発車すると下関までは客扱いがなくなり、車内も落ち着いて、再び浅い眠りに落ちた。とはいえ、JR西日本の境界駅である早暁の下関で列車を降りねばならず、ぐっすり眠るわけにはいかなかったが…。結局、下関に到着する30分以上も前に目覚め、これ以上眠ったら危ないと思い、喫煙車の5号車に移動した。通路の折りたたみ座席に座り、漆黒の車窓を眺めていると「旅の空にいる」という実感が沸いてきた…


夜行バスに対抗して3列独立シートに改造


早暁の下関に到着した寝台特急あかつき号


関門トンネルを前に未明の機関車交換作業


下関駅から福岡・天神へは「ふくふく天神号」で


博多と釜山を結ぶビートル号

下関で未明の機関車交換作業を見届け、駅前から5時ちょうど発車のサンデンバス「ふくふく天神号」に乗車した。下関市内を引き回されたのはちょっとウザかったが、高速に入ると安定走行に入り、関門橋を見届けたあと再び眠りに落ちた。途中、福岡空港に立ち寄った後、朝7時前に天神バスターミナルに到着した。

路線バスで博多港国際ターミナルに移動し、乗船手続き〜出国手続きを済ませてビートル号に乗船した。飛行機での出国に比べると、手荷物検査をしない分だけ短時間で乗船できたようだ。8時45分に出航すると玄界灘を釜山に向けて一直線。昨夜の睡眠不足を取り返すべくガンガン寝まくった。11時過ぎに目覚めると、波間に釜山のランドマークのひとつである広安里大橋が見えた。もう釜山港は近い。11時45分頃、釜山港に入港した。

釜山慶南競馬場 収支表
レース 投資 回収 収支 累計
釜山2R 4,000 5,600 +1,600 +1,600
ソウル4R 6,000 0 -6,000 -4,400
釜山3R 5,000 11,000 +6,000 +1,600
ソウル5R 3,000 5,200 +2,200 +3,800
ソウル6R 10,000 3,400 -6,600 -2,800
合計 28,000 25,200 -2,800 単位
ウォン


釜山慶南競馬場にて筆者


博多港国際ターミナルの発券カウンター


波間に広安里大橋が見えてくれば釜山港も近い


釜山慶南競馬場の入場ゲート


JRAの競馬場にも劣らない広大なスタンド


横断幕のハングル文字が異国を実感させる


新しい競馬場なのでオーロラビジョンもきれい


1800b戦は内側コースからスタート


左下との違いに注目〜看板の内側を走る

今回の旅の目的のひとつである釜山慶南競馬場は、郊外の江西区にあり、釜山港からは地下鉄とシャトルバスを乗り継いで約1時間くらいかかる。普段の私ならそれも厭わず、釜山港から地下鉄の駅へと歩くところだが、今日はまっすぐタクシーに乗り込んだ。というのも土曜日に釜山で行われるレースはわずか3レースだけ。12時20分に第1レースが発走すると、第2レースは13時20分、そして最終レースは14時15分発走である。シャトルバスの時刻を勘案すると、競馬が生で観られない可能性もあるため、泣く泣く1人でタクシーに乗った次第である。話好きな模範タクシーの運転手さんを適当にあしらいつつ、高速道路を経由して12時半過ぎに慶南競馬場に到着した。料金は27,000ウォンだった。

2002年のアジア大会馬術競技会場を改装し、2005年9月にオープンした釜山慶南競馬場は、JRAの競馬場にも劣らない大きな観覧スタンドを持ち、馬場も広い。ただしダートコースしかなく、本命サイドで決着することが多い点では地方競馬っぽいけどね…


釜山国際観光ホテルに宿泊

1000ウォンで買った競馬新聞を解読している間に、釜山第2レースの締め切り時刻が近づいてきた。仕方なくオッズを頼りに馬券を買ったら見事的中。4,000ウォンの投資で5,600ウォンの払い戻しを受けた。続くソウルの第4レースは、新聞の印が付いている馬のボックスで買ったら撃沈。どうやら1番人気の馬から数点流すのが得策のようである。

釜山の第3レースは比較的長い1800b。このへんのクラスでは1000〜1400bのレースが多く、1800bで良績を残している馬は数えるほどしかいない。距離適性を基準に軸馬を絞り、その馬が1番人気だったので馬連でオッズの低い5頭に流してみた。釜山の最終レースなので、外ラチのそばまで行ってカメラを構えた。日本では同じようなファンをかなり見かけるが、ここ韓国では私以外誰もいない。競走馬はギャンブルの対象でしかないのかもしれない。さて、慶南競馬場の馬場は内、外2つのコースがあり、1800bのレースは内側の4コーナーよりが発走場所。小回りに1・2コーナーを回り、短い向こう流しを走る。再び小回りに3コーナーを回って、4コーナーで外側のコースに出て、300bほどの最後の直線を走る。最終レースらしく最後の直線では歓声が上がり、見事私の軸馬が勝った。

