お と な び フ ァ ー ス ト


浜北駅発神戸三宮行きJAMJAMライナー

昨年暮れに満50歳になり、五十肩や老眼など加齢にともなうデメリットが目立つようになってきた。逆に50歳に到達したことで、JR東日本の「大人の休日倶楽部」やJR西日本の「おとなび」に加入し、今後の旅はいろいろとお得に行けることになった。そして今回初めて、そのメリットを享受することができる。おとなびパス(グリーン車用)を駆使して最終的に柳川を訪れる算段である。

さてJR西日本エリアまでの往復は別払いになるので、株主優待券も含めて行き方に毎回悩むところだが、今回は地元浜北駅から神戸三宮まで京都・大阪経由で直通する「JAMJAMライナー」を選択した。翌日の行動に支障が出るので、基本的に旅のアプローチで夜行バスに乗らないようにしているが、いつ廃止になってもおかしくない浜北駅始発のバスに乗っておきたいという思いで、ついつい予約してしまった。おかげで出発までは「夜行バスに乗るのはしんどいなぁ」と愚痴っぽくなってしまったが…。

というわけで出発当日の21時前。浜北駅前のバス停にJAMJAMライナー神戸三宮行きが到着。乗りこんだのは私も含めて2名だった。車内は前の4列が3列独立シート、後ろの6列が一般的な4列シートという「コンビ」という車両。当然3列と4列では料金が異なる。出発してから気付いたが車内にトイレがない。浜北から神戸まで10時間も走行するのに、これはちょっと困る。おまけに日付が変わった後の上郷SAまでトイレ休憩なしとのこと。結局運転手さんに言って浜名バイパス手前のコンビニに臨時停車してもらったが…。ちなみにこのバスは浜北発車後、浜松駅、豊橋駅、新豊田駅で乗客を拾うが、豊橋までは一般道を経由し、音羽蒲郡〜豊田のみ東名に乗るという経路である。浜北を21時に出発するのに、新豊田を深夜23時55分に発車するのもさもありなんという感じである。

車内は禁酒・禁煙。読書灯は点灯しないようになっていて薄暗くて本を読めないし、窓は全面にカーテンを張られ外も見られない。浜松駅に着くまでに退屈で死にそうになった。これから乗車してくるお客さんがいるので、おちおちシートを倒して眠れないし、こんな感じで我慢を強いられるので夜行バスは嫌いである。やっとのことで新豊田を出たと思ったら、すぐに上郷SAで休憩。まわりの夜行バスは東京方面の行先ばかりなのに、このバスだけ関西方面の行先で異様な光景だった。上郷の次は大津SAで休憩で、その間新名神を経由しているはずだが、記憶にないほど熟睡していた。大津SAでトイレ休憩の時間の後、そのまま乗務員も仮眠をとるとのことで、さらに2時間ほどそのまま停車。停まっているのでここでも熟睡。都合4時間弱は眠れたので、快適じゃないバスにこれ以上乗る理由はなくなり、朝5時の京都で下車した。京阪三条駅前にバス停があった。

京阪で七条に出て、そこから徒歩で京都駅に向かった。みどりの窓口でおとなびパスと、付随する指定券を発券してもらった。もちろん神戸発となっていた最初に乗るスーパーはくとは、京都発に変更してもらった。予定を変更したため京都で1時間以上の空き時間ができたが、喫煙所でタバコも吸えるし、自由に歩き回れるのでバスに乗っているよりずっと快適である。そんなこんなであっという間に7時6分になり、スーパーはくと1号は倉吉に向けて発車。空いているグリーン車で、不足している睡眠を補い、智頭急行線内に入るまで記憶がなかった。

智頭には9時42分に到着。ほんの1か月前には、この駅からキハ120の固いシートに座って、夜の因美線を南下していったが、遠い昔のことのように思える。ここでの折り返しの列車は50分後。この間を活かして智頭の街歩きをしてみた。国指定重文の石谷家住宅に行きたいところだが、徒歩で往復すると1時間ほどかかるのであきらめ、旧備前街道の智頭宿をぶらぶらしてみた。かなりの民家の軒先に、酒蔵にある杉玉がぶら下がっており、さすがに杉の町である。

