赤道カジノ〜旅打ち最終章


浜松駅バスターミナルよりe-Linerで旅立ち

昨年11月のオーストラリア旅行の項でも触れたが、今年3月の香港を最後に海外に行くのをやめることにしている。今回のシンガポールも最後の香港も目的は旅打ち(もっとも香港は競馬だが)。思えばここ十数年間、いろいろなカジノを回ってきた。ラスベガス、マカオ、ウォーカーヒルといった有名どころはもとより、マニラ、NZのオークランド、プサンの海雲台、ルート66沿線のサンシティなどカジノと聞けば闘いを挑んできた。そんな状況の中でシンガポールもカジノ解禁となっていたが、今回がラストチャンス。赤道直下にあるカジノに最初で最後のチャレンジをすることになった。

シンガポールへの往復はデルタのマイレージアワードを利用した。本当は往復とも直行便が良かったが、たかだかシンガポール往復のくせにバカ高く、往路は上海経由としてビジネスクラス80,000マイルとまぁマシになった。旅行直前に気になっていることを調べていると、上海浦東空港の乗り継ぎが非常に面倒くさいというクチコミに出会った。まぁ乗り継ぎ時間はたっぷりあるし、デルタ航空が推奨する乗り継ぎ便でもあるので乗り遅れることはないと思うが、戦々恐々としながら旅立った。

成田空港出発が17時台と遅いので、定番の新幹線+スカイライナーではなく、遠鉄のe-Liner横浜線のトクトクきっぷ「らくらく成田きっぷ」を利用した。浜松〜成田空港間が片道6,600円と安い。もっとも東名バスを東京駅で乗り継げば、東名バス3,880円+東京シャトル900円となるので、値段だけならこちらの方がいいかも。正月休みもそのあとの三連休も終わった直後の平日便なので、e-Linerもリムジンバスも空いていて居住性は非常に良かった。東京シャトルはシートピッチも狭く詰め込まれるので、ちょっとお金がかかってもこちらのルートの方がいいかもしれない。


最初で最後。デルタラウンジの食事


夕闇の静岡上空を飛行中


鶏肉メインのDL295便のディナー


真夜中の上海航空での機内食


建物内に人工河川が流れている


フードコートなら700円程度と安い

MRTは通勤ラッシュで混んでいた。パヤ・レバー駅で東西線から環状線に乗り換えると、少しはマシな状態になりロングシートに腰を下ろした。ベイフロント駅で下車し、そのまま外へ出ることなく最終目的地のマリーナベイ・サンズに着いた。アリバイ撮影のため建物の外に出ると、朝9時というのに強烈な蒸し暑さ。そそくさと撮影を済ませて、再びモールの中へ。玄関ホールそばのカジノに入場した。

さて、IR推進法の成り行きいかんで意味合いが変わってくるが、いずれにせよ海外で最後のカジノということで気合十分である。目標は投資額の倍増。ブラックジャックのテーブルを探すも、主なターゲットが中国人ということでバカラのテーブルばかり。その中で細々と開いていたミニマム25SGDのブラックジャックテーブルを見つけ、しばらくディーラーと客のやりとりを見学した。2人の中国系の客は概ねセオリー通りにゲームをしているので安心し、邪魔にならないよう一番上家に座ってゲーム開始。手持ちの500SGDをテーブルに出したつもりが、450SGDだったらしくその額のチップを渡される。目標は900SGD(約72,000円)。時間はたっぷりあるのでミニマムベッドでこつこつ増やしていく作戦である。

開始直後の数ゲームで、手持ちのチップが増えるのか減るのかが大きな分かれ目だが、幸いにも増える方向で推移した。開始30分ほどで200SGDほど儲かった。一度もブラックジャックを引いていないにも関わらず、この額なのでかなり調子が良い。その後は一進一退の状況が続いたが、ダブルダウンやスプリットが可能なカードが来たり、ブラックジャックが何回か来たりで徐々にチップは増えていった。開始1時間半のころには手持ちのチップが750〜850SGDのあたりを行ったり来たり。連勝すれば目標に届くということが何回かあったが、その都度挑戦は失敗していた。で、開始から2時間くらい経ったころ、ようやく手持ち850SGDから連勝して、900SGDに届いた。これでフィニッシュ。25ドルチップを500ドルと100ドルチップに換えてもらってテーブルを後にした。