釜山の最終レースが終わると、あとはソウルのレースの中継を見ながら馬券を買うしかない。驚くことに、釜山のレースが終わってからスタンドが混み始めるのだが、場外馬券売り場を見るために釜山に来たわけではないので、ソウルのレースを2つ見て競馬場を去ることにした。結局5レース中4レースを的中させたものの2800ウォンの負け。韓国の競馬の極意は、本命馬から買い目を絞って勝負という感じだった。

競馬場からは無料シャトルバスと地下鉄を乗り継いで釜山市街地に向かう。時間はたっぷりかかったが、わずか1300ウォンで今日の宿の最寄駅である凡一洞駅にたどり着いた。宿泊先の釜山国際観光ホテルは、日本人ツアー客が多いため日本語が通じて助かったが、いかんせん内装は古くエアコンの効きも弱いボロホテルだった。まぁ夜はカジノに出掛けてしまう訳だし、高速回線のネットが無料で使えただけでも良しとしなければ…。

さて、そのカジノでの顛末だが、結果から言うと5万ウォンのマイナスくらいだった。宿泊先から地下鉄で2駅の西面(ソミョン)にある、ロッテホテルのセブンラックカジノで勝負をした。前回釜山に来た時にはオープンしていなかったので、初めてのカジノだけど、ソウルのミレニアムヒルトンで手痛い目にあったセブンラックの釜山支店のようなものである。「ソウルの仇を釜山で討つ」というわけではないが、ブラックジャックをセオリー通りにゲームしたらチップがちょっとずつ増えていった。開始から1時間ちょっとでチップが倍に近づき、「倍になったらやめよう」と心に決めた。すると途端に手札が悪くなり、最後は原点割れしてタイムアップを迎えたというわけである。まぁ骨までしゃぶられたソウルの二の舞が避けられただけでもありがたいと思わなければいけない。


ゴール前直線の攻防。外側コースを走る


決勝線直前の様子。このレースも的中


競馬場からの帰りも西面へも地下鉄が便利


釜山ロッテホテルのセブンラックカジノで勝負


釜山国際旅客ターミナル。2階に博多行き窓口


JR九州と共同運航の未来高速コビー号


今夏に新登場した新幹線N700系に乗車


博多駅に停車中のN700系「のぞみ26号」


全席禁煙車のN700系の喫煙コーナーにて筆者


2人で満席になる小さな喫煙コーナー


翌朝は7時過ぎにホテルを出発し、延々と帰り道を辿ることになる。凡一洞駅から地下鉄に10分乗って中央洞駅へ。そこから10分も歩くと釜山国際旅客ターミナルに到着した。JR九州と共同運航している未来高速のコビー号に乗船し、8時45分に釜山港を出航。釜山を出て1時間も経たないうちに、日本の携帯電話の電波が拾えるようになったのにはびっくり。メールをチェックしたり、ウェブサイトが見たりして時間を潰すことができた。ふと進行方向右手を見ると対馬が横たわっていた。対馬は福岡より釜山に近いことを実感し、最近韓国資本がかなり入っているという話も頷けた。

11時40分に博多港に入港し、入国手続きや税関審査を受けるも11時55分発の路線バスには悠々と間に合った。そして、この旅の計画段階では絶対に間に合わないと思っていた博多駅12時28分発の「のぞみ26号」に間に合ってしまった。のぞみ26号は今夏デビューのN700系車輌。浜松を通過する車輌なので、乗るのも当分先かなと思っていたが、意外に早く乗車することができた。全席禁煙で、タバコを吸うには16両編成中4箇所にある喫煙コーナーに出向かなければいけないのがタマにキズだが、博多から名古屋まで乗って3時間17分ならそれも致し方ないところかもしれない…。2人で満室になる狭い喫煙コーナーなので、比較的空いている岡山までに3回通い、あとは名古屋まで我慢した。まぁ酒を飲んでいない昼間ならタバコも我慢できるが、アルコールの入った夜の新幹線だといかがなものか…。お父さんのささやかな楽しみを奪うことにならなければいいが…

名古屋で米原で追い抜いた豊橋停車のひかり376号に乗り継ぎ、豊橋でこだま582号に乗り継いで、浜松到着は16時47分。釜山出航から1度も飛ぶことなく、延々8時間を要した長い旅路は終焉を告げた。

博多〜名古屋間を3時間17分。のぞみは速い

<おしまい>

旅と音楽のこころへもどる

競馬にイプゥ〜へもどる