智頭でのひとときを過ごした後、10時32分発のスーパーいなば4号に乗車。上郡までは眠気を我慢したが、シートを回転させた後、岡山まではまたまた居眠りタイム。岡山ではさくら553号に8分の乗り継ぎ。九州新幹線乗り入れ仕様のN700系8両編成は、グリーン車がわずか24席しかないため、満員でかえって窮屈だった。グリーン車に乗るんだったら、今後はなるべく16両編成の「のぞみ」を選択しなきゃいかんと思った。

広島からは可部線に乗る。可部線に乗るのは1993年春以来で、そのころは三段峡まで線路がつながっていた。その10年後に可部〜三段峡間が廃止され、今春廃止区間の一部である可部〜あき亀山間が延伸開業したという複雑な経緯をたどっている。石和温泉〜酒折間の1駅区間を除いてJR線を完乗している私にとって、復活とはいえ新規開業区間をほっとくのはマズい状況で、おとなびパスが使えるこの機会に乗車することにしたのである。ちなみに件の山梨の1区間も今年中に乗ってしまおうと思っている。


前は3列、後ろは4列のコンビシート。トイレなし


神戸までのチケットを買っていたが京都で下車


満50歳のご褒美、おとなびパス


智頭を後にするスーパーはくと


智頭宿の至る所で見られる杉玉


季節はずれの武者幟と延伸開業幟

かつては國鐵廣嶋といわれるくらい昭和の車両を修理しながら走らせていたJRの広島地区も、一昨年春のダイヤ改正で久々に227系「レッドウィング」が新車投入され、105系が走っていた可部線の古臭いイメージも一新された。昼間の可部線はすべて227系で運用されていて、都会の線区のようである。227系は221系→223系→225系と続く転換クロスシートの車両だが、なぜか可部線の乗客は折り返しの際にシートを転換させず、後ろ向きのまま座っていた。目障りなので後ろ向きの客が降りていくたびに転換させていたが、1区画すべて順向きにするのに発車して30分後の可部までかかった。さて、可部からは延伸区間なのでしっかりと目を開かないといけない。わずか1.6キロを5分かけてゆっくり走り、終点のあき亀山に到着。アリバイ撮影をし、新たに終着駅となった亀山地区をぶらぶらしてみた。すると旧河戸駅の駅名標を発見。なんでもあき亀山駅から300メートルほど広島寄りにある旧河戸駅から駅名標と待合所を移設したそうである。ウィキペディアによると、この延伸に関しての住民運動の盛り上がりが記されているが、のどかな盆地であるこの亀山地区に、そんな住民の力が宿っていたとは信じられない気がする。

あき亀山駅周辺でのひとときを過ごした後は、福岡県の柳川に向かう。帰りの可部線ではまたも居眠り。広島で乗り継いだのぞみ27号では、コンセント付きなのをいいことにパソコンを稼働させ、あっという間に博多に到着。やはり広島〜博多間1時間1分は圧倒的な速さであった。この後は博多から天神へ地下鉄で向かい、西鉄の特急で柳川に向かう手はずである。西鉄特急といえば2枚扉で転換クロスシート装備の8000系と相場が決まっていたが、近頃では2枚扉の車両を通勤区間に使うのはご法度になっており、117系や名鉄のSR車のように消えゆく運命にある。そういうわけでせっかく8000系に乗るのを楽しみにしていたのに、4枚扉のロングシート車に乗車。当たり前だが、転クロだろうが横座りだろうが全く所要時間が変わらず、柳川まではいい居眠りタイムとなってしまった。それにしても、どれだけ居眠りしても寝足りない。やっぱり往路に夜行バスを使うものではない。