シンガポールに来た目的を、わずか2時間で果たすことができ、意気揚々とモールの中を歩いた。薬局で同僚へのお土産を買い、その足でフードコートで昼食。東南アジアっぽい鶏飯屋さんで9.2SGDのランチを食べ満腹になった。その後ホテル棟にも行ってみたが、1人で有料の展望デッキ(入場料22SGD)に行く気が起らず、空港に戻ってホテルにチェックインすることにした。

帰りのMRTの経路は往路とは少し変えて、ダウンタウン線でブギス駅に行き、東西線に乗り継いだ。こちらの方が地下区間が少なくて、なおかつ空いているので快適だった。空港駅には13時半ころに到着。空港内のコンビニで今晩の夕飯と、明日の朝食を買い込んでホテルに向かった。この辺は国内旅行と変わらない行動パターンである。

今宵の宿泊先であるクラウンプラザ・チャンギ・エアポートは、第3ターミナルにホテルの入口がある。最終日のシンガポール発が朝7時前だったので、部屋代税込311.97SGDとかなり値段が張ったがここを予約した。規定は15時からチェックインだが、14時前でもすんなりチェックイン。部屋の方は1人では勿体無いほどの広さと設備で、窓の外は熱帯風のスイミングプールが広がるいい部屋だった。

夕刻には雷を伴った夕立が降り、さすが赤道直下の国だと感心した。翌朝5時半のチェックアウトまで都合15時間ちょっとの滞在だったが、存分にリゾート気分を味わうことができた。ホテルから徒歩0分の第3ターミナルからスカイトレインで第1ターミナルに移動し、DL166便にチェックイン。ラウンジカードをチェックインの時にもらったが、もとよりラウンジに寄る時間もなく、喫煙所でタバコを1本吸っただけで搭乗ゲートに直行。チャンギ空港は搭乗ゲートごとにセキュリティチェックがあるスタイルのため、搭乗ゲートへの集合時間が早くて参ったが、なんとか間に合った。

DL166便、成田経由シアトル行きはチャンギ空港を朝7時ころ離陸した。九段線に囲まれた南シナ海のはるか上空を行く。海外旅行というものは、終盤になってようやく英語を含めた雰囲気に馴染み、調子が出てくるもの。無理なことと知りつつも、「このままシアトルに直行してくれないかなぁ」なんて思ってみたりしていた。


渋滞に巻き込まれながらも予定より早く到着

さて連休明けの朝の東名バスといえば、どうしても学生時代に利用した東名静岡浜松線のことを思い浮かべてしまう。家から浜松インターバス停までクルマで送ってもらい、7時50分ころバスに乗車。朝9時前には静岡駅に到着し、必ず座れるのですごく重宝した。浜松インターから東名に入った直後に天竜川を渡るが、この時の情景を歌った曲を作ったこともあったっけ。今でも東名吉田バス停あたりで故郷を後にする若者と、それを見送る親御さんを目にすることがあるが、学生時代の自分と重ね合わせてジーンとしてしまう。そんなことが去来しながらバスは順調に東を目指して走っていく。

横浜YCATには15分ほどの遅れで到着した。空港に早く行っても仕方ないので、リムジンバスを一本落としてタバコの時間をかせぎ、あらためて11時40分のバスに乗車した。YCATと成田空港の間は100分かかるとの表示だったが、13時過ぎには到着したので、渋滞に引っかかったものの概ね順調な運行だったようだ。

さて成田空港に早めに到着したのは、ほかでもないデルタ航空のラウンジを味わうためだった。出国の手続きを手短に終わらせて、デルタラウンジへ。さっそくビールを飲みながらの食事となり、焼きそばやら、唐揚げやら、海苔巻きやら、ポテチやらで、やたらとカロリーを摂取してしまった。1週間後には健康診断を控えているのに、この体たらく。HbA1cがまた高くなったらどうしようと後悔した。ひととおり腹を満たした後、ラウンジ内の設備をチェックしたが、シャワー室はあるものの喫煙ルームはなし。この辺はANAラウンジに軍配が上がるところである。結局、タバコを我慢できずに早々にラウンジを退室。搭乗ゲート前の待合所と喫煙所の間をいったりきたりして、搭乗時刻を待った。

