Spring Tour 2009

Island Hopper


ダッシュ8は観光バス並みの大きさ


今年のSpring Tourも沖縄。今年で3年連続3月に沖縄に来ている。毎年恒例のSpring Tourであるが、その昔は鉄道の旅が定番だった。しかし近頃は諸般の事情で、一気に空路で南下しレンタカーで周遊するのが一般的になった。そして今年、とうとうSpring Tourは、一切鉄道を使わない旅になってしまった。

遠鉄バスe-wingから乗り継いだ飛行機は、例によってANAの沖縄行き。株主優待券の残りがあるので、今年もプレミアムクラスを奢り、3連休初日で満員の普通席を尻目に、ゆったりと沖縄への空の旅を楽しんだ。那覇空港到着の時、ボーディングブリッジで感じた生暖かさが、この後に続く南の島への旅の期待感を盛り上げた。

那覇空港への到着が10時50分ころ。そして与那国空港行きの出発時刻は13時45分。外に出るには短く、空港内で過ごすには持て余す、中途半端な乗継時間である。乗り継ぐ航空会社がANAならばラウンジが使えるが、今回は琉球エアコミューター。仕方なくANAのラウンジから漏れてくる無線LANの電波を拝借して、ネットにつなぎ時間潰し。まぁそれも30分ほどしかもたず、ちょうどWBCの日韓戦が生中継されていたので、時間まで観戦することにした。ちなみに、この試合がWBCの最高視聴率を記録し、平均視聴率は40.1%だった。どおりで老若男女問わず熱心にモニターを見つめていた訳である。


フィリピン・ジェンサン空港を思わせる1コマ


与那国空港・借りたeKワゴンとともに


西崎周辺は公園管理されている


日本最西端の西崎灯台

3時間近く那覇空港で過ごし、ようやく与那国行きの搭乗時間となった。ランプバスで案内された搭乗機は、白地に水色と黄色の見慣れぬカラーリング。「JALグループの機体は白地に赤」という先入観を持っていたので、RAC機のそばに来ても「これから乗る飛行機はどこにいるんだろう」と、きょろきょろ探し回ったほどである。そしてプロペラの小さな機体を見て、バスの乗客は口々に「簡単に落ちそうやなぁ」と、物騒な事を言っていた。もっとも、隣に駐機していたアイランダー(BN-2B)は、9人乗りでひときわ頼りなさげに見え、この機体には、私も「乗るには勇気が要るな」と思った。

機内に入ると、2+2列シートが10列ほど並び、観光バスと見紛う感じである。ドアを閉じプロペラが回り始めると、決まって私はニュージーランドでのスカイダイビングの模様がフラッシュバックしてくる。あの自殺行為とも思えるダイビング体験は、「もう2度とやるもんか」と心に決めた恐怖体験で、プロペラ音を機内で聞くと、どうしてもその時のことを思い出してしまう。

那覇と与那国の間は直線距離で500`。プロペラ機で飛ぶと所要時間は1時間40分。沖縄県は陸地は狭いが広大である。狭い機内に息苦しさを感じ始めた頃、ようやく与那国空港に向けて降下を始めた。

与那国空港の到着ゲートへの移動は、離島にありがちな徒歩連絡。バゲージクレームにはターンテーブルが一本。その設備といい空気感といい、フィリピン・ミンダナオ島にあるジェネラル・サントス(ジェンサン)空港を思い出す。フィリピンも日本と同様に島嶼国家なので、空路が発達しているが、日本に比べると、空港でのオペレーションがおおらかというかダラダラなので、現地ではずいぶん悩まされた。まぁそのうち慣れて、鷹揚な性格に変わるのだが。日本のはずれに来れば、そんな感じでのんびりした性格になれるかもしれない。

到着ゲートを出て、レンタカーのカウンターを探して、うろうろしていたら「歓迎 加藤様」のボードを持ったお姉さんが立っていた。たかだか軽自動車を借りるくらいで「歓迎」は大げさだが、悪い気はしない。そのお姉さんと一緒にeKワゴンに乗り込み、空港のすぐ向かいにある最西端観光の事務所に向かった。