柳川は雨だった。浜松よりかなり西に来ているので18時でもまだ明るいが、この雨の中で街歩きするのも気が重い。それでもここまで来たからには水郷柳川らしい場所を見ておかなければいけない。旧城内は遠いが、柳川藩祖を祭るという三柱神社にはそれほど歩かずに行けそうである。傘を差して三柱神社に向かったが、そこに着く頃には服もリュックもびしょびしょになってしまった。それでも二ツ川に架かる欄干橋から見た川岸の柳が、いかにも柳川ってな感じで来た甲斐があった。三柱神社の境内は広く、水たまりを避けながら慎重に歩を進める。この時、私の頭の中ではサザエさんのオープニングテーマがエンドレスで流れていた。有名観光地に来るとよくある現象で、それは昔からサザエさんのオープニングの背景には有名観光地のアニメが流れていたからであろう。

三柱神社をそそくさと参拝し、柳川橋を通って無事に駅に戻って来た。しかしここでトラブル発生。この大雨のため、渡瀬〜大牟田間が運転見合わせとなってしまったのである。元々の行程は西鉄大牟田線の完乗を目指すため、柳川から博多とは逆方向の大牟田に行く予定だった。しかも大牟田での乗り継ぎ時間の都合で、JR鹿児島線の大牟田〜博多間の乗車券も用意している。大牟田に行けないとなれば、天神方面に戻るのがスジだが、乗車券をむざむざと払い戻すのも手数料の関係で口惜しい。なんとか乗変で済む手立てを考えていたが、おあつらえ向きに瀬高駅に向かう路線バスがあった。19時2分発車ということで、このバスに乗れば当初の予定に瀬高で復帰できそうである。しかし19時を過ぎたあたりで「まてよ」と思い始めた。柳川駅付近の道路は、電車の乗客を迎えに来るクルマで混雑している。もしバスに乗って渋滞に巻き込まれると、この旅の中でもっとも楽しみにしている700系ひかりに間に合わなくなるかもしれないばかりか、今日中に新大阪までたどりつけなくなる。ここは安全策をとって19時6分発の西鉄福岡行き特急に乗り、久留米かどこかでJRに乗り継ぐことにした。

車内でgoogleマップで調べ倒し、西鉄紫駅とJR二日市駅が歩いて行けることが分かった。二日市なら窓口で乗変もできそうである。特急なので紫には停車せず、いったん西鉄二日市まで運ばれて、逆方向の普通電車で一駅戻った。紫駅は上下別改札なので、そのままスイカでは降りられない。改札口で二日市→紫間の150円も精算しているので、ご安心のほどを。雨の中5分ほど紫から歩いて、JR二日市駅に到着。鹿児島線も雨のため遅れていたが、九州新幹線はもっと深刻な遅れを叩き出しているらしい。柳川で立ち往生した時に、筑後船小屋までタクシーで出るのも選択肢にあったので、結果論であるが選択は間違っていなかった。二日市では予定していた快速列車の1本前の普通列車に間に合い、博多には予定より早く到着した。もし予定どおり快速に乗車していたら、新幹線の発車に間に合うかどうか気が気ではなかっただろう。