日没後、薄明りの残る時刻に成田空港をテイクオフ。シンガポールに直行ならひたすら暗い海が眼下に広がるところだが、上海に行くので日本列島を西へ向かう。途中静岡県内を通過するが、静岡の灯と浜松の灯が同時に見られるほどの高度を飛んでおり、いまさらながらびっくりする。そうこうしているうちに機内食が運ばれてきて、さっきラウンジで食べたばかりだがチキン料理を選択。赤ワインと一緒に食べたが、食後はゲップが出るほど満腹になった。食事ごとに健康診断のことが気になり、ちょっと旅の時期を間違えた感じである。

フルフラットシートを倒して、映画を観たり居眠りをしているうちに、あっという間に上海浦東空港に向けて高度を下げ始めた。珠海拱北で盗難に遭っていることもあり、私にとって中国は鬼門である。できれば一生中国に入国したくなかったが、知識不足のため上海経由としてしまったので仕方ない。今さらながら中華航空どうしの乗継であっても、台北経由にしておけばよかったと後悔しながら飛行機は着陸した。

国際線どうしの乗り継ぎは、制限区域内の乗り継ぎゲートを通って入国審査なしに行えるのが普通だが、ここ浦東空港は一部の例外を除いて入国が必要である。面倒くさいながらも入国審査を受け、続いてトランスファーホールでシンガポール行きのチェックイン。パスポートコントロール→セキュリティチェックと手順を踏むうちに、虎の子のライターを召し上げられてしまった。これも事前調査不足だったが、中国ではライターを持って搭乗できなくなったらしく、ライターはひとつ残らず没収されるようだ。それほど高級なライターではないが、わざわざ通販で購入したお気に入りのものだったので没収のショックは大きかった。こんなことなら使い捨てのライターを持って来ればよかった…。

搭乗時刻までは時間があり、とりあえず中国東方航空のラウンジに行くことにした。成田、機内と食事をしているので、ラウンジ内で食べるのを控えようと思っていたが、そこは食の本場中国、点心を中心に軽くパクつき生ビールで流し込んだ。次の搭乗便が真夜中の出発で、機内食が出たとしても朝食だろうという見立てで、夜食がわりに食べてしまったのである。

ラウンジ内のwifiがやたらと遅く、喫煙所もないので、食事が終わると早々に退散。平日の22時過ぎなのにやたらと人出が多いのに辟易としつつ、その後は待合室と喫煙所の間を行ったり来たりしていた。23時ころ搭乗ゲートを覗くと既に搭乗が始まっており、慌てて他の客と一緒にバスに乗り込んだ。10分ほど走った先に見えたのは中国東方航空ではなく上海航空のエアバスA332だった。

ビジネスクラスはフルフラットシートで、なおかつデルタの763よりもシートピッチが広い。空間の使い方が贅沢というか無駄というか、そんな印象だった。ともかく夜行便なのでフルフラットになるのはありがたい。離陸後しばらくすると真夜中過ぎにも関わらず、また機内食が運ばれてきた。もうこうなれば意地でも食ってやろうと思い、包子3つとフルーツを口に放り込み、ビールで流し込んでやった。もうこれで1週間後の健康診断の結果は絶望的だろう…。

目覚めるとMU543便は南シナ海を通り過ぎ、マレー半島の沿岸を飛んでいた。もうすぐシンガポールのチャンギ空港に到着する。中国に比べればシンガポールは天国のようなところで、「早く着け、早く着け」と念じながら、徐々に大きくなる街の灯を窓から見ていた。チャンギ空港の到着は朝5時半過ぎ。入国審査後、税関で持っていたタバコの箱を出したが、そのまま通された。シンガポールではタバコ1本から課税されると聞いていたが杞憂に終わった。

朝6時からダウンタウンに行っても仕方ないので、チャンギ空港の第一ターミナルに移動し、しばらくそこで過ごした。タイ航空ラウンジのwifiがとれたので、しばらくネットチェックをし、そうこうしているうちに外が明るくなり展望デッキより北の方角を撮影した。朝の支度もあらかたここで済ませ、朝8時過ぎにダウンタウンへの移動のためMRTの駅に向かった。


DL295便はボーイング763ERで運航


チャンギ空港の展望フロアで時間つぶし


マリーナベイサンズの特徴的な空中遊園


マリーナベイサンズのモール玄関にて筆者


マリーナベイサンズカジノのテーブルを俯瞰


モール内フードコートの鶏飯屋さんで昼食


空港隣接のクラウンプラザ・チャンギエアポート


ホテルの入り口は第3ターミナルの中にある


部屋から熱帯の植物が生い茂るプールを望む


1泊26,000円の単身には勿体無いような部屋

<終>

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