事務所で手続きを終え、さっそくドライブ開始。まずは、お姉さんに教わったとおり、宿泊先のペンション・ディーパに向かう。日本最西端の集落・久部良に入って路地を走っていると、どうも自分と同じ方向に行くクルマの後ろについた。そのクルマを運転していたのが、ペンションの奥さんだったので、チェックインはスムーズだった。まぁペンションといっても平屋のアパート風で、中に入ると学生時代の下宿生活を思い出すような間取り。素泊まり6,000円だが、食材を買い込めば普通に生活できそうな、ひとおおとりの設備が備わっていた。リゾート感はないが居心地は良さそうだった。


「日本国最西端之地」碑にて筆者


「最西端」碑の向こう側に広がる国境の海


条件が良ければ台湾も見えるそうだ


日本最西端の学校である久部良中学校


日本最後の夕日が見える丘(多少食傷気味)


悲しい伝説を残す久部良バリ


誰もいない海〜ダンヌ浜


牧場らしからぬ北牧場にがっくり


与那国最大の集落・祖納に隣接するナンタ浜


東崎より立入禁止のウブドゥマイ浜を望む


東崎灯台を背に草を食む与那国馬


比川浜に建つDr.コトー診療所セット


与那国島のシンボル立神岩


暮れなずむ比川浜で暫したたずむ


日本最後の夕日を運転中に拝む


部屋でのんびりしていると、そのまま夜になってしまいそうだったので、気合を入れ直して再びハンドルを握る。まずは、この旅最大の目的である日本の西の端を目指す。といっても宿からはほんの目と鼻の先。ものの5分で到着し、さっそく記念撮影。最西端である西崎一帯は公園として整備されていて、アクセスも良くのんびり過ごせる。あまりの居心地の良さに、芝生に寝転んで昼寝をしている人もちらほら。条件が良ければ台湾も見えるそうだが、今日は春霞がかかっていて無理だった。

夕日が沈む頃にもう一度訪れることにして、「日本最西端之地」を後にする。ここを起点に島を一周する訳であるが、迷った挙句、時計回りで歩を進めることにした。いったん宿の下を通り過ぎて、名勝「久部良バリ」を目指す。途中で「日本最西端の学校」である久部良中学校や、「日本最後の夕日が見える丘」などに立ち寄り写真撮影。これだけ「日本最西端」や「日本最後」みたいな歌い文句が立て続けにあると、有難味が薄れ食傷気味になる。

久部良バリは、「日本最後の夕日が見える丘」にほど近い海岸沿いにあった。火山岩の裂け目で、幅跳びで越えられるかどうか微妙な感じである。もし失敗して落ちでもしたら、底が深いので死に至るかもしれない。そのように思ったのは、この場所に悲しい歴史があるから。今から200年ほど前、八重山諸島には過酷な人頭税があり、人減らしのため妊婦を飛び越えさせたとのこと。失敗したらもちろんのこと、もし飛び越えられても流産する妊婦が多かったという。波が静かに打ち寄せるのどかな場所で、そのような壮絶な過去があったとは信じられない。

クルマを東に走らせて、次に向かった場所はダンヌ浜。山に囲まれた小さな浜で、夏ならば格好のプライベートビーチに変身しそうな場所である。与那国島では穴場ということで、この時間に訪れたのは私一人。海に沈む夕日も独占できそうな勢いだった。

続いて、海の見える牧場というロケーションに憧れて、北牧場に向かった。未舗装の轍の深い道を慎重に進み、やっとの思いで牧場と目される場所に着いたが、そこには放牧されている牛や馬がおらず、楽しみにしていた海も見えず、草原が広がるだけだった。この旅でもっとも苦労して行った場所だっただけに落胆が大きかった。


再び西崎に立ち寄ると少年達が乗馬中


結局夕日は拝めず灯台に灯がともる


平屋アパートそのものだったペンションディーパ


下宿時代を思い出す生活感溢れる室内


与那国出発直前にカタブル浜に寄る


アイランドホッパーの一番手JTAのB737


前方席はクラスJシートで快適

その後、県道を東進し空港前を通過。与那国最大の集落・祖納に入る。道を間違えて県道を外れてしまったが、ちょうどビーチがあったので小休止。このビーチがナンタ浜で、祖納の民宿に泊まって海水浴するなら、このビーチでといったところ。雰囲気は舘山寺のサンビーチに似ていた。

さて、祖納集落を過ぎると東崎までは目立ったスポットが無くなる。ウブドゥマイ浜は立入禁止になっていて、東崎から遠望しただけでお茶を濁した。その東崎一帯は放牧地になっていて、灯台を背に草を食む与那国馬の群れが、いい雰囲気を醸し出している。宮崎の都井岬を思い起こさせる風景だった。