先月の旅でも通った智頭駅前でアリバイ撮影


智頭からは岡山行きのスーパーいなば乗車


可部線の主力。あき亀山駅にて新鋭227系


今年の暮れにJR完乗を決め開業区間を訪れた


廃線区間が復活。旧駅名の河戸駅を再現


可部線の終点はのどかな盆地だった


近頃の西鉄特急はロングシート4枚扉が主力


三柱神社に渡る欄干橋の風情が柳川っぽい


お堀めぐりの船と二ツ川の柳。雨もまたいい


柳川藩祖を祭る三柱神社本殿


柳川橋のたもと隅町のたそがれの風景


またもトラブル発生。大雨のため運行見合わせ


ヴィアイン新大阪ウエストの朝食


クイックピックで3連単を購入

さて博多からは、お楽しみの700系ひかり444号のグリーン車に乗車する。東海道区間から700系ひかりが撤退した後は、定期列車で700系を使用する唯一の速達列車である。喫煙車オブ・ザ・イヤーという賞がもしあれば、今年の受賞列車は間違いなくこれである。去年までの受賞列車は、私がこよなく愛したひかり481号だったと思うが…。さて、このひかり444号は、途中停車駅が、小倉、広島、福山、岡山、姫路、新神戸とのぞみ並みである。まぁ姫路停車と新大阪止まりということで「ひかり」という愛称になっているだけだと思うが、博多〜新大阪間は2時間42分と700系としては俊足である。しかし私にとっては、あんまり速く走ってもらっても、楽しむ時間が減ってしまうので、できれば下りの兄弟列車であるひかり441号並みの速さで走ってほしいところである。ちなみにひかり441号は、新大阪を発車した後、新倉敷、新尾道、東広島、厚狭のみ通過し、所要時間は3時間23分である。

16両編成の喫煙グリーン車だけあって、博多から新大阪まで終始ガラガラの状態。それをいいことに水割りをがぶ飲みし、コンビーフ缶など乾きもの以外のツマミもバクバク食べて、新大阪に着く頃には気持ちが悪くなってしまった。それでもタバコが自由に吸える環境は有難い。新聞発表にあるように2020年春には座席で一服ができなくなるので、せいぜい今のうちは楽しんでおきたいと思う。

JR西日本の株主優待割引でヴィアイン新大阪ウエストに宿泊し、翌朝は京都競馬場に立ち寄った。普段なら京阪電車で淀駅からアクセスするが、今回はおとなびパスを持っているので、JR山崎駅から直行バスで競馬場を目指す。電車でばかりアクセスをしていると気づかないが、朝9時台の競馬場周辺の渋滞状況は雨の土曜日でもかなりひどく、ずいぶんと時間がかかってしまった。これがGT開催日だとすると目も当てられない状況になるだろうと感じた。

さて肝心の競馬の方は、結果的にひとつも当たらず惨敗だった。もともと午前中の4レース限定で予想を立てていたが、その予想が木曜日に無理やりしたもので、オッズはおろか枠順すら分からない段階なのでハズれるのも無理はないところ。おまけに前夜からの雨で不良馬場となり、私の本命馬は4着や5着が多かった。本命馬がトップに来れば、今度は上位人気で抜け目となっていたりしていた。今後の教訓としては、木曜の段階で本命馬を決めたとしても、ヒモはオッズを見てからしようと思う。

すっかりオケラとなった私は、京阪で東福寺に出ておとなびパスの旅を再開した。京都から新快速、草津から柘植まで草津線に乗車したが、草津線は1994年以来久々の乗車となった。その時の行程は夕刻221系に乗り、日没後の柘植で関西線のキハ58に乗ったと記憶しているが、柘植の乗り継ぎが木に竹を接ぐ感じで面白かった。当時最新鋭の221系から、いきなり国鉄型に変わり、加太越えのためスイッチバックの信号所で停車。まだ宵の口ながら中在家信号所は真夜中のようだったと記憶している。亀山から213系に乗ると「なんていい列車だ」と感じたものである。

さてその草津線。20数年前はJR化後の車両だったが、今回は緑一色の国鉄型113系。しかもモハ112+モハ113の電動車はセミクロスシートの原形をとどめた車両だった。115系は先日の赤穂線でも乗車しているが、かつて東海道線の主力だった113系は久しぶりである。途中の貴生川を過ぎると車内が空いて、1ボックス独占できる状態となった。そこで私はかつての東海道線でやったように、靴を脱いで対面のシートに足を投げ出した。直線でスピードが上がると、MT54モーターが独特の音でうなり続ける。その音を聞いて、私は遠い中学生の頃に思いを馳せた。50歳以上限定のおとなびパスで旅をしているというのに…。


今年度の最優秀喫煙車。ひかり444号G車


JR西日本株主優待割引でお得に宿泊


久々に山崎駅から京都競馬場へ向かった


京都競馬場は昨夜からの雨で傘の花が開く


20数年ぶりに草津線に乗車。懐かしの113系


セミクロスシートの原形を保つ113系車内

<終>

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