その後、島の南海岸を走り、与那国のシンボル立神岩をチラ見。一気に比川浜まで歩を進めた。ここには、与那国島の名を一気に広めたTVドラマ「Dr.コトー」のオープンセット(診療所)が建つ。ドラマを見ていたわけではないのでなんとも言えないが、普通こんなところに(島唯一の)診療所を建てないだろうと感じた。まぁフィクションの世界だから小さいことは気にしっこなしだが…。

逆に比川浜は、夕暮れに訪れたこともあって感じが良かった。昨年のSpring Tourで久米島を訪れた時、西日の中、カーラジオから流れた「ワダツミの木」が印象的だったが、この比川浜では「ワダツミの木」が何度も頭の中でリフレインしていた。

さて、西崎に向かってクルマを走らせていると、ちょうど進行方向に沈んでいく太陽が見えた。「このまま雲に隠れないでくれよ」という願いも空しく、西崎に着く頃には、夕日が厚い雲の向こう側に行ってしまった。やがて灯台がともり、あたりが暗くなってきたので「日本最後の夕日」は諦め、宿に戻った。時刻は19時を少し回っていた。

翌日、空港に行く前に、昨日立ち寄れなかった比川のカタブル浜に行ってみた。夕方と午前中では太陽光線の具合が変わるので、真っ青な海と真っ白な砂浜のコントラストが際立って見えた。これで与那国島の主な海岸は全て制覇。心置きなく空港に戻ってレンタカーを返却した。

ここからはアイランド・ホッピング。与那国空港から中部空港まで、3つの飛行機を乗り継ぐ。まずは日本トランスオーシャン航空の石垣空港行きに搭乗。外観は何の変哲もないボーイング737だが、機内に入ると全席普通席の扱いにもかかわらず、前方席はクラスJシートが配置されていた。私の席番は「3A」とかなり前の方であったので、クラスJがあてがわれ、30分という短いフライトながら快適な空の旅だった。

正午ごろ石垣空港に着陸。ご存知の通り、石垣空港はジェット機が着陸するには滑走路が短く、着陸と同時に急制動がかかるスリリングな一瞬が楽しめる。また、十分な減速なしにランプウェイに曲がるため、他の空港では味わえない横Gもかかる。着陸から駐機までの一連の流れの余韻にひたりながら、初夏を思わせる石垣島に降り立った。


石垣島ではバスで川平湾に向かう


1,000円のフリーパスで気軽に乗車できる


エメラルドグリーンが美しい川平湾


天皇陛下も来たという浜辺にたたずむ筆者


サンゴ観察のグラスボートが走る


浜辺に降りてみると海の色が変わる


まだ3月なのに夏の午後のような景色


アイランドホッパー2番手はANKのB737


石垣島では東バスのフリーパスを購入した。このチケットは空港線と川平リゾート線が5日間乗り放題で、お代は1,000円。空港から川平湾を往復するだけで1,800円かかるので、出血大サービスの破格の値段である。私の石垣滞在時間はわずか4時間であるが、それでもこのチケットを購入する意義があった。空港バスをバスターミナルで乗り継ぎ、12時55分のバスで川平湾に向かった。石垣島には何度か来たが、いずれも飛行機の乗り継ぎ待ちだったので、石垣港周辺の街中しか行ったことが無かった。それだけに海沿いを走る外周道路は新鮮で、車内から海に向かってカメラを向けた。

13時40分、川平公園バス停に到着。人の流れに沿って海岸の方に向かうと、目の前に飛び込んできたのは夏の午後の風景だった。エメラルドグリーンの海と対照をなす白い砂浜。その向こうに、ぽっかりと浮かぶ小島に、青々とした常緑樹が茂る。太陽の高度が高いので小さな影しか作らず、それが夏の雰囲気を醸し出しているのかもしれない。まぁとにかく今回の旅で、最も南の島っぽさを感じたのがここ川平湾だった。

ひとしきり川平公園を回った後は、旅の終わりの始まり。来た時と同じバスに乗って空港へと逆戻り。石垣から那覇へとアイランド・ホッピングして、夕刻の中部空港行きの便に搭乗した。初夏から早春へと、季節も逆戻りした…

那覇空港で中部空港行きB777に乗継
<おしまい>

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